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競技数学解説
文献あり

Feuerbach点について

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かえでです.
Feuerbach点について書きます.

必ず作図ソフト(特にGeogebra)で作図をしながら読んでください.(たとえ図を無しに理解ができたとしてもです)

Feuerbachの定理

Feuerbachの定理

正三角形でない三角形について,その九点円は内接円に内接し,3つの傍接円に外接する.

九点円と内接円の接点をFeuerbach点といい,傍接円との接点を外Feuerbach点という.

この内接円と九点円の接点には様々な性質が含まれている.沢山の視点を導入して一つ一つ見ていこう.

また,作図について,TriangleCenterやConicなどのコマンドについては必ず確認しておくことを勧める.

Euler-Poncelet点

まず,Euler-Poncelet点について考えよう.Euler-Poncelet点はEP点,Poncelet点とも言われるが,ここでは以降Poncelet点を採用する.

Poncelet点

四点$A,B,C,P$について,三角形$ABC,BPC,CPA,APB$の九点円及び$P,A,B,C$における垂足円は一点で交わる.この点を四点$A,B,C,P$のPoncelet点という.

証明は省略する.

以下,次のように点を定義する.

基準三角形を$AB< AC$なる不等辺鋭角三角形$ABC$とし,その内心を$I$$A$-傍心を$I_A$,外心を$O$,垂心を$H$,九点円心を$N_9$,Feuerbach点を$Fe$$A$-外Feuerbach点を$Fe_A$,外接円を$\Gamma$,内接円を$\omega$$A$-傍接円を$\omega _A$,九点円を$\Omega$とする.また,$\omega$と直線$BC,CA,AB$の接点をそれぞれ$D,E,F$とし,$BC,AI$の中点をそれぞれ$M,N$とする.さらに,$K = AI \cap BC$とし,$AI$について$D$と対称な点を$P$$AP$$\omega$と再び交わる点を$Q$$\omega$における$D$の対蹠点を$S$とする.

$Fe$$A,B,C,I$のPoncelet点である.

$Fe$$\Omega$($=$三角形$ABC$の九点円)と$\omega$($=$$I$の三角形$ABC$における垂足円)の唯一の交点なのでよい.

今後展開されるすべての構図は定理2が根本原理になっていることに留意して,いくつかの構図を見ていこう.

$Fe,N,S$は共線である.

$BI$の中点を$N_B$とすれば定理2より$N,N_B,F,Fe$は共円である.よって$\angle NFeF = 180^{\circ} - \angle NN_BF = 180^{\circ} -\angle SEF = \angle SFeN$となって示される.

証明から分かるように,定理3はより一般に$I$を任意の点$P$に,$Fe$$A,B,C,P$のPoncelet点に置き換えても成り立つ.
(ISL'18G4でこれがそのまま出題されたこともあるので要チェックである)

$A,Fe,N,Q$は共円である.

直線$AI$$\Gamma$と再び交わる点を$V$$A$-Mixtilinear Excircleと$\Gamma$の接点を$T_A$とする.直線$AQ$と直線$AD$は等角共役だから$A,Q,T_A$は共線であり,さらにこれは$\Gamma$$\omega$の内相似中心を通る.ゆえに$\angle NAQ=\angle VAT_A = \angle QFeS$である.一方定理3から$\angle QFeS = \angle QFeN$であるから示される.

実は,Feuerbach点は角の二等分線や直線$BC$でのreflection(対称移動)と相性がよい場合が多い.これゆえにMixtilinearが登場したのであって,Feuerbach点とMixtilinearとで直接的な関係が強いわけではないことに注意が必要である.

Orthopole / Orthotransversal

さて,視点を追加してFeuerbach点をFeuerbach点たらしめている構図について考察していこう.

Orthopole

三角形$ABC$と直線$l$について,$A,B,C$から$l$に下ろした垂線の足をそれぞれ$X,Y,Z$とする.このとき,$X$を通り$BC$に垂直な直線,$Y$を通り$CA$に垂直な直線,$Z$を通り$AB$に垂直な直線は一点で交わる.この共点を三角形$ABC$における$l$のorthopoleという.

Orthotransversal

三角形$ABC$と点$P$について,$P$を通り$AP$に垂直な直線と直線$BC$の交点,$P$を通り$BP$に垂直な直線と直線$CA$の交点,$P$を通り$CP$に垂直な直線と直線$AB$の交点は共線である.この直線を三角形$ABC$における$P$のorthotransversalという.

$Fe$は直線$OI$のorthopoleである.

重心座標を用いればよい.詳しくは Computer Discovered Mathmatics: Orthopoles を見よ.
(ただし,より一般的な直角双曲線やPoncelet点の知識があれば,"内心が等角共役において不変であること"に注目することで系として容易に示すことができる.)

直線$OI$$Fe$のorthotransversalである.

過去の記事 (の定理4)を見よ.Second Fonteneの定理を認めれば容易に証明可能である.

さて,2つの非常に強い結果を得た.これらを用いて幾つかの構図を証明していこう.

$A$から$OI,BC$に下ろした垂線の足をそれぞれ$Z,H_A$とし,$X=OI \cap BC$とする.このとき,$A,Fe,Z,H_A,X$は共円であり,さらに$AH_A \parallel FeZ$である.

