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大学数学基礎解説
文献あり

直交多項式と超幾何関数(1)〜チェビシェフ多項式と三角関数〜

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いよいよ
この記事を書くときが来てしまった気がした。

近ごろ急に直交多項式を勉強する動機ができたので。
その動機の内容は追々語れる日が来るといいのだが。

ここから連載企画として、「直交多項式と超幾何関数」について記事を書くことにする。
本日は第1回目なので、チェビシェフ多項式の話。
この多項式に関しては本Mathlog内でも充分なほど記事があるが
改めて記事を立てることとする。
意外と(チェビシェフ多項式だけで)証明を完結させるのが大変だったり。
#前記事のベッセル多項式は第0回ってことで
#ベッセル多項式も改めて書き直しますが

古くから
「チェビシェフ多項式は数値解析において至るところ稠密である」
などと言われてきたほど重要な多項式族である。
まずは、それらが顔を出す1番よく知られた状況の説明をする。

n倍角の公式

さて、三角関数と言えば、高校生のときに
sinθcosθに関する2倍角や3倍角の公式を覚えさせられるのが世の宿命。
sin2θ=2sinθcosθ,sin3θ=3sinθ4sin3θcos2θ=2cos2θ1,cos3θ=4cos3θ3cosθ
2倍角3倍角と言えば私の中学入試を思い出して頭がウッッってなる。笑
(cosの2倍角3倍角を頑張って誘導なしに初等的に示せ(意訳)って問題が出たw)
それはさておき、
n倍角の公式のようなものを考えるとどうなるのであろうか。

(注意) ここでsinの3倍角に対して
sin3θ=sinθ(34sin2θ)=sinθ(4cos2θ1)
という変形をしておいた方が今後のために良いと思われる。

さて、n倍角の公式を求めるために、和積の公式を使う。すなわち
sin(n+2)θ+sinnθ=2sin(n+1)θcosθcos(n+2)θ+cosnθ=2cos(n+1)θcosθ
これにより、sinnθcosnθの値を帰納的に計算することが可能である。
例えばn=2を上の式に代入すると
sin4θ+sin2θ=2sin3θcosθ
がわかり、ここに上のsin2θ=2sinθcosθsin3θ=sinθ(4cos2θ1)を代入すると
sin4θ=2sin3θcosθsin2θ=2sinθ(4cos2θ1)cosθ2sinθcosθ=sinθ(8cos3θ4cosθ)
などと計算ができる。この計算を繰り返すと一般のsinnθ及びcosnθが計算できる。

…と書いてもわかった気にならない。閉じた形の式が欲しい。
漸化式が出ている状況なので文字を置こう。

チェビシェフ多項式

ここで次のように第一種・第二種チェビシェフ多項式を定める。

(第一種・第二種チェビシェフ多項式)

nは非負整数とする。
次の式を満たす整数係数の多項式族{Tn(x)},{Un(x)}が存在する:
cosnθ=Tn(cosθ),sin(n+1)θ=Un(cosθ)sinθ
このとき{Tn(x)},{Un(x)}をそれぞれ第一種・第二種チェビシェフ多項式と呼ぶ。

(注)sin0θ=1sinθで割れないので、初項が1つずれている。

さてこのように定めたチェビシェフ多項式が満たす漸化式を、先の和積の公式から導く。
(厳密なことを言うと、その漸化式で定義するべき)
例えばcosの方は
cos(n+2)θ+cosnθ=2cos(n+1)θcosθ
であったので
Tn+2(cosθ)+Tn(cosθ)=2Tn+1(cosθ)cosθTn+2(x)=2xTn+1(x)Tn(x)
がわかる。一方でsinの方は、和積の式のnを1増やしておくと
sin(n+3)θ+sin(n+1)θ=2sin(n+2)θcosθ
であったので
Un+2(cosθ)sinθ+Un(cosθ)sinθ=2Un+1(cosθ)sinθcosθUn+2(cosθ)=2Un+1(cosθ)cosθUn(cosθ)Un+2(x)=2xUn+1(x)Un(x)
がわかる。

以上をまとめると、次の定理が従う。

(チェビシェフ多項式の三項間漸化式による定義)

上で定めたチェビシェフ多項式{Tn(x)},{Un(x)}は次の漸化式を満たす。
{T0(x)=1,T1(x)=xTn+2(x)=2xTn+1(x)Tn(x){U0(x)=1,U1(x)=2xUn+2(x)=2xUn+1(x)Un(x)

