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競技数学解説
文献あり

Feuerbach点について

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かえでです.
Feuerbach点について書きます.

必ず作図ソフト(特にGeogebra)で作図をしながら読んでください.(たとえ図を無しに理解ができたとしてもです)

Feuerbachの定理

Feuerbachの定理

正三角形でない三角形について,その九点円は内接円に内接し,3つの傍接円に外接する.

九点円と内接円の接点をFeuerbach点といい,傍接円との接点を外Feuerbach点という.

この内接円と九点円の接点には様々な性質が含まれている.沢山の視点を導入して一つ一つ見ていこう.

また,作図について,TriangleCenterやConicなどのコマンドについては必ず確認しておくことを勧める.

Euler-Poncelet点

まず,Euler-Poncelet点について考えよう.Euler-Poncelet点はEP点,Poncelet点とも言われるが,ここでは以降Poncelet点を採用する.

Poncelet点

四点A,B,C,Pについて,三角形ABC,BPC,CPA,APBの九点円及びP,A,B,Cにおける垂足円は一点で交わる.この点を四点A,B,C,PのPoncelet点という.

証明は省略する.

以下,次のように点を定義する.

基準三角形をAB<ACなる不等辺鋭角三角形ABCとし,その内心をIA-傍心をIA,外心をO,垂心をH,九点円心をN9,Feuerbach点をFeA-外Feuerbach点をFeA,外接円をΓ,内接円をωA-傍接円をωA,九点円をΩとする.また,ωと直線BC,CA,ABの接点をそれぞれD,E,Fとし,BC,AIの中点をそれぞれM,Nとする.さらに,K=AIBCとし,AIについてDと対称な点をPAPωと再び交わる点をQωにおけるDの対蹠点をSとする.

FeA,B,C,IのPoncelet点である.

FeΩ(=三角形ABCの九点円)とω(=Iの三角形ABCにおける垂足円)の唯一の交点なのでよい.

今後展開されるすべての構図は定理2が根本原理になっていることに留意して,いくつかの構図を見ていこう.

Fe,N,Sは共線である.

BIの中点をNBとすれば定理2よりN,NB,F,Feは共円である.よってNFeF=180NNBF=180SEF=SFeNとなって示される.

証明から分かるように,定理3はより一般にIを任意の点Pに,FeA,B,C,PのPoncelet点に置き換えても成り立つ.
(ISL'18G4でこれがそのまま出題されたこともあるので要チェックである)

A,Fe,N,Qは共円である.

直線AIΓと再び交わる点をVA-Mixtilinear ExcircleとΓの接点をTAとする.直線AQと直線ADは等角共役だからA,Q,TAは共線であり,さらにこれはΓωの内相似中心を通る.ゆえにNAQ=VATA=QFeSである.一方定理3からQFeS=QFeNであるから示される.

実は,Feuerbach点は角の二等分線や直線BCでのreflection(対称移動)と相性がよい場合が多い.これゆえにMixtilinearが登場したのであって,Feuerbach点とMixtilinearとで直接的な関係が強いわけではないことに注意が必要である.

Orthopole / Orthotransversal

さて,視点を追加してFeuerbach点をFeuerbach点たらしめている構図について考察していこう.

Orthopole

三角形ABCと直線lについて,A,B,Cからlに下ろした垂線の足をそれぞれX,Y,Zとする.このとき,Xを通りBCに垂直な直線,Yを通りCAに垂直な直線,Zを通りABに垂直な直線は一点で交わる.この共点を三角形ABCにおけるlのorthopoleという.

Orthotransversal

三角形ABCと点Pについて,Pを通りAPに垂直な直線と直線BCの交点,Pを通りBPに垂直な直線と直線CAの交点,Pを通りCPに垂直な直線と直線ABの交点は共線である.この直線を三角形ABCにおけるPのorthotransversalという.

Feは直線OIのorthopoleである.

重心座標を用いればよい.詳しくは Computer Discovered Mathmatics: Orthopoles を見よ.
(ただし,より一般的な直角双曲線やPoncelet点の知識があれば,"内心が等角共役において不変であること"に注目することで系として容易に示すことができる.)

直線OIFeのorthotransversalである.

過去の記事 (の定理4)を見よ.Second Fonteneの定理を認めれば容易に証明可能である.

さて,2つの非常に強い結果を得た.これらを用いて幾つかの構図を証明していこう.

