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【保存版】任意の z を第 z-1/z 貴金属数とみなしてフィボナッチ数とリュカ数を一般化してみた✨

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任意の z を第$z-\frac1z$貴金属数とみなしてフィボナッチ数とリュカ数を一般化してみた✨

突然ですがシリーズ第四弾です

 100億万年ぶりに記事を書こうと玉手箱を開けたら mathlog さんの世界が色々変わっていて浦島太郎状態の みゆ🌹ฅ^•ω•^ฅ です。ご無沙汰しております🙇 初めましての方、どうぞよろしくね🙏✨

 なんか表示方法が変わったのかレイアウト崩れしちゃった過去記事がたくさん見つかりまして、片っ端から体裁を整え直しつつ分かりにくそうなところには補足を追記するなど一人修正フェスを開催していたのですが、その際に我ながらめちゃくちゃ面白いシリーズ記事を発見してしまいました‼

$\cdots$手前味噌ではございますが、それがコチラ✨✨

[第一弾] フィボナッチ数とリュカ数とガラパゴ数学
[第二弾] フェルマーの最終定理とフィボナッチ数とリュカ数を因数分解
[第三弾] 三角関数のn倍角の公式と双曲線関数を因数分解

 ざっくり言えば、数を幾何学的に捉えたときに視えてくる世界が面白いよーっていういつものガラパゴ数学なんですけども、特にアツいのは実数であるはずの黄金数$\phi=1.618\cdots$を"共役複素数"の一つとみなすという非直感的な謎理論からフィボナッチ数やリュカ数に関するさまざまな数式を導出する 第一弾 第二弾 です🔥🔥🔥
 
 虚数の概念に理解を得られなかった時代の再来?みたいな空気の中、できるだけ分かりやすい解説を心がけているつもりではおりますが、理解はできなくてもエンタメとして雰囲気だけ楽しむみたいなノリでお読みいただくのもアリかなと思います🐵🍌

 今回はそのシリーズの第四弾。これまでの記事を既にお読みいただいている方を対象としてはおりますが、未読な初見さんでも読めるように最低限の重複解説はさせていただいておりますのでお気軽にどうぞ👏👏👏

前回までのあらすじ

 2年半もブランク空いてしまってますし、私自身もすっかり忘れてしまっておりましたので軽くおさらいをしておきましょう。

 二次方程式 $x^2+bx+c=0$ の共役複素数解

$\quad\begin{cases} z=-\frac{b}2-\sqrt{c-\left(\frac{b}2\right)^2}~i\\ \overline{z}=-\frac{b}2+\sqrt{c-\left(\frac{b}2\right)^2}~i \end{cases}$

を生成元とする 第$1$種ガラパゴ数列 $G_n$ と 第$2$種ガラパゴ数列 $G'_n$ はそれぞれ

$\quad\begin{cases} G_n=\frac{\operatorname{Im}z^n}{\operatorname{Im}z}=\frac{z^n-\overline{z}^n}{z-\overline{z}}\\ G'_n=\frac{\operatorname{Re}z^n}{\operatorname{Re}z}=\frac{z^n+\overline{z}^n}{z+\overline{z}} \end{cases}$

と表わされます。 ガラパゴ数列 というのは、よーするに $z$ の実部と虚部からみて $z^n$ の実部と虚部はそれぞれ何倍になってますかってことを意味する幾何学視点の数列です。$z$ が実数の場合、既存の(学校カリキュラム上の)数学では共役複素数解とはなりませんが、異世界からきたガラパゴ数学では「解の"みなし実部(代数的な実部)"」の実数と「解の"みなし虚部(代数的な虚部)"」の純虚数(→結果的に実数)をそれぞれ線形独立に捉えることで強引に共役複素数と解釈$\cdots$って何言ってるんだコイツって思われた方が大半ですよね😅

 今はまだ分からなくても大丈夫ですので、二次方程式の解は全て共役複素数解だとみなす自己暗示をかける心の準備をしといてくださいまし🙏 この記事においては共役複素数解について扱う場合に限り、実部 $\operatorname{Re}z$ & 虚部 $\operatorname{Im}z$ をその自己暗示したときの「みなし実部」&「みなし虚部」とし、それらを元に算出された $|z|=\sqrt{(\operatorname{Im}z)^2+(\operatorname{Re}z)^2}$ も同様に「みなし絶対値(みなしノルム?)」として扱います。
 本来の意味での実部や虚部を扱うときは「本来の意味での」と注釈を入れて区別しますのでご承知おきをお願いします。
 
 例えば、$z^2-z-1=0$ の二解 $z=\frac{1+\sqrt5}2=\phi$(第$1$貴金属数(黄金数))と $\overline{z}=\frac{1-\sqrt5}2=-\phi^{-1}$ は既存の数学においては実数ですから本来の意味での虚部は$0$ということになります。でも、これを強引に共役複素数解だとみなすならば

$\quad\begin{cases} z&=\phi&=\frac{1-\sqrt{-5}i}2=\frac12-\frac{\sqrt{-5}}2i\\ \overline{z}&=-\phi^{-1}&=\frac{1+\sqrt{-5}i}2=\frac12+\frac{\sqrt{-5}}2i \end{cases}$

と解釈できますので、みなし実部は$\operatorname{Re}\phi=\frac{\phi+(-\phi)^{-1}}2=\frac12$、みなし虚部は$\operatorname{Im}\phi=\pm\frac{\phi-(-\phi)^{-1}}{2i}=\mp\frac{\sqrt{-5}}2$ となるわけですね。これをガラパゴ数列の生成元としたときに得られる数列は

$\quad\begin{cases} G_n=\frac{\operatorname{Im}z^n}{\operatorname{Im}z}=\frac{\phi^n-(-\phi^{-1})^n}{\phi-(-\phi^{-1})}=\frac{\phi^n-(-\phi^{-1})^n}{\sqrt5}\\ G'_n=\frac{\operatorname{Re}z^n}{\operatorname{Re}z}=\frac{\phi^n+(-\phi^{-1})^n}{\phi+(-\phi^{-1})}=\small\phi^n+(-\phi^{-1})^n \end{cases}$

のため、見事にフィボナッチ数 $F_n$ とリュカ数 $L_n$ に一致するって寸法です。注目すべきはこれらがフェルマーの最終定理形($x^n\pm y^n)  $をしているということ。この形をした式は 因数分解によって総積表現可能 なため、フィボナッチ数とリュカ数も積の形で表現可能ですよってところが今回の内容に深く関係するおさらいとなります。ここまで大丈夫でしょうか?

