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大学数学基礎解説
文献あり

実離散フーリエ変換(中編)-離散三角関数の直交性-

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中編では離散三角関数が直交系をなすことを示す。

言葉の定義

離散三角関数

Nを自然数、n, mを整数、τ=2πを二倍円周率としたとき、
Cm(n)=cos(mNnτ)Sm(n)=sin(mNnτ)
をまとめて、nを変数とする周期Nm離散三角関数と呼ぶことにする。

離散三角関数基底

cm=[Cm(0)Cm(1)Cm(N1)]=[1cos(mNτ)cos(mN(N1)τ)]sm=[Sm(0)Sm(1)Sm(N1)]=[0sin(mNτ)sin(mN(N1)τ)]E={ennZ, 0n<N}en={c0(n=0)ck(n=2k1, 0<n<N, kN)sk(n=2k,0<n<N, kN)
とする。このとき、N個のN次ベクトルの集合E離散三角関数直交基底と呼ぶことにする。また、

E={ennZ, 0n<N}en={1Nc0(n=0)1NcN/2(n=N1, N=2k,  kN)2Nck(n=2k1, 0<n<N1, kN)2Nsk(n=2k,0<n<N,kN)
離散三角関数正規直交基底と呼ぶことにする。

定義1,2の名称は筆者独自のものです。
また、離散三角関数直交基底と離散三角関数正規直交基底がそれぞれ直交基底と正規直交基底になることはこれから証明します。

偶奇による場合分け

Nが偶数のとき
E={c0, c1, s1, , cN/21, sN/21, cN/2}E={1Nc0, 2Nc1, 2Ns1, , 2NcN/21, 2NsN/21, 1NcN/2}
Nが奇数のとき

E={c0, c1, s1, , c(N1)/2, s(N1)/2}E={1Nc0, 2Nc1, 2Ns1, , 2Nc(N1)/2, 2Ns(N1)/2}

直交性の証明

離散三角関数の和

m1|m|<Nとなる整数とすると
n=0N1cos(mNnτ)=n=0N1sin(mNnτ)=0

複素数を用いた証明

0<|mN|<1よりexp(imNτ)1となるから
n=0N1exp(imNnτ)=1exp(i1NNτ)1exp(imNτ)=111exp(imNτ)=0n=0N1cos(mNnτ)=Re(n=0N1exp(imNnτ))=0n=0N1sin(mNnτ)=Im(n=0N1exp(imNnτ))=0

せっかくなので複素数を用いない証明も考えてみます。

行列を用いた証明

行列Aを角度mNτの2次元回転行列とする。
A=[cos(mNτ)sin(mNτ)sin(mNτ)cos(mNτ)]
行列をn回かけることはmNnτ回転することを意味するから
An=[cos(mNnτ)sin(mNnτ)sin(mNnτ)cos(mNnτ)]
(数学的帰納法によって示すこともできる。)
また、
det(IA)=(1cos(mNτ))2+sin2(mNτ)=12cos(mNτ)+cos2(mNnτ)+sin2(mNτ)=22cos(mNτ)
0<|mN|<1よりcos(mNτ)1となるからdet(IA)0
つまり(IA)1が存在する。よって、
n=0N1An=(1AN)(1A)1=[1cos(nτ)sin(nτ)sin(nτ)1cos(nτ)](1A)1=[110011](1A)1=[0000]n=0N1An=[n=0N1cos(mNnτ)n=0N1sin(mNnτ)n=0N1sin(mNnτ)n=0N1cos(mNnτ)]
したがって、
n=0N1cos(mNnτ)=n=0N1sin(mNnτ)=0

次は行列も複素数も用いない証明です。

消しゴムマジックで消してやるのさ☆

まずコサインの総和を示す。

積和の公式
cosαsinβ=12(sin(α+β)sin(αβ))
より、
θ=mNτ, α=nθ, β=θ2, In=cos(nθ)sin(θ2)とすると、

In=cos(nθ)sin(θ2)=12(sin(nθ+θ2)sin(nθθ2))
よって、
2n=0N1In=n=0N1(sin(nθ+θ2)sin(nθθ2))=sin(θ2)+n=1N1(sin((n1)θ+θ2)sin(nθθ2)) +sin((N1)θ+θ2)=sin(Nθθ2)+sin(θ2)=sin(NmNτθ2)+sin(θ2)=sin(θ2)+sin(θ2)=0
一方で
n=0N1In=sin(θ2)n=0N1cos(nθ)
仮定1|m|<Nより0<|θ2|=|m2Nτ|<τ2となるからsin(θ2)0
よって、
n=0N1cos(nθ)=n=0N1cos(mNnτ)=0