定理6から$Fe,Z,H_A$はすべて$AX$を直径とする円に乗る.また,定理5から$FeZ \perp BC$である.

$AIO \sim FeDM$である.

$Fe$から直線$BC$に下ろした垂線の足を$W$とする.定理7から,$AZIOX \sim FeWDMX$ である.

$Fe,P,M$は共線である.

定理8から$\angle MFeD = \angle OAI = \angle PFeD$となる.

多くの$Fe$$+$束縛条件1つの構図が定理3,8,9から演繹できる.

練習問題1

@yyaa_math より

$\angle AOI = 90^{\circ}$のとき,$AFe=HFe$を示せ.

解答 定理8から$\angle FeMD = 90^{\circ}$なので,$Fe$は直線$OM$上にあり,定理7から$AFe=OH_A$である.一方,今$\Omega$の中心$N$について$O$$H$$Fe$$H_A$は対称なので,$OH_A=HFe$である.
有名事実

$OI \parallel BC$$\angle AIH =90^{\circ}$は同値であることを示せ.

解答 定理7から明らか.
(この事実には非常に数多くの証明が存在する.この構図のもとで成り立つ諸性質の探索と併せて自ら考察してみるとよい.)
OMCG001(J)改題

$AI$$\Omega$と再び交わる点を$V$とする.$N,O,Fe$がすべて相異なり,共線であるとき,
(a)$I,O,H_A$の共線を示せ.
(b)$DV=OI$を示せ.

解答 $I$から$AH$に下ろした垂線の足を$H_I$$DH_I$の中点を$M_I$とする.定理3から,$N,S,O$は共線である.よって,$OSI \sim ONM_I$から$O,I,M_I,H_A$は共線である.一般に$H_I,D,V$は共線であるから,対称性より$M_I,D,V$は共線であり,$OIDV$$ID \parallel OV$なる等脚台形である.
@yyaa_math より

直線$OI$と直線$CA,AB$の交点をそれぞれ$X_B,X_C$とし,$BX_B,CX_C$の中点をそれぞれ$M_B,M_C$とする.$O$について$M_BM_C$と対称な点を$O_M$としたとき,$Fe,I,O_M$の共線を示せ.

解答  工事中 

$M_BM_C$について$Fe$と対称な点を$Fe_M$とする.$Fe_M$$\Gamma$上にあり,さらに$Fe_M,H,Fe$は共線であることを示せ.

解答
工事中

$I$$\Gamma$について反転した点を$I_{\Gamma}$とする.直線$I_{\Gamma}Fe$は三角形$ABC$のEuler線と平行であることを示せ.

解答
Eulerの定理より$OI^2= R^2-2Rr$である.よって$\frac{OI_{\Gamma}}{OI} = \frac{R^2}{R^2-2Rr} = \frac{R}{R-2r} = \frac{N_9Fe}{N_9I}$ と計算できるため示される.
Telv CohlのBlog より

三角形$ABC$の重心を$G$,de Longchamps点($O$について$H$と対称な点)を$L$とする.$Fe$は円$ABC$と円$IGL$の根軸上にあることを示せ.

ヒント
問題5を使う.
解答
Telv Cohl の Feuerbach point lies on Radical axis
AoPSより改題

三角形$ABC$において,その外接円$\omega$における点$A,B,C$での接線の成す三角形を三角形$XYZ$とし,$A,B,C$の対蹠点をそれぞれ$A',B',C'$とする.直線$XA',YB',ZC'$$\omega$と再び交わる点をそれぞれ$P,Q,R$とし,$AP,BQ,CR$の中点をそれぞれ$M_a,M_b,M_c$とするとき,円$M_aM_bM_c$$\omega$と接することを示せ.

解答
基準三角形を三角形$XYZ$とすれば,円$M_aM_bM_c$はその九点円を内接円$\omega$で反転した円になるので,Feuerbachの定理より示される.

Feuerbach双曲線

Poncelet束

三角形の外心を通る直線について,その等角共役による像は垂心を通る外接双曲線となる.この外接双曲線全体の集合をPoncelet束という.

Feuerbach双曲線

$A,B,C,H,I$を通る双曲線を三角形$ABC$のFeuerbach双曲線という.

Feuerbach双曲線はPoncelet束に属する.

直線$OI$の等角共役である.

垂心を通る外接双曲線は直角双曲線である.

@denta_math の 等角共役とシムソン線の幾何学 の補題2.4を見よ.

$A,B,C,H,P$を通る直角双曲線の中心は九点円上にあり,$A,B,C,P$のPoncelet点に等しい.

Feuerbach双曲線の中心は$Fe$に等しい.

円錐曲線をいきなり登場させてしまうと敷居が上がると感じたので伏せていたが,実はFeuerbach双曲線を用いることであらゆるFeuerbach点の構図を記述することができる.

三角形$ABC$のFeuerbach双曲線を$\mathcal{H}$とする.

三角形$ABC$のNagel点,Gergonne点,Schiffler点,Mittenpunktはすべて$\mathcal{H}$上にある.

