この記事は参考文献 [1] 第 2 章 Fundamental groups in topology の Theorem 2.2.10 を参考にさせていただきました。
$X$ を局所連結空間、$(Y,\ p)$ を $X$ 上のガロア被覆、$G:=\text{Aut}(Y/Z)$ とする。$Y/X$ の連結な中間被覆 $(Z,\ q,\ f)$ が $X$ 上ガロア被覆ならば、$\text{Aut}_q(Z/X)$ は $G$ の正規部分群である。
$\sigma\in G$ に対して $f\circ\sigma=\varphi_\sigma\circ f$ を満たすような $\varphi_\sigma\in \text{Aut}_q(Z/X)$ に対応させる群準同型写像 $$ \varphi:G\to\text{Aut}_q(Z/X)$$ によって
$$ G/\text{Aut}_f(Y/Z)\simeq\text{Aut}_q(Z/X)$$
を得る。
$$ \xymatrix{ \large{Y} \ar[dd]_-{\Large{f}} \ar[rr]^-{\Large{\sigma}} & & \large{Y} \ar[dd]^-{\Large{f}}\\ & \ar@{}[]|{\LARGE\circlearrowright} & \\ \large{Z} \ar[rr]_-{\Large{\varphi_\sigma}} & & \large{Z} } $$
任意の $\sigma\in G$ をとる。任意の $y\in Y$ に対して $x:=p(x)$ とおくと
$$ x = q(f(y)) = q(f(\sigma(y)))$$
より、$f(y)$ と $f(\sigma(y))$ は ファイバー $q^{-1}(x)$ の点となっている。いま $Z/X$ はガロア被覆であるから $\varphi_\sigma(f(y)) = f(\sigma(y))$ となるような $\varphi_\sigma\in \text{Aut}_q(Z/X)$ が存在する。この $\varphi_\sigma$ は $\sigma$ に対して一意的に定まる。これは次のようにしてわかる:
$\varphi_\sigma'\in \text{Aut}_q(Z/X)$ が $\varphi_\sigma'(f(y)) = f(\sigma(y))$ を満たすとすると
$$\varphi_\sigma(f(y)) = \varphi_\sigma'(f(y))$$
が成り立つ。よって $\varphi_\sigma^{-1}\circ\varphi_\sigma'$ は固定点を持つような $\text{Aut}_q(Z/X)$ の元である。ゆえに
被覆の自己同型について
の補題 2 より、$\varphi_\sigma = \varphi_\sigma'$ である。したがって群準同型写像
$$\varphi:G\to \text{Aut}_q(Z/X),\ \sigma\mapsto \varphi_\sigma$$
が定まる。
いま $\varphi_\sigma(f(y)) = f(\sigma(y))$ より $\varphi_\sigma\circ f$ と $f\circ \sigma$ は 1 点 $y$ の行き先が等しいことがわかっているが、さらに $Y$ 全体で一致している。これは
$$ q\circ(\varphi_\sigma\circ f) = q\circ (f\circ\sigma)$$
が成り立つことからわかる(
被覆の自己同型について
の命題 3 )。
次に $\text{Aut}_f(Y/Z)$ が $G$ の正規部分群であることを示す。$q\circ(\varphi_\sigma\circ f) = q\circ (f\circ\sigma)$ より以下のように $\text{Ker}(\varphi)=\text{Aut}_f(Y/Z)$ となる:
$$ \begin{eqnarray} & & \sigma\in \text{Ker}(\varphi) \\[5pt] &\Longleftrightarrow& \varphi_\sigma = \text{id}_Z \\[5pt] &\Longleftrightarrow& \varphi_\sigma\circ f = f \\[5pt] &\Longleftrightarrow& f = f\circ\sigma \\[5pt] &\Longleftrightarrow& \sigma\in \text{Aut}_{q}(Z/X) \\ \end{eqnarray} $$