次にサインの総和を示す。

積和の公式
sinαsinβ=12(cos(α+β)+cos(αβ))
より、
θ=mNτ, α=nθ, β=θ2, Jn=sin(nθ)sin(θ2)とすると、

Jn=sin(nθ)sin(θ2)=12(cos(nθ+θ2)+cos(nθθ2))
よって、
2n=0N1Jn=n=0N1(cos(nθ+θ2)+cos(nθθ2))=cos(θ2)+n=1N1(cos((n1)θ+θ2)cos(nθθ2)) cos((N1)θ+θ2)=cos(θ2)cos(Nθθ2)=cos(θ2)cos(NmNτθ2)=cos(θ2)cos(θ2)=0
一方で
n=0N1Jn=sin(θ2)n=0N1sin(nθ)
仮定1|m|<Nより0<|θ2|=|m2Nτ|<τ2となるからsin(θ2)0
よって、
n=0N1sin(nθ)=n=0N1sin(mNnτ)=0

離散三角関数の直交性

離散三角関数直交基底E直交系となる。
また、離散三角関数正規直交基底E正規直交系となる。

  • cosどうしの内積
    j,k0j,kN2となる整数とする。
    cjck=n=0N1cos(jNnτ)cos(kNnτ)=n=0N112(cos(j+kNnτ)+cos(jkNnτ))
    • jkのとき
      1|j+k|N2,1|jk|N12より前編の補題3から
      cjck=0
    • j=kのとき
      jk=0より
      cjck=n=0N112(cos(j+kNnτ)+cos0)=N2+n=0N112cos(j+kNnτ)
      • j=k=0のとき
        j+k=0より
        cjck=N2+n=0N112cos0=N
      • 0<j=k<N2のとき
        0<|j+k|<Nより補題3から
        cjck=N2
      • j=k=N2のとき
        j+k=Nより
        cjck=N2+n=0N112cos(nτ)=N
  • sinどうしの内積
    j,k1j,kN12となる整数とする。
    sjsk=n=0N1sin(jNnτ)sin(kNnτ)=n=0N112(cos(j+kNnτ)cos(jkNnτ))
    • jkのとき
      1|j+k|N2,1|jk|N121より補題3から
      sjsk=0
    • j=kのとき
      2|j+k|N1,jk=0より補題3から
      sjsk=n=0N112(cos0)=N2
  • cossinの内積
    j0jN2k1kN12となる整数とする。
    cjsk=n=0N1cos(jNnτ)sin(kNnτ)=n=0N112(sin(j+kNnτ)sin(jkNnτ))
    • jkのとき
      1|j+k|N12,1|jk|N2より補題3から
      cjsk=0
    • j=kのとき
      1|j+k|N1,jk=0より補題3から
      cjsk=n=0N112sin0=0
      内積は可換であるため、sjck=cksj=0
  • まとめ
    • j0jN2k0kN2となる整数とすると
      cjck={0(jk)N(j=k=0, j=k=N2)N2(0<j=k<N2)
    • j1jN12k1kN12となる整数とすると
      sjsk={0(jk)N2(j=k=0)
    • j0jN2k1kN12となる整数とすると
      cjsk=0

Nが奇数の時
E={c0, c1, s1, , c(N1)/2, s(N1)/2}
はそれぞれ自身以外との内積が0となるため直交系となる。

Nが偶数の時
E={c0, c1, s1, , cN/21, sN/21, cN/2}
はそれぞれ自身以外との内積が0となるため直交系となる。

つまりE は直交系となる。
また、E はそれに加えて各ノルムが1となるため正規直交系となる。

離散三角関数と基底

E直交基底である。
また、E正規直交基底である。

命題2よりEは直交系であり、Eは正規直交系である。
また前編の命題7「N個のN次ベクトルは互いに直交するならN次ベクトル空間の基底になる。」より、Eは直交系かつ基底であり、Eは正規直交系かつ基底である。

参考文献

投稿日:2024818
更新日:2024819
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sokia
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