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円分体と実円分体のデデキントゼータ関数

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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{d}[0]{\delta} \newcommand{dis}[0]{\displaystyle} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{ep}[0]{\epsilon} \newcommand{eq}[0]{\equiv} \newcommand{even}[0]{\mathrm{even}} \newcommand{farc}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{G}[0]{\widehat{G}} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{Gal}[0]{\mathrm{Gal}} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{Im}[0]{\mathrm{Im}} \newcommand{K}[0]{{K^+}} \newcommand{Ker}[0]{\mathrm{Ker}} \newcommand{lra}[0]{\leftrightarrow} \newcommand{ls}[2]{\Big(\frac{#1}{#2}\Big)} \newcommand{m}[1]{\pmod{#1}} \newcommand{mf}[1]{\mathfrak{#1}} \newcommand{mr}[1]{\mathrm{#1}} \newcommand{N}[0]{\mathrm{N}_{k/\mathbb{Q}}} \newcommand{ndiv}[0]{\nmid} \newcommand{O}[0]{\mathcal{O}} \newcommand{o}[0]{\omega} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{ord}[0]{\mathrm{ord}} \newcommand{p}[0]{\mathfrak{p}} \newcommand{prime}[0]{\mathrm{prime}} \newcommand{q}[0]{\mathfrak{q}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{r}[0]{\rho} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Re}[0]{\mathrm{Re}} \newcommand{resp}[0]{\mathrm{resp}} \newcommand{s}[0]{\sigma} \newcommand{t}[0]{\tau} \newcommand{th}[0]{\theta} \newcommand{ti}[0]{{}^\times} \newcommand{Tr}[0]{\mathrm{Tr}_{k/\mathbb{Q}}} \newcommand{ul}[1]{\underline{#1}} \newcommand{wh}[1]{\widehat{#1}} \newcommand{x}[0]{\chi} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} \newcommand{ZZ}[1]{\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z}} \newcommand{ZZt}[1]{(\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z})^\times} $$

はじめに

 この記事では円分体と実円分体におけるDedekind$\zeta$関数の$L$関数を用いた分解公式について解説していきます。
 まずデデキントゼータ関数の定義を確認しておきます。

デデキントゼータ関数

 代数体$K$に対してデデキントゼータ関数$\z_K(s)$
$$\z_K(s)=\sum_{\mf{a}}\frac{1}{N(\mf{a})}$$
と定める。ただし$\mf{a}$$K$の全てのイデアルを渡る。
 これは$\Re(s)>1$で絶対一様収束し、同じく$\Re(s)>1$
$$\z_K(s)=\prod_{\p}\frac{1}{1-N(\p)^{-s}}$$
という表示を持つ。ただし$\p$$K$の全ての素イデアルを渡る。

 デデキントゼータ関数は$K$が円分体$\Q(\z)$と実円分体$\Q(\z+\z^{-1})$のとき特に以下の表示を持ちます。ただし$\z$$1$の原始$n$乗根とします。

 $L(s,\x)$ディリクレの$L$関数とする。このとき
$$\z_{\Q(\z)}(s)=\prod_{\x:\mathrm{prime}}L(s,\x),\quad\z_{\Q(\z+\z^{-1})}(s)=\prod_{\x:\rm{even}}L(s,\x)$$
が成り立つ。ただし$\x:\rm{prime}$は法$n$に付随する原始的ディリクレ指標全体を渡り、$\x:\rm{even}$はそのようなもののうち偶指標であるもの全体を渡る。

 ここでいう法$n$に付随する原始ディリクレ指標とは導手が$n$の約数であるような原始指標のことを指すものとします。

証明

 いま$\Re(s)>1$
$$L(s,\x)=\prod_{p}\frac{1}{1-\x(p)p^{-s}}$$
とオイラー積表示できるので各素数$p$に対し
$$\prod_{\p|p}\frac{1}{1-N(\p)^{-s}}=\prod_{\x}\frac{1}{1-\x(p)p^{-s}}$$
となることを示せばよい。
 以下簡単のため$K=\Q(\z),\;\K=\Q(\z+\z^{-1})$とおく。
 具体的には以下のの値になることを示す。

 素数$p$に対して$n=p^en'\;(e\geq0,p\nmid n')$とおき、$p$$\ZZt{n'}$における位数を$f$とする。
$$f'=\left\{\begin{array}{ll} f/2&f\ \mbox{が偶数のとき}\\ f&f\ \mbox{が奇数のとき} \end{array}\right.$$
とおくと、$K$において
$$\prod_{\p|p}\frac{1}{1-N(\p)^{-s}}=\prod_{\x:\prime}\frac{1}{1-\x(p)p^{-s}}=(1-p^{-fs})^{-\varphi(n')/f}$$
が、また$\K$において
$$\prod_{\p|p}\frac{1}{1-N(\p)^{-s}}=\prod_{\x:\even}\frac{1}{1-\x(p)p^{-s}}=(1-p^{-f's})^{-\varphi(n')/2f'}$$
が成り立つ。

