第５回匿式図形問題エスパー杯 (T-GUESS Cup 5)　問題Ａ～Ｅの解説

　2025年5月3日～5月11日にかけて『 第５回匿式図形問題エスパー杯 (T-GUESS Cup 5: Tock's Geometry "Using Extra-Sensory Solutions" Cup The 5th)』を開催しました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
　本記事では、当該コンテストで出題した問題Ａ・問題Ｂ・問題Ｃ・問題Ｄ・問題Ｅの紹介および解説を行います。昨年度同様、最終問題である問題Ｆは別記事にて解説することといたします。

T-GUESS Cup 2の解説記事： 問題Ａ～Ｃ ・ 問題Ｄ
T-GUESS Cup 3の解説動画： 問題Ａ～Ｈ
T-GUESS Cup 4の解説記事： 問題Ａ～Ｅ ・ 問題Ｆ

問題紹介

解答発表

問題Ａ　${\displaystyle \frac{25}{8}}\pi +6$
問題Ｂ　$36$
問題Ｃ　$\sqrt{{\displaystyle \frac{61}{2}}}$
問題Ｄ　$76$
問題Ｅ　${96}^{\circ }$

軽い解説

問題Ａ

　線分$A{A}^{\prime }$が円の直径となるような点$A^{\prime }$をとると、円周角の定理（もしくはタレスの定理）より$\mathrm{\angle }AB{A}^{\prime }$$=\mathrm{\angle }AC{A}^{\prime }$$={90}^{\circ }$です。したがって$A^{\prime }C//BD$であり、$\stackrel{⌢}{A^{\prime }B}$と$\stackrel{⌢}{DA}$の長さは等しくなります。ある円における弧の長さが等しければ弦の長さも等しいため、$A^{\prime }B=4$となり、三平方の定理を用いて$A{A}^{\prime }=5$が判ります。
　また、$A^{\prime }B,\stackrel{⌢}{A^{\prime }B}$で囲まれた領域を$DA,\stackrel{⌢}{DA}$で囲まれた領域に移動させることができるので、求める面積はもとの円の半分に$\mathrm{△}AB{A}^{\prime }$をくっつけた領域のそれです。半円の面積は${\displaystyle \frac{1}{2}}\times {\left({\displaystyle \frac{5}{2}}\right)}^2\pi$$={\displaystyle \frac{25}{8}}\pi$、$\mathrm{△}AB{A}^{\prime }$の面積は${\displaystyle \frac{3\times 4}{2}}$$=6$と計算でき、結局本問の答えは${\displaystyle \frac{25}{8}}\pi +6$となります。

問題Ｂ

　$AP=6x$とおきます。$\mathrm{△}APS$と$\mathrm{△}BPA$に注目すれば、2つの角がそれぞれ等しいのでこれらの三角形は相似です。ゆえに${\displaystyle \frac{SP}{AP}}={\displaystyle \frac{AP}{BP}}$となり、$SP=6$より$BP=6x^2$が得られます。
　いま、$\mathrm{△}PQB$で三平方の定理を用いると、
$$6^2+(6x^2{)}^2=(6x+6{)}^2⟹x^3-x=2$$となり、$x=\sqrt[3]{1+\frac{\sqrt{78}}{9}}+\sqrt[3]{1-\frac{\sqrt{78}}{9}}$と求められ……なくもありませんが、ここでは$x$の厳密な値を求めなくてよいです。なぜならば、
$$\mathrm{△}ABS={\displaystyle \frac{AP\times BS}{2}}={\displaystyle \frac{6x\times (6x^2-6)}{2}}=18(x^3-x)$$と計算できて、$x^3-x$の値さえ分かれば答えを出せるからです。つまり、本問の答えは$36$となります。

問題Ｃ

　問題Ａ・問題Ｂよりも条件が多く戸惑いますが、「$BD$の長さを求められそう」という直感が大事です。
　$\mathrm{\angle }EAP=x$とし、円$ABEP$に注目すれば$\mathrm{\angle }EBP=x$となります。このとき$\mathrm{\angle }FAP={60}^{\circ }-x$なので、円$APDF$に注目して$\mathrm{\angle }EDP={60}^{\circ }-x$も判ります。ゆえに、$\mathrm{△}BPD$の内角を考え、$\mathrm{\angle }BPD={120}^{\circ }$が得られます。あとは単なる余弦定理で済み、$BD=\sqrt{61}$、すなわち本問の答えは$\sqrt{{\displaystyle \frac{61}{2}}}$です。Ｂより簡単では？

