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大学数学基礎解説
文献あり

ABJ anomaly: ループダイアグラムによる計算 (2/2)

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【Notation】
ϵμνρσは4次元の完全反対称テンソルであり、ϵ0123=1とします。前回の記事とは符号が逆であることに注意(参照した文献の定義をそのまま採用しました)。

次元正則化によるループダイアグラムの計算

ABJ anomaly:ループダイアグラムによる計算 (1/2) では、ABJ anomalyに関し、ループダイアグラムを球対称な運動量のカットオフを用いて計算しました。今回は正則化として次元正則化を採用し計算します。

次元正則化においてABJ anomalyを導く際に重要なのはγ5の定義です。γ5を4次元と同じ形で任意次元に拡張します。するとγ5と「他次元」(4次元以外の次元を本記事ではこう呼びます)におけるガンマ行列は交換します。これにより一見消えるようにみえるダイアグラムに、他次元の影響により残る部分が現れます。これがABJ anomalyに寄与します。

本記事はRef.ref1に基づいています。

Triangle diagramの評価

以下のダイアグラムを評価します。

ABJ anomalyに寄与する三角ダイアグラム。!FORMULA[5][36647][0]は!FORMULA[6][-2055965170][0]、!FORMULA[7][37298][0]は!FORMULA[8][2053871215][0]を表す ABJ anomalyに寄与する三角ダイアグラム。Aγ5γμVγμを表す

式にすれば以下のようになります:
(1)(1)(ie)2d4l(2π)4{tr[γμγ5i()(lk)2γλil2γνi(+)(l+p)2]+(pk,νλ)}
ここでγ5=(+)γ5+γ5()を用い、iqμtr第1項にかけたものを評価すると
iqμtr[γμγ5i()(lk)2γλil2γνi(+)(l+p)2]=tr[γ5()(lk)2γλl2γν+γ5γλl2γν(+)(l+p)2]
なので、Eq.(1)の第1項は
=e2d4l(2π)4tr[γ5()(lk)2γλl2γν+γ5γλl2γν(+)(l+p)2]
となります。この式の第1項目でll+kと変数変換すると
e2d4l(2π)4tr[γ5l2γλ+(l+k)2γνγ5l2γν+(l+p)2γλ]
を得ます。これはpk,νλの入れ替えで反対称です。一方、Eq.(1)の第2項は、この式においてpk,kλを施したものです。よって図1の2つのダイアグラムを足すとゼロになるように思えます。

しかしこの積分はlに関し線形発散をもつため正則化を施して計算する必要があります。前回の運動量によるカットオフでは、第1項と第2項は線形発散部分の正則化により打ち消し合が起こらず、有限の寄与が残りました。本記事では次元正則化を採用します。次元正則化では、4次元部分は第1項と第2項が打ち消し合い、他次元部分が打ち消し合わず残りABJ anomalyに寄与します。

前章で述べたように、任意次元においてγ5
γ5=iγ0γ1γ2γ3
で定めます。このときγ5γ0,1,2,3とは反交換、γμ0,1,2,3とは交換します。ループ積分のlを任意次元に拡張し、他の変数p,kは4次元にとどまるものとします。

ここでl=l||+lとします。ただしl||は4次元の運動量のゼロでない部分、lは他次元のゼロでない部分です。こうすると、γ5は他次元のγとは交換するので、γ5は先程の計算と異なり
γ5=(+)γ5+γ5()2γ5
になります。最後の項が通常と異なる部分です。これを用いてEq.(1)を計算しなおすと、(+)γ5+γ5()の部分は2つのダイアグラムで打ち消すので、残る部分は
e2d4(2π)4{tr[2γ5()(lk)2γλl2γν(+)(l+p)2]+(pk,λν)}
です。γ5と交換し、そのほかとは反交換します。またγ̸γ5以外とは反交換します。tr(γ5A)Aは全部で6つの(運動量×γ)を含む)に関し、Aがいくつを含むかで分類して考えると以下のようになります:

  • Aを1つ含むとき:tr(γ5A)はゼロ(Aγ5と反交換する5つのγを含む)
  • Aを2つ含むとき: tr(γ5A)はノンゼロ
  • Aを3つ含むとき: tr(γ5A)はゼロ(Aγ5と反交換する3つのγを含む)
  • Aを4つ含むとき: tr(γ5A)はゼロ(tr(γ5γ̸γ̸γλγ̸γνγ̸)tr(γ5γλγν)=0