AからOI,BCに下ろした垂線の足をそれぞれZ,HAとし,X=OIBCとする.このとき,A,Fe,Z,HA,Xは共円であり,さらにAHAFeZである.

定理6からFe,Z,HAはすべてAXを直径とする円に乗る.また,定理5からFeZBCである.

AIOFeDMである.

Feから直線BCに下ろした垂線の足をWとする.定理7から,AZIOXFeWDMX である.

Fe,P,Mは共線である.

定理8からMFeD=OAI=PFeDとなる.

多くのFe+束縛条件1つの構図が定理3,8,9から演繹できる.

練習問題1

@yyaa_math より

AOI=90のとき,AFe=HFeを示せ.

解答 定理8からFeMD=90なので,Feは直線OM上にあり,定理7からAFe=OHAである.一方,今Ωの中心NについてOHFeHAは対称なので,OHA=HFeである.
有名事実

OIBCAIH=90は同値であることを示せ.

解答 定理7から明らか.
(この事実には非常に数多くの証明が存在する.この構図のもとで成り立つ諸性質の探索と併せて自ら考察してみるとよい.)
OMCG001(J)改題

AIΩと再び交わる点をVとする.N,O,Feがすべて相異なり,共線であるとき,
(a)I,O,HAの共線を示せ.
(b)DV=OIを示せ.

解答 IからAHに下ろした垂線の足をHIDHIの中点をMIとする.定理3から,N,S,Oは共線である.よって,OSIONMIからO,I,MI,HAは共線である.一般にHI,D,Vは共線であるから,対称性よりMI,D,Vは共線であり,OIDVIDOVなる等脚台形である.
@yyaa_math より

直線OIと直線CA,ABの交点をそれぞれXB,XCとし,BXB,CXCの中点をそれぞれMB,MCとする.OについてMBMCと対称な点をOMとしたとき,Fe,I,OMの共線を示せ.

解答  工事中 

MBMCについてFeと対称な点をFeMとする.FeMΓ上にあり,さらにFeM,H,Feは共線であることを示せ.

解答
工事中

IΓについて反転した点をIΓとする.直線IΓFeは三角形ABCのEuler線と平行であることを示せ.

解答
Eulerの定理よりOI2=R22Rrである.よってOIΓOI=R2R22Rr=RR2r=N9FeN9I と計算できるため示される.
Telv CohlのBlog より

三角形ABCの重心をG,de Longchamps点(OについてHと対称な点)をLとする.Feは円ABCと円IGLの根軸上にあることを示せ.

ヒント
問題5を使う.
解答
Telv Cohl の Feuerbach point lies on Radical axis
AoPSより改題

三角形ABCにおいて,その外接円ωにおける点A,B,Cでの接線の成す三角形を三角形XYZとし,A,B,Cの対蹠点をそれぞれA,B,Cとする.直線XA,YB,ZCωと再び交わる点をそれぞれP,Q,Rとし,AP,BQ,CRの中点をそれぞれMa,Mb,Mcとするとき,円MaMbMcωと接することを示せ.

解答
基準三角形を三角形XYZとすれば,円MaMbMcはその九点円を内接円ωで反転した円になるので,Feuerbachの定理より示される.

Feuerbach双曲線

Poncelet束

三角形の外心を通る直線について,その等角共役による像は垂心を通る外接双曲線となる.この外接双曲線全体の集合をPoncelet束という.

Feuerbach双曲線

A,B,C,H,Iを通る双曲線を三角形ABCのFeuerbach双曲線という.

Feuerbach双曲線はPoncelet束に属する.

直線OIの等角共役である.

垂心を通る外接双曲線は直角双曲線である.

@denta_math の 等角共役とシムソン線の幾何学 の補題2.4を見よ.

A,B,C,H,Pを通る直角双曲線の中心は九点円上にあり,A,B,C,PのPoncelet点に等しい.

Feuerbach双曲線の中心はFeに等しい.

円錐曲線をいきなり登場させてしまうと敷居が上がると感じたので伏せていたが,実はFeuerbach双曲線を用いることであらゆるFeuerbach点の構図を記述することができる.

三角形ABCのFeuerbach双曲線をHとする.

三角形ABCのNagel点,Gergonne点,Schiffler点,MittenpunktはすべてH上にある.

