スピン幾何における解析学
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自己随伴性
convention
$M:$コンパクトリーマンスピン多様体
$S:$スピノル束
$\langle\cdot,\cdot\rangle:S$のSpin不変内積
$\Gamma(S):S$の滑らかな切断
$D=\sum_ie_i\nabla_i:\Gamma(S)\to\Gamma(S)$Dirac作用素
$C^s(S):S$の$C^s$級の切断
$D_k(S):\Gamma(S)$から$\Gamma(S)$への$k$階の微分作用素
$L^2(S):S$の切断が作るHilbert空間
$H_k(S):S$の切断が作る$k$次のSobolev空間
Dirac作用素のより一般的なregularityとして以下を証明します。そのために次の条件を満たす Friedrich's mollifier を構成します。証明は後に回します。
以下の条件を満たすFriedrich's mollifier $J_\epsilon:=\exp(-\epsilon\bar D^2)$が存在する。
(i) $[J_\epsilon,\bar D]=0$
(ii) $J_\epsilon:H_k(S)\to H_k(S)$は$\epsilon$に関して一様有界である。
$u\in L^2(S),f\in H_k(S)$に対して、$Du=f$が弱い意味で成り立つとすると、$u\in H_{k+1}(S)$である。
$k$についての数学的帰納法で示す。$k=0$のときはregularity 1で示した。$k\geq1$に対して成り立つと仮定する。$f\in H_k(S)\subset H_{k-1}(S)$だから仮定より$u\in H_k(S)$である。$J_\epsilon$を補題1のFriedrich's mollifierとする。
\begin{align}
||J_\epsilon u||_{H_{k+1}}&\le C_1(||\bar DJ_\epsilon u||_{H_k}+||J_\epsilon u||_{H_k})=C_1(||J_\epsilon \bar Du||_{H_k}+||J_\epsilon u||_{H_k})\\
&\le C_2(|| \bar Du||_{H_k}+||u||_{H_k})=C_2(||f||_{H_k}+||u||_{H_k})<\infty
\end{align}
となる。最後の等号では任意の$v\in\Gamma(S)$に対して、$(u,D^\dagger v)_{L^2}=(f,v)_{L^2}$が成り立つことから$\bar Du=f$となることを使った。よって$H_{k+1}$において$J_\epsilon u\rightharpoonup w\in H_{k+1}(S)\subset L^2(S)$となる。一方、mollifierの性質から$L^2(S)$において$J_\epsilon u\rightharpoonup u $であるから、$u=w\in H_{k+1}(S)$である。
Dirac作用素の固有スピノルは滑らかである。
$u\in L^2(S)$が弱い意味で$Du=\lambda u$を満たすとすると、Elliptic regularityを繰り返し使うと、$u\in\bigcap_kH_k(S)\subset\Gamma(S)$となる。
直交直和分解
$\Gamma(S)=\ker D\oplus D(\Gamma(S))$
が成り立つ。
$v\in\ker D$に対して、$(Du,v)=(u,Dv)=0$となることと準同型定理から従う。
補題1のFriedrich's mollifierの構成の詳細を述べます。(そのうち書く)