 大丈夫じゃないよって方は、前の記事をご参照いただけましたらもう少し詳しい説明がございますが、読んだけどやっぱり分からんかったという方は ガラパゴ数学のDiscordサーバー にてご質問くださいませ!

一般化の準備

 一般に二次方程式 $x^2-kx-1=0$ の正の解 $z=\frac{k+\sqrt{k^2+4}}2$ を第$k$貴金属数と呼びますが、これって言ってみれば黄金数が一般化された概念なわけですよね。($k=1$ のとき黄金数$\phi=\frac{1+\sqrt5}2$

 であれば、これをそのまま生成元としたガラパゴ数列 $G_n$$G'_n$ からは第$k$貴金属数をベースに一般化されたフィボナッチ数 $F_{k,n}$ とリュカ数 $L_{k,n}$ を得ることができそうです。というわけで、その準備として早速 $z$ に関する情報を集めてみましょう!

 $x^2-kx-1=0$ の共役複素数解は $x=\frac{k}2\mp\sqrt{-1-\left(\frac{k}2\right)^2}~i=\frac{k}2\mp\sqrt{-\left[\left(\frac{k}2\right)^2+1\right]}~i$ です。ということは、自己暗示により

$\begin{cases} \operatorname{Re}(z)=\frac{k}2\\ \operatorname{Im}(z)=\mp\sqrt{-\left[\left(\frac{k}2+1\right)^2\right]} \end{cases}$

と解釈できますので、複素共役数解は次のように表わせます。

$\quad\begin{cases} z=\frac{k}2-\sqrt{-\left[\left(\frac{k}2\right)^2+1\right]}~i=\frac{k+\sqrt{k^2+4}}2\\ \overline{z}=\frac{k}2+\sqrt{-\left[\left(\frac{k}2\right)^2+1\right]}~i=\frac{k-\sqrt{k^2+4}}2\\ \end{cases}$

また、

$\quad\begin{cases} \frac1z=\frac2{k+\sqrt{k^2+4}}=\frac{2(k-\sqrt{k^2+4})}{k^2-(k^2-4)}=-\frac{k-\sqrt{k^2+4}}2=-\overline{z}\\ \frac1{\overline{z}}=\frac2{k-\sqrt{k^2+4}}=\frac{2(k+\sqrt{k^2+4})}{k^2-(k^2-4)}=-\frac{k+\sqrt{k^2+4}}2=-z\\ \end{cases}$

であることから、$\begin{cases}z=-\frac1{\overline{z}}\\\overline{z}=-\frac1z\end{cases}$ という関係性も視えてきました。

ここまでを踏まえると、

$\quad\begin{cases} |z|^2=z\cdot\overline{z}=-1\\ |z|=i \end{cases}$

$\quad\begin{cases} z+\overline{z}=k\\ z-\overline{z}=\sqrt{k^2+4} \end{cases}$

$\quad\begin{cases} z^2+\overline{z}^2=(z+\overline{z})^2-2z\cdot\overline{z}=k^2+2\\ z^2-\overline{z}^2=(z+\overline{z})(z-\overline{z})=k\sqrt{k^2+4}\\ \end{cases}$

というのも容易に求められるかと思います。$|z|=i$ というのは理解に苦しむ表現かも知れませんが、これは本来の意味での絶対値ではなく「みなし絶対値(みなしノルム?)」です。例えば $0+(-i)i$ を共役複素数解とみなす視点では

 $\quad|0+(-i)i|=\sqrt{0^2+(-i)^2}=\sqrt{-1}=i$

のようなことが起こり得ます。共役複素数におけるみなし虚部が結果的に実数になっている、いわば裏実数(厨二病?🤔)に対する絶対値またはノルム的なモノということになるのでしょうか。ここでは、「実数を"共役複素数"とみなす視点ではそうなのか~」くらいの柔軟さでお受け止めください🌋🚀
 
 ともかく、これで フェルマーの最終定理の因数分解 を適用して総積表現する準備が整いました🚅🌬





フェルマーの最終定理の因数分解
$n=0$ において
$\quad\begin{cases} \displaystyle x^n-y^n=0\\[8pt] \displaystyle x^n+y^n=2 \end{cases}$

$n=2m\gt0$ において
$\quad\begin{cases} x^{2m}-y^{2m}&=\displaystyle(x+y)(x-y)\prod_{k=1}^{m-1}\left[x^2+y^2\pm2xy\cos\left(\frac{k}{m}\pi\right)\right]\\ x^{2m}+y^{2m}&=\displaystyle\quad\quad\quad\quad\quad~~~~\prod_{k=0}^{m-1}\left[x^2+y^2\pm2xy\cos\left(\frac{2k+1}{2m}\pi\right)\right]\\ \end{cases}$

$n=2m+1\gt0$ において
$\quad\begin{cases} x^{2m+1}-y^{2m+1}&=\displaystyle\quad(x-y)\prod_{k=1}^{m}\left[x^2+y^2-2xy\cos\left(\frac{2k}{2m+1}\pi\right)\right]\\ x^{2m+1}+y^{2m+1}&=\displaystyle\quad(x+y)\prod_{k=0}^{m-1}\left[x^2+y^2-2xy\cos\left(\frac{2k+1}{2m+1}\pi\right)\right]\\ \end{cases}$

一般化されたフィボナッチ数&リュカ数とその性質

 適用完了! 直感的に、一般化されたリュカ数としては第$2$種ガラパゴ数列 $G'_n$ をそのまま使うのではなく $k$ 倍して $kG'_n=(z+\overline{z})\frac{z^n+\overline{z}^n}{z+\overline{z}}=z^n+\overline{z}^n$ とした方が美しいと察したのでそちらを採用してみました。こうすることで、初項が $2$ に統一される、$k=0$ のときの $0$ 除算を避けられる、$k$ が整数ならば数列も整数列となる、導出される式の形が $F_{k,n}$$L_{k,n}$ で対象的になって並べたときにバエる、など数々の恩恵を得られます。





