なんとか第4回までこぎつけました。
第1回
に書いた計画とはだいぶずれてきましたが頑張って続けます。
第2回
で群論を
第3回
で環論について勉強したので,今回はやっと中国式剰余定理の主張を述べる。
可換環$R$のイデアル$I_1$,$I_2$,$\cdots$,$I_r$について,$i\neq j$のとき,$I_i+I_j =R$が成立しているとする。このとき,$I=\cap I_i$とおけば,同型$R/I \simeq R/I_1\times R/I_2 \times \cdots \times R/I_r$が成立する。
本来であれば,この定理の証明をするべきところではあるが,ここはいったん別のことをやってみようと思う。この定理を少しだけ書き換えると次のようになる。
可換環$R$のイデアル$I_1$,$I_2$について,$I_1+I_2 =R$が成立しているとする。このとき,$I=I_1\cap I_2$とおけば,同型$R/I \simeq R/I_1\times R/I_2$が成立する。
さらに,環$R$として$R=\mathbb Z$。その2つのイデアルとして,$2\mathbb Z$,$3\mathbb Z$を選ぶ。すると$2\mathbb Z + 3\mathbb Z = \mathbb Z$,$2\mathbb Z \cap 3\mathbb Z = 6\mathbb Z$であるから,定理2は次のようになる。
整数環$\mathbb Z$のイデアル$2\mathbb Z$,$3\mathbb Z$について,同型$\mathbb Z/6\mathbb Z \simeq \mathbb Z/2\mathbb Z\times \mathbb Z/3\mathbb Z $が成立する(これを$\mathbb Z_6 \simeq \mathbb Z_2 \times \mathbb Z_3$とかいていた)。
ここで, 第1回 の記事でかいた高校数学で出てくる中国式剰余定理を再掲する。
$m,n$を互いに素な整数,$a,b$を任意の整数とする。このとき,次を満たす整数$x$が$0 \leq x < mn$にただ1つ存在する。
$ \begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x \equiv a \pmod m \\
x \equiv b \pmod n
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$
この定理4において$m=2$,$n=3$としてみると次のようになる。
$a,b$を任意の整数とする。このとき,次を満たす整数$x$が$0 \leq x < 6$にただ1つ存在する。
$ \begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x \equiv a \pmod 2 \\
x \equiv b \pmod 3
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$
定理3と見比べてみてどうだろうか。定理3の主張は$\mathbb Z_6\simeq \mathbb Z_2 \times \mathbb Z_3$である。簡単に言えば$\mathbb Z_6$の任意の元$x$に対し,$\mathbb Z_2 \times \mathbb Z_3$の元がただ1つに決まると言っている(本当は元の対応よりもっと強い主張だが,,,)。
なんとなく中国式剰余定理の気持ちがわかっただろうか。定理の証明はやっていないので,それは今後の追記していきたい。定理の証明と高校数学における連立合同式の解法にも何らかの対応付けが見つかることを期待したい。
堀田良之:代数入門 -群と加群-, 裳華房
酒井文雄:環と体の理論,共立出版