三項間漸化式は複数の直交多項式が満たす性質の1つである。(後の記事で記述予定)

チェビシェフ多項式の数表

第一種・第二種それぞれ最初の10項を掲載する。
<第一種チェビシェフ多項式>
T0(x)=1T1(x)=xT2(x)=2x21T3(x)=4x33xT4(x)=8x48x2+1T5(x)=16x520x3+5xT6(x)=32x648x4+18x21T7(x)=64x7112x5+56x37xT8(x)=128x8256x6+160x432x2+1T9(x)=256x9576x7+432x5120x3+9x

<第二種チェビシェフ多項式>
U0(x)=1U1(x)=2xU2(x)=4x21U3(x)=8x34xU4(x)=16x412x2+1U5(x)=32x532x3+6xU6(x)=64x680x4+24x21U7(x)=128x7192x5+80x38xU8(x)=256x8448x6+240x440x2+1U9(x)=512x91024x7+672x5160x3+10x

さてここからチェビシェフ多項式に関わる性質を紹介する。

チェビシェフ多項式の満たす諸性質

まず残り2つの和積の(と言うより差を積にする)公式を用いることで、次がわかる。

(第一種・第二種チェビシェフ多項式の間の関係式)

Un+2(x)Un(x)=2Tn+2(x)Tn+2(x)Tn(x)=2(x21)Un(x)

この定理が意味するのは、一方がもう一方を用いて表されることである。
(なお後の定理4の証明内で、より使いやすい関係式ddxTn(x)=nUn1(x)を得る)

次の定理は、直交多項式の名前で呼ばれる所以の定理である。

(チェビシェフ多項式の直交性)

i,jを非負整数とする。このとき次が成り立つ。
11Ti(x)Tj(x)dx1x2={π(i=j=0)π2δij(それ以外)11Ui(x)Uj(x)1x2dx=π2δij
ここでδijはクロネッカーのデルタであり、ijが等しい時に1、異なる時に0を返す関数である。
またTn(x)に対する11x2Un(x)に対する1x2を重み関数と呼ぶ。

この定理は三角関数の積分に帰着させることで証明する。

まず最初に上のTn(x)に関わる積分から示す。
x=cosθとおくことで
11Ti(x)Tj(x)dx1x2=π0cosiθcosjθsinθdθsinθ=0πcosiθcosjθdθ
三角関数の積和の公式を用いて計算する。以下3つに分けて計算する。

i=j=0のとき
0πcosiθcosjθdθ=0πdθ=π
i=j1のとき
0πcosiθcosjθdθ=0πcos2iθdθ=0π1+cos2iθ2dθ=[θ+12isin2iθ2]0π=π2
ijのとき
0πcosiθcosjθdθ=120π{cos(i+j)θcos(ij)θ}dθ=12[sin(i+j)θi+jsin(ij)θij]0π=0
となり計算ができる。
次にUn(x)の方も同じく、x=cosθとおくと
11Ui(x)Uj(x)1x2dx=π0sin(i+1)θsinθsin(j+1)θsinθsinθ(sinθ)dθ=0πsin(i+1)θsin(j+1)θdθ
となり、これも積和の公式を用いることで同様の計算ができる。(証明終わり)

note: チェビシェフ多項式は、これら重み関数に関する内積による多項式の空間の直交基底とみなせる
(シュミットの直交化法、これも後の記事で)

次の微分方程式、及びその次のロドリゲスの公式も直交多項式論においてはかなり重要な役目を担う。

(チェビシェフ多項式の満たす微分方程式)

Tn(x)Un(x)は次の二階微分方程式を満たしている。
(1x2)Tn(x)xTn(x)+n2Tn(x)=0(1x2)Un(x)3xUn(x)+n(n+2)Un(x)=0
(note: それぞれの微分方程式の一般解は、前者はTn(x)1x2Un1(x)の一次結合、後者はUn(x)11x2Tn+1(x)の一次結合で書けることもわかる。証明略)

かなりゴリゴリに計算をする。と言うか定義から計算可能(もう少しいい証明があるかも)

まずTn(cosθ)=cosnθの両辺をθで微分する。
ddθTn(cosθ)=ddθcosnθ=nsinnθ
ここでd(cosθ)dθ=sinθを使うと
dd(cosθ)(sinθ)Tn(cosθ)=nsinnθddxTn(x)=nsinnθsinθ=nUn1(x)
となり、Tn(x)の一階微分が求まった。