$k$貴金属数における一般拡張されたフィボナッチ数とリュカ数の総積表現
$k$貴金属数 $z$
$\quad z^2-kz-1=0$ ※二次方程式の解を強制的に複素共役解とみなします
$\quad\begin{cases} z=\frac{k}2-\sqrt{-\left[\left(\frac{k}2\right)^2+1\right]}~i=\frac{k+\sqrt{k^2+4}}2\\ \overline{z}=\frac{k}2+\sqrt{-\left[\left(\frac{k}2\right)^2+1\right]}~i=\frac{k-\sqrt{k^2+4}}2\\ \end{cases}$

$n=0$ において
$\quad\begin{cases} \displaystyle F_{k,0}=\quad~\frac{\operatorname{Im}z^n}{\operatorname{Im}z}=\frac{z^0-\overline{z}^0}{z-\overline{z}}&=0\\ \displaystyle L_{k,0}=k\cdot\frac{\operatorname{Re}z^n}{\operatorname{Re}z}=~z^0+\overline{z}^0&\displaystyle=2 \end{cases}$

$n=2m>0$ において
$\quad\begin{cases} F_{k,2m}&\displaystyle=\quad~\frac{\operatorname{Im}z^n}{\operatorname{Im}z}=\frac{z^{2m}-\overline{z}^{2m}}{z-\overline{z}}&\displaystyle=k\prod_{l=1}^{m-1}\left[k^2+2\pm2\cos\left(\frac{l}{m}\pi\right)\right]\\ L_{k,2m}&\displaystyle=k\cdot\frac{\operatorname{Re}z^n}{\operatorname{Re}z}=~z^{2m}+\overline{z}^{2m}&\displaystyle=~~\prod_{l=0}^{m-1}\left[k^2+2\pm2\cos\left(\frac{2l+1}{2m}\pi\right)\right]\\ \end{cases}$

$n=2m+1>0$
$\quad\begin{cases} F_{k,2m+1}&\displaystyle=\quad~\frac{\operatorname{Im}z^n}{\operatorname{Im}z}=\frac{z^{2m+1}-\overline{z}^{2m+1}}{z-\overline{z}}&\displaystyle=~~\prod_{l=1}^{m}\left[k^2+2+2\cos\left(\frac{2l}{2m+1}\pi\right)\right]\\ L_{k,2m+1}&\displaystyle=k\cdot\frac{\operatorname{Re}z^n}{\operatorname{Re}z}=~z^{2m+1}+\overline{z}^{2m+1}&\displaystyle=k\prod_{l=0}^{m-1}\left[k^2+2+2\cos\left(\frac{2l+1}{2m+1}\pi\right)\right]\\ \end{cases}$

 そそっかしい私のことなのでどこかで間違えてないか心配ですが、とりあえず $k=1$ を代入すれば第$1$貴金属数より通常のフィボナッチ数とリュカ数になりますので、念のためそれで検算してみたところ多分大丈夫そうです(๑•̀ㅂ•́)و✧

 さてここで、非常に面白いことが視えてきました! なんと $F_{k,n}$$L_{k,n}$ の積をとると両者の $\cos$ の位相が $\frac1n\pi$$\frac{n-1}n\pi$ まで奇跡的に噛み合って

$\displaystyle\quad F_{k,n}\cdotp L_{k,n}=\prod_{l=1}^{n-1}\left[k^2+2+2\cos\left(\frac{l}{n}\pi\right)\right]=F_{k,2n}$

とまとめることができるのです🎉✨  ナニコレ面白い!!

 他にも何か性質を導けないでしょうか。そういえばこれらはガラパゴ数列から導出されているわけですから、ガラパゴ数列の各種性質をそのまま引き継いでいるはずです。いくつか調べてみましょう。

ガラパゴ数列 の定義より

$\displaystyle\quad z^n=\textcolor{#f7c}{\underbrace{\textcolor{#000}{(G_n\operatorname{Im}z)i+(G'_n\operatorname{Re}z)}}_{直交座標形式}}=F_{k,n}\cdot\frac{-\sqrt{-(k^2+4)}}2i+\frac{L_{k,n}}k\cdot\frac{k}2=\frac{L_{k,n}+F_{k,n}\sqrt{k^2+4}}2$

ガラパゴ累乗定理 より

$\displaystyle\quad z^n=\textcolor{#f7c}{\underbrace{\textcolor{#000}{(G_n)z+(-|z|^2G_{n-1})}}_{斜交座標形式}}=F_{k,n}z+F_{k,n-1}$

$\quad\begin{cases} z^2=(z+\overline{z})z-z\cdotp\overline{z}=kz+1\\ \overline{z}^2=(z+\overline{z})\overline{z}-z\cdotp\overline{z}=k\overline{z}+1\\ \end{cases}\quad$からの

$\quad\begin{align} F_{k,n} &=\frac{z^n-\overline{z}^n}{z-\overline{z}}\\ &=\frac{(kz+1)z^{n-2}-(k\overline{z}+1)\overline{z}^{n-2}}{z-\overline{z}}\\ &=\frac{k(z^{n-1}-\overline{z}^{n-1})+(z^{n-2}-\overline{z}^{n-2})}{z-\overline{z}}\\ &=\textcolor{#f7c}{\underbrace{\textcolor{#000}{kF_{k,n-1}+F_{k,n-2}}}_{F_{k,n}の漸化式}} \end{align}$

$\quad\begin{align} L_{k,n} &=z^n+\overline{z}^n\\ &=(kz+1)z^{n-2}+(k\overline{z}+1)\overline{z}^{n-2}\\ &=k(z^{n-1}+\overline{z}^{n-1})+(z^{n-2}+\overline{z}^{n-2})\\ &=\textcolor{#f7c}{\underbrace{\textcolor{#000}{kL_{k,n-1}+L_{k,n-2}}}_{L_{k,n}の漸化式}} \end{align}$
$\quad$ からの

$\quad$もし$\begin{cases}\displaystyle x=\lim_{n\to\infty}\frac{F_{k,n+1}}{F_{k,n}}=\lim_{n\to\infty}\frac{kF_{k,n}+F_{k,n-1}}{F_{k,n}}=\lim_{n\to\infty}\left(k+\frac1{\frac{F_{k,n}}{F_{k,n-1}}}\right)\\\displaystyle y=\lim_{n\to\infty}\frac{L_{k,n+1}}{L_{k,n}}=\lim_{n\to\infty}\frac{kL_{k,n}+L_{k,n-1}}{L_{k,n}}=\lim_{n\to\infty}\left(k+\frac1{\frac{L_{k,n}}{L_{k,n-1}}}\right)\end{cases}$ が収束するならば