最後に $\varphi$ が全射であることを示す。任意の $\tau\in\text{Aut}_q(Z/X)$ をとる。任意の $z\in Z$ に対して $f$ が全射であることから $f(y) = z,\ f(y') = \tau(z)$ となるような $y,\ y'\in Y$ が存在する。$x:= q(f(y)) = q(f(y'))$ とおくと $f(y)$ と $f(y')$ はファイバー $p^{-1}(x)$ の点であるから、$Y/X$ がガロア被覆であることより $\sigma(y) = y'$ となるような $\sigma\in G$ が存在する。よって $f(\sigma(y)) = \tau(f(y))$ となる。よって 被覆の自己同型について の命題 3 より、$f\circ\sigma = \tau\circ f$ となるから、$\varphi$ の定め方より $\varphi_\sigma = \tau$ である。
以下、位相空間 $A$ に作用する群 $M$ に対して、$a\in A$ の軌道を $M(a)$ と書くことにします。
$X$ を局所連結空間、$(Y,\ p)$ を $X$ 上のガロア被覆、$G:=\text{Aut}(Y/Z)$ とする。$H$ が $G$ の正規部分群ならば、$Y/X$ の中間被覆 $(Y/H,\ \overline{p}_H,\ \pi)$ は $X$ 上のガロア被覆である
$H$ は $G$ の正規部分群であるから $G/H$ は $Y/H$ に作用する。この作用は同相写像
$$ (Y/H)/(G/H)\to Y/G\ (\simeq X)$$
を誘導する。$G/H$ を自然に $\text{Aut}_{\overline{p}_H}((Y/H)/Z)$ に埋め込むことができるから
$$ (Y/H)/\text{Aut}_{\overline{p}_H}((Y/H)/Z)\simeq X$$
を得る。
$H':= \text{Aut}_{\overline{p}_H}((Y/H)/Z)$ とおく。 ガロア被覆について の定義より、$\overline{p}_H$ によって誘導される連続写像 $q$ が同相写像であることを示す。
$$ \xymatrix{ \large{Y} \ar[dd]_-{\Large{\pi}} \ar[rrdd]^-{\Large{p}} & & \\ & \ar@{}[ld]_{\LARGE\circlearrowright} & \\ \large{Y/H} \ar[dd]_-{\Large{\pi_{H'}}} \ar[rr]_-{\Large{\overline{p}_H}} & & \large{X} \\ & \ar@{}[ul]^{\LARGE\circlearrowright} & \\ \large{(Y/H)/H'} \ar[uurr]_-{\Large{q}} & & } $$
既に $q$ は全射連続開写像であるから単射であることを示せばよい。
被覆の自己同型群の部分群について
の補題 2 より、$G/H$ は $Y/H$ に作用する。よって $\overline{p}_H$ と同相写像 $\overline{p}:Y/G\to X$ の逆写像の合成
$$ \overline{p}^{-1}\circ\overline{p}_H: Y/H\to X \to Y/G,\ H(y)\mapsto p(y)\mapsto G(y)$$
は、同相写像
$$ \varphi:(Y/H)/(G/H)\to Y/G,\ G/H(H(y))\mapsto G(y)$$
を誘導し、$\overline{p}_H$ は連続写像
$$ \psi:(Y/H)/(G/H)\to (Y/H)/H',\ G/H(H(y))\mapsto H'(H(y))$$
を誘導する。可換図式で表すと次の通り:
$$ \xymatrix{ \large{(Y/H)/(G/H)} \ar[rd]_-{\Large{\psi}} \ar[rr]^-{\Large{\varphi}} & \ar@{}[d]_-{\LARGE\circlearrowright}& \large{Y/G} \\ & \large{(Y/H)/H'} \ar[ur]_-{\Large{\overline{p}^{-1}\ \circ\ q}} & } $$
$\varphi$ は単射であるから $\psi$ は全単射となり、その結果 $q$ は単射となる。
$Y/X$ の連結な中間被覆全体 $\mathcal{M}$ を $X$ 上同型 $\simeq_X$ で割った同値類全体の集合を $\mathcal{M}/\simeq_X$ とする。$[(Z,\ q,\ f)]$ で $(Z,\ q,\ f)$ の同値類を表す。$(Z,\ q,\ f)$ が $X$ 上ガロア被覆ならば、$[(Z,\ q,\ f)]$ に属するすべての中間被覆も $X$ 上ガロア被覆である。