※ 各点の定義は以下に載せる.
Nagel点 : $A$-傍接円と$BC$の接点を$T_A$とし同様に$T_B,T_C$を定めた時の$AT_A,BT_B,CT_C$の共点.
Gergonne点 : $AD,BE,CF$の共点.
Schiffler点 : 三角形$ABC,BIC,CIA,AIB$のEuler点の共点.
Mittenpunkt : 傍心三角形の類似重心.

Nagel点,Gergonne点の等角共役は内接円と外接円の相似中心なので直線$OI$上にある.また,Schiffler点は三角形$DEF$の垂心(これは直線$OI$上にある)の等角共役点である.Mittenpunktの等角共役点について,これは傍心三角形と三角形$DEF$の配景中心なので,直線$OI$上にある.

余談

不意に書いてみたくなったので,定理12のMittenpunktの等角共役点についての余談を挟む(本題とは関係がないので飛ばしてもらって構わない).
今,新たに基準三角形を$ABC$とし,その重心を$G$,垂心を$H$,類似重心を$K$とする.また,$H$の垂足三角形を$DEF$とし,$K$の三角形$DEF$における等角共役点を$L$とする.
三角形$DEF$を基準三角形として基準三角形$ABC$を傍心三角形と見ると,$K$が三角形$DEF$のMittenpunktであって,$L$がその等角共役点となることに注意せよ.
では定義に入ろう.

Cevian Triangle

三角形$ABC$と点$P$について,直線$AP$と直線$BC$の交点を$D$,直線$BP$と直線$CA$の交点を$E$,直線$CP$と直線$AB$の交点を$F$としたとき,三角形$DEF$を三角形$ABC$における点$P$のcevian triangleという.

Anticevian Triangle

三角形$ABC$と点$P$について,ある三角形$DEF$が一意に存在して,三角形$DEF$における点$P$のcevian triangleは三角形$ABC$となるので,この三角形$DEF$を三角形$ABC$における点$P$のanticevian triangleという.

Cevian Quotient

三角形$ABC$と点$P,Q$について,$P$のcevian triangleを$P_aP_bP_c$$Q$のAnticevian triangleを$Q_AQ_BQ_C$とする.このとき三角形$P_aP_bP_c$と三角形$Q_AQ_BQ_C$は配景的である.この配景の中心を$P,Q$のcevian quotientといい,$(P/Q)$で表す.

三線極線(Tripolar)

三角形$ABC$$P_aP_bP_c$の配景の軸を,点$P$の三線極線という.

三線極点(Tripole)

三角形$ABC$と直線$l$について,$l$がその三線極線となるような点$P$が一意に存在するので,この点$P$$l$の三線極点という.

Orthocorrespondent

三角形$ABC$と点$P$について,三角形$ABC$における点$P$のorthotransversalの三線極点を点$P$のorthocorrespondentという.

一見複雑に見えるものをいくつか定義したが,実はこれらはMittenpunktがFeuerbach双曲線上にあること,すなわちMittenpunktの等角共役がOI線上にあることと関係が深い.
構図をいくつか見ていこう.

三角形$ABC$と点$P$について,$P$のAnticevian triangleを$P_AP_BP_C$とし,$P$の三角形$ABC$における等角共役点を$Q$$P$の三角形$P_AP_BP_C$における等角共役点を$R$$P$のorthocorrespondentを$T$とする.このとき,$Q,R,T,(H/P)$は共線であり,$(R,T;Q,(H/P))=-1$である.

Telv Cohlの Investigate Orthocorrespondent using Inversion のProperty 3を見よ.

直角双曲線$ABCPH$と直線$P(H/P)$は接する.

Telv Cohlの Generalization of Lester's Theorem のLemma 1を見よ.

定理14については,@yyaa_math の orthotransversal のなす角について がより参考になるだろう.

双曲線$P_AP_BP_CP(H/P)$と直線$H(H/P)$は接する

三角形$P_AP_BP_C$を基準三角形とした上で,$H,P$のcrosspointを考慮すればよい.(非本質的すぎるが故,詳しい証明は省略する)

$P$$(H/P)$は三角形$DEF$について等角共役である.

証明略(後々書き入れる可能性あり)

類似重心のorthocorrespondentはEuler線上にある.

重心座標を用いればよい.詳しくは Orthocorrespondence and Orthopivotal Cubics を見よ.

いくつか構図を確認したが,ではここで$P$$K$にするとどうなるであろうか?
定理13と定理16について考えてみよう.
三角形$DEF$についてそのMittenpunktが$K$であることから,$K$の三角形$DEF$での等角共役点$L$$K$の三角形$ABC$での等角共役点$G$,そして定理17からEuler線上にあることが従う$K$のorthocorrespondentは共線である.すなわち,Mittenpunktの等角共役点が三角形$DEF$のEuler線,すなわち$OI$線上にあるということが示される.
また,ここで重要なことは逆に類似重心のorthocorrespondentの性質がMittenpunktという比較的扱いやすい点の性質から与えられることだろう.
cevian quotientやorthocorrespondentは円錐曲線と非常に相性が良いため,興味のある人はぜひ研究してみて欲しい所である.

