1

円分体と実円分体のデデキントゼータ関数

391
0
$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{d}[0]{\delta} \newcommand{dis}[0]{\displaystyle} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{ep}[0]{\epsilon} \newcommand{eq}[0]{\equiv} \newcommand{even}[0]{\mathrm{even}} \newcommand{farc}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{G}[0]{\widehat{G}} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{Gal}[0]{\mathrm{Gal}} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{Im}[0]{\mathrm{Im}} \newcommand{K}[0]{{K^+}} \newcommand{Ker}[0]{\mathrm{Ker}} \newcommand{l}[0]{\left} \newcommand{lra}[0]{\leftrightarrow} \newcommand{ls}[2]{\Big(\frac{#1}{#2}\Big)} \newcommand{m}[1]{\pmod{#1}} \newcommand{mf}[1]{\mathfrak{#1}} \newcommand{mr}[1]{\mathrm{#1}} \newcommand{N}[0]{\mathrm{N}_{k/\mathbb{Q}}} \newcommand{ndiv}[0]{\nmid} \newcommand{O}[0]{\mathcal{O}} \newcommand{o}[0]{\omega} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{ord}[0]{\mathrm{ord}} \newcommand{p}[0]{\mathfrak{p}} \newcommand{prime}[0]{\mathrm{prime}} \newcommand{q}[0]{\mathfrak{q}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{r}[0]{\rho} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{r}[0]{\right} \newcommand{Re}[0]{\mathrm{Re}} \newcommand{resp}[0]{\mathrm{resp}} \newcommand{s}[0]{\sigma} \newcommand{t}[0]{\tau} \newcommand{th}[0]{\theta} \newcommand{ti}[0]{{}^\times} \newcommand{Tr}[0]{\mathrm{Tr}_{k/\mathbb{Q}}} \newcommand{ul}[1]{\underline{#1}} \newcommand{vp}[0]{\varphi} \newcommand{wh}[1]{\widehat{#1}} \newcommand{x}[0]{\chi} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} \newcommand{ZZ}[1]{\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z}} \newcommand{ZZt}[1]{(\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z})^\times} $$

はじめに

 この記事では円分体と実円分体におけるDedekind$\zeta$関数の$L$関数を用いた分解公式について解説していきます。
 まずデデキントゼータ関数とは次のように定義される関数のことを言うのでした。

デデキントゼータ関数

 代数体$K$に対してデデキントゼータ関数$\z_K(s)$
$$\z_K(s)=\sum_{\mf{a}}\frac1{N(\mf{a})}$$
と定める。ただし$\mf{a}$$K$$0$でないイデアル全体を渡る。
 これは$\Re(s)>1$で絶対一様収束し、同じく$\Re(s)>1$
$$\z_K(s)=\prod_{\p}\frac1{1-N(\p)^{-s}}$$
という表示を持つ。ただし$\p$$K$の素イデアル全体を渡る。

 デデキントゼータ関数は$K$が円分体$\Q(\z)$と実円分体$\Q(\z+\z^{-1})$のとき特に以下の表示を持ちます。ただし$\z$$1$の原始$n$乗根とします。

 $L(s,\x)$ディリクレの$L$関数とする。このとき
$$\z_{\Q(\z)}(s)=\prod_{\x:\prime}L(s,\x),\quad\z_{\Q(\z+\z^{-1})}(s)=\prod_{\x:\even}L(s,\x)$$
が成り立つ。ただし$\x:\prime$は法$n$に付随する原始的ディリクレ指標全体を渡り、$\x:\even$はそのうちの偶指標全体を渡る。

 ここでいう法$n$に付随する原始ディリクレ指標とは導手が$n$の約数であるような原始指標のことを指すものとします。

円分体の場合

 いま$\Re(s)>1$
$$L(s,\x)=\prod_{p}\frac1{1-\x(p)p^{-s}}$$
とオイラー積表示できるので各素数$p$に対し
$$\prod_{\p|p}\frac1{1-N(\p)^{-s}}=\prod_{\x}\frac1{1-\x(p)p^{-s}}$$
となることを示せばよい。
 実際$n=p^en'\ (p\nmid n')$と分解し、$p$$\ZZt{n'}$における位数を$f$とおくとこの両辺は以下のように求められる。

$$\prod_{\p|p}\frac1{1-N(\p)^{-s}}=(1-p^{-fs})^{-\varphi(n')/f}$$
が成り立つ。

  この記事 の結果から$p$$\Q(\z)$において
$$p=\prod^{\vp(n')/f}_{i=1}\p_i^{\vp(p^e)}\qquad(N(\p_i)=p^f)$$
と素イデアル分解されるので
$$\prod_{\p|p}\frac1{1-N(\p)^{-s}} =\prod^{\varphi(n')/f}_{i=1}\frac1{1-(p^f)^{-s}} =(1-p^{-fs})^{-\varphi(n')/f}$$
を得る。

