1
大学数学基礎解説
文献あり

部分の和と全体

83
0

群の場合:その1

Gを有限群とする.このとき,任意の真部分群HGに対して
gGgHg1G
が成り立つ.

H<Gの正規化群をNとおくと,
#{gHg1gG}=#G#N
であるから(cf. action例34),
#(gGgHg1)1+#G#N(#H1)1+#G#H(#H1)=1+#G(11#H)<1+#G(11#G)=#G
が成り立つ.

無限群G:=GL(n;C)とその真部分群
H:={gGi>j, gi,j=0}
とに対して,
gGgHg1=G
が成り立つ(cf. arima定理(6.3.4)).

Gを群とする.このとき,指数有限な任意の真部分群HGに対して
gGgHg1G
が成り立つ.

Gによる集合G/Hへの作用α:GSym(G/H)を考える(cf. action例21).

  1. 仮定よりSym(G/H)は有限群であるから,準同型定理より,G/Kerαは有限群である.
  2. KerαHが成り立つ.実際,gKerαとすると,
    H=α(g)(H)=gH
    より,gHを得る.
  3. よって,有限群G/Kerαの真部分群H/Kerαに対して,finより,
    g¯G/Kerαg¯(H/Kerα)g¯1G/Kerα
    が成り立つ.
  4. そこで,g0Gであって
    g0Kerαg¯G/Kerαg¯(H/Kerα)g¯1=gG(gHg1)/Kerα
    なるものを取ると,
    g0gGgHg1
    が成り立つ.

群の場合:その2

Gを群とする.このとき,任意の真部分群H,KGに対して
HKG
が成り立つ.

もしHK=Gとなったとすると,HK,KHであるから
hHK, kKH
が取れるが,
hkG=HK
より

  1. hkHのとき,k=h1(hk)H;
  2. hkKのとき,h=(hk)k1K;

となって,不合理である.

Gを群とする.このとき次は同値である:

  1. Gは(いくつかの)真部分群の合併に等しい;
  2. Gは巡回群ではない.

(i)(ii)

仮定より
G={HHG}
となるので,任意のgGに対して
gHGgG
が成り立つ.

(ii)(i)

仮定より,各gGに対してg<Gは真部分群であり,明らかに
G=gGg
が成り立つ.

(非巡回)群(Z/2Z)×(Z/2Z)は,3つの真部分群
{(0,0),(1,0)}, {(0,0),(0,1)}, {(0,0),(1,1)}
の合併に等しい.

線型空間の場合

nZ2とし,K#Knを満たす体,VK線型空間とする.このとき,任意の真部分空間W1,,WnVに対して
i=1nWiV
が成り立つ.

i{1,,n}に対して
WijiWj
が成り立つとしてよい.そこで,v0VW1および
v1W1j=2nWj
を取り,部分集合
L:={v0+v1ssK}
を考える.このとき
LW1=
であり,各j{2,,n}に対して,
v0+v1s=v0+v1tWjs=t
より,
#(LWj)1
となる.よって
#(Li=1nWi)n1<n#L
が成り立つので,
i=1nWi=V
とはなり得ない.

K:=Z/2Z上の線型空間K2は,3つの真部分空間
{(0,0),(1,0)}, {(0,0),(0,1)}, {(0,0),(1,1)}
の合併に等しい.

R上の線型空間R[t]は,可算無限個の真部分空間
{fR[t]degfn}, nN
の合併に等しい.

Banach空間の場合

EをBanach空間とする.このとき,任意の真閉部分空間族(Fn)nNに対して
nNFnE
が成り立つ.

Eの任意の真部分空間FEに対してInt(F)=が成り立つことが示せれば,Baireの範疇定理より結論を得る(cf. baire定理3系3(とその上の注意)).

そこで,部分空間FEInt(F)を満たすとしyInt(F)を取ると,rR>0であって
{xExy<r}F
を満たすものが存在する.このとき,任意のxE{0}に対して,
x¯:=y+r2xxE
とおくとx¯y<rよりx¯Fとなるので,
x=2xr(x¯y)F
が成り立つ.よってF=Eを得る.

線型空間R[t]は完備なノルムを許容しない.

参考文献

投稿日:17日前
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

うすい
63
13917
学んだことをまとめています.

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 群の場合:その1
  2. 群の場合:その2
  3. 線型空間の場合
  4. Banach空間の場合
  5. 参考文献