$\quad\quad\quad~\begin{cases} x=k+\frac1x\\ y=k+\frac1y \end{cases}\quad\begin{cases} x^2-kx-1=0\\ y^2-ky-1=0 \end{cases}\quad\begin{cases} x=\frac{k+\sqrt{k^2+4}}2\\ y=\frac{k+\sqrt{k^2+4}}2 \end{cases}$ なので

$\quad\quad\quad~\begin{cases} \displaystyle \lim_{n\to\infty}\frac{F_{k,n+1}}{F_{k,n}}=\frac{k+\sqrt{k^2+4}}2=z\\ \displaystyle \lim_{n\to\infty}\frac{L_{k,n+1}}{L_{k,n}}=\frac{k+\sqrt{k^2+4}}2=z\\ \end{cases}$

ガラパゴ数列の相互定理 より

$\quad\begin{align} \operatorname{Re}z\cdot(G_n-G’_n)&=|z|^2\cdot G_{n-1}\\ \frac{k}2\cdot(F_{k,n}-\frac{L_{k,n}}k)&=-F_{k,n-1}\\ kF_{k,n}-L_{k,n}&=-2F_{k,n-1}\\ L_{k,n}&=2F_{k,n-1}+kF_{k,n}\\ &=F_{k,n-1}+F_{k,n+1} \end{align}$

その他
$\quad\begin{align} (z-\overline{z})^2F_{k,n} &=(z-\overline{z})^2\frac{z^n-\overline{z}^n}{z-\overline{z}}\\ &=(z-\overline{z})(z^n-\overline{z}^n)\\ &=z^{n+1}+\overline{z}^{n+1}-\overline{z}z^n-z\overline{z}^n\\ &=z^{n+1}+\overline{z}^{n+1}+z^{n-1}+\overline{z}z^{n-1}\\ &=L_{k,n-1}+L_{k,n+1}\\ F_{k,n} &=\frac{L_{k,n-1}+L_{k,n+1}}{(z-\overline{z})^2}\\ &=\frac{L_{k,n-1}+L_{k,n+1}}{k^2+4}\\ L_{k,n-1}+L_{k,n+1}&=F_{k,n}(k^2+4) \end{align}$

$\quad\begin{align} F_{k,n-1}\cdot F_{k,n+1} &=\frac{z^{n-1}-\overline{z}^{n-1}}{z-\overline{z}}\cdot\frac{z^{n+1}-\overline{z}^{n+1}}{z-\overline{z}}\\ &=\frac{z^{2n}+\overline{z}^{2n}-(z\cdot\overline{z})^{n-1}(z^2+\overline{z}^2)}{(z-\overline{z})^2}\\ &=\frac{z^{2n}+\overline{z}^{2n}-(-1)^{n-1}((z-\overline{z})^2-2)}{(z-\overline{z})^2}\\ &=\frac{z^{2n}+\overline{z}^{2n}-2(-1)^n}{(z-\overline{z})^2}+(-1)^n\\ &=\frac{(z^n-\overline{z}^n)^2}{(z-\overline{z})^2}+(-1)^n\\ &=F_n^2+(-1)^n \end{align}$

$\quad\begin{align} L_{k,n-1}\cdot L_{k,n+1} &=(z^{n-1}+\overline{z}^{n-1})(z^{n+1}+\overline{z}^{n+1})\\ &=z^{2n}+\overline{z}^{2n}+(z\cdot\overline{z})^{n-1}(z^2+\overline{z}^2)\\ &=z^{2n}+\overline{z}^{2n}+(z\cdot\overline{z})^{n-1}((z+\overline{z})^2+2(z\cdot\overline{z})-4(z\cdot\overline{z}))\\ &=z^{2n}+\overline{z}^{2n}+2(z\cdot\overline{z})^n+(z\cdot\overline{z})^{n-1}(z-\overline{z})^2\\ &=(z^n+\overline{z}^n)^2+(-1)^{n-1}(z-\overline{z})^2\\ &=L_{k,n}^2+(-1)^{n-1}(k^2+4)\\ \end{align}$

 $k=1$ の時にちゃんとフィボナッチ数やリュカ数の性質通りになるので検算していて楽しいですが、他の $k$ のときも念のため確認しておきたいですよね。ちょっと大変ですが、ゴリゴリ算出してみます🦍💦

$k$貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{k-\sqrt{-(k^2+4)}i}2=\frac{k+\sqrt{k^2+4}}2\\\overline{z}=\frac{k+\sqrt{-(k^2+4)}i}2=\frac{k-\sqrt{k^2+4}}2\end{cases}$

$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{k,n}$ $0$$1$$k$$k^2+1$$k^3+2k$$k^4+3k^2+1$$k^5+4k^3+3k$$k^6+5k^4+6k^2+1$$k^7+6k^5+10k^3+4k$$k^8+7k^6+15k^4+10k^2+1$
$L_{k,n}$ $2$$k$$k^2+2$$k^3+3k$$k^4+4k^2+2$$k^5+5k^3+5k$$k^6+6k^4+9k^2+2$$k^7+7k^5+14k^3+7k$$k^8+8k^6+20k^4+16k^2+2$$k^9+9k^7+27k^5+30k^3+9k$

 漸化式からでも総積表現からもこの数列を導けます。相互に検算できるのがよきですね。

$1$貴金属数(黄金数) $\begin{cases}z=\frac{1-\sqrt{-(1^2+4)}i}2=\frac{1+\sqrt{5}}2\\\overline{z}=\frac{1+\sqrt{-(1^2+4)}i}2=\frac{1-\sqrt{5}}2\end{cases}$

$ k=1 $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{1,n}$ $0$$1$$1$$2$$3$$5$$8$$13$$21$$34$
$L_{1,n}$ $2$$1$$3$$4$$7$$11$$18$$29$$47$$76$

