この記事では 前の記事 でラマヌジャンの円周率公式を理解しきれなかった代わりにChudnovskyの公式については理解できていたので、その証明について解説していきたいと思います。
Chudnovskyの公式とは円周率公式
のことを言うのでした。この記事ではより一般的な以下の公式を示していきます。
が成り立つ。ただし
とした(
Chudnovskyの公式はこの
および
と計算できることから上の公式が導かれます。別の数値例については
参考文献
のp.40やp.44で見ることができます。
ちなみに公式の右辺は
であることについてはこの記事では扱いませんので詳しくは
参考文献
のTheorem5.1 (p.17以降)を参照してください。
今回証明する上の公式(定理1)は具体的に
というのもその事実について書かれた文献を(すぐ手に入る範囲で)まだ見つけていないのでそもそも私がその証明を知らない、といった状態なのです。然るべき文献を見つけ、その証明を理解した暁には別途記事を書くつもりなのでそれまでお待ちください。
一応
参考文献
のp.40以降に書かれている
まず定理1の証明において重要となる
ここで
としました(なお
前回の記事
で説明したように
が成り立つ。
とおいたとき
から
つまり
という関係が成り立つこと、および
に注意すると
前回の記事
の補題7
から
つまり
を得る。
が成り立つ。
とおいたとき
が成り立つ。
前回の記事
の定理11
から
と表せるので、補題3から
がわかり、これを適当に整理することで主張を得る。
ここまで来ればあとは
Ramanujanの円周率公式の記事
と似たようなことをするだけである。
いまClausenの公式
から
(最後の等号については
この記事
参照)と表せるので、定理4から
を得る。
ある互いに素(
とおく。
このとき任意の
また
によって
とよく近似されるので機械計算によって
類数が
また虚二次体
の場合に限ることが知られており、Chudnovskyの公式に使われている
を見てもわかる通り
また
とおいたとき、
は代数的整数となることが示せ、特に
も代数的整数であることに注意すると
が整数となるような整数
つまり
によって
とよく近似されるので
と評価できるように
ちなみに定理1は楕円関数を用いたややこしい議論を介さずとも
および
ラマヌジャンの恒等式
を用いれば簡単に導出することができます。
が成り立つ。
と表せたのでこれを対数微分すると
を得る。
とおいたとき
が成り立つ。
が成り立つので、この両辺に
を足し合わせることで主張を得る。