上の記事で述べたように算術三角形からフィボナッチ数列を作ることができました。多産数列もフィボナッチ数列の拡張ですから、算術三角形から作れそうです。
$(F_k(n))$を子と親に分け、表を書いてみましょう(一般項から計算してもいいんですが、このくらいなら足し算したほうが楽なので$\cdots\cdots$)。
\begin{array}{c|ll|l}
n&子&親&計\\ \hline
1&1&0&1\\
2&0&1&1\\
3&k&1&1+1k\\
4&k&1+k&1+2k\\
5&k+k^2&1+2k&1+3k+1k^2\\
6&k+2k^2&1+3k+k^2&1+4k+3k^2\\
7&k+3k^2+k^3&1+4k+3k^2&1+5k+6k^2+1k^3\\
8&k+4k^2+3k^3&1+5k+6k^2+k^3&1+6k+10k^2+4k^3\\
9&k+5k^2+6k^3+k^4&1+6k+10k^2+4k^3&1+7k+15k^2+10k^3+1k^4\\
10&k+6k^2+10k^3+4k^4&1+7k+15k^2+10k^3+k^4&1+8k+21k^2+20k^3+5k^4
\end{array}
さすがフィボナッチ数列から拡張しただけあって子、親、計の形はそっくりですね。さて、この表を見ると、係数が算術三角形の項になっていることがわかります。これを利用すると以下の定理が導けます。
多産数列$(F_k(n))$は組合せの数$_nC_r$を用いて以下のように表せる。ただし$[x]$は$x$を超えない最大の整数を表す。
$$
F_k(n)=\sum_{r=0}^{[\frac{n-1}{2}]} {}_{n-r-1}C_r\cdot k^r
$$
この式が多産数列の漸化式を満たすことが示せれば証明することができます。大筋は最初に挙げた記事と同じです。
$\sum_{r=0}^{[\frac{n-1}{2}]}\combi{n-r-1}{r}\cdot k^r$が多産数列の漸化式を満たせばよい。
$F_k(1),\ F_k(2)$について
$
\begin{align*}
\sum_{r=0}^{[\frac{1-1}{2}]}\combi{1-r-1}{r}\cdot k^0=\combi{0}{0}\cdot1=1\\
\sum_{r=0}^{[\frac{2-1}{2}]}\combi{2-r-1}{r}\cdot k^0=\combi{1}{0}\cdot1=1\\
\end{align*}$
$n$が偶数のとき$n=2m$なる整数$m$が在って
$
\begin{align*}
\sum_{r=0}^{[\frac{n}{2}]}\combi{n-r}{r}\cdot k^r+k\sum_{r=0}^{[\frac{n-1}{2}]}\combi{n-r-1}{r}\cdot k^r&=\sum_{r=0}^{m}\combi{2m-r}{r}\cdot k^r+k\sum_{r=0}^{m-1}\combi{2m-r-1}{r}\cdot k^r\\
&=\sum_{r=1}^{m}\combi{2m-r}{r}\cdot k^r+\sum_{r=1}^{m}\combi{2m-r}{r-1}\cdot k^{r}+\combi{2m}{0}\\
&=\sum_{r=1}^{m}\left(\combi{2m-r}{r}+\combi{2m-r}{r-1} \right)k^r+\combi{2m+1}{0}\\
&=\sum_{r=0}^{m}\combi{2m-r+1}{r}\cdot k^r=\sum_{r=0}^{[\frac{n+1}{2}]}\combi{n-r+1}{r}\cdot k^r
\end{align*}
$
$n$が奇数のとき$n=2m+1$なる整数$m$が在って
$
\begin{align*}
\sum_{r=0}^{[\frac{n}{2}]}\combi{n-r}{r}\cdot k^r+k\sum_{r=0}^{[\frac{n-1}{2}]}\combi{n-r-1}{r}\cdot k^r
&=\sum_{r=0}^{m}\combi{2m-r+1}{r}\cdot k^r+k\sum_{r=0}^{m}\combi{2m-r}{r}\cdot k^r\\
&=\combi{2m-1}{0}+\sum_{r=1}^{m}\combi{2m-r+1}{r}\cdot k^r+k\sum_{r=0}^{m-1}\combi{2m-r}{r}\cdot k^r+\combi{m}{m}\\
&=\combi{2m}{0}+\sum_{r=1}^{m}\combi{2m-r+1}{r}\cdot k^r+\sum_{r=1}^{m}\combi{2m-r+1}{r-1}\cdot k^r+\combi{m+1}{m+1}\\
&=\sum_{r=0}^{m+1}\combi{2m-r+2}{r}\cdot k^r=\sum_{r=0}^{[\frac{n+1}{2}]}\combi{n-r+1}{r}\cdot k^r
\end{align*}
$
以上より$\sum_{r=0}^{[\frac{n-1}{2}]}\combi{n-r-1}{r}k^r$は多産数列の漸化式を満たす。
さて、今度は多産数列の$k=2$の場合と算術四面体との関わりを見ていきましょう。
まず、算術四面体を以下のように並べ直します。そして、縦の列で足してあげると以下のように$k=2$の場合が現れます。
\begin{array}{ccccccccccccccc} 1&&&&&&&\\ &&1&&&&&\\ &1&1&&&&&\\ &&&&1&&&\\ &&&2&2&&&\\ &&1&2&1&&&\\ &&&&&&1&\\ &&&&&3&3&\\ &&&&3&6&3&\\ &&&1&3&3&1&\\ &&&&&&&4\\ &&&&&&6&12\\ &&&&&4&12&12\\ &&&&1&4&6&4\\ &&&&&&&\\ &&&&&&&10\\ &&&&&&5&20\\ &&&&&1&5&10\\ &&&&&&&\\ &&&&&&&6\\ &&&&&&1&6\\ &&&&&&&\\ &&&&&&&1\\ \hline 1&1&3&5&11&21&43&85 \end{array}
図に描くのが難しいので描きませんが、算術四面体をある平行な平面で切ったときの切り口にある数字を足したものになります。
算術四面体の項は$\frac{n!}{p!q!r!}$と表せますから、上の図は次のように表せます。
$$ F_2(n)=\sum_{i=0}^{[\frac{n-1}{2}]}\sum_{j=0}^{i}\frac{(n-i-1)!}{j!(i-j)!(n-2i-1)!} $$
これが成り立つことを確かめましょう。
\begin{align*} \sum_{i=0}^{[\frac{n-1}{2}]}\sum_{j=0}^{i}\frac{(n-i-1)!}{j!(i-j)!(n-2i-1)!}&=\sum_{i=0}^{[\frac{n-1}{2}]}\sum_{j=0}^{i}\frac{i!}{j!(i-1)!}\frac{(n-i-1)!}{i!(n-2i-1)!}\\ &=\sum_{i=0}^{[\frac{n-1}{2}]}{}_{n-i-1}C_i\sum_{j=0}^{i}{_iC_j}\\ &=\sum_{i=0}^{[\frac{n-1}{2}]}{}_{n-i-1}C_i\cdot2^i \end{align*}
よって定理1より$F_2(n)=\sum_{i=0}^{[\frac{n-1}{2}]}\sum_{j=0}^{i}\frac{(n-i-1)!}{j!(i-j)!(n-2i-1)!}$が成り立ちます。