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k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項についての予想(その3・確率論からのアプローチ)

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はじめに

この記事は
k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項についての予想
k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項についての予想(その2・厳密解との関係)
の続きの記事になります。まだ読んでいない方はそちらを先に読んでみてください。

予想の内容を再掲します。

k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項についての予想

    Sk(n)=Akn+1Ck1k1

ただし、Ak,Ckは次の定数である。
    fk(x)=xkxk1xk2x2x1
として、

    Ak fk(x)=0 の正の実数解

    Ck=(Ak1)fk(Ak)

今回は、 子葉 さんの
k-ナッチ数列の四捨五入表示の確率論的導出
の記事を参考にして予想の解決を試みます。
なお、この記事では証明は完成していませんが、「これを証明できれば予想を証明できる」という命題を最後に提示します。

また、これまでの記事と同じように次のように定義します。

ak(n)k-ナッチ数列の第 n 項として、
Sk(n):=i=0nak(i)

xは四捨五入を表す関数です。すなわち
    x=x+12

以下の記事では特に断りがない限り k は 2以上の整数、n は0以上の整数とします。

確率論的手法の検討

  1. 誤差を表す式を考えます。
  2. 期待値の式が誤差の式と同じになるような確率論の問題を考えます。
  3. 一般項が同じになるようにパラメータを決定します。
  4. 期待値のとりうる範囲から誤差のとりうる範囲がわかるので、それが12未満であることを示します。

予想が正しければこの流れで証明できそうです。

1. 誤差を表す式を考えます。

予想の式の誤差を表す式 Rk(n) を次のように定義します。
Rk(n):=Sk(n)(Akn+1Ck1k1)

前回の記事の結果から、次のように表現できることがわかります。

β1,β2,,βktの方程式 tktk1t2t1=0k 個の解とし、そのうち正の実数解を βk とします。

    Rk(n)=i=1k+1βin+1j=1ijk+1(βiβj)i=kk+1βin+1j=1ijk+1(βiβj)=i=1k1βin+1j=1ijk+1(βiβj)

β1,β2,,βk1 の絶対値は1未満であることがわかっていますので、n が大きいときに誤差が0に近づくことはこの式だけでもわかりますね。
参考: フィボナッチ数列を拡張したk-ナッチ数列の一般項についての予想(その2)

2.期待値の式が誤差の式と同じになるような確率論の問題を考えます。

これは 子葉 さんの
k-ナッチ数列の四捨五入表示の確率論的導出
の記事に出ているランダムウォークの問題がそのまま使えます。要点を引用します。

最初に x 軸上の非負整数点 x=n に人が立っています。この人は 12 の確率で x 軸正の方向に 1 進み、 12 の確率で負の方向に k 進むという動作を区間 [0,k1] 内に至るまで無限に繰り返します。そしてその人が止まった点 x=j(0jk1) に応じてその人は得点 e(j) を得るものとします。
 このときその人が得る得点の期待値 en1,β1,β2,βk1 の線形結合で次のように表すことができることがわかっています(βi の定義は上記と同じです。)。

en=c0+c1β1n+c2β2n++ck1βk1n

3. 一般項が同じになるようにパラメータを決定します。

e0=Rk(0),e1=Rk(1),,ek1=Rk(k1)
となるように ci を決めます。具体的には、k 元連立方程式を解くことでci を求めることができることは容易にわかります。

そうすると、
c0=0,
ci=βij=1ijk+1(βiβj)(1ik1)
となり、一般の n についても Rk(n)=en となることがわかります。

4. 期待値のとりうる範囲から誤差のとりうる範囲がわかるので、それが12未満であることを示します。

期待値の性質から、ene0,,ek1 の最小値以上、最大値以下となります。したがって、示すべきことは次の通りです。

示すべきこと

0nk1 のとき
|Rk(n)|<12

示すべきこと

だいぶ示すべきことの範囲を狭くすることができました。あとは
0nk1 のとき
|Rk(n)|<12
となることを証明できれば、予想が正しいことを証明できます!

引き続き何か情報等ありましたらコメント欄等へご連絡お願いします!

投稿日:202119
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  1. はじめに
  2. 確率論的手法の検討
  3. 1. 誤差を表す式を考えます。
  4. 2.期待値の式が誤差の式と同じになるような確率論の問題を考えます。
  5. 3. 一般項が同じになるようにパラメータを決定します。
  6. 4. 期待値のとりうる範囲から誤差のとりうる範囲がわかるので、それが$\frac{1}{2}$未満であることを示します。
  7. 示すべきこと