次にUn(x)の方はも同様に計算する。
Un(cosθ)=sin(n+1)θsinθより
(sinθ)ddxUn(x)=(n+1)cos(n+1)θsinθsin(n+1)θcosθsin2θddxUn(x)=(n+1)cos(n+1)θsinθsin(n+1)θcosθsinθsin2θ=(n+1)Tn+1(x)Un(x)xx21
と商の微分公式を用いることで計算ができる。

次に2階微分だが、Tの方はすぐに求まる。
d2dx2Tn(x)=ddxnUn1(x)=n{nTn(x)xUn1(x)}x21
以上よりTの方の求める微分方程式の左辺は
(1x2)d2dx2Tn(x)xddxTn(x)+n2Tn(x)=n{nTn(x)xUn1(x)}xnUn1(x)+n2Tn(x)=0
となり、Tn(x)に関する微分方程式が正しいことが示された。

次に計算の恐ろしいUの2階微分だが、それは計算したくないので工夫をする。
本定理の証明内で示したddxTn(x)=nUn1(x)及びTn(x)に関する微分方程式を使う。
すなわち、微分方程式
(1x2)d2dx2Tn(x)xddxTn(x)+n2Tn(x)=0
を1回xで微分することを考える。すると
{(2x)d2dx2Tn(x)+(1x2)d3dx3Tn(x)}{ddxTn(x)+xd2dx2Tn(x)}+n2ddxTn(x)=0
がわかる。整理すると次を得る。
(1x2)d3dx3Tn(x)3xd2dx2Tn(x)+(n21)ddxTn(x)=0
ここでddxTn(x)=nUn1(x)を用いて書き直すと
(1x2)d2dx2nUn1(x)3xddxnUn1(x)+(n21)nUn1(x)=0
nで割り、n1ずらすことで
(1x2)d2dx2Un(x)3xddxUn(x)+n(n+2)Un(x)=0
が得られるのでUに関する微分方程式も示された。(証明終わり)

続いてチェビシェフ多項式の一般項を与える公式の1つ、ロドリゲスの公式である。

(チェビシェフ多項式に関するロドリゲスの公式)

Tn(x)Un(x)は次のn階微分を用いた表示を持つ:
Tn(x)=(1)n(2n1)!!1x2dndxn(1x2)n12Un(x)=(1)n2n(n+1)!(2n+1)!11x2dndxn(1x2)n+12

証明は上の微分方程式を利用して行う。([2] pp.62-64による)
もちろんこちらを先に直接示すこともできる;その場合微分方程式の証明は簡略になるが、こちらの証明がやや大変になる。(後の記事を考えて、その方針は別記事で証明を行う。)

まず、次の式を示す。[これのk=1の時を前定理の証明内で示した]
(1x2)dTnk+2dxk+2(x)(2k+1)xdTnk+1dxk+1(x)=(k2n2)dTnkdxk(x)
帰納法で簡単に示せる。k=0の時は
(1x2)Tn(x)xTn(x)=n2Tn(x)
でありこれはTnの満たす微分方程式そのもの。
さてk1の時の式
(1x2)dTnk+1dxk+1(x)(2k1)xdTnkdxk(x)=((k1)2n2)dTnk1dxk1(x)
xで微分すると、左辺は
(2x)dTnk+1dxk+1(x)+(1x2)dTnk+2dxk+2(x)(2k1)dTnkdxk(x)(2k1)xdTnk+1dxk+1(x)=(1x2)dTnk+2dxk+2(x)(2k+1)xdTnk+1dxk+1(x)(2k1)dTnkdxk(x)
である。最後のk階微分の項を右辺に回すと右辺は
(2k1)dTnkdxk(x)+((k1)2n2)dTnkdxk(x)=(k2n2)dTnkdxk(x)
となり、示された。

