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現代数学解説
文献あり

ダイヤモンド演算子で遊ぶ

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$$\newcommand{d}[1]{\diamond_{#1}} \newcommand{floor}[1]{\lfloor{#1}\rfloor} \newcommand{l}[0]{\left} \newcommand{lsint}[0]{\cancel{^{}}\llap{\int}} \newcommand{r}[0]{\right} \newcommand{sint}[0]{\:\cancel{^{}}\,\llap{\int}} \newcommand{sxp}[0]{\mathrm{sxp}} $$

はじめに

ダイヤモンド演算子は、 某黒猫君 が定義した二項演算子で、次のように定義されます。

ダイヤモンド演算子構成的

$$\begin{align} f(x) \diamond_0 g(x) &:= f(x)g(x) \\ f(x) \diamond_n g(x) &:= \sint_1^x f^`(t) \diamond_{n-1} g^`(t) qt \end{align}$$
なる関数$f,g$の帰納的な二項演算をダイヤモンド演算子と呼ぶ。

この記事では$n$が有限の場合を考えていこうと思います。
なお、超微分・超積分の定理・公式を大量に使って計算していくので、もし必要であれば下のリンクを参照してください。

ダイヤモンド演算子の計算

$n=0$の際のダイヤモンド演算子の計算は単なる積なので$n=1$の際の計算から考えていこうと思います。また、狭義超微分可能性は仮定するとします。

$n=1$の時

定義を一瞥しただけでは交換法則、結合法則の成立を導けそうにないのでまずその証明をしていきます。

交換法則

$$f(x)\d1g(x)=g(x)\d1f(x)$$

\begin{align} f(x)\d1g(x)&=\sint_1^xf^`(t)\d0g^`(t)qt\\ &=\sint_1^xg^`(t)\d0f^`(t)qt\\ &=g(x)\d1f(x) \end{align}

結合法則

$$\{f(x)\d1g(x)\}\d1h(x)=f(x)\d1\{g(x)\d1h(x)\}$$

\begin{align} \{f(x)\d1g(x)\}\d1h(x)&=\l\{\sint_1^xf^`(t)\d0g^`(t)qt\r\}\d1h(x)\\ &=\sint_1^x\l[\l\{\sint_1^uf^`(t)\d0g^`(t)qt\r\}^`\d0h^`(u)\r]qu\\ &=\sint_1^xf^`(u)\d0g^`(u)\d0h^`(u)qu\\ &=\sint_1^x\l[f^`(u)\d0\l\{\sint_1^ug^`(t)\d0h^`(t)qt\r\}^`\r]qu\\ &=f(x)\d1\{g(x)\d1h(x)\} \end{align}

以上のように$\d1$には交換法則、結合法則が成り立つことが分かりました。これに関しては、$n\geq2$の際も帰納法を使って証明ができそうです。
また、次の定理も成り立ちます。

分配法則

$$f(x)\d1\{g(x)\d0h(x)\}=\{f(x)\d1g(x)\}\d0\{f(x)\d1h(x)\}$$

\begin{align} f(x)\d1\{g(x)\d0h(x)\}&=\sint_1^xf^`(t)\{g^`(t)+h^`(t)\}qt\\ &=\sint_1^x\{f^`(t)g^`(t)+f^`(t)h^`(t)\}qt\\ &=\sint_1^xf^`(t)g^`(t)qx\cdot\sint_1^xf^`(t)h^`(t)qt\\ &=\{f(x)\d1g(x)\}\d0\{f(x)\d1h(x)\} \end{align}

ということで$\d1$は、$\d0$に対する分配法則が成り立ちます。見慣れない記号同士の分配法則はやはり見慣れませんね。これに関しても一般化は容易そうです。

$$a\d1f(x)=1$$
(ただし$a$は定数)

\begin{align} a\d1f(x)&=\sint_1^xa^`\d0f^`(t)qt\\ &=\sint_1^x0qt\\ &=1 \end{align}

$$x^n\d1f(x)=\l\{\frac{f(x)}{f(1)}\r\}^n$$
(ただし$n$は定数)

\begin{align} x^n\d1f(x)&=\sint_1^x(t^n)^`\d0f^`(t)qt\\ &=\sint_1^xnf^`(t)qt\\ &=\l\{\frac{f(x)}{f(1)}\r\}^n \end{align}

さて、ここで 超・McLaughlin展開を構成的に導出してみる の記事に戻ってみると、E関数というものが定義されています。

E関数構成的

\begin{align} E_0(a;x) &:= a \\ E_n(a;x) &:= \sint_1^x E_{n-1}(a;t)qt \end{align}
なる帰納関数をE関数と呼ぶ。

そして、今回の公式1,2ではそれぞれ$a$,$x^n$をダイヤモンド演算していますが、これらはE関数を使うとそれぞれ$E_0(a;x)$,$E_1(n;x)$と表すことができます。ということは、E関数を使えば$n\geq2$の際も一般化ができそうです。

