この記事では
前回の記事
の補足としてゼータ関数の非自明な零点の挙動について解説していきます。
この記事の目標は前回の記事では詳しく触れなかった近似公式
が成り立つ。ただし
を示すことにあります。
いま非自明な零点のことを知るためには、素数のことを知るために
の挙動を分析するのが効果的になります。そして
という近似式があったように
という近似式があります。ここではまずこの近似式の証明を行っていきます。
とおき、
が成り立つ。
これは
を用いて
と表せることがわかる。
あとはこれの各項を計算することで
となることがわかるので
が得られることとなる。
先に
が成り立つ。ただし
適当な平行移動によって
とおく。このとき
が成り立つので
となる(cf. 最大絶対値の原理)。よって
を得る。
ポアソン・イェンゼンの公式
のVer. 2から
とわかる。
数列
が成り立つ。
とわかる。
が
に注意するとアーベルの総和公式から
が成り立つので
を得る。
また
と
が成り立つ。
任意に
と評価できるので
が得られる。
特に
を得る。
経路
によって定めると
が成り立つ。
証明のあらすじにて解説したように
が成り立つ。このとき経路
と表せることに注意する。
ここで
と計算でき、また
つまり
と変形できる。
したがって
を得る。
と計算できる。
ガンマ関数に対するスターリングの公式
に注意すると
と評価できる。
また
つまりこの実部虚部を取ることで
が成り立つことに注意すると主張を得る。
と評価できる。つまり
が成り立つ。また
なので
いま
とおくと、
がわかる。
そして
つまり
であったので結局
即ち
を得る。
以上により
を得る。
さて、これからは上で得られた近似公式から一体何が得られるのかを見ていこう。
任意の
とおくと、平均値の定理よりある
が成り立つので
を得る。
が成り立つ。
とおいたとき、
と評価できるので
を得る。
非自明な零点のうち虚部が正のものをその虚部の小さい順に
が成り立つ。
より
が成り立つので
に注意すると
またこれの対数を取ることで
が成り立つので
を得る。
あとは
を得る。
ちなみにこの類似として
今回の記事では
であること(定理12)は示しましたが
であることまでは示しませんでした。というのも本当はこれについてもこの記事で示すつもりだったのですが、いざその証明と向き合ってみるにその煩雑さとその長さにげんなりしてしまったので一旦諦めることにしました。また気力があれば解読して記事にしたいと思いますがあまり期待はしないでおいてください。興味があれば参考文献のpp.71-80およびp.83を読んでみるといいと思います。
とりあえず今回の記事はこんなところで。では。
の証明についておおよその流れは理解できたのでそのことについて簡単に書き散らしておきます。
まず
チェビシェフ関数の素数公式
に注意して次のような積分を考えます。
とおくと
が成り立つ。
チェビシェフ関数の素数公式
の証明から
が成り立っていたので留数定理より主張を得る。
したがって
が成り立ち、これを
の積分の形に表すと
そしてそれらの積分は次のような補題によって評価できることがわかります。
が成り立つ。
これを用いると
と評価できます。
とおくと
が成り立つ。
(ただし
のように評価できます。
以上より
という評価が得られ、
がわかります。あれ?
参考文献ではなぜか
という評価を挟んでいるため
なにはともあれ大まかな流れは合っているはずなので、詳しいことについては参考文献をご覧ください。