今示した式を使ってロドリゲスの公式を示す。
天下り的だが次の式を計算する:
ddx{(1x2)k+12dk+1dxk+1Tn(x)}
積の微分法を用いて計算すると次のように今示した式が使えて計算ができる。
ddx{(1x2)k+12dk+1dxk+1Tn(x)}=(k+12)(2x)(1x2)k12dk+1dxk+1Tn(x)+(1x2)k+12dk+2dxk+2Tn(x)=(1x2)k12{(2k+1)xdk+1dxk+1Tn(x)+(1x2)dk+2dxk+2Tn(x)}=(k2n2)(1x2)k12dkdxkTn(x)
すなわちgk(x)=(1x2)k12dkdxkTn(x)とおくとddxgk+1(x)=(k2n2)gk(x)
という簡単な式が導かれる。
gn(x)を計算するために、dndxnTn(x)を計算する必要がある。
n次多項式のn階微分なので、最高次係数の分だけが残り
dndxnTn(x)=dndxn(2n1xn+(n1 次以下の項))=2n1n!
と計算ができる。以上を合わせると
Tn(x)=(1x2)12g0(x)=(1x2)121n2ddxg1(x)=(1x2)121n2(1n2)d2dx2g2(x)==(1x2)121n2(1n2)(4n2)((n1)2n2)dndxngn(x)=(1x2)122n1n!n2(1n2)(4n2)((n1)2n2)dndxn(1x2)n12=(1)n(2n1)!!1x2dndxn(1x2)n12
がわかる。
Un(x)に関しても証明は全く同様なので省略する。(証明終わり)

このロドリゲスの公式もかなり良いが、具体的にxの何乗の係数が幾つであるかはn階微分をしないとわからない状況である。
今度はその係数を求めることを考える。

チェビシェフ多項式の一般項と超幾何関数

もっと一般的に書くためには、三項間漸化式を解けば良い。
Tn+2(x)2xTn+1(x)+Tn(x)=0Un+2(x)2xUn+1(x)+Un(x)=0
と同じ漸化式を満たしている点に注意する。(初項・第二項の条件が違うだけ)
高校数学である通り、特性方程式を解くことで実際に解を与えることができる。
特性方程式の解はλ=x±x21となるので、この漸化式は
C1(x)(x+x21)n+C2(x)(xx21)n
の形の一般項を持つことがわかる。初項・第二項の条件で係数を比較して
{Tn(x)=12{(x+x21)n+(xx21)n}Un(x)=12x21{(x+x21)n+1(xx21)n+1}
という形の一般項を得ることができる。(もう少し変形したいので定理にはしない)
しかし、このまま二項定理を用いて変形しても、係数は二項係数の積の和というあまり綺麗な形にならず、そこで行き詰まる。例えば具体的には
Tn(x)=k=0[n/2]{(1)kj=k[n/2](n2j)(jk)}xn2k
とまでは変形が容易にできるが、ここから先同じ結論に辿り着くために

j=k[n/2](n2j)(jk)=2n2k1n(nk1)!k!(n2k)!

という等式を示さねばならず、ここで詰まってしまった。
(ここまで読んで頂いた方で、ご存じな方がおられましたらコメント等書いていただけると有難いです。)

note: Gaussの2F1和公式から示せるのは確認できた。本末転倒な気しかしないが。
note: TKSS さんがk重和と望遠鏡和を用いた
すごく見た目の美しい証明記事を投稿して下さりました。
ありがとうございます。記事はこちら↓↓↓
チェビシェフ多項式の係数計算で現れる二項係数の和の計算ついて
(Un(x)に関しても同様の別の二項係数の積の和を考えねばならないが、上記事のやり方で解決する)
note: 後の私の記事「 チェビシェフ多項式の係数計算で現れる二項係数の和の計算について(解決編) 」にて
母関数を用いた美しい方法で証明をした。そちらもぜひ見てほしい。

別の方針

さて、方針を1から変えよう。
三項間漸化式の解き方は他にもある。

特に三角関数の対称性からもわかるが、Tn(x),Un(x)ともにnが偶数の時は偶関数、奇数の時は奇関数である。
そのため、
Tn(x)=k=0[n/2]ck(n)xn2k
とおき(先の中括弧の中を文字で置いた)これに関する漸化式として見たい。
Tn(x)の漸化式でも良いが、定理4の微分方程式
(1x2)Tn(x)xTn(x)+n2Tn(x)=0
を使った方が(nは変化しないので)見通しが立ちやすい。
xn2kの係数を取り出すと
(n2k+2)(n2k+1)ck1(n)(n2k)(n2k1)ck(n)(n2k)ck(n)+n2ck(n)=0
整理して
ck(n)=(n2k+2)(n2k+1)4k(nk)ck1(n)
及び初項c0(n)=2n1であるのでck(n)
ck(n)=(n2k+2)(n2k+1)4k(nk)ck1(n)=(n2k+2)(n2k+1)4k(nk)(n2k+4)(n2k+3)4(k1)(nk+1)ck2(n)==(1)k(n2k+1)(n2k+2)(n1)n4kk(k1)1(nk)(nk+1)(n1)c0n=(1)k2n12kn(nk1)!k!(n2k)!
これを用いると次のように書き表せる。
Tn(x)=k=0[n/2](1)k2n12kn(nk1)!k!(n2k)!xn2k=n2k=0[n/2](1)k(nk1)!k!(n2k)!(2x)n2k

