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中央二項係数付きの多重ゼータ値と多重t値の関係式

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1.はじめに

反復ベータ積分(参考文献[1]参照)を用いて級数の関係式を出せるため、それについて最近考えたことを少し書こうと思う。
0xt2n1t2dt=βnn<mx2m11x22mβm(βn:=(12)nn!=(2nn)22n)
↑今回使った反復ベータ積分 

2.本題①

過去記事にも書いた内容だが、念のためもう一度書いておく。

多重t

許容インデックスk=(k1,k2,,kr)に対し、多重t値を次のように定める。
t(k)=0n1<n2<<nr1(2n1+1)k1(2n2+1)k2(2nr+1)kr

また、次のような級数も定義しておく。

中央二項係数付き多重ゼータ値

許容インデックスk=(k1,k2,,kr)に対し、
ξ(k):=12wt(k)0<n1<n2<<nr22nrn1k1n2k2nrkr(2nrnr)
(wt(k)=k1+k2++kr)

上の級数を表す記号は自分が使っているだけで、一般的な表記ではないことに注意をしてほしい。

双対性

kの双対インデックスをkと書くことにする。
t(k)=ξ(k)
が成立する。

詳しくは過去記事に書いた。 多重ゼータ値の双対性2 コネクターと級数
(多少記号の使い方は違ったりするので注意)

3.本題②

次の級数を表す記号も自分が使っているだけで、一般的な表記ではないことに注意をしてほしい。

βn:=(12)nn!=(2nn)22n
(a1,,am)(Z>0)m
k=({1}a11,2,{1}a21,2,,{1}am1,2)とおく
Ξ(k):=12wt(k)nSi=1mβnai1(i)n1(i)nai1(i)(nai(i))2βnai(i)=12wt(k)nSβna11(1)n1(1)na11(1)(na1(1))2βna1(1)βna21(2)n1(2)na21(2)(na2(2))2βna2(2)βnam1(m)n1(m)nam1(m)(nam(m))2βnam(m)
n=(n1(1),,na1(1)n1(2),,na2(2),,n1(m),,nam(m))
S={n(Z>0)a1+a2++am|n1(1)<<na1(1)<n1(2)<<na2(2)<<n1(m)<<nam(m)}

たとえば
Ξ(1,1,2)=1240<n1<n2<n3βn2n1n2n32βn3=1240<n1<n2<n31n1(2n2n2)n222n222n3n32(2n3n3)
Ξ(1,2,1,2)=1260<n1<n2<n3<n4βn1n1n22βn2βn3n3n42βn4=1260<n1<n2<n3<n4(2n1n1)n122n122n2n22(2n2n2)(2n3n3)n322n322n4n42(2n4n4)

ただし、インデックスに2が連続して含まれる場合は、末尾の2βnをつけることにしておく。

Ξ(2,2)=1240<n1<n21n12n22βn2=1240<n1<n222n2n12n22(2n2n2)
Ξ(1,1,2,2)=1260<n1<n2<n3<n4βn2n1n2n32n42βn4=1260<n1<n2<n3<n41n1(2n2n2)n222n21n3222n4n42(2n4n4)

ω0(t)=dtt,ω1(t)=dt1t2,ω2(t)=t1t2dt
ϵi{0,1,2}, kZ>0に対して、次のような積分を定める。
I(ϵ1,ϵ2,,ϵk)=0<t1<t2<<tk<1ωϵ1(t1)ωϵ2(t2)ωϵk(tk)

ξの反復積分表示

kをすべての要素が2以上のインデックスとする
ξ(k)=I(1,1,{0}k12,1,1,{0}k22,,1,1,{0}kr2)
が成り立つ。

反復ベータ積分から分かる。

Ξの反復積分表示

k=({1}a11,2,{1}a21,2,,{1}am1,2)とおくと
Ξ(k)=I({2}a11,1,1,{2}a21,1,1,,{2}am1,1,1)
が成り立つ

反復ベータ積分から分かる。

kはすべての要素が2以上のインデックスとする。このとき、次の等式が成り立つ。
t(k)=Ξ(k)

(kの要素がすべて2以上なので、k({1}a11,2,{1}a21,2,,{1}am1,2)の形で書けることに注意)

k=(k1,k2,,kr) ,2ki(i=1,2,,r)とおく。
まず定理1から、ξ(k)=t(k)である。

次に、反復積分表示においてti=1xi2と変数変換することを考える。
ω0(ti)=dtiti=xi1xi2dxi=ω2(xi)
ω1(ti)=dti1ti2=dxi1xi2=ω1(xi)
とそれぞれ変換され、

積分範囲は
0<t1<t2<<tk<1から0<xk<xk1<<x1<1に移される。したがって、
ξ(k)=I(1,1,{0}k12,1,1,{0}k22,,1,1,{0}kr2)=I({2}kr2,1,1,{2}kr12,1,1,,{2}k12,1,1)=Ξ({1}kr2,2,{1}kr12,2,,{1}k12,2)=Ξ(k)

①②より
ξ(k)=t(k)=Ξ(k)

これによって、たとえば
0<n22nn3(2nn)=0n<m1(n+12)(m+12)2=0<n<m(2nn)n22n22mm2(2mm)(=π2ln272ζ(3))
このツイート のような等式が分かる。

4.おわりに

おわり。特に書くことがない。ぷえ

5.参考文献

  1. 反復ベータ積分の応用:楕円積分のモーメントを計算する
投稿日:202458
更新日:202458
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余余余
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よよよよよよよよよよよよ

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  1. 1.はじめに
  2. 2.本題①
  3. 3.本題②
  4. 4.おわりに
  5. 5.参考文献