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未解決問題解説
文献あり

「くどー問題」の解決に向けて 第1部:J-λ 理論

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$$\newcommand{Hom}[0]{\mathrm{Hom}} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{ilim}[1]{\displaystyle \lim_{\stackrel{\longrightarrow}{#1}}} \newcommand{qinteg}[0]{\displaystyle \:\cancel{^{}}\!\!\!\:\:\:\llap{\int}} \newcommand{spec}[0]{\mathrm{spec}} $$

初めに

有限集合 $B\subset\mathbb Z_{>0}$ で $S=\sum b$ が $C=\sum b^3$ を割るものを状態と呼ぶ.
「くどー問題」とは ku_do_ 氏が提唱し, bisaitama 氏によって名付けられた問であり,状態$N_n=\{1,2,\dots,n\}$から状態だけを通って1つずつ数を除去し,$\{1,n\}$ に至れるかを問う問題である.J-λ 理論は,この「1手」と「連続する2手」を,1つの状態に対する2つの量$S$と$k=C/S$だけで記述する理論であり,bisaitama 氏の「定理1」( 理論的にわかること ),Y.K. 氏の「$\Delta$連鎖定理」( くどー問題の定理たち ),ku_do_ 氏の「正準削除」( そろそろ誰かに解いてほしい自作問題【続】(未解決)(5年振り) )の一般化にあたる.
なお,本記事の作成の過程で,証明方針の探索および途中段階の議論の補助としてGemini 3.1 Pro(Google)および Claude Opus 5.5(Anthropic)を利用した.また,本記事に記載したすべての証明と計算は著者自身が独立に検証した.

くどー問題

くどー問題を形式化しますが,記号の定義はまた載せますので, ku_do_ 氏の記事「 そろそろ誰かに解いてほしい自作問題(未解決) 」「 そろそろ誰かに解いてほしい自作問題【続】(未解決)(5年振り) 」を見てもらえれば,この節は飛ばしても良いです.

くどー問題

$n$ を $3$ 以上の整数とし,$N_n=\{1,2,\dots,n\}$ とする.空でない有限な整数集合 $X$ に対して $$S(X)=\sum_{x\in X}x,\qquad C(X)=\sum_{x\in X}x^3$$ と定義する. $N_n$ の部分集合の列 $B_0,B_1,\dots,B_{n-2}$ であって,次の2条件 (i), (ii) を満たすものを除去列と呼ぶ.

  1. $B_0=N_n$,$B_{n-2}=\{1,n\}$ であり,各 $j\in\{0,1,\dots,n-3\}$ について,ある $y_j\in B_j$ により $B_{j+1}=B_j\setminus\{y_j\}$ と書ける.
  2. 任意の $j\in\{0,1,\dots,n-2\}$ に対して,$S(B_j)\mid C(B_j)$ である.

このとき,除去列が存在するような整数 $n\geq3$ は $n=3,6$ のみである.

(i) より $\{1,n\}=B_{n-2}\subset B_j$ がすべての $j$ で成り立つので,$1$ と $n$ は除去されない.したがって除去列は,$\{2,\dots,n-1\}$ の並べ替え $(y_0,\dots,y_{n-3})$ と1対1に対応する.また,$j=0$ と $j=n-2$ では (ii) が常に成り立つ($C(N_n)=S(N_n)^2$,$C(\{1,n\})=(n+1)(n^2-n+1)$).よって (ii) で実際に条件となるのは $1\le j\le n-3$ の場合だけである.

$n=6$ では,$3,4,5,2$ の順に除去する列 $$\{1,\dots,6\}\supset\{1,2,4,5,6\}\supset\{1,2,5,6\}\supset\{1,2,6\}\supset\{1,6\}$$ が除去列であり,$C/S$ の値は順に $21,23,25,25,31$ となる.