問題Ｄ

　${\stackrel{⌢}{JK}}_X$で、円${\omega }_X$における劣弧$JK$を表すこととします(独自表記です)。${\stackrel{⌢}{AE}}_S,$${\stackrel{⌢}{ED}}_M,$${\stackrel{⌢}{DA}}_L$に対する円周角を考えると、これらはすべて${30}^{\circ }$です。したがって、これらはいずれも円周の${\displaystyle \frac{1}{6}}$に相当し、$AE,{\stackrel{⌢}{AE}}_S$で囲まれる領域、$ED,{\stackrel{⌢}{ED}}_M$で囲まれる領域、$DA,{\stackrel{⌢}{DA}}_L$で囲まれる領域（それぞれ${\alpha }_S,{\alpha }_M,{\alpha }_L$とします）は相似であるといえます。相似比は$AE:ED:DA$に等しく、三平方の定理より$A{E}^2+E{D}^2=D{A}^2$ですから、面積について${\alpha }_S+{\alpha }_M={\alpha }_L$が成立します（相似比が$x:y$のとき、面積比は$x^2:y^2$です）。$\overline{{\omega }_S}\cap \overline{{\omega }_M}\cap {\omega }_L\cap \bar{\rho }$から${\alpha }_L$を除き、${\alpha }_S$と${\alpha }_M$をくっつければ$\mathrm{△}AED$になるため、$\mathrm{△}AED=25$が判明します。
　$\overline{{\omega }_S}\cap \overline{{\omega }_M}\cap {\omega }_L\cap \bar{\rho }$の面積（求める面積）を$s$とおき、$BE,{\stackrel{⌢}{BE}}_S$で囲まれる領域、$EC,{\stackrel{⌢}{EC}}_M$で囲まれる領域、$CB,{\stackrel{⌢}{CB}}_L$で囲まれる領域をそれぞれ${\beta }_S,{\beta }_M,{\beta }_L$とします。前段落の議論と同様にして${\beta }_S+{\beta }_M={\beta }_L$が判り、$\mathrm{△}CEB=s-1$が従いますね（行間が広くないか？）。$\mathrm{△}AED\sim \mathrm{△}CEB$に気づくと、その相似比は明らかに$1:\sqrt{3}$ですから、$\mathrm{△}CEB=75$、ひいては$s=76$が確定します。一目瞭然ですが、 ヒポクラテスの三日月 を応用して作問しました。

問題Ｅ

　半直線$CD$上の無限遠点（限りなく遠くにある点）を$P$とします。このとき、$BE//CD$より、2直線$BE,BP$は重なるとみなせるのです。よって、3直線$BD,CD,EB$は$\mathrm{△}PBD$の3辺をそれぞれ含むと言えます。
　いま、$\mathrm{△}PBD$で フランク・モーリーの定理 を用いてみましょう。$\mathrm{\angle }PDB={144}^{\circ }$なので、この角は${48}^{\circ }$ずつ分ければよいです。また、$\mathrm{\angle }PBD={36}^{\circ }$なので、この角は${12}^{\circ }$ずつ分ければよいです。$\mathrm{\angle }BPD$はどうしましょうか。実は、三角形のある頂点を無限遠に飛ばしたとき、その頂点から引いた内角の三等分線は、その頂点が属する平行な2辺をちょうど三等分する平行線になるのです（すごく細長い三角形を考えるとイメージが掴めるかも）。
　今回の場合、点$P$は辺$BP,DP$に属するため、直線$KN,LM$がまさにその三等分線なのです。ということで、モーリーの三角形$MST$を拵えることができます（ただし、$S$は$\mathrm{\angle }PBS={12}^{\circ }$をみたす線分$KN$上の点、$T$は$\mathrm{\angle }TBD={12}^{\circ },$$\mathrm{\angle }TDB={48}^{\circ }$をみたす$\mathrm{\angle }BDP$内の点）。
　ここまで思いつけたらあと一息です。$BS$と$DM$の交点を$U$とすれば、$\mathrm{△}UBD$の内心が$T$に一致し、$\mathrm{\angle }MUT$$=\mathrm{\angle }SUT$$={30}^{\circ }$、すなわち$\mathrm{△}MSU$も正三角形になります（ヒント：中心$M$、半径$MS$の円で$\stackrel{⌢}{ST}$に対する円周角を考えます）。よって$BS//TM$であり、また$\mathrm{\angle }CBS={60}^{\circ }$から$BC//SM$も従います。ゆえに四角形$KLMS$は平行四辺形と判り、必然的に四角形$BKMS$も平行四辺形です（1組の対辺が平行かつ等長）。このことは$BS//KM$を導き、直ちに$\mathrm{\angle }EGK={96}^{\circ }$と結論づけられます。三角関数の計算を頑張っても正答できますが、こう解いたほうが明らかにスタイリッシュですね。

次回予告

　ここまでで5問の解説が済みました。あなたのお気に入りの問題はどれですか？　えっ、ない？　そう仰らずに……。
　 前回のＡ～Ｅ と比べると、今回は結構大人しいですね。あとは問題Ｆを残すのみですが、はたしてこちらは大人しく解かれてくれるでしょうか。

　おや、今回はレムニスケートや三角形の五心で威圧する感じではなさそうです。とはいえ、よく分からない等辺や角度の情報が多く、GeoGebra等で作図してみても使えそうな性質がほぼ出てきません。毎度お馴染み「どうやってこの図形を見つけてきたんだ……？」タイムが訪れますね。お答えしましょう。根性です。$O\left(n^9\right)$の超低品質プログラムを組み、ノートパソコン様に十数時間頑張ってもらいました。本当にありがとうマイラップトップ。
　次回、この問題Ｆを解き、さらに若干の一般化を与えます。昨年ほどの暴走は控えるつもりですが、何卒ご期待くださいませ。

　ご感想・ご指摘・巧妙な解法・コンテスト広報活動のコツなどがございましたら、是非ともコメントに残していってください。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。