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大学数学基礎解説
文献あり

「限りなく広くした範囲から」任意に選んだ2数が互いに素である確率

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はじめに

こんにちは、AGAです
Mathlogで「 「任意に選んだ2数が互いに素である確率」を成り立たせる確率測度は存在するか? 」という記事を見かけました。 
この文の大半が難しかったのですが、
その最後に書かれてあった以下のことが気になりました。(書き方は少し変えてあります。)

$n$以下の自然数をランダムに2つ選ぶ(これは有限個のものから選ぶのでちゃんと選べる)ときにそれらが互いに素になる確率を$P_n$とすれば,
限りなく広くした範囲から任意に選んだ2数が互いに素である確率$P$
$$P=\lim_{n→∞} P_n=ζ(2)^{−1}=\frac{6}{\pi^2}$$
になるといえそうだ(?)

これを証明していきたいと思います。

なお、本記事は「 「任意に選んだ2数が互いに素である確率」を成り立たせる確率測度は存在するか? 」「 任意に選んだ2数が互いに素である確率 」を前提にしてあり、前者にならって、本記事も自然数に0は入れないものとします。

証明

床関数

$\lfloor x\rfloor = Max\lbrace n\in \mathbb{N}| n\leq x\rbrace$

一応命題形式で述べたのち証明します。

$n$以下の自然数をランダムに2つ選ぶときに、それらが互いに素になる確率を$P_n$とすると、
$n\to \infty$のとき$P_n$は収束し、
$$\lim_{n→∞} P_n=\frac{6}{\pi^2}$$
となる

大文字は確率、小文字は自然数

$n$以下の自然数のうち$k$の倍数である物の個数は、$\lfloor \frac{n}{k} \rfloor $個である。
すなわち、$n$以下の自然数から任意の数を選んだ時$k$の倍数である確率は$\frac{1}{n}\lfloor\frac{n}{k}\rfloor$.

任意に選んだ$2$$m_1,m_2\leq n$の、最大公約数が$k$である確率を$Q_{n,k}$とする。このとき$P_n=Q_{n,1}$

$m,n$の最大公約数が$k$である」$\iff$$m,n$$k$の倍数」かつ「$\frac{m}{k},\frac{n}{k}$が互いに素」である。
すなわち$$Q_{n,k}=\frac{Q_{n,1}}{n^2}\lfloor \frac{n}{k} \rfloor^2 \cdots (1)$$

また$k$について確率の総和は$1$になってほしいので
$$\sum^\infty_{k=1}Q_{n,k}=1$$
になってほしいが、$n< k$のとき$\lfloor\frac{n}{k}\rfloor=0$のため、上の式は
$$\sum^n_{k=1}Q_{n,k}=1$$
となる。また、(1)から
$$\sum^n_{k=1}\frac{Q_{n,1}}{n^2}\lfloor \frac{n}{k} \rfloor^2=1$$
$$Q_{n,1}\sum^n_{k=1}\frac{1}{n^2}\lfloor \frac{n}{k} \rfloor^2=1$$
$Q_{n,1}=P_n$から
$$P_n\sum^n_{k=1}\frac{1}{n^2}\lfloor \frac{n}{k} \rfloor^2=1$$
$$P_n=\frac{1}{\sum^n_{k=1}\frac{1}{n^2}\lfloor \frac{n}{k} \rfloor^2}$$
$\frac{n}{k}-1\lt\lfloor\frac{n}{k} \rfloor\leq\frac{n}{k}$から
$$\frac{1}{k}-\frac{1}{n}\lt\frac{1}{n}\lfloor\frac{n}{k} \rfloor\leq\frac{1}{k}$$
$$\frac{1}{k^2}+\frac{1}{n^2}-\frac{2}{nk}\lt\frac{1}{n^2}\lfloor\frac{n}{k} \rfloor^2\leq\frac{1}{k^2}$$
$$\sum^n_{k=1}(\frac{1}{k^2}+\frac{1}{n^2}-\frac{2}{nk})\lt\sum^n_{k=1}\frac{1}{n^2}\lfloor\frac{n}{k} \rfloor^2\leq\sum^n_{k=1}\frac{1}{k^2}$$
$$\sum^n_{k=1}\frac{1}{k^2}+\sum^n_{k=1}\frac{1}{n^2}-\sum^n_{k=1}\frac{2}{nk}\lt\sum^n_{k=1}\frac{1}{n^2}\lfloor\frac{n}{k} \rfloor^2\leq\sum^n_{k=1}\frac{1}{k^2}$$
$$(\sum^n_{k=1}\frac{1}{k^2})+\frac{1}{n}-\frac{2}{n}\sum^n_{k=1}\frac{1}{k}\lt\sum^n_{k=1}\frac{1}{n^2}\lfloor\frac{n}{k} \rfloor^2\leq\sum^n_{k=1}\frac{1}{k^2}$$
$(左辺の第三項は調和数/n)$
ハサミうちの原理から
$$\lim_{n\to\infty}P_n=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{\sum^n_{k=1}\frac{1}{n^2}\lfloor\frac{n}{k} \rfloor^2}=\frac{1}{\lim_{n\to\infty}\sum^n_{k=1}\frac{1}{n^2}\lfloor\frac{n}{k} \rfloor^2}$$
$$=\frac{1}{\frac{\pi^2}{6}}=\frac{6}{\pi^2}$$
したがって$$\lim_{n→∞} P_n=\frac{6}{\pi^2}\blacksquare $$

おわりに

参考にした後者のサイトの方法を借りましたが
それでも、長くなってしまったので、有限にすると、逆に議論が難しくなるということを学びました。
何か間違い、曖昧なこと、疑問等ありましたら、
コメントしてください。

参考文献

投稿日:20211010
更新日:14
OptHub AI Competition

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投稿者

AAG
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抽象代数学(群とか圏とか)が好きな高校3年生。気分屋です。 (元の名前:AGA) Twitterではキャベツとして呟いてます 厳密にテキトーにやってます。 基本検算しません。 間違いがあったら容赦なく指摘してください。

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