この記事では
Chudnovskyの公式の証明
において重要となる公式
に通ずる理論:Picard Fuchsの微分方程式について解説していきます。
なおこの記事では
楕円関数の記事
の内容を断りなく使用するので予め目を通しておくことをお勧めします。
まず格子
ここで重要な関数、
格子
と定める。ただし
とした。
ちなみに実際によく目にする(?)
が成り立つ。特に
が成り立つ。
アイゼンシュタイン級数の定義より
とわかる。
このように
格子
とおくと
が成り立つ。
ワイエルシュトラスの
が成り立つので
を得る。
最後に
格子
と定める。
いま等価な格子
から
が成り立つので等価な格子たちに対して
そしてこの格子が
格子
について
が成り立つ。
つまり
つまり
がわかる。したがって
を得る。
格子
と定め、これに対応する
と定める。
ただし
いま
を満たしていたので
とおくと
と表せる。
変数変換
により
とわかる。
だと思えばそう難しくないと思います。
以下
および
とおくと
が成り立つ。
という関係から
特に
が成り立つことに注意する。
いま
を
を得る。
が成り立つ。
まず
を
および
が成り立つことに注意すると
と求まる。
いま積分公式
に注意してこれらを積分することで
つまり
が成り立つので、これを
が成り立つ。
いま補題5,6から
が成り立つので
特に
に注意してこれを整理することで主張を得る。
任意の
が成り立つ。
いま補題7の式を
が成り立つので
つまり
を得る。
Picard Fuchsの微分方程式はRiemannのP方程式というものの一つであり、その
と求まります。したがってこれは超幾何関数によって解くことができ、特に
と変形できることから
はPicard Fuchsの微分方程式
を満たす。
楕円関数の記事
では任意の格子
が(複数)存在することを紹介しました。
いまそのような格子
といった具合になります。
ちなみに
はモジュラー形式のアイゼンシュタイン級数と一致するが
なので
となりこれはラマヌジャンのデルタ
とは
また
と表せる。
さて上では
に対し任意の
を満たすこと、および
も同じ微分方程式を満たすことを示したのでした。
このことから以下の事実を示してこの記事の締めとしましょう。
が成り立つ。
の解であったのでこの微分方程式を満たす任意の関数
として表せる(解空間が二次元線形空間であることからわかる)。
いま
が成り立ち、また
に注意すると
となるので
そして
となることに注意すると
つまり
を得る。
が成り立つ。
つまり
が成り立つことに注意すると
と表せることから上の補題と合わせて主張を得る。