はじめに
この記事では重解を持たない固有方程式を持つ数列の行列による表現をその各成分まで具体的に求めます。
定義と主張
まず色々と言葉と記号を定めておきます。
数列の固有方程式
定数係数の線形漸化式
を満たす数列に対し固有多項式を
と定め、固有多項式についての方程式をの固有方程式と言う。
上のような数列に対し次正方行列を
(は行列の転置)と定めるとの固有多項式はの固有多項式に等しく、また
とおくとの漸化式はと表現できる。
いま
よりはとの値によって定まるので、以下の計算に焦点を当てていきます。
ここでの固有方程式が重解を持たない、つまりその解がそれぞれ異なるものとすると以下が成り立ちます。
そしてを実際に計算することで以下の公式が得られます。
この系として
apu_yokai
氏が
こちらの記事
で提起していた予想が解決されます。
を多項式とし
とおくと
が成り立つ。
特ににおいて
が成り立つ。
とおくとなので定理3はこの系に埋め込まれることになります。
またおよび
から以下のようにの一般項が求まります。
ちなみに定理3をにおいて適応し成分を比較すると漸化式から
となるのでの一般項を漸化式で表すと以下のようになります。
は定理3で示した定義では扱いづらいですがこうやって漸化式で表すと色々と便利です。特にの取り方によらず初項が同じというのは扱いやすい事実ですね。
定理2の証明
の固有値に対する固有ベクトルを考える。
の第行に第行の倍を足し、また第行の倍を足し、第行の倍を足し、...と掃き出していくことで最終的に成分は
となる。そしてその状態からさらに掃き出していくことでの簡約化
を得る。すなわちに対する固有ベクトルは
と取れるので
とおくと対角化の理論から
ひいては
が成り立つことになる(ちなみにの固有方程式が重解を持つときはが正則にならないので広義固有空間の基底を考える必要が出てくる)。
そしてはについてのヴァンデルモンド行列なので
この記事
で解説したようにその逆行列は
と求まることがわかる。
定理3の証明
定理3系の証明