※ 各点の定義は以下に載せる.
Nagel点 : A-傍接円とBCの接点をTAとし同様にTB,TCを定めた時のATA,BTB,CTCの共点.
Gergonne点 : AD,BE,CFの共点.
Schiffler点 : 三角形ABC,BIC,CIA,AIBのEuler点の共点.
Mittenpunkt : 傍心三角形の類似重心.

Nagel点,Gergonne点の等角共役は内接円と外接円の相似中心なので直線OI上にある.また,Schiffler点は三角形DEFの垂心(これは直線OI上にある)の等角共役点である.Mittenpunktの等角共役点について,これは傍心三角形と三角形DEFの配景中心なので,直線OI上にある.

余談

不意に書いてみたくなったので,定理12のMittenpunktの等角共役点についての余談を挟む(本題とは関係がないので飛ばしてもらって構わない).
今,新たに基準三角形をABCとし,その重心をG,垂心をH,類似重心をKとする.また,Hの垂足三角形をDEFとし,Kの三角形DEFにおける等角共役点をLとする.
三角形DEFを基準三角形として基準三角形ABCを傍心三角形と見ると,Kが三角形DEFのMittenpunktであって,Lがその等角共役点となることに注意せよ.
では定義に入ろう.

Cevian Triangle

三角形ABCと点Pについて,直線APと直線BCの交点をD,直線BPと直線CAの交点をE,直線CPと直線ABの交点をFとしたとき,三角形DEFを三角形ABCにおける点Pのcevian triangleという.

Anticevian Triangle

三角形ABCと点Pについて,ある三角形DEFが一意に存在して,三角形DEFにおける点Pのcevian triangleは三角形ABCとなるので,この三角形DEFを三角形ABCにおける点Pのanticevian triangleという.

Cevian Quotient

三角形ABCと点P,Qについて,Pのcevian triangleをPaPbPcQのAnticevian triangleをQAQBQCとする.このとき三角形PaPbPcと三角形QAQBQCは配景的である.この配景の中心をP,Qのcevian quotientといい,(P/Q)で表す.

三線極線(Tripolar)

三角形ABCPaPbPcの配景の軸を,点Pの三線極線という.

三線極点(Tripole)

三角形ABCと直線lについて,lがその三線極線となるような点Pが一意に存在するので,この点Plの三線極点という.

Orthocorrespondent

三角形ABCと点Pについて,三角形ABCにおける点Pのorthotransversalの三線極点を点Pのorthocorrespondentという.

一見複雑に見えるものをいくつか定義したが,実はこれらはMittenpunktがFeuerbach双曲線上にあること,すなわちMittenpunktの等角共役がOI線上にあることと関係が深い.
構図をいくつか見ていこう.

三角形ABCと点Pについて,PのAnticevian triangleをPAPBPCとし,Pの三角形ABCにおける等角共役点をQPの三角形PAPBPCにおける等角共役点をRPのorthocorrespondentをTとする.このとき,Q,R,T,(H/P)は共線であり,(R,T;Q,(H/P))=1である.

Telv Cohlの Investigate Orthocorrespondent using Inversion のProperty 3を見よ.

直角双曲線ABCPHと直線P(H/P)は接する.

Telv Cohlの Generalization of Lester's Theorem のLemma 1を見よ.

定理14については,@yyaa_math の orthotransversal のなす角について がより参考になるだろう.

双曲線PAPBPCP(H/P)と直線H(H/P)は接する

三角形PAPBPCを基準三角形とした上で,H,Pのcrosspointを考慮すればよい.(非本質的すぎるが故,詳しい証明は省略する)

P(H/P)は三角形DEFについて等角共役である.

証明略(後々書き入れる可能性あり)

類似重心のorthocorrespondentはEuler線上にある.

重心座標を用いればよい.詳しくは Orthocorrespondence and Orthopivotal Cubics を見よ.

いくつか構図を確認したが,ではここでPKにするとどうなるであろうか?
定理13と定理16について考えてみよう.
三角形DEFについてそのMittenpunktがKであることから,Kの三角形DEFでの等角共役点LKの三角形ABCでの等角共役点G,そして定理17からEuler線上にあることが従うKのorthocorrespondentは共線である.すなわち,Mittenpunktの等角共役点が三角形DEFのEuler線,すなわちOI線上にあるということが示される.
また,ここで重要なことは逆に類似重心のorthocorrespondentの性質がMittenpunktという比較的扱いやすい点の性質から与えられることだろう.
cevian quotientやorthocorrespondentは円錐曲線と非常に相性が良いため,興味のある人はぜひ研究してみて欲しい所である.