$$\prod_{\x:\prime}\frac1{1-\x(p)p^{-s}}=(1-p^{-fs})^{-\varphi(n')/f}$$
が成り立つ。

 簡単のため$x=p^{-s}$とおくと、 この記事 の定理3系から$p\nmid n$において
$$\prod_{\x\ \bmod\ n}(1-\x(p)x)=(1-x^{f})^{\varphi(n)/f}$$
(ただし$\x$は法$n$のディリクレ指標全体を渡る)
が成り立つのでこれを$\x:\prime$の場合に拡張すればよい。
 いま法$n$に付随する導手$m$の原始的ディリクレ指標$\x$に対し、$p\mid m$つまり$\x(p)=0$であるか、$p\nmid m$つまりある法$n'$ディリクレ指標$\x'$が一対一に存在し$\x'=\x_0\x$($\x_0$は法$n'$の自明な指標)が成り立つので
$$\prod_{\x:\prime}(1-\x(p)x) =\prod_{\x\ \bmod\ n'}(1-\x(p)x) =(1-x^{f})^{\varphi(n')/f}$$
を得る。

実円分体の場合

 上と同様に各素数$p$に対し
$$\prod_{\p|p}\frac1{1-N(\p)^{-s}}=\prod_{\x}\frac1{1-\x(p)p^{-s}}$$
が成り立つことを確かめればよい。

$$\prod_{\p|p}\frac1{1-N(\p)^{-s}}=\l\{\begin{array}{ll} (1-p^{-s})&(n'=1)\\ (1-p^{-fs})^{\varphi(n')/2f} &(2\nmid f\quad\mbox{または}\quad a^{f/2}\not\equiv-1\pmod{n'})\\ (1-p^{-\frac f2s})^{\varphi(n')/f} &(2\mid f\quad\mbox{かつ}\phantom{は}\quad a^{f/2}\equiv-1\pmod{n'}) \end{array}\r.$$
が成り立つ。

  この記事 の結果からわかる。

$$\prod_{\x:\even}\frac1{1-\x(p)p^{-s}}=\l\{\begin{array}{ll} (1-p^{-s})&(n'=1)\\ (1-p^{-fs})^{\varphi(n')/2f} &(2\nmid f\quad\mbox{または}\quad a^{f/2}\not\equiv-1\pmod{n'})\\ (1-p^{-\frac f2s})^{\varphi(n')/f} &(2\mid f\quad\mbox{かつ}\phantom{は}\quad a^{f/2}\equiv-1\pmod{n'}) \end{array}\r.$$
が成り立つ。

 上と同様に$\x(p)\neq0$なる$\x:\prime$$\x'\bmod{n'}$が一対一に対応することと この記事 の定理10系からわかる。

余談

 一般のアーベル拡大$K/\Q$のデデキントゼータ関数については以下のように$L$関数の積に分解できるらしい。

 まずクロネッカー・ウェーバーの定理より$K\subseteq\Q(\z_n)$なる$n$が存在し、そのような$n$に対し$$G_n=\Gal(\Q(\z_n)/\Q),\quad G^K_n=\Gal(\Q(\z_n)/K),\quad G_K=\Gal(K/\Q)$$
とおく。また
$$G_K=G_n/G_n^K$$
とみなして この記事 の定理3により$G_K$の指標を$G_n=(\Z/n\Z)^\times$の指標に拡張し、またそれを付随する原始的ディリクレ指標に拡張したもの全体を$X$とおく。このとき
$$\z_K(s)=\prod_{\x\in X}L(s,\x)$$
が成り立つ。

 なお$G^K_n$$\ZZt{n}$の部分群とみなしたとき
$$X=\{\x:\mbox{法}\ n\ \mbox{に付随する原始的ディリクレ指標}\mid\forall x\in G^K_n,\x(x)=1\}$$
と表せることに注意する。
 例えば今回の場合$K=\Q(\z+\z^{-1})$のとき
$$G_K=\{1:\mbox{恒等写像},\ \ol\cdot:\mbox{複素共役写像}\}$$
と位数$2$の巡回群となるので、$G_K=\{1+n\Z,-1+n\Z\}$とみなせ、したがって
$$X=\{\x:\prime\mid\x(-1)=1\}=\{\x:\even\}$$
となり
$$\z_{\Q(\z+\z^{-1})}(s)=\prod_{\x:\even}L(s,\x)$$
が成り立つ。といった具合である。

 詳しくは以下を参照されたい。
・出典: CYCLOTOMIC FIELDS - CARL ERICKSON (Proposition 23)

投稿日:20201215
更新日:629
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

子葉
子葉
994
231102
主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中