本題

さて,Feuerbach双曲線の話に戻ろう.
この記事の補足を今述べておくと,Feuerbach点の構図の一部は有向角を用いて示すのが一般的であるが,今回簡略のためそれを無視して普通の角度を用いて証明を書く.

直線$OI$$I$$\mathcal{H}$に接する.

$OI$$\mathcal{H}$$I$とは異なる交点$S_1$を持つと仮定する.このときPoncelet束の定義から,$S_1$の等角共役点$S_2$は直線$OI$上にある.すなわち$I,S_1,S_2$は共線であるが,$S_1$は三角形$ABC$の内心及び傍心ではないので$S_1 \neq S_2$となり,Poncelet束の定義からこれは矛盾である.

定理18は非常に強い.$I$が等角共役において不変であることの重要性や強さが分かるとよい.
また,似た性質として以下が成り立つ.

$\mathcal{H}$$A$における接線と直線$AX$は等角共役である.

直線$BC$に限りなく近い点の等角共役点は点$A$に限りなく近い点であるのでよい.

定理20はPoncelet束に属する任意の直角双曲線で成り立つ主張である.

   

重要な構図の証明に用いる構図を紹介する.

$D$を通り直線$EF$に垂直な直線が$\omega$と再び交わる点を$H_D$とし,直線$EF$について点$I,O$と対称な点をそれぞれ$I_D,O_D$とする.このとき,$Fe,H_D,I_D,O_D$は共線である.

$H_D,I_D,O_D$は共線である.また,定理8より$\angle FeH_DD=180^{\circ}-\angle II_DO_D$なので$DH_D \parallel AI$より示される.

実は,定理21と定理3には大きな関係がある.すなわち定理3と定理21を含む強い一般化が存在している.ここでは詳しく述べないが,もしかしたら後半に追加するかもしれない.

$D,K,Fe,I_D$は共円である.

定理21より$Fe,H_D,I_D$は共線である.よって$DH_D \parallel KI_D$より,$FeI_D \cap BC$から$\omega$への方べきの値を$\frac{(FeI_D \cap BC)K}{(FeI_D \cap BC)D}$倍すればよい.

さて,以降非常に重要になる反Steiner点について考察していこう.

反Steiner点

三角形$ABC$とその垂心を通る直線$l$について,$l$を直線$BC,CA,AB$について対称移動した直線は円$ABC$上の一点で交わる.この点を三角形$ABC$における$l$の反Steiner点という.

$l$の反Steiner点のSteiner線が$l$であることに留意せよ.

三角形$ABC$の中点三角形における直線$OI$の反Steiner点は$Fe$である.

orthopoleの定義と定理7から明らか.

三角形$DEF$における直線$OI$の反Steiner点は$Fe$である.

三角形$DEF$の垂心が直線$OI$上にあることに注意せよ.(定理13の証明も参照すること)

定理21から明らか.

定理24は驚異的である.なぜなら三角形$DEF$を基準三角形に変えることで$Fe$の性質をEuler線の性質として扱うことができ,さらにその逆も可能という証明の渡し船にできるからである.
Poncelet点が作用しそうなら基準三角形を$ABC$にしてFeuerbach点として証明する.一方Poncelet点が作用せずFeuerbach点の性質として示すことが難しそうなときや,構図の一般化を考えるときには(稀ではあるが)基準三角形を$DEF$にしてEuler線(とその等角共役であるJerabeck双曲線)の性質として考察するといった具合である.

反Steiner点,さらに言えばある直線$l$についてSteiner線が$l$と平行になるような外接円上の点(これは一意である)は非常に性質が深い.
また,Steiner線の遠い一般化である張志煥截線についても要チェックである.

   

Feuerbach双曲線と外接円の第四交点($A,B,C$ではない交点※)についても性質が深いので考察していこう.
※第四交点が頂点と重なることはあるが,ここでは異なっている場合を考える.

とし,三角形$BIC$の垂心を$H_I$,直線$AH_I$と直線$BC$の交点を$Y$とする.

$\Gamma$$\mathcal{H}$の第四交点を新たに$Z$とする.このとき,$FeZ$の中点は$H$である.

$Fe$は九点円上の点であると同時に$\mathcal{H}$の中心である.ゆえに$H$を中心に$Fe$$2$倍した点は$Z$である他ない.

定理25は$\mathcal{H}$において$H$$Z$は互いに対蹠点であるという風に認識したい.では,この点についてさらに考察していこう.

直線$OI$について$A$と対称な点を$A_I (\in \Gamma)$とする.このとき,$ZA_I \perp BC$である.

定理7及びorthopoleの定義から,定理25と併せて直線$BC$を軸とする座標を考えれば直線$ZA_I$$Fe$を通り直線$BC$に垂直な直線を$H$中心に$2$倍に拡大した直線であると分かる.一方この直線は直線$BC$に直交しているので示される.

また,全く同様の議論から以下が成り立つことが分かる.

$BHC$$\mathcal{H}$の第四交点を$Z_H$とする.このとき,$AZ_H$の中点は$Fe$であり,$Z,Z_H,A_I$は共線である.

基準三角形を$BHC$に変えても$\mathcal{H}$は不変であるから,定理26と同様に議論すればよい.

また,以下が成り立つ.