ゆえに
=e2ddl(2π)dtr[2γ5()γλγν]×1(lk)21l21(l+p)2=e2tr[2γ5()γλγν]ddl(2π)d1(lk)2l2l21(l+p)2
となります。あとは通常のループ積分の計算を行います(Ref.ref2参照)。分母をまとめると
=e2tr(2γ5()γλγν)×201dx01xdyddl(2π)dl2(l~2Δ)3,(l~:=lkx+py,Δ:=(kx+py)2k2xp2y)(2)=e2tr(2γ5()γλγν)×201dx01xdyddl(2π)dl2(l2Δ)3
を得ます。ここでll~への変数変換は4次元成分しか変化していないため(p,kは4次元成分のみもつ)、l2には影響しないことに注意。計算を続けると
ddl(2π)dl2(l2Δ)3=d4dddl(2π)dl2(l2Δ)3Euclid化d4diddl(2π)dl2(l2+Δ)3=d4did21(4π)d/21Γ(3)Γ(2d/2)Δd/22=id421(4π)d/212Γ(2d/2)Δd/22
ここでd=42ϵとして、ϵ0に対して有限の寄与をもつ部分を取り出します:
=ϵ2i1(4π)2ϵΓ(ϵ)Δϵ有限部分ϵ2i1(4π)21ϵ=i2(4π)2
以上よりEq.(2)は
Eq.(2)=i2(4π)2e2tr(2γ5()γλγν)×201dx01xdy=ie22(4π)2tr(2γ5()γλγν)=ie22(4π)2(4iϵαλνβ)(3)=e24π2kαpβϵαλβν
を得ます。もう1項、これにpk,λνを施したものの寄与がありますが、この操作に対しEq.(3)は不変なので、Eq.(3)の2倍がiqμ×Eq.(1)になります。図1のダイアグラムをMμνλ(p,k)と表すと、最終的に
iqμMμνλ(p,k)=e22π2kαpβϵαλβν
を得ます。

軸性ベクトルカレントの発散の行列要素は
d4x iqμeiqxp,k|jμ5(x)|0=(2π)4δ(4)(p+kq)ϵν(p)ϵλ(k)iqμMμνλd4x eiqxp,k|μjμ5(x)|0=(2π)4δ(4)(p+kq)ϵν(p)ϵλ(k)e22π2ϵαλβνkαpβ
と書けます(ϵμ(p)は光子の偏極ベクトル。偏極ベクトルの基底の足は省略しました)。p,k|は運動量p,kの2つの光子の状態です。
両辺にd4q(2π)4を作用させれば
p,k|μjμ5|0=ϵν(p)ϵλ(k)e22π2ϵαλβνkαpβ
となります。Appendixの計算より、これは
(4)p,k|μjμ5|0=e216π2p,k|ϵανβλFανFβλ(0)|0
です。p,k|, |0を外せばRef.ref3のEq.(3)の4次元の場合と一致します。

まとめ

今回はABJ anomalyを、次元正則化を用いてループダイアグラムを正則化することにより計算しました。γ5を4次元と同じ定義で任意次元へ拡張すると、軸性ベクトルカレントに寄与するループダイアグラムに「他次元」による寄与が残ります。これを評価すると、他の方法と同じ軸性ベクトル対称性の破れを得ます。

おしまい。



Appendix: Eq.(4)の導出

以下を示します:
(5)ϵν(p)ϵλ(k)e22π2ϵαλβνkαpβ=e216π2p,k|ϵανβλFανFβλ(0)|0
Aμを生成・消滅演算子で展開すると以下のようになります:
Aμ(x)=d3p(2π)312Epr=03(aprϵμr(p)eipx+arpϵrμ(p)eipx)
これを用いて、p,k|FανFβλ(0)|0の中のp,k|αAν(0)βAλ(0)|0を評価します:
p,k|αAν(0)βAλ(0)|0=0|2Ep2Ekapsaktd3p(2π)312Epr=03((ipα)aprϵνr(p)+(ipα)arpϵrν(p))×d3q(2π)312Eqr=03((iqβ)aqrϵλr(q)+(iqβ)arqϵrλ(q))|0=0|2Ep2Ekapsaktd3p(2π)312Epr=03((ipα)arpϵrν(p)d3q(2π)312Eqr=03((iqβ)arqϵrλ(q)|0
[apr,aps]=(2π)3δ(3)(pp)δrsであるから、生成・消滅演算子に関してcontractionをとると
0|apsaktarparq|0=(2π)6(δ(3)(pp)δ(3)(kq)+δ(3)(pq)δ(3)(kp))
となります。これを用いて計算すれば
(6)p,k|αAν(0)βAλ(0)|0=(ipα)ϵsν(p)(ikβ)ϵtλ(k)+(ikα)ϵsν(k)(ipβ)ϵtλ(p)
です。これにϵανβλをかけると、上式の第1項と第2項は同じ寄与を与えます。さらにFανFβλ(0)からはあと3項寄与がありますが、これらも同じ寄与を与えることはすぐにわかります。以上から、Eq.(5)の右辺は、Eq.(6)の第1項の8倍になります。ゆえに
e216π2p,k|ϵανβλFανFβλ(0)|0=e22π2ϵανβλ(ipα)ϵsν(p)(ikβ)ϵtλ(k)=ϵsν(p)ϵλt(k)e22π2ϵαλβνkαpβ
これはEq.(5)と一致します。

参考文献

[1]
Michel E. Peskin, Daniel V. Schroeder, An Introduction to Quantum Field Theory, Westview Press, 1995, 661-
投稿日:2023714
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