前回:
凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明①
この記事は「上の凸関数はほとんど至るところ2回微分可能である」ことを示すためのものである。今回は可積分関数の極大関数を用いた測度評価に関する定理を証明する。
目次
1.定義
2.準備
3.定理の証明
4.関連する話
定義
以下、1次元Lebesgue測度をとし、のLebesgue可測な部分集合全体をとする。
この記事では次の定理を証明することを目標とする。
極大関数を用いた測度評価
上の可積分関数をとりをの極大関数とする。このとき任意のに対して、
となる。
ただし可積分関数の極大関数とは以下のように定義される。
に対してとする。
上の可積分関数に対して、
で定まる可測関数をの極大関数という。
定理1の証明に際しての性質を用いたいので、測度の正則性の定義を与えておく。
正則性
をHausdorff空間とし、をとなるような測度空間とする。このとき、が正則であるとは
となることをいう(にコンパクト性までは課さず単に閉集合とする文献もある)。そして、が正則であるとは全ての可測集合が正則となることをいう。
準備
定理1の証明のために次の二つの主張を準備する。
任意のに対して、となるとが存在して次が成り立つ。
(1) は互いに素。
(2) 任意のに対して、となるが存在する。
定理2の証明は
Lebesgue測度の構成と正則性定理
を参照。ここでは命題3の証明をする。
命題3の証明
のときは命題3は正しい。のときに命題3が正しいと仮定してのときも正しいことを示す。任意にをとる。必要であれば添字を入れ替えてとなるようにする。このとき仮定から、となるとが存在して,二つの条件
(1) は互いに素、
(2) 任意のに対して、となるが存在する、
を満たすようにできる。もし、あるに対してとが交わる場合、であるからとはそのままで良い。そうでない場合、
とすれば、とは二条件
(1) は互いに素、
(2) 任意のに対して、となるが存在する、
を満たす。よってのときも命題3は正しい。帰納法により任意の自然数に対して命題3は正しい。
定理の証明
定理1の証明をする。
定理1の証明
上の可積分関数とを任意にとる。定理2よりとなる任意のコンパクト集合に対してとなることを示せば良い。
任意のに対して、より、次の3条件
(a)
(b)
(c)
を満たすが存在する。でありはコンパクトだから、適当なが存在して、となる。以下、をそれぞれと略記する。このに対して命題3の条件を満たすをとると、
となる。以上より定理1が示された。
関連する話
凸関数の滑らかさの話とは全く関係しないが、極大関数の性質に関して最近新たに発見した話があるので記しておきたい。
が可積分のとき、も可積分であるとは限らない。例えば、(区間[0,1]上の指示関数)の時のオーダーは以上になり、可積分でない。しかし、に対しが乗可積分ならばも乗可積分であることが言える。その証明を以下の囲み枠で行いたいと思う。
1段目 各に対し、が成り立つことを示す。定理2より、なる任意のコンパクト集合に対して、を評価すれば良い。
のコンパクト性により、
(a),
(b)
を満たすが存在する。(a)より
(a')を得る。
このに対して命題3の条件を満たすをとると、
2段目の評価をする。
今回は終わり。
次回:
凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明③