$\Gamma$における$Z$の対蹠点を$Z'$とする.このとき,$Z'Z_H$の中点は$M$であり,$A_IZ' \parallel BC$である.

定理26及び定理27から四角形$AZZ_HH$は平行四辺形である.また,有名事実として$AH=2OM$であるから$Z'Z_H$の中点は$M$である.さらに,定理27から$Z_H$$A_I$は直線$BC$について対称である.よって$\angle Z_HA_IZ' = 90^{\circ}$となり定理26から$A_IZ' \parallel BC$が示される.

定理26~28はより一般にPoncelet束全体で成り立つことが知られている.つまり以下が成り立つ.

直線$OI$について$D$と対称な点を$D'$とする.このとき,$AD'=AFe$である.

定理24から,$FeD' \parallel EF$である.$D'$$\omega$上の点なので,$FeD'$の垂直二等分線は$A$を通る.

   

さて,一度第四交点は置いておいて,更にまた別の方向の構図を見ていこう.最終的に全ての構図がFeuerbach双曲線の周辺で再開するので,これまでの各構図も振り返りながら読んでいって欲しい.

三角形$BIC$の垂心を$H_I$とする.このとき,$H_I$$\mathcal{H}$上にある.

$\mathcal{H}$は三角形$BIC$の直角外接双曲線なので,その垂心も$\mathcal{H}$上に乗る.

この$H_I$には様々な性質がある.今回はFeuerbach点と関係のある構図の証明を目標に考えていこう.

三角形$BIC$の九点円心を$N_I$とする.このとき,$Y,I,N_I$は共線である.

直線$AI$$\Gamma$と再び交わる点を$V$とし,三角形$BIC$の重心を$G_I$とする.$V$は三角形$BIC$の外心なので,$H_I,N_I,G_I,V$は共線である.今$H_I,M,I_A$は共線なので,$(Y,K;D,M) \overset{H_I}{=} (A,K;I,I_A) = -1 = (N_I,V;H_I,G_I) \overset{I}{=} (IN_I \cap BC,K;D,M)$となるため示される.

$AH_I \cap BC$$Y$とする.このとき,直線$YFe$$\omega$に接する.

Poncelet点の定義から$N_ID=N_IFe$なので,直線$N_II$$AFe$の垂直二等分線である.よって定理31より$YD=YFe$であるが,一方直線$YD$$\omega$に接しているため示される.

定理31,32は後々登場する重要な事実である.必ず主張と証明を確認しておくこと.

では,武器が揃ったところで以下の構図を示していこうと思う.

東大寺数研懸賞問題 2024 P18 (created by @yyaa_math)

$AI$を直径とする円と$\Gamma$の交点を$Mi$とする.このとき,$A,Mi,X,Y$は共円である.

直線$XD'$$\omega$に接することに注意すれば,定理29及び定理32より直線$YFe$と直線$XD'$は直線$AI$上で交わる.この点を新たに$W$とすれば,三角形$WYX$とその内接円$\omega$と点$A$に3 Points DDITを適用することにより,$A$を通る直線束上のinvolutionであって,$(AY,AX),(AB,AC),(AD,AI)$がreciprocalなものの存在が分かる.これを直線$BC$に射影することで$(X,Y),(B,C),(D,K)$がreciprocalな直線$BC$上のinvolutionの存在が分かる.よって三円$\Gamma,ADK,AXY$はcoaxialであると分かる.一方有名事実として$\Gamma$と円$ADK$は点$Mi$で交わる.よって$A,Mi,X,Y$の共円が示される.

 
 
この章の最後に,complementについて考えよう.

Complement

重心を中心とする$-\frac{1}{2}$倍の相似拡大による図形$\mathcal{X}$の像を$\mathcal{X}$のcomplementという.

Anticomplement

重心を中心とする$-2$倍の相似拡大による図形$\mathcal{X}$の像を$\mathcal{X}$のanticomplementという.

complementのanticomplementは元の図形に等しい.
今回はanticomplementを基準にしていく.

$\Omega$のanticomplementは$\Gamma$である.

中点三角形のanticomplementは元の三角形なのでよい.

定理34を見ればPoncelet束やSteiner線とanticomplementは相性が良いことが予測できるであろう.まさにその通りである.

有名事実

$M_aM_bM_c$を三角形$ABC$の中点三角形とする.このとき,$2\max (FeM_a,FeM_b,FeM_c) = FeM_a+FeM_b+FeM_c$である.

定理8から$FeM_a = \frac{AO \times \vert CA-AB \vert}{2OI}$であり,$B,C$側も同様に定まるため示される.

$Fe$のanticomplementは$Z'$である.

三角形$AZ_HZ'$について,定理28からその重心は三角形$ABC$の重心に一致する.一方定理27から$Fe$$AZ_H$の中点であるので示される.

定理35,定理36を組み合わせることで,以下が従う.

$Z'A,Z'B,Z'C$のうち最大のものは,その他2つの和である.

定理37の直接的な応用は発見が難しいが,その他構図と組み合わせて考えることで様々な議論ができる.

$Z'$のSteiner線は直線$OI$に平行である.

定理36及び定理23から従う.

