楕円関数の黎明期の研究をいくつか読んだので、順番に解説します。ここでは
ライプニッツ記法の正しい扱い方
で解説した
追記:数式を修正しました。
円の孤長と座標という代数を超越した関係に、最終奥義「名付ける」を使って生まれたものが三角関数と円周率です。三角関数が考案されなかった世界では三角関数の定理が以下のように述べられていたかもしれません。
これからオイラーの時代のレムニスケートの研究[1]を紹介します。
レムニスケート :
上図はレムニスケートと呼ばれ、
弦
微分して
よって
Fagnanoは以下のような性質を発見しました。
と置くと、弦
となる。
また
より
よって
この結果は
と置くと、弦
となる。
また
より
よって
オイラーはFagnanoの研究を進め、試行錯誤により弧長の三倍の公式が
ここで
また
よって
ここで
よって
よって
よって
ここで
より
よって
よって
ラグランジュ考案オイラー改の方法[2]で加法定理を導出してみます。
となる
となり、
と置きます。
よって
また
よって
これより
よって
分母分子に
公式4は
というものでした。これといまの式が同値であることを示します。この式の分母分子に
ここで
また
よって
これにより
つまり
という恒等式が示されました。ラグランジュの方法は求める式を得たあとも、それが既知の式と同値であることを示すのが大変なことがあります。三角関数の加法定理のときも
という式が得られ、これをよく知られた加法定理に直すのは大変でした。
レムニスケートの性質は弦と弧長の関係であり、円弧と座標の関係である三角関数とは少し違うようにみえます。しかし匿(Tock)さんの記事[3]で面白いものを見つけました。それは下図のように、弦と円弧の関係として
正弦、余弦という言葉通りの定義になっています。
同じようにレムニスケートでも三角関数と類似したものが定義できます。
これを使うと弧長の公式は
と表され、孤長の共役の公式は
と表されます。また
となります。
となります。また円周率の対応物としてレムニスケート周率
これより
となります。加法定理は以下のようになります。
ここでtangent sum operator
まず、
ここで
とします。すると
ここで
とすると
これから係数比較により
とします。
これより以下の漸化式が得られます。
これより
よって
微分の公式
とおきます。係数比較より
よって
他にもいろいろな性質が
https://en.wikipedia.org/wiki/Lemniscate_elliptic_functions
にのっています。また[4]のp404にガウスの研究があります。
このように、三角関数の対応物がレムニスケートにもあることが分かりました。このようなものが他の曲線にもあるとすると、数学の探索領域がいっきに広がることが分かります。オイラーの研究の後、このようなものを一般に扱う研究が発展し、いまの楕円関数論となりました。
ありがとうございました。