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k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項についての予想(その4・証明の完成と別表現)

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はじめに

この記事は
k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項についての予想
k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項についての予想(その2・厳密解との関係)
k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項についての予想(その3・確率論からのアプローチ)
の続きの記事になります。まだ読んでいない方はそちらを先に読んでみてください。

予想の内容を再掲します。

k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項についての予想

    ${\displaystyle \begin{align} S_k(n) &= \left\lfloor \frac{A_k^{n+1}}{C_k} -\frac{1}{k-1} \right\rceil \end{align} }$

ただし、$A_k,C_k$は次の定数である。
    $f_k(x)=x^k-x^{k-1}-x^{k-2}-\cdots-x^2-x-1$
として、

    ${\displaystyle A_k\cdots\cdots f_k(x)=0\text{ の正の実数解} }$

    ${\displaystyle \begin{align} C_k &=(A_k-1)f_k'(A_k) \end{align} }$

次のようにいくつかの関数を定義します。

$a_k(n)$$k$-ナッチ数列の第 $n$ 項として、
${\displaystyle S_k(n):=\sum_{i=0}^{n} a_k(i)}$

式を見やすくするため、次の関数を定義します。
${\displaystyle Q_k(n):=\frac{A_k^{n+1}}{C_k} -\frac{1}{k-1}}$

誤差の数列 $\{R_k(n)\}$ を次のように定義します。
$R_k(n):=S_k(n)-Q_k(n)$

$\left\lfloor x\right\rceil$は四捨五入を表す関数です。すなわち
    ${\displaystyle \left\lfloor x\right\rceil=\left\lfloor x+\frac{1}{2}\right\rfloor}$

今回は、前回残った「示すべきこと」の部分を示して、証明を完成させます。

示すべきこと

$0\le n \le k-1$ のとき
$\left|R_k(n)\right|<\frac{1}{2}$

以下の記事では特に断りがない限り $k$ は 2以上の整数、$n$ は0以上の整数とします。

証明

※ 些末な部分は省略していますので適宜補完してください。

証明すべきことの整理

$S_k(0)=S_k(1)=\cdots=S_k(k-2)=0,$
$S_k(k-1)=1$
ですから、次のことを証明すればよいことになります。

${\displaystyle \begin{align} -\frac{1}{2}\le Q_k(n) <\frac{1}{2} &\qquad(0\le n\le k-2)\\ \frac{1}{2}\le Q_k(n) <\frac{3}{2} &\qquad(n= k-1) \end{align} }$

評価すべき式は単調増加であることを考慮すれば、次の命題3を証明すれば命題2も証明できますので、今から命題3を順に証明していきます。

これらを証明すれば命題2が正しいことも証明できる

${\displaystyle \begin{align} (1)&\qquad -\frac{1}{2}< Q_k(0)\\\\ (2)&\qquad Q_k(k-2)<\frac{1}{2}\\\\ (3)&\qquad \frac{1}{2}< Q_k(k-1)\\\\ (4)&\qquad Q_k(k-1)<1 \end{align} }$

(1)$-\frac{1}{2}< Q_k(0)$の証明

(i) $k=2$ のとき
${\displaystyle Q_2(0)=\frac{\varphi^2}{\sqrt{5}}-1 =0.17\cdots >-\frac{1}{2}}$

(ii) $k\ge 3$ のとき
${\displaystyle \frac{A_k}{C_k}>0}$ であり、${\displaystyle \frac{1}{k-1}<\frac{1}{2}}$ であるから、

${\displaystyle Q_k(0)=\frac{A_k}{C_k} -\frac{1}{k-1}>-\frac{1}{2}}$

したがってすべての $k$ について $-\frac{1}{2}\le Q_k(0)$ が成り立つ。

(2)$Q_k(k-2)<\frac{1}{2}$の証明

(i)$k=2$ のとき
$Q_2(0)=0.17\cdots<\frac{1}{2}$
(i)$k=3$ のとき
$Q_3(1)=0.23\cdots<\frac{1}{2}$
(i)$k\ge4$ のとき

 ${\displaystyle \begin{align} C_k &=(A_k-1)f_k'(A_k)\\ &=(A_k-1)\cdot\frac{(k+1)A_k^k-2kA_k^{k-1}}{A_k-1}\\ &=((k+1)A_k-2k)A_k^{k-1} \end{align} }$

${\displaystyle \begin{align} Q_k(k-2)&=\frac{A_k^{k-1}}{C_k}-\frac{1}{k-1}\\ &=\frac{1}{((k+1)A_k-2k)}-\frac{1}{k-1}\\ &=\frac{(k-1)-((k+1)A_k-2k)}{((k+1)A_k-2k)(k-1)}\\ \end{align} }$

ここで
$(k+1)A_k-2k>0$
であることはわかっているから、
(参考: k-ナッチ数列の四捨五入表示についての考察(ほぼ証明) )

${((k+1)A_k-2k)(k-1)}>{2((k-1)-((k+1)A_k-2k))}$
を示せばよい。
左辺-右辺は

${\displaystyle \begin{align} &((k+1)A_k-2k)(k-1)-2((k-1)-((k+1)A_k-2k))\\ &= A_k (k + 1)^2-2 (k^2 + 2 k - 1) \\ &=(k+1)^2\left( A_k-\left(2-\frac{4}{(k+1)^2}\right) \right) \end{align}}$
となるから、結局