J-λ 理論

基本の量

状態

空でない有限集合$B\subset\mathbb Z_{>0}$に対して
$$S=S(B):=\sum_{b\in B}b,\qquad C=C(B):=\sum_{b\in B}b^3,\qquad k=k(B):=\frac CS\in\mathbb Q,\qquad P=P(B):=k-S$$
とおく.$S\mid C$,すなわち $k\in\mathbb Z$ のとき $B$ を状態と呼ぶ.
また $T_m=\frac{m(m+1)}2$,$N_n=\{1,\dots,n\}$,$T=T_n$ と書く.

2次式 $Q_B$

空でない有限集合 $B\subset\mathbb Z_{>0}$(状態でなくてもよい)と $\rho,x\in\mathbb Q$ に対して
$$Q_B(\rho,x):=x^2-\rho x+\rho S-k,\qquad J_{\rho,x}(B):=C-\rho S^2-x(x-\rho)S$$
と定める.$\rho$を公差と呼ぶ.

傾き

$x\in\mathbb Q$,$x\neq S$ に対して
$$c_B(x):=\frac{k-x^2}{S-x},\qquad \lambda_B(x):=1-c_B(x)=\frac{x(x-1)-P}{S-x},$$
$$\mu_B(x):=x\,c_B(x),\qquad \kappa_B(x):=x\,\lambda_B(x)$$
と定める.$\mu_B(x)+\kappa_B(x)=x$ である.

基本恒等式
  1. $J_{\rho,x}(B)=-S\,Q_B(\rho,x)$.
  2. $Q_B(\rho,y)-Q_B(\rho,x)=(y-x)(y+x-\rho)$.
  3. $x\neq S$ ならば $Q_B(\rho,x)=(S-x)\bigl(\rho-c_B(x)\bigr)$.

(1)(2) は定義から直ちに従う.(3) は $Q_B(\rho,x)=\rho(S-x)-(k-x^2)$ による.

候補点,基点

$Q_B(\rho,x)=0$ となる $x\in\mathbb Q$ を,$B$の公差$\rho$の候補点と呼ぶ.またその組$(\rho,x)$を$B$の基点と呼ぶ.

候補点は$B$に属さなくてもよく,整数でなくてもよい.

候補点の構造
  1. $x\neq S$ が公差$\rho$の候補点であることは,$\rho=c_B(x)$と同値である.すなわち,$x\neq S$ はちょうど1つの公差 $c_B(x)$ の候補点である.($x=S$ では $Q_B(\rho,S)=S^2-k$ が$\rho$によらない.)
  2. 公差$\rho$を固定すると,候補点は2次方程式$x^2-\rho x+(\rho S-k)=0$の根であり,高々2個である.2根の和は$\rho$,積は$\rho S-k$である.特に,$x$が候補点なら $\rho-x$も候補点である(共役).
  1. は補題1(基本恒等式)(3)から,
  2. は定義から従う.

基本公式

除去の公式

有限集合 $B$ と $y\in B$($|B|\ge2$,したがって $y< S$)について,$B'=B\setminus\{y\}$ とすると
$$k(B')=k(B)+\mu_B(y),\qquad c_B(y)=\frac{k(B')-y^2}{S(B)}.$$
特に $B$ が状態のとき,$B'$ が状態であることと $\mu_B(y)\in\mathbb Z$ は同値である.

$C-y^3=k(S-y)+y(k-y^2)$ を $S-y$ で割ると前半を得る.これより
$$k(B')-y^2=(k-y^2)\Bigl(1+\frac{y}{S-y}\Bigr)=\frac{S(k-y^2)}{S-y}.$$

定理3の状況で,
$$P(B')=P(B)+y(1+c_B(y))=P(B)+y(2-\lambda_B(y)).$$

$P(B')=k(B')-(S-y)=k(B)+y\,c_B(y)-(S-y)$.

更新の公式

定理3の状況を仮定する.この時,任意の$\rho,x\in\mathbb Q$に対して
$$Q_{B'}(\rho,x)=Q_B(\rho,x)-y\,(\rho+c_B(y)).$$
すなわち,除去による$Q$の変化は,$x$によらない$\rho$の1次式である.

$Q_{B'}(\rho,x)=x^2-\rho x+\rho(S-y)-(k(B)+\mu_B(y))$.

