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大学数学基礎解説
文献あり

ラマヌジャンの円周率公式の証明に触れる

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はじめに

ラマヌジャンは以下の公式を発見しました。
1π=22992n=0(4n)!(n!)426390n+11033964n
収束が非常に早く、円周率の数値計算に有効であるのは有名な話です。
今回はラマヌジャンの円周率公式の証明の流れについて書いていきます。ただし、この記事は上の公式を証明するものではありません。というのも、円周率公式と呼ばれる公式は複数あるのです。この記事では、以下の円周率公式の証明について書きます。
n=0((2n)!)3(n!)642n+5212n=16π
なぜこの公式を選んだのかと言うと、過去にMathlogで書いた モジュラー形式の話 を使えば証明が比較的容易だったからです。
ここで断っておくのですが、僕は円周率公式について、つい数日前に調べ始めた程度の素人で、理解が非常に浅いです。誤った内容が書かれている可能性が十分にあることをご了承ください。

証明の準備

円周率公式がどのような作りになっているかについて、 こちらの記事 で分かりやすく説明されているので、円周率公式のからくりまでの内容をなんとなく頭に入れてください。今回の記事では、超幾何関数の代数変換公式を認めた上で証明するのではなく、モジュラー形式の理論を使ったアプローチをします。そのため、 こちらの記事 の内容を使用しますので、モジュラー形式に初めて触れるような方は一読してからこの記事を読み進めることをお勧めします。それ以外に、アイゼンシュタイン級数も使うので、ご了承ください。
以下の証明は、 こちらの論文 のSection 9を元にしています。

証明(前半)

ポッホハマー記号(x)n=x(x+n1)を用いて、示すべき公式は
16π=n=0(12)n3(n!)342n+564n
となります。以下の関数を定義します。
F(z):=2F1[12,121;z]G(z):=zdFdzH(z):=3F2[12,12,121,1;z]H2(z):=zdHdz
示すべき式は
16π=5H(164)+42H2(164)
となります。
子葉さんの記事 から以下のことが分かります。
F(z)2=H(4z(1z))
これは超幾何関数の変換公式です。
zF(z)G(z)+(1z)F(1z)G(z)=1π
これはルジャンドルの関係式です。ここで、第一種完全楕円積分K(k)
K(k)=π22F1[12,121;k2]=π2F(k2)
であることに注意します。
z=k2,x=KK=F(1z)F(z)とします。このとき こちらの記事 より
η(ix)=2kk6Kπ
が成り立ちます。従って両辺を4乗して
η4(ix)=4z(1z)3H(4z(1z))4
なので、両辺をzで対数微分すると
4iη(ix)η(ix)dxdz=13(1z11z)+1H(4z(1z))ddzH(4z(1z))=12z3z(1z)+4(12z)H(4z(1z))H(4z(1z))=12z3z(1z)H(4z(1z))(H(4z(1z))+3H2(4z(1z)))
ここで、正規化されたアイゼンシュタイン級数E2を用いて
η(τ)η(τ)=ddτlnη(τ)=ddτ(πiτ12+n=1ln(1e2πinτ))=πi12+n=12πine2πinτe2πinτ1=πi12E2(τ)
であり、また
dxdz=ddzF(1z)F(z)=1F(z)2(F(z)dF(1z)dzdF(z)dzF(1z))=1F(z)2(F(z)G(1z)1zF(1z)G(z)z)=zF(z)G(1z)+(1z)F(1z)G(z)z(1z)F(z)2=1π1z(1z)H(4z(1z))
ですから、
H(4z(1z))+3H2(4z(1z))=E2(ix)12z
を得ます。

証明(後半)

前半は一般論でしたが、後半は目的の級数に絞った議論をします。x=7に固定します。このときのkModular lambda starを用いてλ(7)と表され、その値は
k=3742
であるらしく( Wikipedia )、
z=k2=837164z(1z)=164
が分かります。この値はモジュラー方程式というものを解くと出てくるらしいんですが、僕は理解していないので解説できません。
A=H(164),B=H2(164)として、前半の結果に代入すると
A+3B=837E2(i7)
となります。他にA,B,1π,E2(7)に関する良い感じの関係式を得てE2(i7)を消去することができれば、晴れて円周率公式の完成です。それでは ラマヌジャンの論文 TABLE 3をご覧ください。論文内のn=7の式は、以下を意味します。

KK=7LLのとき
7E2(iKK)E2(iLL)=12KLπ2(1+kl+kl)

LL=17のとき、l=k,l=k,KL=KK=K27より
7E2(i7)E2(i7)=37(2Kπ)2(1+2z1z)=2778A
さらに、E2のモジュラー関係式
E2(1τ)τ2E2(τ)=6τiπ
より
E2(i7)+7E2(i7)=67π
なので、E2(i7)を消去して
E2(i7)=27167A+37π
であり、E2(i7)を消去して
A+3B=914A+87π5A+42B=16π
これが示すべきことでした。(証明終)

おわりに

後半の議論において、x=3とすればk=3122,z=234,4z(1z)=14となり、
4π=n=0((2n)!)3(n!)66n+144n
も示すことができます。二項係数を用いれば
1π=n=0(2nn)36n+144n+11π=n=0(2nn)342n+546n+2
と表すことができます。
今回は、第一種完全楕円積分とデデキントのイータ関数の関係から産み出される円周率公式について解説しましたが、より一般的な超幾何関数とモジュラー形式に関係があるらしいです。 こちらの論文 がなんか凄そうだったんですが、僕には理解できませんでした。有名な円周率公式にも、いつか挑戦してみたいと思います。

参考文献

[4]
Baruah, N.D., Berndt, B.C., Chan, H.H, Ramanujan’s series for 1/π: A survey, Pi: The Next Generation. Springer, Cham, 2009, pp.303-325
[5]
S. Ramanujan, Modular equations and approximations to π, Quarterly Journal of Mathematics, 1914, pp.350-372
[6]
Angelica Babei ,Lea Beneish, Manami Roy, Holly Swisher, Bella Tobin and Fang-Ting Tu, Generalized Ramanujan-Sato Series Arising from Modular Forms, unpublished
[7]
Guillera, J, A method for proving Ramanujan series for 1/π, Ramanujan J 52, 2020, pp.421-431
投稿日:202298
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  1. はじめに
  2. 証明の準備
  3. 証明(前半)
  4. 証明(後半)
  5. おわりに
  6. 参考文献