Reflection

定理4を示したときに,Feuerbach点はreflectionと相性がいいと書いたのを覚えているだろうか.
まさに,この章が本記事の山場である.

$M$について$I$と対称な点を$I_M$とする.このとき,$V,I_M,Z'$は共線である.

$M$について$A$と対称な点を$A_M$とする.三角形$A_MCB$の内心は$M_A$なので,重心のanticevian triangleを$A_MB_MC_M$とすれば,定理36より$Z'$は三角形$A_MB_MC_M$のFeuerbach点である.よって,三角形$A_MB_MC_M$を基準三角形として定理$3$を用いることにより示される.

$V$を直線$BC$について対称移動した点を$V'$とする.このとき,$V',N_I,I,Z_H,Y$は共線である.

定理31から$Y,I,N_I$は共線である.また,有名事実として頂点,九点円心,外心を対辺で対称移動した点は共線であるから,これを三角形$BIC$に適用して$I,N_I,V'$の共線を得る.さらに,定理38から$I,V',Z_H$の共線を得る.よって$V',N_I,I,Z_H,Y$は共線である.

さて,武器が一通り揃ったのでより強い定理を示していこう.

$A$-傍接円と直線$BC$の接点を$D_A$とする.このとき,$D,D_A,Fe,Fe_A$$V'$を中心とする円上にある.

直線$DFe$と直線$D_AFe_A$$\Omega$上の点で交わるので,この点からの方べきを考えることで$D,D_A,Fe,Fe_A$の共円を得る.一方定理32及び定理40から三角形$DD_AFe$の外心は$V'$であるため示される.

定理41にはこれ以外にも興味深い証明が存在しているので,簡略的に紹介していく.

直線$BC$との距離が$MN_9$であるような直線$BC$と平行な直線のうち,$A$に近い方を$l_p$とする.また,$N_9$を焦点とし$l_p$を準線とする放物線を$\mathcal{P}$とする.このとき,Feuerbachの定理から$I,I_A,M$$\mathcal{P}$上にあり,さらに放物線の有名事実から直線$V'I,V'I_A$$\mathcal{P}$に接している.一方放物線の有名事実から$N_9$は三角形$V'II_A$$V'$-Dumpty pointである.よってFeuerbachの定理から$\angle V'N_9Fe = \angle V'N_9Fe_A$となり,$V'Fe=V'Fe_A$が従う.

これは匿(@con_malinconia)氏による証明である.(詳しくは 第4回匿式図形問題エスパー杯(T-GUESS Cup 4) 問題Fの解説 を見よ)
実は,稀ではあるが放物線はその強い性質から複雑な幾何で補助円錐曲線として登場することがある.匿氏によるこの証明は放物線を用いる例として非常に好例である.
ここでは用いられていないが,放物線に興味のある人はぜひLambertの定理について調べることを勧める.では,次へ行こう.

$A,K,V',O$は共円である.

$BAC$の中点を$U$とする.$VK \times VA = VM \times VU = VV' \times VO$となるため示される.

直線$OI$が円$BIC$と再び交わる点を新たに$Q$とする.直線$BC$について$I,Q$と対称な点をそれぞれ$I',Q'$とするとき,$I,I',V,V',Q,Q'$は共円である.

定理42と同様の議論から$VV' \times VO = VI^2$が成り立つため,$\angle VV'I = \angle VIO$である.一方$\angle VIO = VQI$なので,$V,I,V',Q$は共円となり示される.

$Fe,I,Q'$は共線である.

定理41から,$\angle FeIV' = \angle VID$である.ゆえに$V'I'=V'Q'$に注意すれば定理43から,$\angle FeIV' + Q'IV' = \angle V'II' + \angle V'Q'I' =180^{\circ}$となり示される.

半直線$AH$上の点$O_2$$AO=AO_2$で定め,直線$AI$について$D,D_A$と対称な点を新たにそれぞれ$D',D_A'$とする.このとき,$Fe,Fe_A,D',D_A'$$O_2$を中心とする円上にある.

定理29から,$O_2Fe=O_2D'$である.また,$A$-傍接円で全く同様の議論を行うことで$O_2Fe_A=O_2D_A'$が従う.よって,$O_2D'=O_2D_A'$なので四点は$O_2$を中心とする円上にある.

$Fe,K,Fe_A$は共線である.

定理41と定理45から,三円$FeFe_ADD_A,FeFe_AD'D_A',DD'D_AD_A'$の根心を考えることができ,これは$K$である.よって,直線$FeFe_A$は点$K$を通る.

$I,D',M,X$は共円である.

$D'I \parallel AO$であるから,定理8及び定理9より$\angle D'MD = \angle AOI = \angle XID'$となり示される.

 
さて,定理44についてはさらなる興味深い見方が存在する.定理24で基準三角形について話したのを覚えているだろうか?
基準三角形を$I_ABC$として点$Q$を眺めてみよう.$I,O$の位置を考えれば,次のような事実が成り立つことが分かる.

$Q$は三角形$I_ABC$におけるEuler線の反Steiner点である.

これから定理44が即座に従うわけではない.だが,これのおかげで我々は基準三角形でない三角形のFeuerbach点や九点円心を扱うことができるようになった.実は,この事は最近私が気付いた事実で,他の人は全くと言っていいほど言及していない.新鮮な事実なので必ず抑えておくことをオススメする.    