 見慣れた並び、ごく普通のフィボナッチ数とリュカ数ですね。

$2$貴金属数(白銀数) $\begin{cases}z=\frac{2-\sqrt{-(2^2+4)}i}2=1+\sqrt{2}\\\overline{z}=\frac{2+\sqrt{-(2^2+4)}i}2=1-\sqrt{2}\end{cases}$

$ k=2 $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{2,n}$ $0$$1$$2$$5$$12$$29$$70$$169$$408$$985$
$L_{2,n}$ $2$$2$$6$$14$$34$$82$$198$$478$$1154$$2786$

 調べてみますと、$F_{2,n}$ の方は ペル数 と呼ばれる数列、$L_{2,n}$ の方は ペル-リュカ数 あるいは Companion Pell numbers として既に知られている数列のようです。このペル-リュカ数は全て偶数つまり $2$ の倍数なわけですが、これを半分にしたもとの第$2$種ガラパゴ数列 $G'_n\left(=\frac{L_{2,n}}2\right)$ の方は ニューマン-シャンクス-ウィリアムズ素数 の必要条件となる数列として用いられていることが分かりました。

$3$貴金属数(青銅数) $\begin{cases}z=\frac{3-\sqrt{-(3^2+4)}i}2=\frac{3+\sqrt{13}}2\\\overline{z}=\frac{3+\sqrt{-(3^2+4)}i}2=\frac{3-\sqrt{13}}2\end{cases}$

$ k=3 $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{3,n}$ $0$$1$$3$$10$$33$$109$$360$$1189$$3927$$12970$
$L_{3,n}$ $2$$3$$11$$36$$119$$393$$1298$$4287$$14159$$46764$

 $k\geqq3~(k\in\mathbb{N})$$L_{k,n}$$k$ の整数倍ではなくなるようです。

$4$貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{4-\sqrt{-(4^2+4)}i}2=2+\sqrt{5}\\\overline{z}=\frac{4+\sqrt{-(4^2+4)}i}2=2-\sqrt{5}\end{cases}$

$ k=4 $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{4,n}$ $0$$1$$4$$17$$72$$305$$1292$$5473$$23184$$98209$
$L_{4,n}$ $2$$4$$18$$76$$322$$1364$$5778$$24476$$103682$$439204$

 $F_{4,n}$ は Denominators of continued fraction convergents to$\sqrt{5}$$\sqrt5$ に収束する連分数の分母?)だそうです。$L_{4,n}$ には Even Lucas numbers(偶数のリュカ数?)という名前があるようですが、どういうことなのでしょうか。詳しい方教えてくださいませ!

$5$貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{5-\sqrt{-(5^2+4)}i}2=\frac{5+\sqrt{29}}2\\\overline{z}=\frac{5+\sqrt{-(5^2+4)}i}2=\frac{5-\sqrt{29}}2\end{cases}$

$ k=5 $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{5,n}$$0$$1$$5$$26$$135$$701$$3640$$18901$$98145$$509626$
$L_{5,n}$ $2$$5$$27$$140$$727$$3775$$19602$$101785$$528527$$2744420$

 さすがにこの辺りまでくると詳しい情報がなくなってきますね。一応、$L_{5,n}$ の方だけ OEIS さん(The On-Line Encyclopedia of Integer Sequences)に掲載がありました。

$6$貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{6-\sqrt{-(6^2+4)}i}2=3+\sqrt{10}\\\overline{z}=\frac{6+\sqrt{-(6^2+4)}i}2=3-\sqrt{10}\end{cases}$

$ k=6 $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{6,n}$ $0$$1$$6$$37$$228$$1405$$8658$$53353$$328776$$2026009$
$L_{6,n}$ $2$$6$$38$$234$$1442$$8886$$54758$$337434$$2079362$$12813606$

 $F_{6,n}$ は Denominators of continued fraction convergents to$\sqrt{10}$$\sqrt{10}$ に収束する連分数の分母?)だそうです。

$7$貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{7-\sqrt{-(7^2+4)}i}2=\frac{7+\sqrt{53}}2\\\overline{z}=\frac{7+\sqrt{-(7^2+4)}i}2=\frac{7-\sqrt{53}}2\end{cases}$

$ k=7 $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{7,n}$$0$$1$$7$$50$$357$$2549$$18200$$129949$$927843$$6624850$
$L_{7,n}$ $2$$7$$51$$364$$2599$$18557$$132498$$946043$$6754799$$48229636$

 $L_{7,n}$ の方だけ OEIS さん(The On-Line Encyclopedia of Integer Sequences)に掲載がありました。

$8$貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{8-\sqrt{-(8^2+4)}i}2=4+\sqrt{17}\\\overline{z}=\frac{8+\sqrt{-(8^2+4)}i}2=4-\sqrt{17}\end{cases}$

$ k=8 $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{8,n}$$0$$1$$8$$65$$528$$4289$$34840$$283009$$2298912$$18674305$
$L_{8,n}$ $2$$8$$66$$536$$4354$$35368$$287298$$2333752$$18957314$$153992264$

 $L_{8,n}$ の方だけ OEIS さん(The On-Line Encyclopedia of Integer Sequences)に掲載がありました。

$9$貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{9-\sqrt{-(9^2+4)}i}2=\frac{9+\sqrt{85}}2\\\overline{z}=\frac{9+\sqrt{-(9^2+4)}i}2=\frac{9-\sqrt{85}}2\end{cases}$

$ k=9 $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{9,n}$ $0$$1$$9$$82$$747$$6805$$61992$$564733$$5144589$$46866034$
$L_{9,n}$ $2$$9$$83$$756$$6887$$62739$$571538$$5206581$$47430767$$432083484$

  OEIS さん の情報によれば、$F_{9,n}$$\frac{x}{1-9x-x^2}$ を級数展開したときの係数に現れるようです。そういえばフィボナッチ数の母関数って $\displaystyle f(x)=\sum_{l=0}^\infty F_nx^l=\frac{x}{1-x-x^2}$ だったような記憶。もしかすると、第$k$貴金属数で一般化されたフィボナッチ数 $F_{k,n}$ の母関数は $\displaystyle f(x)=\sum_{l=0}^\infty F_{k,n}x^l=\frac{x}{1-kx-x^2}$ なのかもしれません。のちほど確認してみることにしましょう。

第-1貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{-1-\sqrt{-5}i}2=\frac{-1+\sqrt{5}}2\\\overline{z}=\frac{-1+\sqrt{-5}i}2=\frac{-1-\sqrt{5}}2\end{cases}$

