前回までに, 第一変分公式の計算とそこから導かれる 極小曲面の性質 , そして Bernsteinの定理 について触れてきました. 今回は面積汎関数の2階微分, すなわち第二変分を計算し, そこから安定性の概念を定義します.
今回の内容は 第一変分公式 の記事を先に読んでからご覧になることを推奨します. また, 記号もそちらの記事のものを用います.
曲面
変分した曲面
で与えられたのでした. ですので面積の変分を計算するには, 関数
第一変分公式
で計算した通り,
でした. これをもう一度
この式で
正則行列の1径数族
となるので, 移行して左から
と計算できます.
最後に第三項を計算します.
となるので, 第三項は
と計算されます. 以上より,
となるので, 発散定理を用いると面積の第二変分は
となります.
関数の極小値を探す際の十分条件として,
極小曲面
が成り立つことを言う.
ある関数
文献によっては, この安定性の定義は弱安定(weakly stable)と呼ばれることもあります. 一方で, 「曲面が囲む体積を不変にする(volume preserving)変分」に関する安定性のことを弱安定と呼ぶ流儀もある(平均曲率一定曲面に関する文脈でしばしば用いられます)ので, 関連する文献を読む場合は少し注意を払う必要があります.
安定性は, 少しくらい曲面を変形しても壊れずに元に戻るという意味で, 曲面が自然界において安定に実現できるための条件の数学的定式化の一つと捉えることができます.
2階楕円型微分作用素
2階楕円型作用素の固有値問題について学んだことのある方に向けて, Morse指数と呼ばれる量について紹介しておきましょう. Morse指数は曲面がどれだけ不安定かを測る(古典的な)指標のことで, 次のように定義されます.
Jacobi作用素
これを用いて, 極小曲面
で定義する. ここで, 上限は全ての相対コンパクト領域
領域
極小曲面
Morse指数を用いると, 極小曲面が安定であることは
今回は面積の第二変分を計算し, その結果から安定性の定義や関連する概念を定義しました. 最後に定義したMorse指数は解析学の前提知識が必要なやや発展的な話題でしたが, Morse指数が有限な極小曲面(部分多様体)の幾何学は現在も盛んに研究されており, それが種数やbetti数などの幾何学的量とどう関係するかという問題は現代的な極小曲面論の中心的なトピックの一つです.
次回以降で安定な極小曲面の満たす性質を見ていきます.