基点の公式
  1. $(\rho_0,x_0)$を$B$の基点とする.$z\neq S$ に対して$$c_B(z)=\rho_0-\frac{(z-x_0)(z+x_0-\rho_0)}{S-z}.$$
  2. (無限遠の基点) $z\neq S$ に対して$$c_B(z)=z+S-\frac{S^2-k}{S-z}.$$
  1. 補題1(基本恒等式)(2)(3) より $(S-z)\bigl(\rho_0-c_B(z)\bigr)=Q_B(\rho_0,z)=Q_B(\rho_0,x_0)+(z-x_0)(z+x_0-\rho_0)$.
  2. $k-z^2=(S^2-z^2)-(S^2-k)$ を $S-z$ で割る.
除去判定

状態$B$と $y\in B$($|B|\ge2$)について,次は同値である.
(a) $B\setminus\{y\}$ は状態である.
(b) $\mu_B(y)\in\mathbb Z$(同値な言い換えとして,$\kappa_B(y)\in\mathbb Z$).
(c) $S\,c_B(y)\in\mathbb Z$.
(d) $(S-y)\mid S^3-C$.
(e) 任意の整数 $\rho,x$ について,$(S-y)\mid J_{\rho,x}(B)+y\,(x-y)(x+y-\rho)$.
(f) $\lambda_B(y)=r/s$(既約分数,$s\ge1$)とすると,$s\mid y$.
さらに,$B$の基点$(\rho_0,x_0)$が整数の組ならば,(a) は次と同値である.
$$(S-y)\mid y\,(y-x_0)(y+x_0-\rho_0).$$

(a)⇔(b):「定理3:除去の公式」と$\kappa_B(y)=y-\mu_B(y)$から.
(b)⇔(c):$(S-y)\,c_B(y)=k-y^2\in\mathbb Z$.
(c)⇔(d):「定理5:基点の公式(2)」より $S\,c_B(y)=S(y+S)-\frac{S(S^2-k)}{S-y}$ であり,$S(S^2-k)=S^3-C$.
(c)⇔(e):補題1(基本恒等式)の (1)〜(3) より
$$S(S-y)\bigl(c_B(y)-\rho\bigr)=-S\,Q_B(\rho,y)=J_{\rho,x}(B)+S\,(x-y)(x+y-\rho).$$
右辺は整数である.左辺を $S-y$ で割った値は $S\bigl(c_B(y)-\rho\bigr)$ で,$\rho\in\mathbb Z$ なので,これが整数であることは (c) と同値である.右辺は $S-y$ を法として $J_{\rho,x}(B)+y(x-y)(x+y-\rho)$ と合同である.
(b)⇔(f):$\kappa_B(y)=yr/s$ で $\gcd(r,s)=1$.
最後の主張は,「定理5:基点の公式(1)」を (b) に代入すると得られる.

($n=6$)

除去順 $3,4,5,2$ の除去列では次のようになる.

除去する数 $z$$3$$4$$5$$2$
$(S,k)$(除去前)$(21,21)$$(18,23)$$(14,25)$$(9,25)$
$c_B(z)$$\frac23$$\frac12$$0$$3$
$\lambda_B(z)$$\frac13$$\frac12$$1$$-2$
$\mu_B(z)$$2$$2$$0$$6$
$\kappa_B(z)$$1$$2$$5$$-4$

最後の状態は $(S,k)=(7,31)$ である.4手目では,$\{1,2,6\}$ の公差 $3$ の候補点は $x^2-3x+2=0$ の根 $1,2$ である(命題2,候補点の構造).$2$ を除去すると候補点は $5$ に輸送(定理7)されるが,$5$ はすでに除去されている.

連鎖

輸送と前進

$x$を$B$の公差$\rho$の候補点とし,$y\in B$ を除去して $B'=B\setminus\{y\}$ とする.このとき
$$Q_{B'}(\rho,\,x+\rho)=\frac{(x-y)\bigl(2\rho S-y\,(x+y+\rho)\bigr)}{S-y}.$$
($|B|\ge2$,したがって $y< S$に注意する)
特に,$x+\rho$ が $B'$の公差$\rho$の候補点となるのは,次のどちらかの場合に限る.

