どーも、黒猫のラグさんです。
前回の記事
から3ヶ月経ちまして、超微分界隈も予想外に大きくなりました。そんな中で先の記事でめんどくさくなって放棄した超・Taylorの定理が話題だと7777777氏から聞いて、さすがに一筆認めねばと思い筆を取りました。というわけで今回は、私の超・Taylorの定理に関する妄想(ここ重要)をご紹介していきます。めんどくさいから1付近での議論だけに留めますけどね。
以降で論ずる関数は全て$C^\omega$級だとしておきます。
\begin{align}
E_0(a;x) &:= a \\
E_n(a;x) &:= \sint_1^x E_{n-1}(a;t)qt
\end{align}
なる帰納関数をE関数と呼ぶ。
Taylor展開における$\displaystyle c_n\frac{x^n}{n!}$に対応する関数です。$n$回超微分で定数をはき出すという嬉しい性質があります。また、$n\geq1$のとき$x=1$で$1$となります。
ちなみに、名前は構成要素(Element)からとってます。いい関数という訳ではあんまりないです
\begin{align}
f(x) \diamond_0 g(x) &:= f(x)g(x) \\
f(x) \diamond_n g(x) &:= \sint_1^x f^`(t) \diamond_{n-1} g^`(t) qt
\end{align}
なる関数$f,g$の帰納的な二項演算をダイヤモンド演算子と呼ぶ。
超・Taylorの定理を考える上で多くの人が苦しんだであろう部分が演算の部分でしょう。超微分はそもそもテトレーションを良さげに解析したいという発想に端を発しているだけあり、普段我々が使うような代数的演算は大体レベルを下げられてしまうのです。
で、演算レベルが下がるならそれも組み込んでしまえばいいと言うのがダイヤモンド演算子の発想です。元々冪乗と同格の演算になると考えていたので^に似た(?)$\diamond$を使ったんですが、定義を書き換えに書き換えてたどり着いてみれば乗算と同格っぽくなってますね。
関数$f$について、
\begin{align}
f_n &= f^{[n]}(1) \\
M(x) &= E_0(f_0;x) \diamond_0 (E_1(f_1;x) \diamond_1( ... ))
\end{align}
なる$M$を超・McLaughlin Diamond (SMD) と呼ぶ。
超微分可能性は$C^\omega$級のため従います。また、ダイヤモンド演算を無限に行った時の収束性はとりあえず仮定します。この辺の話は本記事では扱わない予定なので、厳密にしたい読者の皆さんは剰余項が$1$に消えていくことを証明してみてください。
$$ M^{[n]}(1) = f^{[n]}(1) $$
\begin{align} M^`(x) &= (E_0(f_0;x) \diamond_0 (E_1(f_1;x) \diamond_1( ... )))^` \\ &= E_0(f_1;x) \diamond_0 (E_1(f_2;x) \diamond_1( ... )) \end{align}
と$(f\diamond_n g)|_{x=1}=1(n\geq1)$より$M^`(1) = f_1$となる。以降も同様。
そうなるように定義したんだからそりゃそうだよね、という結果になりました。
なお、しれっとSMDの極限と超微分の交換を無条件に行っています。そのため、厳密にはこれは証明とは言えません。
数列$f_n$は関数$f$と1対1対応する。
微分係数列$f^{(n)}(1)$と関数$f$はTaylor展開により1対1対応するので、微分係数列と超微分係数列が1対1対応することを示せば良い。
まず、$f_n$を$f$の$n$階までの微分係数で表した時、$f^{(n)}(1)$は1次の形で現れる(指数がつかない)ことを数学的帰納法で示す。
$n=1$のとき、
$$ f_1 = \frac{f'(1)}{f(1)} $$
より成り立つ。
また、$n=k$で成立する時、$A(x),B(x)$を$f^{(k)}(x)$を含まない関数として
\begin{align} f_{k+1} &= \frac{f^{[k](1)}(1)}{f^{[k]}(1)} \\ &= \frac{1}{f^{[k]}(1)} (A(x)f^{(k)}(x)+B(x))'|_{x=1}\\ &= \frac{1}{f^{[k]}(1)} (A'(x)f^{(k)}(x)+A(x)f^{(k+1)}(x)+B'(x))|_{x=1} \end{align}
となり成立する。
このことと一次方程式の解の唯一性から、$f_n$は$n$が小さい順に$f$の微分係数列で表せる。
だいぶ雑な論証ですが、大体こんな感じで示せるでしょう、というお話でした。a辺りを上手いこと応用すればもっとシンプルに示せるかも知れません。
表現性補題は超・McLaughlin展開の存在を保証する補題と言えます。関数に対して超微分係数列はユニークに定まりますが、その逆も成り立つということをこの補題は主張します。この記事の本質8割はこの補題と言っても過言ではありません。
で、この補題の何がそんなに重要かと言うと、数列$f_n$が関数$f$の情報を全て持っていることを示唆している点です。そもそも超微分係数から関数がデコードできるかという点は今まで不明瞭だったので、この補題こそが超・McLaughlin展開というデコーダーの存在を(それが仮にSMDでなかったとしても)保証したと言えるわけです。
$M(x) = f(x)$
補題1・2より直ちに従う。
驚くほど呆気なく終わってしまいましたが、以上でSMDが超・McLaughlin展開に類するものであることが示されました。「類する」と煮えきれない言い方にしているのは、指数的対数冪のようにまた異なる形が発見される可能性があるためです。ダイヤモンド演算なんて特殊なものを使っているので、正直なところ私も「これこそが超・McLaughlin展開なんだ!」と自信を持って言うことはできません。ただ、これがひとつの形であることは確かであろう、とだけ書き残しておきます。
後は雑な証明のようなものたちが厳密化されると良いなぁ…
$\lim_{n\to\infty}f(x) \diamond_n g(x)$が存在する時、
$$
f(x) \diamond_\infty g(x) := \lim_{n\to\infty}f(x) \diamond_n g(x)
$$
ただし、ここでの収束は一様収束であるとする。
$$ (f(x) \diamond_\infty g(x) )^` = f^`(x) \diamond_\infty g^`(x) $$
$(f(x) \diamond_n g(x) )^` = f^`(x) \diamond_{n-1} g^`(x)$の両辺で$n\to\infty$とすることで示される(極限と超微分の交換は無条件に行った)。
7777777氏がTwitterでぼやいてたやつ です。極限の収束とかの厳密性はガン無視してますが、一応こんなものが考えられるよーってだけ。