筆者の 匿(Tock) です。詳細な経緯は 直前の記事 に全部書いたため、要約のみ抽出します。
匿「おや、『~~のまとめ』? 読んでみよう。」
匿「……ゆ、有益っ……! 私も真似したい……」
匿「おっとこんなところに数オリの過去問が」
匿「よし。全部解く。まとめる。決定。」
お気付きですね。動機のIQがあまりにも低いです。笑ってください。
ともかく、本記事では日本ジュニア数学オリンピック(JJMO)の予選幾何に関し、筆者の体感で格付けを実施します。開催は成人の日、成人式に参加できない未成年者が折角の祝日を持て余さないように設けられた
数学オリンピック財団
からの極めて心優しいプレゼントであるなどとは財団HPのどこにも書いていない完全なるデマですから真に受けてはいけません。中学生以下の皆様、悪い人は呼吸をするかのごとくデタラメを吐くので警戒しましょう。
※難易度評価は筆者である
匿(Tock)
の主観によります。
※著作権云々でリンクは貼っていません。ご自身で検索し問題に辿り着いてください。
すべて解いたうえで掲載しています(最終更新:2024/12/28)。難易度は相対的に示しており、難易度$d$の問題は例年のJMO予選$d$番レベルの難しさです(JJMO予選換算ではないことに注意、JJMOの$P$番は難易度$0.8P$程度かな、と推定します[要出典])。つまり Yosen Kika Hardness Scale for JMO と互換性があります。また、今回も「$Y$年の予選第$P$問」を「$Y$-$P$」と表記しました。
問題 | 難易度 | コメント |
---|---|---|
2015-1 | 0.7 | 「数オリ問題を解いた」の自慢用に。 |
2018-1 | 0.7 | 脳トレ系の本でよく見かける感じ。 |
2020-1 | 0.9 | 永遠の定石、「未知数は文字でおく」。 |
2024-2 | 1.0 | 厳密な論証はやや難易度が高いか。 |
2013-1 | 1.2 | この類の図形は中学入試で頻出。 |
2014-1 | 1.4 | どこかに正方形を描き加えたいところ。 |
2013-3 | 1.5 | オススメ。恐れずに補助線を引こう。 |
2012-4 | 1.7 | 一気に求められないものは分割する。 |
2016-2 | 1.8 | 円の性質をよく理解しないと解けない。 |
2023-2 | 1.9 | 幾何力次第で体感難易度が大違い。 |
まずは小手調べ。小学生でも解ける問題がちらほら見受けられる難易度帯です。図形問題の演習経験が10問に満たない人は、この辺りからのんびり対策していきましょう。JMO版でも述べましたが、易しくても難しくても貴重な1点です。
問題 | 難易度 | コメント |
---|---|---|
2012-3 | 2.3 | 古典的な問題。初見で解けたら凄い。 |
2023-5 | 2.6 | 5番という肩書きにだまされないように。 |
2022-3 | 2.8 | 幾何好きならば当然○○○○の定理。 |
2018-5 | 3.0 | 少し計算重め。アイデアは単純。 |
2020-5 | 3.2 | オススメ。中点の使い道といえば? |
2012-6 | 3.4 | 絶対に本質ではない部分が難しい。 |
2013-5 | 3.4 | 初等幾何でも座標計算でも大差が無い。 |
2017-4 | 3.5 | 綺麗な解法を見つけられません……。 |
2016-5 | 3.6 | どちらかといえばJMOらしい初等幾何。 |
2024-5 | 3.6 | 多分初心者ほど座標で解きたがる。 |
2014-4 | 3.7 | 作図の際は台形ABCDから始めよう。 |
2019-3 | 3.9 | 非常に良問。現地で解きたかった。 |
合格点は先ですが、地区優秀賞ボーダーが高確率でここに入っています。学校の授業だけを武器にしている人は、序盤級が最初の関門ということです。地区優秀賞でもそれなりに良いもの(具体的な品目を書くと筆者の受験年度がバレそう)がもらえるため、頑張って序盤級をものにしたいですね。
問題 | 難易度 | コメント |
---|---|---|
2020-4 | 4.0 | 非本質部分が難しい・第2弾。遺憾。 |
2016-7 | 4.1 | 「線分は直線に」タイプの問題ですね。 |
2022-4 | 4.3 | 時短のため、作図の際は円を省こう。 |
2019-5 | 4.7 | 落ち着いて等しい長さを見つけ出す。 |
2017-6 | 5.0 | 図を描けたら勝ち。見た目で解く。 |
2015-9 | 5.1 | ${150}^{\circ}$は○○○○との相性が良い。 |
2022-6 | 5.2 | 計算してみてわかる掲載図の不正確さ。 |
2015-11 | 5.6 | 中盤級以上で頻出のテクが含まれる。 |
例年の予選合格点ゾーン。苦手分野が無ければ、ここで幾何対策を打ち切っても大方本選に行けます。
ハイライトはもちろん2015-11。「11番って超難問が出るんじゃ……」とお考えの皆様、ぜひご再考ください。幾何・非幾何問わずここ十数年の予選11番を軒並み解いた身で申し上げますが、11番は難易度気まぐれの良問枠です(主観)。時には本問のように簡単な出題もあります。
問題 | 難易度 | コメント |
---|---|---|
2015-5 | 6.0 | 解けると心が浄化される。オススメ。 |
2017-8 | 6.2 | 中点が出てきたら反射で○○○○○を。 |
2019-9 | 6.3 | 数オリ幾何は接点を描くと解きやすい。 |
2020-10 | 6.5 | 三角形の成立条件に要注意(1敗)。 |
2014-8 | 7.0 | 中盤級幾何を2問合成すれば本問になる。 |
2023-12 | 7.1 | 「中点」です、「中点」ですよ皆様。 |
2022-11 | 7.3 | 使えそうな類似中線が使えない。なぜ。 |