  • $y=x$(輸送)
  • $2\rho S=y\,(x+y+\rho)$(前進)

補題1(基本恒等式)(2) より $Q_B(\rho,x+\rho)=Q_B(\rho,x)+2\rho x=2\rho x$.
「定理4:更新の公式」 と,基点 $(\rho,x)$ に対して,「定理5:基点の公式(1)」 を適用すると,
$$Q_{B'}(\rho,x+\rho)=2\rho x-y\rho-y\Bigl(\rho-\frac{(y-x)(y+x-\rho)}{S-y}\Bigr)=(x-y)\Bigl(2\rho-\frac{y\,(x+y-\rho)}{S-y}\Bigr)$$
であり,これを整理すると主張の式になる.

整数公差の連鎖

$\rho\in\mathbb Z$ とし,$x$ を状態 $B$ の公差 $\rho$ の候補点とする.$x_j=x+j\rho$ とおき,$x_0,\dots,x_{r-1}$ は $B$ の相異なる元で,$B\neq\{x_0,\dots,x_{r-1}\}$ とする.$B_0=B$,$B_{j+1}=B_j\setminus\{x_j\}$ とおくと,$0\le j\le r$ のすべてについて $B_j$ は状態であり,$x_j$ は $B_j$ の公差 $\rho$ の候補点である.さらに
$$k(B_j)=\rho\,S(B_j)+x_j(x_j-\rho)$$
であり,$k(B_j)+\rho\,S(B_j)$ は $j$ によらない.

$j$ についての帰納法による.$x_j$ が $B_j$ の候補点なら,「命題2:候補点の構造(1)」より $c_{B_j}(x_j)=\rho$ なので $\mu_{B_j}(x_j)=x_j\rho\in\mathbb Z$ となり,「定理3:除去の公式」より $B_{j+1}$ は状態である.「定理7:輸送と前進」($y=x$ の場合)より,$x_{j+1}$ は $B_{j+1}$ の候補点である.式は $Q_{B_j}(\rho,x_j)=0$ の書き直しである.最後の主張は
$$k(B_{j+1})+\rho S(B_{j+1})=(k(B_j)+\rho x_j)+\rho\,(S(B_j)-x_j)$$
による.

  1. 定理8の連鎖は,$x_j\notin B_j$ となる最初の $j$ で止まる.止まった状態 $B_j$ でも,$x_j$ は公差 $\rho$ の候補点(穴)である.したがって「定理6:除去判定」の最後の主張により,$B_j$ からの除去判定は $(S-y)\mid y\,(y-x_j)(y+x_j-\rho)$ となる($S=S(B_j)$).
  2. $c_B(y)\notin\mathbb Z$ のとき,$y$ を除去すると,次の候補点 $y+c_B(y)$ は整数でない.したがって,公差 $c_B(y)$ の連鎖は1手で終わる.
同じ公差の手の個数

状態 $B$($|B|\ge2$)と $\rho\in\mathbb Q$ を固定する.$c_B(z)=\rho$ を満たす $z\in B$ は高々2個である.相異なる2個 $z_1,z_2$ があれば $z_1+z_2=\rho$ である.特に,$\rho\notin\mathbb Z$ なら高々1個である.また,$z_1,z_2\ge2$ がともにあれば $\rho\ge5$ である.

「命題2:候補点の構造」による.

ファイバーと符号

ファイバーの方程式

$\rho\in \mathbb Q$を固定し,$1-\rho=r/s$(既約分数,$s\ge1$)とおく.この時,状態$B$と $z\in B$($|B|\ge2$)について,「$z$は公差$\rho$の候補点かつ$B\setminus\{z\}$ は状態である」ことは,次と同値.
$$s\,z(z-1)+r\,z=s\,k-(s-r)\,S\qquad\text{かつ}\qquad s\mid z.$$

「命題2:候補点の構造(1)」より,$\lambda_B(z)=r/s$で,それを展開すると前半の式になる.後半は「定理6:除去判定(f)」.

