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現代数学解説
文献あり

微分方程式と保型形式

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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{Aut}[0]{\operatorname{Aut}} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{d}[0]{\delta} \newcommand{D}[0]{\tilde{D}} \newcommand{dis}[0]{\displaystyle} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{F}[4]{{}_2F_1\left(\begin{matrix}#1,#2\\#3\end{matrix};#4\right)} \newcommand{farc}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{G}[0]{\Gamma} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{Gal}[0]{\operatorname{Gal}} \newcommand{H}[0]{\mathbb{H}} \newcommand{id}[0]{\operatorname{id}} \newcommand{Im}[0]{\operatorname{Im}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{l}[0]{\left} \newcommand{L}[0]{\Lambda} \newcommand{la}[0]{\lambda} \newcommand{La}[0]{\Lambda} \newcommand{Li}[0]{\operatorname{Li}} \newcommand{li}[0]{\operatorname{li}} \newcommand{M}[4]{\begin{pmatrix}#1& #2\\#3& #4\end{pmatrix}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{o}[0]{\omega} \newcommand{O}[0]{\Omega} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{ord}[0]{\operatorname{ord}} \newcommand{P}[0]{\mathfrak{P}} \newcommand{p}[0]{\mathfrak{p}} \newcommand{q}[0]{\mathfrak{q}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{r}[0]{\right} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Re}[0]{\operatorname{Re}} \newcommand{s}[0]{\sigma} \newcommand{t}[0]{\theta} \newcommand{u}[0]{\tilde{u}} \newcommand{ul}[1]{\underline{#1}} \newcommand{vp}[0]{\varphi} \newcommand{vt}[0]{\vartheta} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} \newcommand{z}[0]{\tilde{z}} \newcommand{ZZ}[1]{\mathbb{Z}/#1\mathbb{Z}} \newcommand{ZZt}[1]{(\mathbb{Z}/#1\mathbb{Z})^\times} $$

はじめに

 この記事では二階線形微分方程式
$$\frac{d^2u}{dz^2}+P(z)\frac{du}{dz}+Q(z)u=0$$
の保型形式による解について解説していきます。

モノドロミー群の作用と保型形式

  前回の記事 では$P,Q$が領域$D$において正則であれば$D$の普遍被覆面$\D$上で正則な解$\tilde{u}=p^*u$が取れることを紹介したのであった。
 いまある基本解$\u_1,\u_2$に関するモノドロミー群$\G$$SL(2,\R)$の離散部分群で商空間$\G\backslash\H$を体積有限とするもの、つまり 第一種のFuchs群 であるものとする。このとき$\D$上の有理型関数$\tau:\D\to D'$
$$\tau=\frac{\u_1(\z)}{\u_2(\z)}$$
によって定めると、これは被覆変換$\g$の作用によって
$$\g^*\tau=\frac{a\u_1+b\u_2}{c\u_1+d\u_2}=\frac{a\tau+b}{c\tau+d}$$
と変換される。したがって$D'$$\G$の作用に対して不変となる(参考文献ではこのことから$D'$は上半平面か下半平面となることがわかるらしいが、そのことは簡単に示せるのだろうか)。
 ここで簡単のため$D'=\H$および$\tau:\D\to\H$は全単射であるものと仮定する。このとき$\tau$の逆像$F:\H\to\D$と被覆写像$p:\D\to D$の合成を$f=p\circ F$とおくと$f(\tau)=f(\g*\tau)=p(\z)$よりこれは
$$f\l(\frac{a\tau+b}{c\tau+d}\r)=f(\tau)$$
を満たす、つまり$\G$-保型関数となることがわかる。
 また$\z=F(\tau)$とおいて$\u_2$$\tau$についての関数とみなすと、これは
$$\u_2(\g^*\tau)=c\u_1+d\u_2=(c\tau+d)\u_2(\tau)$$
を満たす、つまり重さ$1$$\G$-保型形式となることがわかる。

具体例

 例えば超幾何微分方程式
$$z(1-z)\frac{d^2u}{dz^2}+(1-2z)\frac{du}{dz}-\frac14u=0$$
の基本解として
$$u_1=\F{\frac12}{\frac12}1{1-z},\quad u_2=\F{\frac12}{\frac12}1z$$
を取ったとき
$$\tau=\frac{iu_1(z)}{u_2(z)}$$
とおくと
$$z=\frac{\t_2(\tau)^4}{\t_3(\tau)^4},\quad u_2=\t_3(\tau)^2$$
が成り立つことが知られている。ただし
$$\t_2(\tau)=\sum^\infty_{n=-\infty}q^{(n+\frac12)^2},\quad \t_3(\tau)=\sum^\infty_{n=-\infty}q^{n^2}\qquad(q=e^{\pi i\tau})$$
とした(この公式については この記事 にて証明している)。

 また例えば超幾何微分方程式
$$z(1-z)\frac{d^2u}{dz^2}+(1-2z)\frac{du}{dz}-\frac29u=0$$
の基本解として
$$u_1=\F{\frac13}{\frac23}1{1-z},\quad u_2=\F{\frac13}{\frac23}1z$$
を取ったとき
$$\tau=\frac2{\sqrt3}\frac{iu_1(z)}{u_2(z)}$$
とおくと
$$z=\frac{c(\tau)^3}{a(\tau)^3},\quad u_2=a(\tau)$$
が成り立つことが知られている。ただし
\begin{align*} a(\tau)&=\sum^\infty_{m,n=-\infty}q^{m^2+mn+n^2}\\ c(\tau)&=\sum^\infty_{m,n=-\infty}q^{(m+\frac13)^2+(m+\frac13)(n+\frac13)+(n+\frac13)^2} \qquad(q=e^{\pi i\tau}) \end{align*}
とした(この公式については この記事 にて紹介している。ただし上の式とは$q$の置き方が異なることに注意する)。

 ちなみにラマヌジャンは超幾何関数
$$F_s(z)=\F{\frac1s}{1-\frac1s}1z\qquad(s=2,3,4,6)$$
に対し
$$\tau=\frac1{\sin\frac\pi s}\frac{iF_s(1-z)}{F_s(z)}$$
および$q=e^{\pi i\tau}$とおくといい感じの理論が展開できることを予想していたが、実際それは上のような理論によって裏付けられることがわかる。

参考文献

[1]
久賀道郎, ガロアの夢:群論と微分方程式, 日本評論社, 1966
投稿日:2023125

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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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