【Notationについて】
次の略称を使用します:
U(1)ゲージ場
ここで
これらの変換に対してネーターカレントを計算すると
となります。これらの発散は運動方程式を使うことによりゼロであることがわかります:
この保存則は古典的には正しいです。しかし量子論ではAVTに対する対称性が破れ、AVCの発散がノンゼロになります。一方VTの対称性は破れず(というか破れないようにします)、VCの発散は量子論でもゼロです。これをABJ anomalyと呼び、以前記事で議論しました:
「無限ホテル」から始める量子異常
。この記事ではDirac方程式を考え、電場・磁場が一様に存在する場合を考察し、粒子数の定義およびDiracの海の底がないことから、軸性ベクトル対称性(AVS)が破れることを議論しました。
本記事では場の量子論のループダイアグラムの計算により、同様AVSが破れることを見ます。このような計算では正則化を指定する必要がありますが、ここでは球対称な運動量カットオフを使って計算します。もうひとつ次元正則化の方法でも計算できますが、それはまた別記事で書こうと思います。
本記事はRef.ref1に基づいています。また場の量子論の基礎的な事項の説明は省きます。計算に馴染みのない方は、考察対象とする行列要素やダイアグラム、ループ積分はそういうものだと思って受け入れてください。多少参考になりそうな場の量子論関連の記事を以下に載せておきます。
次の量を計算します:
ここで
です。古典的なカレントの保存則
および
であること(T積は階段関数を含み、これを微分した部分からデルタ関数が現れる)、さらに
より、Ward恒等式
を得ます。特に
これをファインマン・ダイアグラムの計算の観点から議論します。対応する最低次のダイアグラムは以下です:
これらダイアグラムに対応する式は以下です:
ここで
ここで
しかしこれらのループ積分は線形発散をもち、そのため計算に不定性があります。単純な例として
を考えると、初項の
これは場の量子論の致命的な問題点にも思えます。しかしこの不定性の存在が、むしろ現実に起こる現象 -中性パイオンの崩壊- を説明します。
以下ループの正則化を指定し有限化することで、AVCの保存則が破れることを見ます。
次の積分を考えます:
任意の
です。
この正則化を採用し、前章のループ積分を計算します。あとで述べますが、
ループ積分によるanomalyの計算には、この方法の他にも次元正則化に基づく方法があります。本記事の方法の利点は、ループ積分を実行する必要がないことです。上記正則化に対し有限で残る項を被積分関数からとりだし、極限をとればよいです。
次の量を導入します:
これは
前章の正則化より、線形発散の部分のみ取り出します:
ここで
であり、Eq.(1)のうち残るのは
です。運動量は球対称に極限をとり
とします。最終的に
となります。
ここで
のようにパラメトライズします。
を得ます。
となります。
「計算するダイアグラム」の章で書いたように
です。前章と同様に
ここでtrの中の分子の
となります。ゆえに
を得ます。
一方、Eq.(2)において両辺に
ですが、これにEq.(3)を代入して
を得ます。
VCの発散については、Eq.(2)より
です。
ここで
今までと同様Euclid化 & regularizationを施すと
ゆえに
を得ます。Eq.(2)にこれを代入すれば、VCの発散は
となります。
ここまでの結果をまとめると以下のようになります:
どちらも結局
どちらのカレントを保存させるかというと、VCを保存するようにします。VCの保存則が破れるとgauge symmetryも破れることになります。gauge symmetryの破れはユニタリティの破れ等をもたらし、理論の根本的な整合性を破壊します。よって破るとするならAVCしかありません。本記事では述べませんが、その破れは中性パイオンの崩壊確率を説明し、このようなanomalyが実際に必要であることがわかります。
これは
この計算は、以前の記事
「無限ホテル」から始める量子異常
のEq.(3)において
本記事ではABJ anomaly(axial vector symmetryの量子的破れ)をループ積分により導きました。正則化として球対称な運動量カットオフを採用することで、ループ積分の線形発散からもたらされる有限部分を計算しました。正則化における不定なパラメータをvector currentの保存を保つように決定すると、axial vector currentの保存が破れます。その結果は「「無限ホテル」...」の記事の4次元の結果を再現します。
2つほどコメントです:
おしまい。
以下本記事で採用しているファインマン則です(Ref.[1]のAppendixより)。
左辺の
となります。本文公式2の下の式で
次にEq.(5)の右辺の期待値を計算します。
に、
を代入して計算すると
となります。
です。これを用いて計算すれば
となります。これに
これはEq.(6)と一致します。よって
が成立します。