大量に定理を並べていったが,定理41から定理46を見ればいかにFeuerbach点が$AI,BC$でのreflectionと相性が良いか分かるであろう.
また,少し前で述べたようにFeuerbach点のその性質は$I$が等角共役の不動点であるという事実が強く作用している.各傍心も等角共役の不動点であるから,内心側で成り立つことは傍心側でも成り立つ.このことに留意して,先の匿氏の記事などの外Feuerbach点の主張を考えると非常に見通しが良くなると思う.また,Involutionを知っている人は傍接円は内接円であるという認識を持つと理解の助けになるだろう.

その他の重要な構図

この章では,これまでに触れてこなかったが重要度が高い構図を紹介していく.(紹介に重点を置き,証明を省略することが多くあるので注意してほしい)

有名事実

直線$OI$または$\mathcal{H}$上の任意の点について,その垂足円は$Fe$を通る.

Second Fonteneの定理から従う.

Kariyaの定理(rewriting)

$I$を中心とする円と直線$ID,IE,IF$の交点をそれぞれ$D_t,E_t,F_t$とする.このとき,直線$AD_t,BE_t,CF_t$$\mathcal{H}$上で交わる.

Computer-assisted proofs of “Kariya’s theorem” with computer algebra で座標計算等によって証明されている.(計算に頼らない証明も可能である)

直線$EF$について$D$と対称な点を$D_D$とする.このとき,$A,D_D,X$は共線である.

AoPSの投稿 を見よ.

Dadgarnia より

$BDF$$F$における接線と円$CED$$E$における接線の交点を$L$とする.このとき,$A,L,X$は共線である.

AoPSの投稿 を見よ.

ka_Arc, yyaa

$X,D,Fe,D_D$は共円である.

直線$EF$について$Fe$と対称な点を$Fe_D$とする.定理8から,$\angle FeDX = \angle FeFe_DX$となり$Fe,Fe_D,D_D,D,X$の共円が従う.

$EF$の中点について$Fe$と対称な点を$Fe_M$とする.このとき,$Fe_M$$L$は円$\omega$における反転で移り合う.

基準三角形を$DEF$に変えた上で題を書き直せば,三角形$ABC$とそのEuler線の反Steiner点を$BC$の中点で対称移動した点を$Y$とするとき,円$BOY$が直線$AB$と接することを示せばよいが,三角形$ABC$の垂心を$H$とすれば,$\angle ABO = \angle HBC = \angle OYB$であるため示される.

ka_Arc, yyaa

$A,Fe,I,L$は共円であり,四角形$AFeIL$は調和四角形である.

定理54の結果を$\omega$で反転すればよい.

定理53

$\angle AFeL= \angle AIO$である.

定理53,定理55は私が最近発見した構図である.証明に協力してくれた@yyaa_math に感謝する.

有名事実

直角双曲線上に五点$X,X',Y,Y',Z$があり,$XX',YY'$はその直径であるとする.このとき,$\angle XZY = \angle X'ZY'$である.

$\mathcal{H}$上の点の任意の点$Z$について,その対蹠点を$Z'$としたとき,$\angle BZC$の外角の二等分線と$\angle BZ'C$の二等分線は$\mathcal{H}$上で交わる.

$\angle A$の外角の二等分線が$\mathcal{H}$と再び交わる点を$J$とする.このとき,$A,I,J,Z_H$は共円である.

定理27及び定理57から,直線$JZ_H$$\angle BZ_HC$を二等分する.今定理40より$I,Z_H,V'$は共線であるから,$\angle JZ_HI = 90^{\circ}$が従う.一方今$\angle IAJ = 90^{\circ}$であるから示される.

直線$AX$は円$AIJ$に接する.

定理20から,$\angle XAI$$\mathcal{H}$$A$における接線と直線$AI$の成す角に等しく,補題56からこれは$\angle AZ_HI$に等しい.一方定理58から$\angle AZ_HI = \angle AJI$であるから示される.

$\mathcal{H}$$A$における接線と直線$IJ$は直交する.

定理59から$\angle IAX + \angle AIJ =90^{\circ}$なので,定理20より示される.

Emelyanovの定理

$I$のcevian triangleを$K_AK_BK_C$とする.このとき,$Fe$は円$K_AK_BK_C$上にある.

定理61の一般化

$\mathcal{H}$上の点$P$のcevian triangleを$P_AP_BP_C$とする.このとき,$Fe$は円$P_AP_BP_C$上にある.

定理61と全く同様にすればよい.

 

この章には定期的に構図を追加していこうと思う.

練習問題2

では,これまでに得たすべての知識を利用して,問題を解いていこう.

自作

直線$BC$について$Fe$と対称な点を$Fe'$とする.このとき,$X,Q,M,Fe'$の共円を示せ.

@StandeeCock より

直線$BX_B$と直線$CX_C$の交点の等角共役点を$Rs$とする.このとき,$A,Rs,M$の共線を示せ.

自作

$FeH_A=Fe_AH_A$及び$AH_A=D_AH_A$が成り立つとき,$\angle H_AID_A = 90^{\circ}$を示せ.

