0

テータ関数のいくつかの関係式

318
0

はじめに

 この記事では後の記事に向けてテータ関数まわりの公式をいくつか紹介していきます。
  テータ関数の記事 保型形式の記事 の内容を前提に話を進めるので、そちらを先に目を通しておくとよいと思います。

テータ関数の三重積

 q=eπiτ,z=e2πivに対して
θ1(v,τ)=q14z12z12in=1(1q2n)(1q2nz)(1q2nz1)θ2(v,τ)=q14(z12+z12)n=1(1q2n)(1+q2nz)(1+q2nz1)θ3(v,τ)=n=1(1q2n)(1+q2n1z)(1+q2n1z1)θ4(v,τ)=n=1(1q2n)(1q2n1z)(1q2n1z1)
が成り立つ。

 ヤコビの三重積(一応 楕円関数論の記事 のおまけとして示しています)
n=qn2zn=n=1(1q2n)(1+q2n1z)(1+q2n1z1)
に注意すると
θ1(v,τ)=1in=(1)nq(n+12)2zn+12=q14z12in=qn2(qz)n=q14z12in=1(1q2n)(1q2nz)(1q2n2z1)=q14z12i(1z1)n=1(1q2n)(1q2nz)(1q2nz1)=q14z12z12in=1(1q2n)(1q2nz)(1q2nz1)
を得る。同様に
θ2(v,τ)=n=q(n+12)2zn+12=q14z12(1+z1)n=1(1q2n)(1+q2nz)(1+q2nz1)=q14(z12+z12)n=1(1q2n)(1+q2nz)(1+q2nz1)θ3(v,τ)=n=qn2zn=n=1(1q2n)(1+q2n1z)(1+q2n1z1)θ4(v,τ)=n=(1)nqn2zn=n=1(1q2n)(1q2n1z)(1q2n1z1)
を得る。

 v=0のときz=1であることに注意すると以下の系を得る。

θ2(τ)=2q14n=1(1q2n)(1+q2n)2θ3(τ)=n=1(1q2n)(1+q2n1)2θ4(τ)=n=1(1q2n)(1q2n1)2
および
λ(τ)=θ2(τ)4θ3(τ)4=16qn=1(1+q2n1+q2n1)8
が成り立つ。

Weberのモジュラー関数

Weberのモジュラー関数

 q=eπiτに対して
f(τ)=q124n=1(1+q2n1)f1(τ)=q124n=1(1q2n1)f2(τ)=2q112n=1(1+q2n)
と定められる関数をWeberのモジュラー関数という。

 Weberのモジュラー関数はデデキントのイータ関数
η(τ)=q112n=1(1q2n)
を用いて以下のように表せます。

f(τ)=eπi24η(τ+12)η(τ),f1(τ)=η(τ2)η(τ),f2(τ)=2η(2τ)η(τ)
が成り立つ。

 f,f1,f2の定義より
f(τ)=q124112n=11(q)n1q2nf1(τ)=q124112n=11qn1q2nf2(τ)=2q16112n=11q4n1q2n
と変形できることからわかる。

 またη,f,f1,f2はテータ関数を用いると以下のようにも表せます。

η(τ)3=12θ2(τ)θ3(τ)θ4(τ)f(τ)6=2θ3(τ)2θ2(τ)θ4(τ)f1(τ)6=2θ4(τ)2θ2(τ)θ3(τ)f2(τ)6=2θ2(τ)2θ3(τ)θ4(τ)
が成り立つ。

 第一式は
θ2(τ)θ3(τ)θ4(τ)=2q14n=1(1q2n)3(1+q2n)2(1+q2n1)2(1q2n1)2=2q14n=1(1q2n)(1q4n)2(1q4n2)2=2q14n=1(1q2n)(1q2n)2=2η(τ)3
とわかる。あとは
f(τ)=θ3(τ)η(τ)f1(τ)=θ4(τ)η(τ)f2(τ)=θ2(τ)η(τ)
からわかる。

テータ関数とアイゼンシュタイン級数

E2(τ)=12πiddτlogη(τ)E4(τ)=θ2(τ)8+θ3(τ)8+θ4(τ)82E4(τ)3E6(τ)2=274(θ2(τ)θ3(τ)θ4(τ))8
が成り立つ。

  保型形式の記事 の定理5の証明において
E2(τ)=12πiddτlogη(τ)
を、また同じ記事の定理9として
E4(τ)3E6(τ)2=123Δ(τ)=123η(τ)24=274(θ2(τ)θ3(τ)θ4(τ))8
を示していたのであとは2番目の公式を示せばよい。

Θ(τ)=θ2(τ)8+θ3(τ)8+θ4(τ)82
とおいたとき
Θ(τ+1)=(eπi4θ2(τ))8+θ4(τ)8+θ3(τ)82=Θ(τ)Θ(1τ)=(iτ)8θ4(τ)8+θ3(τ)8+θ2(τ)82=τ4Θ(τ)
が成り立ち、また三重積からわかるようにθjτH{i}において正則なのでΘ(τ)は重さ4のモジュラー形式となる。
 よって 保型形式の記事 の補題13よりある複素数Cがあって
Θ(τ)=CE4(τ)
が成り立つが、それぞれのq-展開(q=eπiτ)
Θ(τ)=(O(q12))8+(1+O(q))8+(1+O(q))82=1+O(q)
E4(τ)=124n=1σ3(n)q2n
に注意するとC=1を得る。

j-不変量とモジュラー関数

 以上よりKleinのj-不変量を
J(τ)=E43E43E62
とし、Ramanujanの不変量を
G(τ)=214f(τ),g(τ)=214f1(τ)
とすると以下の関係式が成り立ちます。

J(τ)=427(1λ+λ2)3(λ(1λ))2=(4G241)327G24=(4g24+1)327g24
が成り立つ。

 一つ目の等号については定理4より
J(τ)=158(θ28+θ38+θ48)3(θ2θ3θ4)8=158(λ2+1+(1λ)2)(λ(1λ))2=427(1λ+λ2)3(λ(1λ))2
とわかる。
 二つ目の等号については定理3より
G24=14θ34θ24θ34=14λ(1λ)
が成り立つので
J(τ)=427(1+λ(1λ))3(λ(1λ))2=427(1+(4G24)1)3(4G24)2=(4G241)327G24
とわかる。
 三つ目の等号については
J(τ+1)=J(τ),G(τ+1)24=(eπi24g(τ))24=g24
からわかる。

投稿日:20221117
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

子葉
子葉
1129
287330
主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. はじめに
  2. テータ関数の三重積
  3. Weberのモジュラー関数
  4. テータ関数とアイゼンシュタイン級数
  5. j-不変量とモジュラー関数