本題

さて,Feuerbach双曲線の話に戻ろう.
この記事の補足を今述べておくと,Feuerbach点の構図の一部は有向角を用いて示すのが一般的であるが,今回簡略のためそれを無視して普通の角度を用いて証明を書く.

直線OIIHに接する.

OIHIとは異なる交点S1を持つと仮定する.このときPoncelet束の定義から,S1の等角共役点S2は直線OI上にある.すなわちI,S1,S2は共線であるが,S1は三角形ABCの内心及び傍心ではないのでS1S2となり,Poncelet束の定義からこれは矛盾である.

定理18は非常に強い.Iが等角共役において不変であることの重要性や強さが分かるとよい.
また,似た性質として以下が成り立つ.

HAにおける接線と直線AXは等角共役である.

直線BCに限りなく近い点の等角共役点は点Aに限りなく近い点であるのでよい.

定理20はPoncelet束に属する任意の直角双曲線で成り立つ主張である.

   

重要な構図の証明に用いる構図を紹介する.

Dを通り直線EFに垂直な直線がωと再び交わる点をHDとし,直線EFについて点I,Oと対称な点をそれぞれID,ODとする.このとき,Fe,HD,ID,ODは共線である.

HD,ID,ODは共線である.また,定理8よりFeHDD=180IIDODなのでDHDAIより示される.

実は,定理21と定理3には大きな関係がある.すなわち定理3と定理21を含む強い一般化が存在している.ここでは詳しく述べないが,もしかしたら後半に追加するかもしれない.

D,K,Fe,IDは共円である.

定理21よりFe,HD,IDは共線である.よってDHDKIDより,FeIDBCからωへの方べきの値を(FeIDBC)K(FeIDBC)D倍すればよい.

さて,以降非常に重要になる反Steiner点について考察していこう.

反Steiner点

三角形ABCとその垂心を通る直線lについて,lを直線BC,CA,ABについて対称移動した直線は円ABC上の一点で交わる.この点を三角形ABCにおけるlの反Steiner点という.

lの反Steiner点のSteiner線がlであることに留意せよ.

三角形ABCの中点三角形における直線OIの反Steiner点はFeである.

orthopoleの定義と定理7から明らか.

三角形DEFにおける直線OIの反Steiner点はFeである.

三角形DEFの垂心が直線OI上にあることに注意せよ.(定理13の証明も参照すること)

定理21から明らか.

定理24は驚異的である.なぜなら三角形DEFを基準三角形に変えることでFeの性質をEuler線の性質として扱うことができ,さらにその逆も可能という証明の渡し船にできるからである.
Poncelet点が作用しそうなら基準三角形をABCにしてFeuerbach点として証明する.一方Poncelet点が作用せずFeuerbach点の性質として示すことが難しそうなときや,構図の一般化を考えるときには(稀ではあるが)基準三角形をDEFにしてEuler線(とその等角共役であるJerabeck双曲線)の性質として考察するといった具合である.

反Steiner点,さらに言えばある直線lについてSteiner線がlと平行になるような外接円上の点(これは一意である)は非常に性質が深い.
また,Steiner線の遠い一般化である張志煥截線についても要チェックである.

   

Feuerbach双曲線と外接円の第四交点(A,B,Cではない交点※)についても性質が深いので考察していこう.
※第四交点が頂点と重なることはあるが,ここでは異なっている場合を考える.

とし,三角形BICの垂心をHI,直線AHIと直線BCの交点をYとする.

ΓHの第四交点を新たにZとする.このとき,FeZの中点はHである.

Feは九点円上の点であると同時にHの中心である.ゆえにHを中心にFe2倍した点はZである他ない.

定理25はHにおいてHZは互いに対蹠点であるという風に認識したい.では,この点についてさらに考察していこう.

直線OIについてAと対称な点をAI(Γ)とする.このとき,ZAIBCである.

定理7及びorthopoleの定義から,定理25と併せて直線BCを軸とする座標を考えれば直線ZAIFeを通り直線BCに垂直な直線をH中心に2倍に拡大した直線であると分かる.一方この直線は直線BCに直交しているので示される.

また,全く同様の議論から以下が成り立つことが分かる.

BHCHの第四交点をZHとする.このとき,AZHの中点はFeであり,Z,ZH,AIは共線である.

基準三角形をBHCに変えてもHは不変であるから,定理26と同様に議論すればよい.

また,以下が成り立つ.

