12
大学数学基礎解説
文献あり

コネクターを勉強してみる

609
0
$$$$

目次

・はじめに
・等式の証明
・コネクターの話
・追記
・最後に

はじめに

どうも、色々やる数学徒です。
今回は 僕の記事 で紹介だけしている等式(↓)の証明とその深掘りをしてみます。

$\displaystyle \zeta(3)=\sum_{(n,m)\in\mathbb N^2}\frac{n!m!}{n^2m(m+n)!}$

たまたま積分で遊んでたらコネクターの話に繋がっている等式だったらしく感動しました。🥺

等式の証明

とりあえず示しましょう。

$\displaystyle \zeta(3)=\sum_{(n,m)\in\mathbb N^2}\frac{n!m!}{n^2m(m+n)!}$

エスパーすることで朧げながら下のような積分を考えれば良いことがわかるので後は地道に計算します。
\begin{align} \int_{0< t_1< t_2<1}\frac{\ln t_2}{t_2(1-t_1)}dt_1dt_2 &=\int_0^1\frac{\ln t_2}{t_2}dt_2\int_0^{t_2}\frac{dt_1}{1-t_1}\\ &=\sum_{n=1}^{\infty}\int_0^1\frac{\ln t_2}{t_2}dt_2\int_0^{t_2}t_1^{n-1}dt_1\\ &=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n}\int_0^1t_2^{n-1}\ln t_2dt_2\\ &=-\sum_{n=1}^{\infty}\sum_{m=1}^{\infty}\frac{1}{mn}\int_0^1t_2^{n-1}(1-t_2)^mdt_2\\ &=-\sum_{n=1}^{\infty}\sum_{m=1}^{\infty}\frac{1}{mn}\frac{\Gamma(m+1)\Gamma(n)}{\Gamma(m+n+1)} \\ &=-\sum_{(m,n)\in\mathbb N^2}\frac{m!(n-1)!}{mn(m+n)!} \\ &=-\sum_{(m,n)\in\mathbb N^2}\frac{n!m!}{n^2m(m+n)!}…(1) \end{align}
級数展開せずに積分してみると
\begin{align} \int_{0< t_1< t_2<1}\frac{\ln t_2}{t_2(1-t_1)}dt_1dt_2 &=\int_0^1\frac{\ln t_2}{t_2}dt_2\int_0^{t_2}\frac{dt_1}{1-t_1}\\ &=-\int_0^1\frac{\ln t_2\ln(1-t_2)}{t_2}dt_2\\ &=-\left[-\textup{Li}_2(t)\ln t\right]_0^1-\int_0^1\frac{\textup{Li}_2(t)}{t}dt\\ &=-\textup{Li}_3(1)\\ &=-\zeta(3)…(2) \end{align}
(1),(2)より上記の等式を得る

と、ここまでが僕が自力で出せたところ。(少ない!簡単!)
上の数式をOCやTwitterにて投稿してみたところコネクターやら和公式なるものがあることがわかりました。

以下はヨヨヨに勧められて読んだ NKSσさんの記事 ヨヨヨさんの記事 で勉強したことを書き留めておきます。記法はこれらの記事に順守しています。(矢印記法など)
やっぱりヨヨヨさんたちの記事は読みやすいですね、見習いたいです。
個人的にこの 記事 とか計算方法がわかりやすく書いてあっておすすめです。

コネクターの話

先に多重ゼータを初見の方もいると思うので定義などサラッと書いておきます。
詳しくは こちら をご覧ください。

多重ゼータ値(MZV)

$\displaystyle \zeta( k_1,…,k_r):=\sum_{0< n_1<\cdots< n_r}\frac{1}{n_1^{k_1}\cdots n_r^{k_r}}$

ここの$k_1,…,k_r$をインデックスとよび、$\mathbf k$などと表します。
これに対し次のように矢印を考えます。

$\mathbf k_{\to}=(k_1,…,k_r,1)$
$\mathbf k_{\uparrow}=(k_1,…,k_r+1)$
必要なら$\varnothing_{\to}=1$とする

次にこの多重ゼータ値における双対性を考えます。

MZVの双対性

$\zeta(\mathbf k)=\zeta(\mathbf k^{\dagger})$

いやもう、キレイすぎて…本質をきちんと理解できてなくてもこのシンプルさに毎度驚かされます。(ヨヨヨの記事にわかりやすく証明が書かれています)
ここで
$\displaystyle \mathbf k:=(\{1\}^{a_1-1},b_1+1,…,\{1\}^{a_r},b_r)$
$\displaystyle \mathbf k^{\dagger}:=(\{1\}^{b_r-1},a_r+1,…,\{1\}^{b_1-1},a_1+1)$

ヨヨヨの双対性1では確か変数変換してどうの…みたいな感じで証明していましたが(別記事ではコネクター使っていました)コネクターという道具を用いることでも示せるようです。

上で定義し直したインデックスたちを$\varnothing$で表してみます。
$\mathbf k=\varnothing_{\to^{a_1}\uparrow^{b_1}…\to^{a_r}\uparrow^{b_r}}$
$\mathbf k^{\dagger}=\varnothing_{\to^{b_r}\uparrow^{a_r}…\to^{b_1}\uparrow^{a_1}}$
なんだかやろうとしていることが見えてきましたね。
こうして$\varnothing$を使って書き直してみると矢印が運ばれているみたいですよね。
このことから輸送という単語を使うみたいです。(なんだかオシャレですね)

以上のことから$Z(\mathbf k_{\to};\mathbf l)=Z(\mathbf k;\mathbf l_{\uparrow})$

$Z(\mathbf k_{\uparrow};\mathbf l)=Z(\mathbf k;\mathbf l_{\to})$
を満たす$Z(\mathbf k;\mathbf l)$を考え$\zeta(\mathbf k)=Z(\mathbf k;\varnothing)$であることから双対性を示せるようです。

$\displaystyle Z(\mathbf k;\mathbf l):=\sum_{\begin{gathered}[2]0=n_0< n_1<\cdots< n_r\\0=m_0< m_1<\cdots< m_s\end{gathered}}\frac{1}{\mathbf n^{\mathbf k}\mathbf m^{\mathbf l}}C(n_r,m_s)$

上で$\mathbf n$と書いてますが$n_0,…,n_r$のことです。
なんでこんなふうに定義しようと思ったんですかね…
すると NKSσさんの記事 によると$C(0,m)=1,\frac{n!m!}{(n+m)!}$がわかり、以上から1番最初の等式を証明できます。

\begin{align} \zeta(3)&=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^3}C(n,0)\\ &=\sum_{(n,m)\in\mathbb N^2}\frac{1}{n^2m}C(n,m)\\ &=\sum_{(n,m)\in\mathbb N^2}\frac{n!m!}{n^2m(n+m)!} \end{align}

キモチェー!!!
さらにこれは本質ではなくより変形を続けるとオイラーが導出したという$\zeta(3)=\zeta(1,2)$を示すことができます。(オイラーの証明方法は九大のpdfにあったと思います)

追記

$\colorbox{cyan}{更新予定}$
山本積分表示などについて理解できたら追記します。

最後に

多重ゼータは僕みたいなやつでも計算自体はできたりするのにそれだけではないようですね。
奥が深そうです。

双対性のことをつい最近まで「そうたいせい」と呼んでいました。
漢字むずかちい

参考文献

投稿日:210
更新日:212

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

色数
色数
169
16063
分野の好き嫌いはしないンゴ

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中