さて、ここから$E_2(n;x)\d1f(x)$を考えていきたいところですが、きれいな形にならないことが計算をするとわかります。
ということで、$n=1$の場合の考察はここらへんにして$n\geq2$の場合に移りたいと思います。

$n\geq2$の時

まずは$n=1$の時と同様に交換法則、結合法則が成立することの証明をしていきます。

交換法則

$$f(x)\d ng(x)=g(x)\d nf(x)$$

数学的帰納法により証明する。

  • $n=1$の時
    定理1より成立する。
  • $n=k\ (k\in\mathbb{N})$の時、この定理が成立するとする。
    $n=k+1$の時
    \begin{align} f(x)\d{k+1}g(x)&=\sint_1^xf^`(t)\d kg^`(t)qt\\ &=\sint_1^xg^`(t)\d kf^`(t)qt\\ &=g(x)\d{k+1}f(x) \end{align}

よって示された。

結合法則

$$\{f(x)\d ng(x)\}\d nh(x)=f(x)\d n\{g(x)\d nh(x)\}$$

数学的帰納法により証明する。

  • $n=1$の時
    定理2より成立する。
  • $n=k\ (k\in\mathbb{N})$の時、この定理が成立するとする。
    $n=k+1$の時
    \begin{align} \{f(x)\d{k+1}g(x)\}\d{k+1}h(x)&=\sint_1^x\l[\l\{\sint_1^uf^`(t)\d kg^`(t)qt\r\}^`\d kh^`(u)\r]qu\\ &=\sint_1^xf^`(u)\d kg^`(u)\d kh^`(u)qu\\ &=\sint_1^x\l[f^`(u)\d k\l\{\sint_1^ug^`(t)\d kh^`(t)qt\r\}^`\r]qu\\ &=f(x)\d{k+1}\{g(x)\d{k+1}h(x)\} \end{align}

よって示された。

次に分配法則です。

分配法則

$$f(x)\d {n+1}\{g(x)\d nh(x)\}=\{f(x)\d{n+1}g(x)\}\d n\{f(x)\d{n+1}h(x)\}$$

数学的帰納法により証明する。

  • $n=0$の時
    定理3より成立
  • $n=k\ (k\in\mathbb N)$の時、この定理が成立するとする。
    $n=k+1$の時
    \begin{align} f(x)\d {k+2}\{g(x)\d{k+1}h(x)\}&=\sint_1^xf^`(t)\d{k+1}\{g^`(t)\d{k}h^`(t)\}qt\\ &=\sint_1^x\{f^`(t)\d{k+1}g^`(t)\}\d k\{f^`(t)\d{k+1}h^`(t)\}qt\\ &=\{f(x)\d{k+2}g(x)\}\d{k+1}\{f(x)\d{k+2}h(x)\} \end{align}

よって示された。

2行目から3行目の変換は、ダイヤモンド演算子の定義から分かります。
積分とダイヤモンド演算の順序交換が可能かを証明すべきですが、この点は読者に任せます。(もういろいろやりすぎて疲れたとは言えない)

続いて公式1の一般化をしていきたいのですが、これにはいくつか段階を踏む必要があります。ということで、まずは簡単なところから。

$$a\d nf(x)=E_n(1;x)$$
(ただし$a$は定数)

数学的帰納法により証明する。

  • $n=1$の時
    公式1より成立する。
  • $n=k\ (k\in\mathbb N)$の時、この公式が成立するとする。
    $n=k+1$の時
    \begin{align} a\d{k+1}f(x)&=\sint_1^xa^`\d kf^`(t)qt\\ &=\sint_1^x0\d kf^`(t)qt\\ &=\sint_1^xE_k(1;t)qt\\ &=E_{k+1}(1;x) \end{align}

よって示された。

そして、この公式を用いることで次の公式を示すことができます。

$0< m< n$であるとき、
$$E_m(a;x)\d nf(x)=E_n(1;x)$$

証明には同値な命題である次の系を用います。

公式4

$m,l$が共に正の定数であるとしたとき、$$E_m(a;x)\d{m+l}f(x)=E_{m+l}(1;x)$$

数学的帰納法により証明する。

  • $m=0$の時
    公式3より成立する。
  • $m=k$の時、この公式が成立するとする。
    $m=k+1$の時
    \begin{align} E_{k+1}(a;x)\d{k+l+1}f(x)&=\sint_1^xE_k(a;t)\d{k+l}f^`(t)qt\\ &=\sint_1^xE_{k+l}(1;t)qt\\ &=E_{k+l+1}(1;x) \end{align}

よって示された。

ということでここまでで公式1の一般化をすることができました。
このまま公式2の一般化をしたいところですが、$n=2$であってもきれいに表すことができそうにないのでここまでとしたいと思います。

おわりに

今回はダイヤモンド演算子について考えてきました。
もともとは極限ダイヤモンド演算子までこの記事で扱うつもりでしたが、想定外のボリュームになってしまったのでそちらの方は次の記事に回したいと思います。

参考文献

投稿日:17日前
OptHub AI Competition

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