Gallatly (1909)

$B,C$から対辺に下ろした垂線の足をそれぞれ$H_B,H_C$とする.このとき,三角形$AH_BH_C$の内心と外心を結ぶ直線(三角形$AH_BH_C$$OI$線)は$Fe$を通ることを示せ.

@StandeeCock より

三角形$BH_CH_A,CH_AH_B$の内心をそれぞれ$I_B,I_C$とする.このとき,$Fe$は円$I_BI_CH_A$上にあることを示せ.

自作

$A,Fe,D$が共線であるとき,$\frac{AD}{BD} + \frac{AD}{CD}$を求めよ.

$H_A,K,Fe,N$の共円を示せ.

David Nguyen より(改題)

四角形$BICV$のNewton線(対角線の中点を結ぶ直線)と直線$NS$は平行であることを示せ.

David Nguyen より(改題)

$\angle B,\angle C$の二等分線について$A$と対称な点をそれぞれ$A_B,A_C$とする.円$BIA_B$と円$CIA_C$$\mathcal{H}$上で再び交わることを示せ.

泠珞 より

直線$AH$と直線$N_9I$の交点を新たに$Q$とする.このとき,$AQ+QI=2ID$を示せ.

@yyaa_math より

直線$AB,AC$$A$-傍接円の接点を結ぶ直線を$l_A$とし,同様に直線$l_B,l_C$を定める.三直線$l_B,l_C,BC$の成す三角形を$\Delta _A$とし,同様に三角形$\Delta _B,\Delta _C$を定めたとき,$\Delta _A,\Delta _B,Delta _C$のEuler線は共点であることを示せ.

解答は後々書き入れる.だが,これまでの内容を理解していれば解くことは容易いであろう.

外Feuerbach点同士の構図(工事中?)

Feuerbach点を用いずとも記述が可能であるような,外Feuerbach点同士の対応を見るような構図も多くある.だが,これらはFeuerbach点の各構図と比べてかなり独立しており,ここまでの流れで書くにはあまりに濁りになると考えたため,一旦はこれを書かないで投稿する(後に書き足す可能性大).興味のある人は是非reflectionの章で紹介した匿氏の記事なども参考にして研究してみてほしい.

では,次の章へ行こう.

さらなる構図

実は,ここまでに脱線させないために述べてこなかった構図が沢山ある.以上の章まででFeuerbach点を凡そ理解したであろうから,これからは順序を無視して紹介していく.証明は省略するので,気になるものはぜひ自力で証明してみよ.ここまでの内容をしっかり抑えていれば容易いはずである.

Pindp より

$T_B,T_C$があり,四角形$BDET_B$と四角形$CDFT_C$はそれぞれ平行四辺形である.このとき,$\angle T_BFeT_C = \angle BAC$または$\angle T_BFeT_C = 180^\circ -\angle BAC$である.

$Z_H,K,Q'$は共線である.

Lemmas in Olympiad Geometry より

三角形$ABC$の重心を$G$とする.このとき,$IG \cap BC$$Y$の等長共役点である.

Altıntaş, Emirdağ より

三角形$FeEF,FeFD,FeDE$の垂心をそれぞれ新たに$H_A,H_B,H_C$とする.このとき,三直線$DH_A,EH_B,FH_C$は共点である.

Angel Montesdeoca より

定理65における共点は$Fe$と三角形$DEF$の垂心の中点である.

Hyacinthos #27443

$Y,M,N_I,Fe$は共円である.

BaoVn より

三角形$BIC,CIA,AIB$の垂心をそれぞれ新たに$L_A,L_B,L_C$とする.このとき,$Fe$は三角形$L_AL_BL_C$の九点円上にあり,三角形$L_AL_BL_C$の外心は三角形$ABC$のNagel点とGergonne点を結ぶ直線上にある.

この章にも,以降もさらに構図を載せ続けていこうと思う.

最後に

何も考えずに書き始めた本記事であったが,書いていく中で三つほど失敗をしたことに気付いた.一つ目は,有向角を用いれば良かったということである.位置関係によってずれてしまう部分が大量に存在しており,自分と異なる図で証明を追っていた読者には混乱を与えてしまったかもしれない.二つ目は,何の構図を書いていないのか分からなくなったことである.この記事にある構図は最初からリストアップされていたものではなく,私の脳内にある構図を都度思い出して書くような形になっている.ゆえに一つでも思い出し忘れている構図が無いか悩むことが多くあった.今も忘れている構図が無いか酷く焦っている.三つ目は,外Feuerbach点の構図についてあまり触れられなかったことである.外Feuerbach点単体ならFeuerbach点と全く同じように扱えるが,複数ある傍接円の相互な作用によって構成される構図は書くことができなかった.何についても,この点ではもう少し推敲してから書いても良かったかもしれない.

しかし,この記事で重要な視点は教えきったつもりである.ぜひ,この記事を読んだ皆には,自らさらなるFeuerbach点の構図を研究していってほしい.また,その研究が新規性や斬新さに富んでいれば,ぜひこの記事に追加させて頂きたい.

 

参考文献

投稿日:29
更新日:215
OptHub AI Competition

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ユークリッド幾何学専門

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