ここまでで十分綺麗な形にはなった。なおUの方も同様にすると
Un(x)=k=0[n/2](1)k(nk)!k!(n2k)!(2x)n2k
であることが確かめられる。
しかし次の変形を考える:2倍角の公式を考えると
T2n(x)=T2n(cosθ)=cos2nθ=Tn(cos2θ)=Tn(2x21)
と書けるので、上の式でTn(2x21)を考えると
Tn(2x21)=T2n(x)=nk=0n(1)k(2nk1)!k!(2n2k)!(2x)2n2k=nk=0n(1)k(2nk1)!k!(2n2k)!22n2k(x2)nk
となる。最後に2x21xと置き直すと
Tn(x)=nk=0n(1)k(2nk1)!k!(2n2k)!22n2k(x+12)nk=nk=0n(1)nk(n+k1)!(nk)!(2k)!2k(x+1)k(k を nk と取り替えた)=nk=0n(2)k(n+k1)!(nk)!(2k)!(1x)k(x を x と取り替えた)
ここで最後の式では関数の偶奇性で(nが奇数の時は奇関数で)(1)nを掛けたことに注意されたい。

Uに関しては、同様の流れを追うよりは
今わかったTn(x)の一般項に、
定理4の証明中で用いたddxTn(x)=nUn1(x)を用いると計算が楽だろう。
これらを合わせて、次を得る。

(チェビシェフ多項式の超幾何関数による表示)

チェビシェフ多項式Tn(x)及びUn(x)は次の表示がある。
Tn(x)=nk=0n(2)k(n+k1)!(nk)!(2k)!(1x)k=k=0n(n)k(n)k(1/2)k(1)k(1x2)kUn(x)=k=0n(2)k(n+k+1)!(nk)!(2k+1)!(1x)k=(n+1)k=0n(n+2)k(n)k(3/2)k(1)k(1x2)k
ここで(a)k=a(a+1)(a+k1)=(a+k1)!(a1)!は上昇階乗である。

note: 上の変形で用いた上昇階乗の値を幾つか説明をつける。
(1)k=12n=n!(n)k=(n)(n+1)(n+k1)=(1)kn!(nk)!(1/2)k=12322k12=(2k1)!!2k=(2k)!22kk!=(2k1)!22k1(k1)!(3/2)k=(2k+1)!22kk!

以上からチェビシェフ多項式は、上昇階乗のいくつかの比を係数にもつべき級数として書き表すことができる。その形の級数を超幾何関数と呼ぶ。(後の記事で改めて定義します)
超幾何関数は様々な直交多項式や初等関数・特殊関数を包含する。さらに波動関数・場の理論をはじめとする物理学、量子力学、統計学、確率論、と応用例を挙げると枚挙にいとまがない。

まとめ

第1回目の本記事では、三角関数のn倍角の公式から自然に考えられるチェビシェフ多項式を例に挙げ、それらがもたらす諸性質について述べた。次の記事以降では、直交多項式の言葉を定義しそれらの性質について述べ、また様々な直交多項式の例を挙げようと思う。
# いつ超幾何関数の議論ができる日が来るのか…

参考文献

[1]
Mason, J.C., & Handscomb, D.C., Chebyshev Polynomials (1st ed.). , Chapman and Hall/CRC., 2002
[2]
Roelof Koekoek, Peter A. Lesky, René F. Swarttouw, Hypergeometric Orthogonal Polynomials and Their $q$-Analogues, Springer Monographs in Mathematics, Springer Berlin, Heidelberg, 2010
投稿日:2024420
更新日:20241211
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整数論を研究中。 本音は組合せ論がやりたい。 最近は直交多項式・超幾何級数にお熱。 だけど幾何と解析は鬼弱い。

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  1. n倍角の公式
  2. チェビシェフ多項式
  3. チェビシェフ多項式の満たす諸性質
  4. チェビシェフ多項式の一般項と超幾何関数
  5. まとめ
  6. 参考文献