ΓにおけるZの対蹠点をZとする.このとき,ZZHの中点はMであり,AIZBCである.

定理26及び定理27から四角形AZZHHは平行四辺形である.また,有名事実としてAH=2OMであるからZZHの中点はMである.さらに,定理27からZHAIは直線BCについて対称である.よってZHAIZ=90となり定理26からAIZBCが示される.

定理26~28はより一般にPoncelet束全体で成り立つことが知られている.つまり以下が成り立つ.

直線OIについてDと対称な点をDとする.このとき,AD=AFeである.

定理24から,FeDEFである.Dω上の点なので,FeDの垂直二等分線はAを通る.

   

さて,一度第四交点は置いておいて,更にまた別の方向の構図を見ていこう.最終的に全ての構図がFeuerbach双曲線の周辺で再開するので,これまでの各構図も振り返りながら読んでいって欲しい.

三角形BICの垂心をHIとする.このとき,HIH上にある.

Hは三角形BICの直角外接双曲線なので,その垂心もH上に乗る.

このHIには様々な性質がある.今回はFeuerbach点と関係のある構図の証明を目標に考えていこう.

三角形BICの九点円心をNIとする.このとき,Y,I,NIは共線である.

直線AIΓと再び交わる点をVとし,三角形BICの重心をGIとする.Vは三角形BICの外心なので,HI,NI,GI,Vは共線である.今HI,M,IAは共線なので,(Y,K;D,M)=HI(A,K;I,IA)=1=(NI,V;HI,GI)=I(INIBC,K;D,M)となるため示される.

AHIBCYとする.このとき,直線YFeωに接する.

Poncelet点の定義からNID=NIFeなので,直線NIIAFeの垂直二等分線である.よって定理31よりYD=YFeであるが,一方直線YDωに接しているため示される.

定理31,32は後々登場する重要な事実である.必ず主張と証明を確認しておくこと.

では,武器が揃ったところで以下の構図を示していこうと思う.

東大寺数研懸賞問題 2024 P18 (created by @yyaa_math)

AIを直径とする円とΓの交点をMiとする.このとき,A,Mi,X,Yは共円である.

直線XDωに接することに注意すれば,定理29及び定理32より直線YFeと直線XDは直線AI上で交わる.この点を新たにWとすれば,三角形WYXとその内接円ωと点Aに3 Points DDITを適用することにより,Aを通る直線束上のinvolutionであって,(AY,AX),(AB,AC),(AD,AI)がreciprocalなものの存在が分かる.これを直線BCに射影することで(X,Y),(B,C),(D,K)がreciprocalな直線BC上のinvolutionの存在が分かる.よって三円Γ,ADK,AXYはcoaxialであると分かる.一方有名事実としてΓと円ADKは点Miで交わる.よってA,Mi,X,Yの共円が示される.

 
 
この章の最後に,complementについて考えよう.

Complement

重心を中心とする12倍の相似拡大による図形Xの像をXのcomplementという.

Anticomplement

重心を中心とする2倍の相似拡大による図形Xの像をXのanticomplementという.

complementのanticomplementは元の図形に等しい.
今回はanticomplementを基準にしていく.

ΩのanticomplementはΓである.

中点三角形のanticomplementは元の三角形なのでよい.

定理34を見ればPoncelet束やSteiner線とanticomplementは相性が良いことが予測できるであろう.まさにその通りである.

有名事実

MaMbMcを三角形ABCの中点三角形とする.このとき,2max(FeMa,FeMb,FeMc)=FeMa+FeMb+FeMcである.

定理8からFeMa=AO×|CAAB|2OIであり,B,C側も同様に定まるため示される.

FeのanticomplementはZである.

三角形AZHZについて,定理28からその重心は三角形ABCの重心に一致する.一方定理27からFeAZHの中点であるので示される.

定理35,定理36を組み合わせることで,以下が従う.

ZA,ZB,ZCのうち最大のものは,その他2つの和である.

定理37の直接的な応用は発見が難しいが,その他構図と組み合わせて考えることで様々な議論ができる.

ZのSteiner線は直線OIに平行である.

定理36及び定理23から従う.

Reflection

定理4を示したときに,Feuerbach点はreflectionと相性がいいと書いたのを覚えているだろうか.
まさに,この章が本記事の山場である.

MについてIと対称な点をIMとする.このとき,V,IM,Zは共線である.