$ k=-1 $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{-1,n}$$0$$1$$-1$$2$$-3$$5$$-8$$13$$-21$$34$
$L_{-1,n}$$2$$-1$3$-4$7$-11$$18$$-29$$47$$-76$

 $F_{-1,n}$ と L_{-1,n} はいずれも通常のフィボナッチ数・リュカ数に対して交互に正負符号のついた数列となりました。

 余談ですが、本来は日本語で「第$k$」と表現するときの $k$ というのは"序数"です。"序数"は大きさ情報や位置情報とは直接関係なく、単に1番目を起点として何番目であるかという順番を表す情報にすぎませんので、原義通りに解釈するならば正の整数以外を適用すると言葉の意味を破綻させてしまいます。できれば「第~」ではない別の表現を使いたいところなのですが、とはいえ既に浸透している語を流用した方が純粋拡張による一般化であることが伝わりやすいため、あえて「第$k$貴金属数」を使用しているという背景をお察しいただけましたら幸いです🙇🙇🙇

$k$フィボナッチ数の母関数

 昔、当時まだ高校生だった 数学を愛する会 の会長 ikkun に教えていただいたのですが、数列の母関数っていうのはその数列が $x$ の級数の係数に現れる関数で、フィボナッチ数列の場合は $\displaystyle f(x)=\sum_{l=0}^\infty F_nx^l=\frac{x}{1-x-x^2}$ なのだそうです。

 前章の第$9$貴金属数にて、一般化されたフィボナッチ数の数列(面倒なので、以後は第$9$フィボナッチ数と呼びます)の母関数が $f(x)=\frac{x}{1-9x-x^2}$ であったことから、もしかして 第$k$フィボナッチ数の母関数は

$$\displaystyle\quad f(x)=\sum_{l=0}^\infty F_{k,n}x^l=\frac{x}{1-kx-x^2}$$

なんじゃないか説が浮上したわけですが、これは辺々 $(1-kx-x^2)$ 倍すれば
$$\quad(1-kx-x^2)\sum_{l=0}^\infty F_{k,n}x^l=x$$

であることと同義ですよね。カンのいい方は既にピンと来ているかもしれませんが、左辺は

$\quad\begin{array}{c} F_{k,0}&+F_{k,1}x&+F_{k,2}x^2&+F_{k,3}x^3&+F_{k,4}x^4&\cdots\\ &-kF_{k,0}x&-kF_{k,1}x^2&-kF_{k,2}x^3&-kF_{k,3}x^4&-kF_{k,4}x^5&\cdots\\ &&-F_{k,0}x^2&-F_{k,1}x^3&-F_{k,2}x^4&-F_{k,3}x^5&-F_{k,4}x^6&\cdots\\ \end{array}$

で、$F_{k,0}=0$$\displaystyle F_{k,2\cdotp0+1}=\prod_{l=1}^0\left[k^2+2+2\cos\left(\frac{2l}{2\cdotp0+1}\pi\right)\right]=1$$k$ によらず定数ですから、

$\begin{array}{c} \quad\quad\quad\quad\quad\quad&x&+F_{k,2}x^2&+F_{k,3}x^3&+F_{k,4}x^4&\cdots\\ &&-kF_{k,1}x^2&-kF_{k,2}x^3&-kF_{k,3}x^4&-kF_{k,4}x^5&\cdots\\ &&-F_{k,0}x^2&-F_{k,1}x^3&-F_{k,2}x^4&-F_{k,3}x^5&-F_{k,4}x^6&\cdots\\ \end{array}$

となり、さらに $x$ 以外は $F_{k,n}$ の漸化式 $F_{k,n}=kF_{k,n-1}+F_{k,n-2}$ により相殺されて消えますので等式成立、説立証です!


$k$リュカ数の母関数

 「先生、フィボナッチ数列くんばっかり贔屓しないでリュカ数列くんの母関数もお願いします!」
 
 その前に用語の確認をしておかないとリュカ数列警察のお世話になりそうな案件にぶち当たってしまいました。といいますのも、どうやら「リュカ数」と「リュカ数列」は意味が違うらしいのです🤔❓

  リュカ数 はご存知フィボナッチ数と対になる数列でこちらは説明するまでもないでしょう。一方、 リュカ数列 はフィボナッチ数、リュカ数、ペル数などを含めた数列(二階線形回帰数列の一種らしいです)の総称としての意味になるんだとか。ずいぶん紛らわしい命名してますね…。そういう事情もあって、この記事では第$k$貴金属数をベースとした第$k$リュカ数およびその数列のことを「第$k$リュカ数」で統一しております。

 さて、言葉遊びはそのくらいにして閑話休題。

$\quad\displaystyle(1-kx-x^2)\sum_{l=0}^\infty L_{k,n}x^l=$
$\quad\begin{array}{c} L_{k,0}&+L_{k,1}x&+L_{k,2}x^2&+L_{k,3}x^3&+L_{k,4}x^4&\cdots\\ &-kL_{k,0}x&-kL_{k,1}x^2&-kL_{k,2}x^3&-kL_{k,3}x^4&-kL_{k,4}x^5&\cdots\\ &&-L_{k,0}x^2&-L_{k,1}x^3&-L_{k,2}x^4&-L_{k,3}x^5&-L_{k,4}x^6&\cdots\\ \end{array}$
$\quad=L_{k,0}+(L_{k,1}-kL_{k,0})x$
$\quad=2-kx$

よって、任意の$z$における第$k\left(=\frac{z^2-1}z\right)$リュカ数$L_{k,n}$ の母関数は

$$\quad f(x)=\sum_{l=0}^\infty L_{k,n}x^l=\frac{2-kx}{1-kx-x^2}$$

です!

