いよいよ
この記事を書くときが来てしまった気がした。
近ごろ急に直交多項式を勉強する動機ができたので。
その動機の内容は追々語れる日が来るといいのだが。
ここから連載企画として、「直交多項式と超幾何関数」について記事を書くことにする。
本日は第1回目なので、チェビシェフ多項式の話。
この多項式に関しては本Mathlog内でも充分なほど記事があるが
改めて記事を立てることとする。
意外と(チェビシェフ多項式だけで)証明を完結させるのが大変だったり。
#前記事のベッセル多項式は第0回ってことで
#ベッセル多項式も改めて書き直しますが
古くから
「チェビシェフ多項式は数値解析において至るところ稠密である」
などと言われてきたほど重要な多項式族である。
まずは、それらが顔を出す1番よく知られた状況の説明をする。
さて、三角関数と言えば、高校生のときに
2倍角3倍角と言えば私の中学入試を思い出して頭がウッッってなる。笑
(
それはさておき、
(注意) ここで
という変形をしておいた方が今後のために良いと思われる。
さて、
これにより、
例えば
がわかり、ここに上の
などと計算ができる。この計算を繰り返すと一般の
…と書いてもわかった気にならない。閉じた形の式が欲しい。
漸化式が出ている状況なので文字を置こう。
ここで次のように第一種・第二種チェビシェフ多項式を定める。
次の式を満たす整数係数の多項式族
このとき
(注)
さてこのように定めたチェビシェフ多項式が満たす漸化式を、先の和積の公式から導く。
(厳密なことを言うと、その漸化式で定義するべき)
例えば
であったので
がわかる。一方で
であったので
がわかる。
以上をまとめると、次の定理が従う。
上で定めたチェビシェフ多項式
三項間漸化式は複数の直交多項式が満たす性質の1つである。(後の記事で記述予定)
第一種・第二種それぞれ最初の10項を掲載する。
<第一種チェビシェフ多項式>
<第二種チェビシェフ多項式>
さてここからチェビシェフ多項式に関わる性質を紹介する。
まず残り2つの和積の(と言うより差を積にする)公式を用いることで、次がわかる。
この定理が意味するのは、一方がもう一方を用いて表されることである。
(なお後の定理4の証明内で、より使いやすい関係式
次の定理は、直交多項式の名前で呼ばれる所以の定理である。
ここで
また
この定理は三角関数の積分に帰着させることで証明する。
まず最初に上の
三角関数の積和の公式を用いて計算する。以下3つに分けて計算する。
・
・
・
となり計算ができる。
次に
となり、これも積和の公式を用いることで同様の計算ができる。(証明終わり)
note: チェビシェフ多項式は、これら重み関数に関する内積による多項式の空間の直交基底とみなせる
(シュミットの直交化法、これも後の記事で)
次の微分方程式、及びその次のロドリゲスの公式も直交多項式論においてはかなり重要な役目を担う。
(note: それぞれの微分方程式の一般解は、前者は
かなりゴリゴリに計算をする。と言うか定義から計算可能(もう少しいい証明があるかも)
まず
ここで
となり、
次に
と商の微分公式を用いることで計算ができる。
次に2階微分だが、
以上より
となり、
次に計算の恐ろしい
本定理の証明内で示した
すなわち、微分方程式
を1回
がわかる。整理すると次を得る。
ここで
が得られるので
続いてチェビシェフ多項式の一般項を与える公式の1つ、ロドリゲスの公式である。
証明は上の微分方程式を利用して行う。([2] pp.62-64による)
もちろんこちらを先に直接示すこともできる;その場合微分方程式の証明は簡略になるが、こちらの証明がやや大変になる。(後の記事を考えて、その方針は別記事で証明を行う。)
まず、次の式を示す。[これの
帰納法で簡単に示せる。
でありこれは
さて
を
である。最後の
となり、示された。
今示した式を使ってロドリゲスの公式を示す。
天下り的だが次の式を計算する:
積の微分法を用いて計算すると次のように今示した式が使えて計算ができる。
すなわち
という簡単な式が導かれる。
と計算ができる。以上を合わせると
がわかる。
このロドリゲスの公式もかなり良いが、具体的に
今度はその係数を求めることを考える。
もっと一般的に書くためには、三項間漸化式を解けば良い。
と同じ漸化式を満たしている点に注意する。(初項・第二項の条件が違うだけ)
高校数学である通り、特性方程式を解くことで実際に解を与えることができる。
特性方程式の解は
の形の一般項を持つことがわかる。初項・第二項の条件で係数を比較して
という形の一般項を得ることができる。(もう少し変形したいので定理にはしない)
しかし、このまま二項定理を用いて変形しても、係数は二項係数の積の和というあまり綺麗な形にならず、そこで行き詰まる。例えば具体的には
とまでは変形が容易にできるが、ここから先同じ結論に辿り着くために
という等式を示さねばならず、ここで詰まってしまった。
(ここまで読んで頂いた方で、ご存じな方がおられましたらコメント等書いていただけると有難いです。)
note: Gaussの
note:
TKSS
さんが
すごく見た目の美しい証明記事を投稿して下さりました。
ありがとうございます。記事はこちら↓↓↓
チェビシェフ多項式の係数計算で現れる二項係数の和の計算ついて
(
note: 後の私の記事「
チェビシェフ多項式の係数計算で現れる二項係数の和の計算について(解決編)
」にて
母関数を用いた美しい方法で証明をした。そちらもぜひ見てほしい。
さて、方針を1から変えよう。
三項間漸化式の解き方は他にもある。
特に三角関数の対称性からもわかるが、
そのため、
とおき(先の中括弧の中を文字で置いた)これに関する漸化式として見たい。
を使った方が(
整理して
及び初項
これを用いると次のように書き表せる。
ここまでで十分綺麗な形にはなった。なお
であることが確かめられる。
しかし次の変形を考える:2倍角の公式を考えると
と書けるので、上の式で
となる。最後に
ここで最後の式では関数の偶奇性で(
今わかった
定理4の証明中で用いた
これらを合わせて、次を得る。
チェビシェフ多項式
ここで
note: 上の変形で用いた上昇階乗の値を幾つか説明をつける。
以上からチェビシェフ多項式は、上昇階乗のいくつかの比を係数にもつべき級数として書き表すことができる。その形の級数を超幾何関数と呼ぶ。(後の記事で改めて定義します)
超幾何関数は様々な直交多項式や初等関数・特殊関数を包含する。さらに波動関数・場の理論をはじめとする物理学、量子力学、統計学、確率論、と応用例を挙げると枚挙にいとまがない。
第1回目の本記事では、三角関数の
# いつ超幾何関数の議論ができる日が来るのか…