$\Phi$

$\Phi(B)=2k-S=S+2P$ とおく.

特別な公差

状態$B$と$z\in B$($|B|\ge2$)について,次が成り立つ.

公差 $\rho$$1-\rho$$c_B(z)=\rho$ の条件除去できる条件(定理6:除去判定)除去の後(定理8:整数公差の連鎖)
$1$$0$$z(z-1)=P$常に公差 $1$ の連鎖 $z,z+1,\dots$
$\frac12$$\frac12$$z(2z-1)=\Phi$($\Phi=T_{2z-1}$)$z$ が偶数次の候補点 $z+\frac12$ は整数でない
$0$$1$$z^2=k$常に$k$ は変わらない
$-1$$2$$z(z+1)=S+k$常に公差 $-1$ の連鎖 $z,z-1,\dots$
$\Phi$ と公差 $\frac12$ の候補点
  1. $Q_B\bigl(\frac12,x\bigr)=\frac12\bigl(x(2x-1)-\Phi)$.したがって,$\Phi=T_m$ であることと,$\frac{m+1}2$ が公差 $\frac12$ の候補点であることは同値である.
  2. $y\in B$ を除去すると
    $$\Phi(B\setminus\{y\})=\Phi(B)+y\bigl(1+2c_B(y)\bigr)=\Phi(B)+y\bigl(3-2\lambda_B(y)\bigr).$$
  3. $\Phi(B)=T_m$ とする.$y\in B$ について $\Phi(B\setminus\{y\})=T_{m+1}$ となるのは,$y=\frac{m+1}2$ のとき,または $2S=y\,(2y+m+2)$ のときに限る.
  1. 計算する.$x=\frac{m+1}2$ のとき $x(2x-1)=T_m$.
  2. 「定理3:除去の公式」の系を使い計算する.
  3. (1)と,$\rho=\frac12$,$x=\frac{m+1}2$に対して「定理7:輸送と前進」を適用する.
符号の補題

状態 $B$ から $z\in B$($z\ge2$)を除去できるとする.
(1) $\lambda_B(z)<0$ なら $S-z\le z\bigl(P-z(z-1)\bigr)$ である.特に $S<(\sqrt P+1)(P-1)$.
(2) $\lambda_B(z)>0$ なら $S-z\le z\bigl(z(z-1)-P\bigr)$ である.
したがって $S\ge(\sqrt P+1)(P-1)$ ならば,除去できる数はすべて $\lambda\ge0$ を満たす.

$\kappa_B(z)=\frac{z\,(z(z-1)-P)}{S-z}$ は $0$ でない整数なので,絶対値は $1$ 以上である.これで (1)(2) の前半が従う.(1) では $z(z-1)< P$ より $(z-1)^2< P$,すなわち $z<\sqrt P+1$ である.また $z\ge2$ より $P-z(z-1)\le P-2$.よって
$$S\le z\bigl(P-z(z-1)\bigr)+z\le z\,(P-1)<(\sqrt P+1)(P-1).$$

逆向きの操作

追加の公式

状態 $B$ と $z\notin B$($z\ge1$)について,次が成り立つ.
$$k(B\cup\{z\})=k-z\,c_B(-z),\qquad c_B(-z)=\frac{k-z^2}{S+z}.$$
したがって,$B\cup\{z\}$ が状態であることと $(S+z)\mid z\,(k-z^2)$ は同値である.すなわち,$z$ を加えることは,「定理3:除去の公式」で $y=-z$ とした操作である.

「定理3:除去の公式」の証明は$(S,C)\mapsto(S-y,\,C-y^3)$ についての恒等式であることに注意する.

