前回7shi-h、四元数の回転でホップファイブレーションを導出しました。その続きとして、具体的に成分を計算します。
シリーズ: ホップファイブレーション
単位四元数による回転子
つまり
成分計算だけではイメージが湧きにくいため、三角関数でパラメーター表示します。7shi-c
よって、
左右から回転子で挟むため、回転角が2倍の
一般的には回転子の側で角度を半分にして、回転角が
ここでは敢えて、理由を説明する前に天下りで導入するのを避けました。
三角関数の引数を
複素数
これは加法定理ですが、様子を見るため実部を
位相差
外積は演算の順序で符号が変わります。偏角を昇順で並べたものを順方向とします。偏角
同じことを状態ベクトルとパウリ行列で計算します。
パウリ行列でブロッホ球上の座標に変換します。
四元数は全成分を一度に計算するためごちゃごちゃしますが、こちらは成分ごとに計算するため冗長になります。どちらが簡単だとは一概には言えませんが、結果だけまとめるのにベクトルはシンプルです。
このように、ブロッホベクトルには
パウリ行列を使った方法でも、全成分をまとめて計算することはできます。
既に出て来たウェッジ積や、ベクトル解析で一般的なベクトル積(クロス積)とは別の外積で、テンソル積(クロネッカー積)の特殊な場合です。ややこしいですが、英語では区別があります。
英語 | 日本語 | 備考 |
---|---|---|
outer product tensor direct product | 外積 直積wikipedia-dpdp | テンソル積(クロネッカー積)の特殊な場合 直積も他の用法と紛らわしくマイナー |
exterior product wedge product | 外積、外部積 ウェッジ積、楔積 | 外積代数で使用、次元に依存しない 3次元ではベクトル積のホッジ双対 |
vector product cross product | 外積 ベクトル積 クロス積 | ベクトル解析で使用 次元に依存する(3次元と7次元) 四元数・八元数の積の虚部から得られる |
(テンソル積の意味での)外積はベクトルから行列を作る計算で、自身との外積は複素共役との積を列挙したものとなります。
成分に見覚えのある形が現れています。半角公式halfなどを使って計算を進めます。
対角成分と非対角成分で、それぞれ符号が異なる項が現れています。これらを分離すれば、パウリ行列の線形結合が現れます。
これは密度行列と呼ばれます。スケールを
四元数による回転の始点を
ここでの密度行列は1つのブロッホベクトルを変換したもので、密度というよりベクトルの別表現に見えます。このように1つのブロッホベクトルしか含まない状態を純粋状態と呼びます。それに対して、複数のブロッホベクトルに対応する密度行列を重み付けして足し合わせることがあり、混合状態と呼びます。
純粋状態の密度行列に対応するブロッホベクトルはブロッホ球の表面を指しますが、混合状態ではブロッホ球の内部を指します。quantumuniverse
四元数での回転によるモデルを導入して、線形代数でその結果を利用する流れを示しました。量子情報への導入とすることを意識しています。
他にも射影平面による定式化があり、こちらの方がより一般的です。dim7-8