${\displaystyle A_k>2-\frac{4}{(k+1)^2}}$
を示せばよい。
$k\ge4$ のときは
$2(1-2^{-k})>2-\frac{4}{(k+1)^2}$ であり、
$A_k>2(1-2^{-k})$ とわかっているから、
(参考: k-ナッチ数列の四捨五入表示についての考察(ほぼ証明) )

${\displaystyle A_k>2(1-2^{-k})>2-\frac{4}{(k+1)^2}}$
となり、これが示すべきことであった。

(3)$\frac{1}{2}< Q_k(k-1)$の証明

(i)$k=2$ のとき
$Q_2(1)=0.89\cdots>\frac{1}{2}$

(ii)$k\ge3$ のとき
${\displaystyle \begin{align} Q_k(k-1)&=\frac{A_k}{((k+1)A_k-2k)}-\frac{1}{k-1}\\ &=\frac{2(k-A_k)}{((k+1)A_k-2k)(k-1)}\\ \end{align} }$

したがって
$((k+1)A_k-2k)(k-1)<4(k-A_k)$
を示せばよい。
左辺-右辺は
${\displaystyle \begin{align} &((k+1)A_k-2k)(k-1)-4(k-A_k)\\ &=A_k (k^2 + 3)-2 k (k + 1)\\ &= (k^2 + 3)\left( A_k-\left(2+\frac{2k-6}{k^2+3} \right) \right)\\ &<0 \end{align} }$
となり、これが示すべきことであった。

(4)$Q_k(k-1)<1$の証明

(i)$k\le4$ のとき
$Q_2(1)=0.89\cdots<1$
$Q_3(2)=0.85\cdots<1$
$Q_4(3)=0.84\cdots<1$

(ii)$k\ge5$ のとき
${\displaystyle \begin{align} Q_k(k-1) &=\frac{2(k-A_k)}{((k+1)A_k-2k)(k-1)}\\ \end{align} }$

であるから
$((k+1)A_k-2k)(k-1)>2(k-A_k)$
を示せばよい。
左辺-右辺は
${\displaystyle \begin{align} &((k+1)A_k-2k)(k-1)-2(k-A_k)\\ &=A_k (k^2 + 1) - 2 k^2\\ &= (k^2 + 1)\left( A_k-\left(2-\frac{2}{k^2 + 1} \right) \right)\\ \end{align} }$
となるから、結局

${\displaystyle A_k>2-\frac{2}{k^2 + 1}}$
を示せばよい。
$k\ge5$ のときは
${\displaystyle 2(1-2^{-k})>2-\frac{2}{k^2 + 1}}$ であり、
$A_k>2(1-2^{-k})$ とわかっているから、
(参考: k-ナッチ数列の四捨五入表示についての考察(ほぼ証明) )

${\displaystyle A_k>2(1-2^{-k})>2-\frac{2}{k^2 + 1}}$
となり、これが示すべきことであった。

証明の完成

以上より、命題3が真であるから、命題2も真であり、さらには命題1も真である。
したがって、確率論からのアプローチにより、予想が正しいことが証明された。

これで予想が正しいことが証明できました!

k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項の四捨五入表現

    ${\displaystyle \begin{align} S_k(n) &= \left\lfloor \frac{A_k^{n+1}}{C_k} -\frac{1}{k-1} \right\rceil \end{align} }$

ただし、$A_k,C_k$は次の定数である。
    $f_k(x)=x^k-x^{k-1}-x^{k-2}-\cdots-x^2-x-1$
として、

    ${\displaystyle A_k\cdots\cdots f_k(x)=0\text{ の正の実数解} }$

    ${\displaystyle \begin{align} C_k &=(A_k-1)f_k'(A_k) \end{align} }$

別表現を作る

途中で気が付いたのですが、
${\displaystyle f_k'(A_k)=\frac{(k+1)A_k^k-2kA_k^{k-1}}{A_k-1}}$
を使うと導関数を使わない表現に書き換えることができます。

k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項の四捨五入表現の別表現

    ${\displaystyle \begin{align} S_k(n) &= \left\lfloor \frac{A_k^{n-k+2}}{(k+1)A_k-2k} -\frac{1}{k-1} \right\rceil \end{align} }$

ただし、$A_k$は ${\displaystyle x^k-x^{k-1}-x^{k-2}-\cdots-x^2-x-1=0\text{ の正の実数解} }$

おわりに

さて、今回証明した式に使い道はあるでしょうか。例えば、「トリボナッチ数列の初項から第$9999999999999999$項までの和」の桁数を簡単に計算できます。

 ${\displaystyle \begin{align} &\log_{10} S_3(9999999999999999)\\ &\fallingdotseq \log_{10} \frac{A_3^{10000000000000000}}{C_3}\\ &=10000000000000000\log_{10} A_3-\log_{10} C_3\\ &=2646494434842508.05\cdots \end{align} }$

$2646494434842509$桁となりました。

計算精度を上げれば、桁数だけでなく上位の数字も計算できます。
これを漸化式から再帰的に計算すると、かなりの時間がかかることでしょう。
このように、「急いでトリボナッチ数列の初項から第$9999999999999999$項までの和を調べなくてはならなくなったとき」などに役立つと思います!
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

投稿日:2021110

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