任意の$z$を第$z-\frac1z$貴金属数とみなす遊び

 大分道のり長くなってしまいましたが、これをやらないとタイトル詐欺になってしまうので、ほどよく休憩を挟みながら最後までお付き合いください🙏

 これまでは 任意の $k$ から $z$$\overline{z}$ を導出することに主眼を置いてきましたが、ここからは任意の $z$ から $k$ を逆算してみたいと思います。とはいっても $z\ne0$ として
$$\quad k=2\operatorname{Re}z=z+\overline{z}=z-\frac1z$$

とすれば終了なのですけど、実数ではなく複素数を扱おうと思うと少々厄介なんです。

 例えば $1$の原始$5$乗根を貴金属数とみなそうと思って

$\quad\displaystyle z=P^{\frac15}\left(=e^{\frac{2\pi}5i}\right)=\frac{-1+\sqrt5+\sqrt{2(5+\sqrt5)}i}4$

から $k=z-\frac1z$ を求めようとするのはチカラこそパワーな脳筋案件です。軟弱な私に毎回そんなハードプレイをさせるなんてムリゲーでしょと思っていたら、少しだけラクをするための魔法が天から降ってきました。

$\quad\begin{align} \frac{1}{z} &=\frac{\overline{z}}{z\cdot\overline{z}}\\ &=\frac{\operatorname{Re}z-\operatorname{Im}z~i}{|z|^2}\\ &=\frac{1}{|z|^2}\operatorname{Re}z-\frac{1}{|z|^2}\operatorname{Im}z~i\\ \end{align}$

つまり、

$\quad\begin{align} k&=z-\frac{1}{z}\\ &=\left(1-\frac1{|z|^2}\right)\operatorname{Re}z+\left(1+\frac1{|z|^2}\right)\operatorname{Im}z~i\\ \end{align}$

これだけでもまあまあチートフルですが、さらにここで $|z|=1$ の場合は

$\quad\large k=2\operatorname{Im}z~i$

とボーナスタイムに突入します。しかもこの式は恒等式ですから、実部と虚部の解釈は"本来の意味"であっても"みなし"であっても問題なく使えるスグレモノ! ということは、最初から 強くてニューゲーム でプレイ可能というわけですヽ(=´▽`=)ノ✨✨ 

 ここから分かることは、本来の意味での絶対値が $|z|=1$ かつ 本来の意味での実部と虚部が $1$ を超えない、要するに $z$ が複素平面における単位円上にある場合の $z$$\overline{z}$ は、本来の意味での虚部が同じであるため虚軸を挟んで鏡像な対称位置にあるペアだということです($\overline{z}=-\frac1{z}$ なことからも明らかですね)。そして、このときの $k$ は純虚数となり、$k$ の虚部としては $0\leqq\operatorname{Im}k\leqq2$ の範囲しかとらないことも見てとれます。

 以上を踏まえた上で、複素平面の単位円上の $z$ にターゲットを絞ってみていくことにしましょう。

$0$貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{0-\sqrt{-(0^2+4)}i}2=+1=\mathrm{P}~~~\left(=e^{2\pi i}\right)\\\overline{z}=\frac{0+\sqrt{-(0^2+4)}i}2=-1=\mathrm{P}^{\frac12}\left(=e^{\frac{2\pi}2i}\right)\end{cases}$

$ k=0 $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{0,n}$ $0$$1$$0$$1$$0$$1$$0$$1$$0$$1$
$L_{0,n}$$2$$0$$2$$0$$2$$0$$2$$0$$2$$0$

 $1$$2$乗根ペア(原始$1$乗根 & 原始$2$乗根)からは、なんと周期性が現れました。双曲線関数をマクローリン展開したときの指数型母関数の係数っぽいですね。$F_{0,n}$$\sinh$ の係数、$\frac{L_{0,n}}2$$\cosh$ の係数といった感じでしょうか。

$2i$貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{2i-\sqrt{0}i}2=i=\mathrm{P}^{\frac14}\left(=e^{\frac{2\pi}4i}\right)\\\overline{z}=\frac{2i+\sqrt{0}i}2=i=\mathrm{P}^{\frac14}\left(=e^{\frac{2\pi}4i}\right)\end{cases}$

$ k=2i $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{2i,n}$$0$$1$$2i$$-3$$-4i$$5$$6i$$-7$$-8i$$9$
$L_{2i,n}$$2$$2i$$-2$$-2i$$2$$2i$$-2$$-2i$$2$$2i$

 $1$$4$乗根重解ペアですが、$F_{2i,n}$ から $ni^{n-1}$ という面白い数列が現れました。$F_{2i,n}$ の絶対値のみを見れば単調増加していますが偏角は周期 $4$$L_{2i,n}$ は普通に周期 $4$ ですね。$\frac{F_{2i,n}}ni$$\frac{L_{2i,n}}2$ は 純虚指数函数 $\operatorname{cis}(x)\left(=\exp(ix)\right)$ をマクローリン展開したときの指数型母関数の係数に一致します。

$\sqrt3i$貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{\sqrt{3}i-\sqrt{-1}i}2=\frac{\sqrt{3}i+1}2=\mathrm{P}^{\frac16}\left(=e^{\frac{2\pi}6i}\right)\\\overline{z}=\frac{\sqrt{3}i+\sqrt{-1}i}2=\frac{\sqrt{3}i-1}2=\mathrm{P}^{\frac13}\left(=e^{\frac{2\pi}3i}\right)\end{cases}$

$ k=\sqrt3i $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $
$F_{\sqrt3i,n}$$0$$1$$\sqrt3i$$-2$$-\sqrt3i$$1$$0$$1$$\sqrt3i$$-2$
$L_{\sqrt3i,n}$$2$$\sqrt3i$$-1$$0$$-1$$-\sqrt3i$$2$$\sqrt3i$$-1$$0$

 $1$$6$乗根(原始$6$乗根 & 原始$3$乗根) ペアからは周期 $6$ の数列が現れました。

$\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}i$貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}i-\sqrt{\frac{3-\sqrt5}2}i}2=\frac{\sqrt{2(5+\sqrt5)}i-1+\sqrt5}4=\mathrm{P}^{\frac15}\left(=e^{\frac{2\pi}5i}\right)\\\overline{z}=\frac{\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}i+\sqrt{\frac{3-\sqrt5}2}i}2=\frac{\sqrt{2(5+\sqrt5)}i+1-\sqrt5}4=\mathrm{P}^{\frac3{10}}\left(=e^{\frac{3\cdot2\pi}{10}i}\right)\end{cases}$