MについてAと対称な点をAMとする.三角形AMCBの内心はMAなので,重心のanticevian triangleをAMBMCMとすれば,定理36よりZは三角形AMBMCMのFeuerbach点である.よって,三角形AMBMCMを基準三角形として定理3を用いることにより示される.

Vを直線BCについて対称移動した点をVとする.このとき,V,NI,I,ZH,Yは共線である.

定理31からY,I,NIは共線である.また,有名事実として頂点,九点円心,外心を対辺で対称移動した点は共線であるから,これを三角形BICに適用してI,NI,Vの共線を得る.さらに,定理38からI,V,ZHの共線を得る.よってV,NI,I,ZH,Yは共線である.

さて,武器が一通り揃ったのでより強い定理を示していこう.

A-傍接円と直線BCの接点をDAとする.このとき,D,DA,Fe,FeAVを中心とする円上にある.

直線DFeと直線DAFeAΩ上の点で交わるので,この点からの方べきを考えることでD,DA,Fe,FeAの共円を得る.一方定理32及び定理40から三角形DDAFeの外心はVであるため示される.

定理41にはこれ以外にも興味深い証明が存在しているので,簡略的に紹介していく.

直線BCとの距離がMN9であるような直線BCと平行な直線のうち,Aに近い方をlpとする.また,N9を焦点としlpを準線とする放物線をPとする.このとき,Feuerbachの定理からI,IA,MP上にあり,さらに放物線の有名事実から直線VI,VIAPに接している.一方放物線の有名事実からN9は三角形VIIAV-Dumpty pointである.よってFeuerbachの定理からVN9Fe=VN9FeAとなり,VFe=VFeAが従う.

これは匿(@con_malinconia)氏による証明である.(詳しくは 第4回匿式図形問題エスパー杯(T-GUESS Cup 4) 問題Fの解説 を見よ)
実は,稀ではあるが放物線はその強い性質から複雑な幾何で補助円錐曲線として登場することがある.匿氏によるこの証明は放物線を用いる例として非常に好例である.
ここでは用いられていないが,放物線に興味のある人はぜひLambertの定理について調べることを勧める.では,次へ行こう.

A,K,V,Oは共円である.

BACの中点をUとする.VK×VA=VM×VU=VV×VOとなるため示される.

直線OIが円BICと再び交わる点を新たにQとする.直線BCについてI,Qと対称な点をそれぞれI,Qとするとき,I,I,V,V,Q,Qは共円である.

定理42と同様の議論からVV×VO=VI2が成り立つため,VVI=VIOである.一方VIO=VQIなので,V,I,V,Qは共円となり示される.

Fe,I,Qは共線である.

定理41から,FeIV=VIDである.ゆえにVI=VQに注意すれば定理43から,FeIV+QIV=VII+VQI=180となり示される.

半直線AH上の点O2AO=AO2で定め,直線AIについてD,DAと対称な点を新たにそれぞれD,DAとする.このとき,Fe,FeA,D,DAO2を中心とする円上にある.

定理29から,O2Fe=O2Dである.また,A-傍接円で全く同様の議論を行うことでO2FeA=O2DAが従う.よって,O2D=O2DAなので四点はO2を中心とする円上にある.

Fe,K,FeAは共線である.

定理41と定理45から,三円FeFeADDA,FeFeADDA,DDDADAの根心を考えることができ,これはKである.よって,直線FeFeAは点Kを通る.

I,D,M,Xは共円である.

DIAOであるから,定理8及び定理9よりDMD=AOI=XIDとなり示される.

 
さて,定理44についてはさらなる興味深い見方が存在する.定理24で基準三角形について話したのを覚えているだろうか?
基準三角形をIABCとして点Qを眺めてみよう.I,Oの位置を考えれば,次のような事実が成り立つことが分かる.

Qは三角形IABCにおけるEuler線の反Steiner点である.

これから定理44が即座に従うわけではない.だが,これのおかげで我々は基準三角形でない三角形のFeuerbach点や九点円心を扱うことができるようになった.実は,この事は最近私が気付いた事実で,他の人は全くと言っていいほど言及していない.新鮮な事実なので必ず抑えておくことをオススメする.    

大量に定理を並べていったが,定理41から定理46を見ればいかにFeuerbach点がAI,BCでのreflectionと相性が良いか分かるであろう.
また,少し前で述べたようにFeuerbach点のその性質はIが等角共役の不動点であるという事実が強く作用している.各傍心も等角共役の不動点であるから,内心側で成り立つことは傍心側でも成り立つ.このことに留意して,先の匿氏の記事などの外Feuerbach点の主張を考えると非常に見通しが良くなると思う.また,Involutionを知っている人は傍接円は内接円であるという認識を持つと理解の助けになるだろう.

