【Notation】
は4次元の完全反対称テンソルであり、とします。前回の記事とは符号が逆であることに注意(参照した文献の定義をそのまま採用しました)。
次元正則化によるループダイアグラムの計算
ABJ anomaly:ループダイアグラムによる計算 (1/2)
では、ABJ anomalyに関し、ループダイアグラムを球対称な運動量のカットオフを用いて計算しました。今回は正則化として次元正則化を採用し計算します。
次元正則化においてABJ anomalyを導く際に重要なのはの定義です。を4次元と同じ形で任意次元に拡張します。するとと「他次元」(4次元以外の次元を本記事ではこう呼びます)におけるガンマ行列は交換します。これにより一見消えるようにみえるダイアグラムに、他次元の影響により残る部分が現れます。これがABJ anomalyに寄与します。
本記事はRef.ref1に基づいています。
Triangle diagramの評価
以下のダイアグラムを評価します。
ABJ anomalyに寄与する三角ダイアグラム。は、はを表す
式にすれば以下のようになります:
ここでを用い、を第1項にかけたものを評価すると
なので、Eq.(1)の第1項は
となります。この式の第1項目でと変数変換すると
を得ます。これはの入れ替えで反対称です。一方、Eq.(1)の第2項は、この式においてを施したものです。よって図1の2つのダイアグラムを足すとゼロになるように思えます。
しかしこの積分はに関し線形発散をもつため正則化を施して計算する必要があります。前回の運動量によるカットオフでは、第1項と第2項は線形発散部分の正則化により打ち消し合が起こらず、有限の寄与が残りました。本記事では次元正則化を採用します。次元正則化では、4次元部分は第1項と第2項が打ち消し合い、他次元部分が打ち消し合わず残りABJ anomalyに寄与します。
前章で述べたように、任意次元においてを
で定めます。このときはとは反交換、とは交換します。ループ積分のを任意次元に拡張し、他の変数は4次元にとどまるものとします。
ここでとします。ただしは4次元の運動量のゼロでない部分、は他次元のゼロでない部分です。こうすると、は他次元のとは交換するので、は先程の計算と異なり
になります。最後の項が通常と異なる部分です。これを用いてEq.(1)を計算しなおすと、の部分は2つのダイアグラムで打ち消すので、残る部分は
です。はと交換し、そのほかとは反交換します。または以外とは反交換します。(は全部で6つのを含む)に関し、がいくつを含むかで分類して考えると以下のようになります:
- がを1つ含むとき:はゼロ(はと反交換する5つのを含む)
- がを2つ含むとき: はノンゼロ
- がを3つ含むとき: はゼロ(はと反交換する3つのを含む)
- がを4つ含むとき: はゼロ()
ゆえに
となります。あとは通常のループ積分の計算を行います(Ref.ref2参照)。分母をまとめると
を得ます。ここでへの変数変換は4次元成分しか変化していないため(は4次元成分のみもつ)、には影響しないことに注意。計算を続けると
ここでとして、に対して有限の寄与をもつ部分を取り出します:
以上よりEq.(2)は
を得ます。もう1項、これにを施したものの寄与がありますが、この操作に対しEq.(3)は不変なので、Eq.(3)の2倍がになります。図1のダイアグラムをと表すと、最終的に
を得ます。
軸性ベクトルカレントの発散の行列要素は
と書けます(は光子の偏極ベクトル。偏極ベクトルの基底の足は省略しました)。は運動量の2つの光子の状態です。
両辺にを作用させれば
となります。Appendixの計算より、これは
です。, を外せばRef.ref3のEq.(3)の4次元の場合と一致します。
まとめ
今回はABJ anomalyを、次元正則化を用いてループダイアグラムを正則化することにより計算しました。を4次元と同じ定義で任意次元へ拡張すると、軸性ベクトルカレントに寄与するループダイアグラムに「他次元」による寄与が残ります。これを評価すると、他の方法と同じ軸性ベクトル対称性の破れを得ます。
おしまい。
Appendix: Eq.(4)の導出
以下を示します:
を生成・消滅演算子で展開すると以下のようになります:
これを用いて、の中のを評価します:
であるから、生成・消滅演算子に関してcontractionをとると
となります。これを用いて計算すれば
です。これにをかけると、上式の第1項と第2項は同じ寄与を与えます。さらにからはあと3項寄与がありますが、これらも同じ寄与を与えることはすぐにわかります。以上から、Eq.(5)の右辺は、Eq.(6)の第1項の8倍になります。ゆえに
これはEq.(5)と一致します。