共役と逆の手

$z$ を状態 $B$ の公差 $\rho$ の候補点とし,$w=z-\rho$ が $w\ge1$,$w\notin B$ を満たすとする.
(1) $-w=\rho-z$ も公差 $\rho$ の候補点であり,$c_B(-w)=\rho$ である.
(2) $B''=B\cup\{w\}$ では $w$ が公差 $\rho$ の候補点である.$B''$ から $w$ を除去すると $B$ に戻り,候補点は $z=w+\rho$ に輸送される.
(3) $B''$ が状態であることは $w\rho\in\mathbb Z$ と同値である.
すなわち,公差 $\rho$ のファイバーの2つの候補点 $z$ と $\rho-z$ は,「$z$ を除去する手」と「1つ前の手 $w=z-\rho$ を元に戻す手」に対応する.

  1. 「命題2:候補点の構造」より.なお $w\ge1$より$-w\neq S$.
  2. 「定理4:更新の公式」を $y=-w$ に用いると,$Q_{B''}(\rho,w)=Q_B(\rho,w)+w\bigl(\rho+c_B(-w)\bigr)=Q_B(\rho,w)+2\rho w$.補題1(基本恒等式)(2) より
    $$Q_B(\rho,w)=Q_B(\rho,z)+(w-z)(w+z-\rho)=-\rho\,(2z-2\rho)=-2\rho w$$
    なので,$Q_{B''}(\rho,w)=0$.後半は「定理7:輸送」による.
  3. 「定理13:追加の公式」 と $c_B(-w)=\rho$ から,$k(B'')=k-w\rho$.

連続する2手

$E$ と $F$

状態 $B$ に対して
$$E(B)=S^3-C,\qquad F(B)=S^2-k$$
とおく.$E(B)=S\cdot F(B)$ である.

$\lvert B\rvert\ge2$ なら $S>\max B$ であり,各 $b\in B$ で$b^3\le (\max B)^2 b$ゆえ,それをすべて足し合わせれば$k\le(\max B)^2$を得る.従って, $F(B)>0$ である.「定理6:除去判定(d)」より,$y\in B$ を除去できることは $(S-y)\mid E(B)$ と同値である.

3つの連続する和

状態 $B$($\lvert B\rvert\ge2$)と,$a\ge1$,$a\notin B$,$b\in B$ をとり,$B\cup\{a\}$ と $B\setminus\{b\}$ がともに状態であるとする.このとき次が成り立つ.

  1. $S+a$,$S$,$S-b$ はすべて $E(B)$ を割る.
  2. $g_1=\gcd(S,a)$,$g_2=\gcd(S,b)$ とおくと,$$\frac{S+a}{g_1}\ \Big|\ F(B),\qquad \frac{S-b}{g_2}\ \Big|\ F(B).$$

特に,除去列 $N_n=B_0\supset B_1\supset\cdots\supset B_{n-2}=\{1,n\}$ で $B_{j+1}=B_j\setminus\{y_j\}$ とすると,$1\le j\le n-3$ について,$B=B_j$,$a=y_{j-1}$,$b=y_j$ として (1)(2) が成り立つ.すなわち,連続する3つの和 $S(B_{j-1})$,$S(B_j)$,$S(B_{j+1})$ はすべて $E(B_j)$ を割る.

  1. $S-b$ については「定理6:除去判定(d)」,$S$ については $B$ が状態であることによる.$S+a$ については,$S+a$ を法とすると $a\equiv-S$ なので
    $$C(B\cup\{a\})=C+a^3\equiv C-S^3=-E(B)\pmod{S+a}$$
    であり,$B\cup\{a\}$ が状態なので $(S+a)\mid E(B)$.
  2. $(S-b)\mid S\cdot F(B)$ で,$\gcd(S-b,S)=\gcd(b,S)=g_2$ である.よって $\frac{S-b}{g_2}$ は $\frac{S}{g_2}\cdot F(B)$ を割り,$\gcd\bigl(\frac{S-b}{g_2},\frac{S}{g_2}\bigr)=1$ なので $\frac{S-b}{g_2}\mid F(B)$.$S+a$ についても,$\gcd(S+a,S)=\gcd(a,S)=g_1$ から同様.
    最後の主張は,$B_{j-1}=B_j\cup\{y_{j-1}\}$ と $B_{j+1}=B_j\setminus\{y_j\}$ がともに状態であることによる.