その他の重要な構図

この章では,これまでに触れてこなかったが重要度が高い構図を紹介していく.(紹介に重点を置き,証明を省略することが多くあるので注意してほしい)

有名事実

直線OIまたはH上の任意の点について,その垂足円はFeを通る.

Second Fonteneの定理から従う.

Kariyaの定理(rewriting)

Iを中心とする円と直線ID,IE,IFの交点をそれぞれDt,Et,Ftとする.このとき,直線ADt,BEt,CFtH上で交わる.

Computer-assisted proofs of “Kariya’s theorem” with computer algebra で座標計算等によって証明されている.(計算に頼らない証明も可能である)

直線EFについてDと対称な点をDDとする.このとき,A,DD,Xは共線である.

AoPSの投稿 を見よ.

Dadgarnia より

BDFFにおける接線と円CEDEにおける接線の交点をLとする.このとき,A,L,Xは共線である.

AoPSの投稿 を見よ.

ka_Arc, yyaa

X,D,Fe,DDは共円である.

直線EFについてFeと対称な点をFeDとする.定理8から,FeDX=FeFeDXとなりFe,FeD,DD,D,Xの共円が従う.

EFの中点についてFeと対称な点をFeMとする.このとき,FeMLは円ωにおける反転で移り合う.

基準三角形をDEFに変えた上で題を書き直せば,三角形ABCとそのEuler線の反Steiner点をBCの中点で対称移動した点をYとするとき,円BOYが直線ABと接することを示せばよいが,三角形ABCの垂心をHとすれば,ABO=HBC=OYBであるため示される.

ka_Arc, yyaa

A,Fe,I,Lは共円であり,四角形AFeILは調和四角形である.

定理54の結果をωで反転すればよい.

定理53

AFeL=AIOである.

定理53,定理55は私が最近発見した構図である.証明に協力してくれた@yyaa_math に感謝する.

有名事実

直角双曲線上に五点X,X,Y,Y,Zがあり,XX,YYはその直径であるとする.このとき,XZY=XZYである.

H上の点の任意の点Zについて,その対蹠点をZとしたとき,BZCの外角の二等分線とBZCの二等分線はH上で交わる.

Aの外角の二等分線がHと再び交わる点をJとする.このとき,A,I,J,ZHは共円である.

定理27及び定理57から,直線JZHBZHCを二等分する.今定理40よりI,ZH,Vは共線であるから,JZHI=90が従う.一方今IAJ=90であるから示される.

直線AXは円AIJに接する.

定理20から,XAIHAにおける接線と直線AIの成す角に等しく,補題56からこれはAZHIに等しい.一方定理58からAZHI=AJIであるから示される.

HAにおける接線と直線IJは直交する.

定理59からIAX+AIJ=90なので,定理20より示される.

Emelyanovの定理

Iのcevian triangleをKAKBKCとする.このとき,Feは円KAKBKC上にある.

定理61の一般化

H上の点Pのcevian triangleをPAPBPCとする.このとき,Feは円PAPBPC上にある.

定理61と全く同様にすればよい.

 

この章には定期的に構図を追加していこうと思う.

練習問題2

では,これまでに得たすべての知識を利用して,問題を解いていこう.

自作

直線BCについてFeと対称な点をFeとする.このとき,X,Q,M,Feの共円を示せ.

@StandeeCock より

直線BXBと直線CXCの交点の等角共役点をRsとする.このとき,A,Rs,Mの共線を示せ.

自作

FeHA=FeAHA及びAHA=DAHAが成り立つとき,HAIDA=90を示せ.

Gallatly (1909)

B,Cから対辺に下ろした垂線の足をそれぞれHB,HCとする.このとき,三角形AHBHCの内心と外心を結ぶ直線(三角形AHBHCOI線)はFeを通ることを示せ.

@StandeeCock より

三角形BHCHA,CHAHBの内心をそれぞれIB,ICとする.このとき,Feは円IBICHA上にあることを示せ.

自作

A,Fe,Dが共線であるとき,ADBD+ADCDを求めよ.

HA,K,Fe,Nの共円を示せ.