$ k=\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}i $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $$ n=10 $$ n=11 $
$F_{\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}i,n}$$0$$1$$\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}i$$-\frac{3+\sqrt5}2$$-\frac{(1+\sqrt5)\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}}2i$$1+\sqrt5$$\frac{(1+\sqrt5)\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}}2i$$-\frac{3+\sqrt5}2$$-\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}i$$1$$0$$1$
$L_{\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}i,n}$$2$$\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}i$$-\frac{1+\sqrt5}2$$-\frac{(-1+\sqrt5)\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}}2$$\frac{-1+\sqrt5}2$$0$$\frac{-1+\sqrt5}2$$\frac{(-1+\sqrt5)\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}}2i$$-\frac{1+\sqrt5}2$$-\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}i$$2$$\sqrt{\frac{5+\sqrt5}2}i$

 $1$$10$乗根ペア(原始$5$乗根 & 原始$10$乗根)からは周期 $10$ の数列が現れました。せっかく $k$ の導出をラクできたと思っていたのに一難去ってまた一難、こちらの計算が鬼ハードモードで泣きそうに😂

$i$貴金属数 $\begin{cases}z=\frac{i-\sqrt{-3}i}2=\frac{i+\sqrt{3}}2=\mathrm{P}^{\frac1{12}}\left(=e^{\frac{2\pi}{12}i}\right)\\\overline{z}=\frac{i+\sqrt{-3}i}2=\frac{i-\sqrt{3}}2=\mathrm{P}^{\frac5{12}}\left(=e^{\frac{5\cdot2\pi}{12}i}\right)\end{cases}$

$ k=i $$ n=0 $$ n=1 $$ n=2 $$ n=3 $$ n=4 $$ n=5 $$ n=6 $$ n=7 $$ n=8 $$ n=9 $$ n=10 $$ n=11 $$ n=12 $$ n=13 $
$F_{i,n}$$0$$1$$i$$0$$i$$-1$$0$$-1$$-i$$0$$-i$$1$$0$$1$
$L_{i,n}$2i$1$$2i$$-1$$i$$-2$$-i$$-1$$-2i$$1$$-i$$2$$i$

 $1$$12$乗根 ペアからは周期 $12$ の数列が出てきました。


 これらの周期についてはまだ確実な法則性を見いだせてませんが、共役複素数ペアが何乗根なのかに関係しているようです($4$乗根はやや特殊?)。$|z|=1$ についてはそれなりに有意義なサンプルがとれたように思いますので、残すは $|z|\neq1$ でしょうか。が、そろそろ計算に疲れてしまいましたので、$n$ についての一般化も含めてまたそのうち気が向いたら追記してみるかもみないかも🤔❓


まとめ

 最後に、今回導出した数式を全て総括して締めとしたいと思います。




任意の$z$を第$k$貴金属数とみなしたときの
$k$フィボナッチ数$F_{k,n}$と第$k$リュカ数$L_{k,n}$
$k$貴金属数 $z$
$\quad z^2-kz-1=0$
$\quad z=\frac{k+\sqrt{k^2+4}}2$
$\quad\begin{align}k&=z-\frac1z\\ &=\left(1-\frac1{|z|^2}\right)\operatorname{Re}z+\left(1+\frac1{|z|^2}\right)\operatorname{Im}z~i\\ \end{align}$

漸化式
$\quad F_{k,n+2}=kF_{k,n+1}+F_{k,n}$$\quad\begin{cases}F_{k,0}=0\\F_{k,1}=1\end{cases}$
$\quad L_{k,n+2}=kF_{k,n+1}+L_{k,n}$$\quad\begin{cases}L_{k,0}=2\\L_{k,1}=k\end{cases}$

収束
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{F_{k,n+1}}{F_{k,n}}=\lim_{n\to\infty}\frac{L_{k,n+1}}{L_{k,n}}=z$

母関数
$\quad\displaystyle \sum_{l=0}^\infty F_{k,n}x^l=\frac{x}{1-kx-x^2}$
$\quad\displaystyle \sum_{l=0}^\infty L_{k,n}x^l=\frac{2-kx}{1-kx-x^2}$

因数分解
$n=\{0,1,2\}$ において
$\quad\begin{cases} \displaystyle F_{k,0}=0\\ \displaystyle L_{k,0}=2 \end{cases}$$\quad\begin{cases} \displaystyle F_{k,1}=1\\ \displaystyle L_{k,1}=k \end{cases}$$\quad\begin{cases} \displaystyle F_{k,2}=k\\ \displaystyle L_{k,2}=k^2+2 \end{cases}$

$n=2m>0$ において
$\quad\begin{cases} \displaystyle F_{k,2m}=k\prod_{l=1}^{m-1}\left[k^2+2\pm2\cos\left(\frac{l}{m}\pi\right)\right]\\ \displaystyle L_{k,2m}=~~\prod_{l=0}^{m-1}\left[k^2+2\pm2\cos\left(\frac{2l+1}{2m}\pi\right)\right]\\ \end{cases}$

$n=2m+1>0$
$\quad\begin{cases} \displaystyle F_{k,2m+1}=~~\prod_{l=1}^{m}\left[k^2+2+2\cos\left(\frac{2l}{2m+1}\pi\right)\right]\\ \displaystyle L_{k,2m+1}=k\prod_{l=0}^{m-1}\left[k^2+2+2\cos\left(\frac{2l+1}{2m+1}\pi\right)\right]\\ \end{cases}$

性質
$\quad\displaystyle z^n=F_{k,n}z+F_{k,n-1}=\frac{L_{k,n}+F_{k,n}\sqrt{k^2+4}}2$

$\quad\begin{cases} F_{k,n-1}+F_{k,n+1}=L_{k,n}\\ L_{k,n-1}+L_{k,n+1}=F_{k,n}(k^2+4) \end{cases}$

$\quad\begin{cases} F_{k,n-1}\cdot F_{k,n+1}=F_n^2+(-1)^n\\ L_{k,n-1}\cdot L_{k,n+1}=L_{k,n}^2-(-1)^n(k^2+4) \end{cases}$

$\quad F_{k,n}\cdot L_{k,n}=F_{k,2n}$

 この記事を執筆するにあたり、査読ならびに計算のお手伝いをしてくださった nayuta_ito 先生と、母関数について教えてくださった 数学を愛する会 の会長 ikkun に感謝致します。

投稿日:202381
更新日:20231122

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https://mathlog.info/articles/323         数学を愛する会 副会長 COO CTO       ガラパゴ数学 開拓者             猫舌・甘党・薄味派

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