命題15の状況で,
$$L=\mathrm{lcm}\Bigl(\frac{S+a}{g_1},\ \frac{S-b}{g_2}\Bigr),\qquad g_3=\gcd\Bigl(\frac{S+a}{g_1},\ \frac{S-b}{g_2}\Bigr),\qquad R=\frac{F(B)}{L}$$
とおく.

  1. $R$ は正の整数であり,$g_3\mid a+b$,かつ
    $$R< g_1g_2g_3\cdot\frac{S^2}{(S+a)(S-b)}.$$
  2. $F(B)$ の素因数 $p$ で $p>S+a$ を満たすものは,$R$ を割る.特に $p\le R$ である.
  3. 除去列の途中の状態 $B_j$($1\le j\le n-3$)について,$S=S(B_j)$ とする.$F(B_j)$ が
    $$p>S+n-1\qquad\text{かつ}\qquad p\ge\frac{2n^3\,S}{S-n+1}$$
    を満たす素因数 $p$ をもつことはない.言い換えると,そのような素因数をもつ状態は,どの除去列の途中にも現れない.
  1. 「命題15:3つの連続する和(2)」より $L\mid F(B)$ であり,定義より $F(B)>0$ なので,$R$ は正の整数である.$g_3$ は $S+a$ と $S-b$ をともに割るので,その差 $a+b$ を割る.$L=\frac{(S+a)(S-b)}{g_1g_2g_3}$ と $F(B)< S^2$ から不等式を得る.
  2. $p\mid F(B)=L\cdot R$ である.$p\mid L$ なら,$p$ は $\frac{S+a}{g_1}$ か $\frac{S-b}{g_2}$ を割るので,$p\le S+a$ となり仮定に反する.よって $p\mid R$ であり,$R>0$ より $p\le R$.
  3. 除去列で除去される数は $2,\dots,n-1$ なので,$a,b\le n-1$ である.よって $g_1\le a$,$g_2\le b$,$g_3\le a+b$ より $g_1g_2g_3\le2(n-1)^3<2n^3$.また
    $$\frac{S^2}{(S+a)(S-b)}<\frac{S}{S-b}\le\frac{S}{S-n+1}.$$
    したがって (1) より $R<\frac{2n^3S}{S-n+1}$.一方,$p>S+n-1\ge S+a$ を満たす素因数 $p$ があれば,(2) より $p\le R$ となる.よって $p\ge\frac{2n^3S}{S-n+1}$ はありえない.
連鎖か gcd か

命題15の状況(状態 $B$,$a\ge1$,$a\notin B$,$b\in B$ で,$B\cup\{a\}$ と $B\setminus\{b\}$ がともに状態)で,命題15の系の記号を用い,$G=g_1g_2g_3$ とおく.このとき
$$\frac{F(B)}{(S+a)(S-b)}=\frac RG=1-\frac{a-b+c_B(b)}{S+a}$$
であり,次のどちらか一方だけが成り立つ.

  1. (連鎖の1歩)$c_B(b)=b-a$.このとき $d=b-a$ は $0$ でない整数で,$c_{B\cup\{a\}}(a)=d$ である.すなわち,$a$ は $B\cup\{a\}$ の公差 $d$ の候補点であり,それを除去すると候補点は $b=a+d$ に輸送される(定理7:輸送).逆に,$c_{B\cup\{a\}}(a)=b-a$ ならば (i) が成り立つ.
  2. (gcd の偶然)$c_B(b)\neq b-a$.このとき
    $$G-R=\frac{G\,(a-b+c_B(b))}{S+a}$$
    は $0$ でない整数であり,特に
    $$G\,\lvert a-b+c_B(b)\rvert\ \ge\ S+a.$$