David Nguyen より(改題)

四角形BICVのNewton線(対角線の中点を結ぶ直線)と直線NSは平行であることを示せ.

David Nguyen より(改題)

B,Cの二等分線についてAと対称な点をそれぞれAB,ACとする.円BIABと円CIACH上で再び交わることを示せ.

泠珞 より

直線AHと直線N9Iの交点を新たにQとする.このとき,AQ+QI=2IDを示せ.

@yyaa_math より

直線AB,ACA-傍接円の接点を結ぶ直線をlAとし,同様に直線lB,lCを定める.三直線lB,lC,BCの成す三角形をΔAとし,同様に三角形ΔB,ΔCを定めたとき,ΔA,ΔB,DeltaCのEuler線は共点であることを示せ.

解答は後々書き入れる.だが,これまでの内容を理解していれば解くことは容易いであろう.

外Feuerbach点同士の構図(工事中?)

Feuerbach点を用いずとも記述が可能であるような,外Feuerbach点同士の対応を見るような構図も多くある.だが,これらはFeuerbach点の各構図と比べてかなり独立しており,ここまでの流れで書くにはあまりに濁りになると考えたため,一旦はこれを書かないで投稿する(後に書き足す可能性大).興味のある人は是非reflectionの章で紹介した匿氏の記事なども参考にして研究してみてほしい.

では,次の章へ行こう.

さらなる構図

実は,ここまでに脱線させないために述べてこなかった構図が沢山ある.以上の章まででFeuerbach点を凡そ理解したであろうから,これからは順序を無視して紹介していく.証明は省略するので,気になるものはぜひ自力で証明してみよ.ここまでの内容をしっかり抑えていれば容易いはずである.

Pindp より

TB,TCがあり,四角形BDETBと四角形CDFTCはそれぞれ平行四辺形である.このとき,TBFeTC=BACまたはTBFeTC=180BACである.

ZH,K,Qは共線である.

Lemmas in Olympiad Geometry より

三角形ABCの重心をGとする.このとき,IGBCYの等長共役点である.

Altıntaş, Emirdağ より

三角形FeEF,FeFD,FeDEの垂心をそれぞれ新たにHA,HB,HCとする.このとき,三直線DHA,EHB,FHCは共点である.

Angel Montesdeoca より

定理65における共点はFeと三角形DEFの垂心の中点である.

Hyacinthos #27443

Y,M,NI,Feは共円である.

BaoVn より

三角形BIC,CIA,AIBの垂心をそれぞれ新たにLA,LB,LCとする.このとき,Feは三角形LALBLCの九点円上にあり,三角形LALBLCの外心は三角形ABCのNagel点とGergonne点を結ぶ直線上にある.

この章にも,以降もさらに構図を載せ続けていこうと思う.

最後に

何も考えずに書き始めた本記事であったが,書いていく中で三つほど失敗をしたことに気付いた.一つ目は,有向角を用いれば良かったということである.位置関係によってずれてしまう部分が大量に存在しており,自分と異なる図で証明を追っていた読者には混乱を与えてしまったかもしれない.二つ目は,何の構図を書いていないのか分からなくなったことである.この記事にある構図は最初からリストアップされていたものではなく,私の脳内にある構図を都度思い出して書くような形になっている.ゆえに一つでも思い出し忘れている構図が無いか悩むことが多くあった.今も忘れている構図が無いか酷く焦っている.三つ目は,外Feuerbach点の構図についてあまり触れられなかったことである.外Feuerbach点単体ならFeuerbach点と全く同じように扱えるが,複数ある傍接円の相互な作用によって構成される構図は書くことができなかった.何についても,この点ではもう少し推敲してから書いても良かったかもしれない.

しかし,この記事で重要な視点は教えきったつもりである.ぜひ,この記事を読んだ皆には,自らさらなるFeuerbach点の構図を研究していってほしい.また,その研究が新規性や斬新さに富んでいれば,ぜひこの記事に追加させて頂きたい.

 

参考文献

投稿日:29
更新日:26日前
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投稿者

ユークリッド幾何学専門

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  1. Feuerbachの定理
  2. Euler-Poncelet点
  3. Orthopole / Orthotransversal
  4. 練習問題1
  5. Feuerbach双曲線
  6. 余談
  7. 本題
  8. Reflection
  9. その他の重要な構図
  10. 練習問題2
  11. 外Feuerbach点同士の構図(工事中?)
  12. さらなる構図
  13. 最後に
  14. 参考文献