$\prod_{\p|p}(1-N(\p)^{-s})^{-1}$の計算

  この記事 より

 $(p)$$K,\K$においてそれぞれ
\begin{align} (p)&=\prod^{\varphi(n')/f}_{i=1}\p_i^{\varphi(p^e)}&&(N(\p_i)=p^{f})\\ (p)&=\prod^{\varphi(n')/2f'}_{i=1}\p_i^{\varphi(p^e)}&&(N(\p_i)=p^{f'}) \end{align}
と分解される。

が成り立っていたことから$K,\K$においてそれぞれ
\begin{align} \prod_{\p|p}\frac{1}{1-N(\p)^{-s}} &=\prod^{\varphi(n')/f}_{i=1}\frac1{1-p^{-fs}} =(1-p^{-fs})^{-\varphi(n')/f}\\ \prod_{\p|p}\frac{1}{1-N(\p)^{-s}} &=\prod^{\varphi(n')/2f'}_{i=1}\frac1{1-p^{-f's}} =(1-p^{-f's})^{-\varphi(n')/2f'} \end{align}
と計算できる。

$\prod_{\x}(1-\x(p)p^{-s})^{-1}$の計算

  この記事 の定理3 系,10 系から

 $p\nmid n$ならば
\begin{align} \prod_{\x\!\!\!\mod{\!\!n}}(1-\x(p)x)&=(1-x^{f})^{\varphi(n)/f}\\ \prod_{\substack{\x\!\!\!\mod{\!\!n}\\\x:\even}\,}(1-\x(p)x)&=(1-x^{f'})^{\varphi(n)/2f'} \end{align}
が成り立つ。ただし$\x\;(\resp.\x:\even)$は法$n$のディリクレ指標($\resp.$偶指標)全体を渡る。

 であったのでこれを$\x:\prime$の場合に拡張すればよい。
 いま法$n$に付随する導手$m$の原始的ディリクレ指標$\x$に対し、$p\mid m$であれば$\x(p)=0$であり、また$p\nmid m$なる$\x$と法$n'$のディリクレ指標$\x'$との対応$\x'=\x_0\x$($\x_0$は法$n'$の自明な指標)は一対一であるので
\begin{align} \prod_{\x:\prime}(1-\x(p)x) &=\prod_{\x\!\!\!\mod{\!\!n'}}(1-\x(p)x) =(1-x^{f})^{\varphi(n')/f}\\ \prod_{\x:\even}(1-\x(p)x) &=\prod_{\substack{\x\!\!\!\mod{\!\!n'}\\\x:\even}\,}(1-\x(p)x) =(1-x^{f})^{\varphi(n')/2f'} \end{align}
を得る。
 以上より公式1および定理1を得る。

余談

 一般のアーベル拡大$K/\Q$のデデキントゼータ関数については以下のように$L$関数の積に分解できるらしい。

 まずクロネッカー・ウェーバーの定理から$K\subset\Q(\z_n)$なる$n$があってそのような$n$$$G_n=\Gal(\Q(\z_n)/\Q),\quad G^K_n=\Gal(\Q(\z_n)/K),\quad G_K=\Gal(K/\Q)$$
とおく。また
$$G_K=G_n/G_n^K$$
とみなして この記事 の定理3により$G_K$の指標を$G_n=(\Z/n\Z)^\times$の指標に拡張し、またそれを付随する原始的ディリクレ指標に拡張したもの全体を$X$とおく。このとき
$$\z_K(s)=\prod_{\x\in X}L(s,\x)$$
が成り立つ。

 なお$G^K_n$$\ZZt{n}$の部分群とみなしたとき
$$X=\{\x:\mbox{法}\ n\ \mbox{に付随する原始的ディリクレ指標}\mid\forall x\in G^K_n,\x(x)=1\}$$
と表せることに注意する。
 例えば今回の場合$K=\Q(\z+\z^{-1})$のとき
$$G_K=\{1:\mbox{恒等写像},\ \ol\cdot:\mbox{複素共役写像}\}$$
と位数$2$の巡回群となるので、$G_K=\{1+n\Z,-1+n\Z\}$とみなせ、したがって
$$X=\{\x:\prime\mid\x(-1)=1\}=\{\x:\even\}$$
となり
$$\z_{\Q(\z+\z^{-1})}(s)=\prod_{\x:\even}L(s,\x)$$
が成り立つ。といった具合である。

 詳しくは以下を参照されたい。
・出典: CYCLOTOMIC FIELDS - CARL ERICKSON (Proposition 23)

投稿日:20201215
更新日:116

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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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