命題15の系の証明より $L=\frac{(S+a)(S-b)}{G}$,$F=LR$ なので,第1の等号を得る.「定理5:基点の公式(2)」 より $c_B(b)=b+S-\frac{F}{S-b}$,すなわち $F=(S-b)(S+b-c_B(b))$ なので,$\frac{F}{(S+a)(S-b)}=\frac{S+b-c_B(b)}{S+a}=1-\frac{a-b+c_B(b)}{S+a}$ となり,第2の等号を得る.
(i) $c_B(b)=b-a$ とする.$a\notin B$,$b\in B$ より $d=b-a$ は $0$ でない整数である.$c_B(b)=d$ は $k-b^2=d\,(S-b)$,すなわち
$$k=(b-a)\,S+ab$$
と同値である.「定理3:除去の公式」の第2式を $B\cup\{a\}$ から $a$ を除去する場合に用いると,
$$c_{B\cup\{a\}}(a)=\frac{k-a^2}{S+a}=\frac{(b-a)S+ab-a^2}{S+a}=b-a.$$
逆に $c_{B\cup\{a\}}(a)=b-a$ なら,同じ式から $k=(b-a)S+ab$ となり,$c_B(b)=\frac{(b-a)S+ab-b^2}{S-b}=b-a$.候補点の輸送は「定理7:輸送」による.
(ii) 第1・第2の等号から $G-R=G\bigl(1-\frac RG\bigr)=\frac{G(a-b+c_B(b))}{S+a}$ であり,$G,R$ は整数なので左辺は整数である.$c_B(b)\neq b-a$ よりこれは $0$ でないので,絶対値は $1$ 以上である.

除去列の途中の状態 $B_j$($1\le j\le n-3$)は命題15の状況にあるので($a=y_{j-1}$,$b=y_j$),除去列の連続する2手は,整数公差の連鎖の1歩であるか,gcd の積 $G$ が $\frac{S+a}{\lvert a-b+c\rvert}$ 以上になるかのどちらかである.$\lvert c\rvert$ が小さい状態(例えば「定理12:符号の補題」で $\lambda_B\ge0$ が保証される状態)では $\lvert a-b+c\rvert\lesssim n$ なので,(ii) は $G\gtrsim\frac Sn$ という初等的な条件になる.除去列は,整数公差の連鎖を,(ii) の起こる「継ぎ目」でつないだものとみなせる.

まとめ

J-λ 理論では,状態 $B$ から数 $y$ を除去する1手を,2次式 $Q_B(\rho,x)=x^2-\rho x+\rho S-k$ の零点として捉えた.

  • すべての手 $y$ は,$y$ を候補点にもつただ1つの公差 $c_B(y)$ をもち,除去できることは $\mu_B(y)=y\,c_B(y)$ が整数であることと同値である(「定理6:除去判定」).
  • 公差が整数なら,候補点は除去のたびに輸送され,等差数列が次々に除去される(「定理8:整数公差の連鎖」).
  • 公差が整数でなければ,その連鎖は1手で終わる.さらに連続する2手については,整数公差の連鎖の1歩であるか,3つの連続する和の gcd の積 $G$ が大きくなるかのどちらか一方だけが起こる(「定理16:連鎖か gcd か」).

こうして除去列は,整数公差の連鎖を,gcd の偶然が起こる「継ぎ目」でつないだものとみなせる.
J-λ 理論は1つの状態についての局所的な理論であり,継ぎ目がどこで起こるかは,状態ごとの数値の gcd に委ねられている.一方,くどー問題で現れる状態,例えば始点 $N_n$,終点 $\{1,n\}$,連鎖が止まった状態は,$n$ や連鎖の長さに多項式で依存する族として現れる.J-λ 理論の公式は $S$ と $k$ についての恒等式なので,このような族では整数の代わりに多項式の上でもそのまま成り立つ.そのとき,「$0$ でない整数の絶対値は $1$ 以上」という議論は「$0$ でない多項式の次数は $0$ 以上」に置き換わる.第2部では,この見方で「パラメータによらず一様に現れる手」と「特定のパラメータでしか現れない手」を区別し,継ぎ目を族の言葉で調べる.

参考文献

投稿日:12日前
更新日:12日前
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「ツクツクボーシ、ツクツクボーシ」 ほら、カエルが鳴いてるよ 春の訪れを感じながら 落ち葉で黄色くなった道を歩いてく

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