2023-8 | 7.7 | 地力の底上げという用途で一応オススメ。 |
2024-10 | 7.8 | あの点をとれるか否かが勝敗の分かれ目。 |
ここから先はある程度の図形問題慣れが必要です。中盤級を半分以上解けるようになってから挑みましょう。超難問とはいかないまでも、「初心者は週~月単位で考えないと解けない」が多くなります。
ですが、いわゆる「幾何勢」の方々は、ここの問題を平均15~30分で解いてくるでしょう。鍛錬次第ではその領域に至れるのですね。本気で鍛えたい方々は、
筆者主催の幾何コンテスト
の解説などを参考になさっt……何でもありません気にしないでください。
問題 | 難易度 | コメント |
---|---|---|
2013-10 | 8.0 | 知識問題。○○を取れればあとは難易度3.0。 |
2018-11 | 8.4 | $QD$の長さを求めてからはゴリ押しでもよい。 |
2016-10 | 9.1 | 結構複雑です。$1:\sqrt{2}$を上手く使っていこう。 |
2012-12 | 9.7 | 内接円・傍接円の典型に立ち返り相似を探す。 |
2014-12 | 10.9 | ○○○○○○○○を知識 or 根性で見つけ出す。 |
2013-12 | 11.0 | 円を減らして実験。求値だけならば難易度6.8。 |
2019-11 | 11.7 | JJMO本選2.5番級のややマニアックな構図を示す。 |
要求される知識が一気に増える最終盤級。難易度2桁の問題は
国際数学オリンピック
(IMO)でも出題されかねない難しさです。先述の「幾何勢」にとってはここからが醍醐味なのですが、それ以外の大多数にとってはインクの浪費にしか見えません。実際、筆者の幾何力がこの難易度帯に追いついたのは、幾何をはじめて3年近く経った頃でした。
ところで、10番以降の問題に顕著ですが、階乗・二項係数などが計算されずそのまま公式解答に載っている例を見かけます(例:2016-12)。オンライン化以降、解答欄には数字しか書けなくなったそうですが、今後は2016-12のような出題が消滅するのでしょうか?
年度 | 合格点 | 難易度一覧 |
---|---|---|
第10回(2012年) | 8点 | 3番:2.3、4番:1.7、6番:3.4、12番:9.7 |
第11回(2013年) | 7点 | 1番:1.2、3番:1.5、5番:3.4、10番:8.0、12番:11.0 |
第12回(2014年) | 6点 | 1番:1.4、4番:3.7、8番:7.0、12番:10.9 |
第13回(2015年) | 7点 | 1番:0.7、5番:6.0、9番:5.1、11番:5.6 |
第14回(2016年) | 5点 | 2番:1.8、5番:3.6、7番:4.1、10番:9.1 |
第15回(2017年) | 7点 | 4番:3.5、6番:5.0、8番:6.2 |
第16回(2018年) | 8点 | 1番:0.7、5番:3.0、11番:8.4 |
第17回(2019年) | 6点 | 3番:3.9、5番:4.7、9番:6.3、11番:11.7 |
第18回(2020年) | 7点 | 1番:0.9、4番:4.0、5番:3.2、10番:6.5 |
第19回(2021年) | 中止 | 2022年以降も感染症に注意しましょう。 |
第20回(2022年) | 6点 | 3番:2.8、4番:4.3、6番:5.2、11番:7.3 |
第21回(2023年) | 7点 | 2番:1.9、5番:2.6、8番:7.7、12番:7.1 |
第22回(2024年) | 7点 | 2番:1.0、5番:3.6、10番:7.8 |
出題年度で分けてみると、基本的にどの年も低難度~高難度が幅広く問われています。JMOよりもバランスが良いまであります。近年は最終盤級の出題こそ減少したものの、終盤級が健在ですね。時間の許す限り対策していきましょう。
先述の「JJMOの$P$番$=$難易度$0.8P$」理論[要出典]に基づけば、難易度詐称(本来の難易度+2以上)として2015-5・2019-11を、難易度逆詐称(本来の難易度-2以下)として2015-9・2015-11・2023-12を挙げることができます。2015年は幾何勢にとって波乱中の波乱を呼んだ年、ということになるでしょう。9番が解けて5番が解けない、2015年当時の受験者の一部が感じた、精神的なプレッシャー。それは、もしかすると皆様の受験年度に再来するかもしれないものです。問題番号にとらわれすぎず、とにかく解ける幾何を解く、この信念を忘れてはなりません。
いかがでしょうか。小中学校で習わない漢字にはすべてルビを振りました。
JMO版
も適宜参照しつつ、予選幾何対策を進めてくださればと願います。なお、本表作成に際し上記の46問を解き直したのですが、筆者の場合は8時間かかりました。いくつかは初見でない問題も含まれているなか、それでも8時間。深く、深く反省すべきですね……。
ただし、万-8時間以内に解けない方がいらっしゃったとしても、それを気に病む必要はございません。この反省はあくまで得意分野が幾何である筆者ゆえの必然です。他分野でカバーできるならば、自信を持って予選に臨めます。流石に9,992時間以内には解きたいところですが。
ということで、JJMO版Tier表でした。いつも通り異論・指摘などはコメントに。
幾何に囲まれた年末年始をお過ごしください。受験者各位は難易度8.5以下全完を目標に精進しましょう(
JMO版
も参照)。
筆者のオリジナル図形問題 in Twitter(現:X)
←100問近くあります、演習量を高めたい方向け
T-GUESS Cup 2の解説記事(問題A~C)
←数オリ予選の傾向に近い自作問題です
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