2

Fibonacci 数を含む基礎的な無限級数 (1) 母関数と一般項

214
0

10/89 10/89
前提知識 : Lucas 数列, Fibonacci 数列
Lucas 数列, Fibonacci 数列 : https://mathlog.info/articles/191
(2) の記事 : https://mathlog.info/articles/1469
(3) の記事 : (準備中)
.
.
.
最新版 : https://yu200489144.hatenablog.com/entry/2021/01/05/232023
.
.
.

準備

整数列(Ln)nZ,(Fn)nZであって, 漸化式およびL0,F0,L1,F1の値
{Ln+2=Ln+1+Ln,L0=2, L1=1Fn+2=Fn+1+Fn,F0=0, F1=1によって定められるものそれぞれ Lucas 数列, Fibonacci 数列と呼ぶ.

インデックスの符号の反転公式

任意の整数nに対して, (Ln=(1)nLnFn=(1)n+1Fnが成りたつ.

n=0,1のときは正しい. それぞれの等式について, あるn+1,nについて等式が成りたつならば, それらを辺々足しわせることでn+2の場合が得られ. また辺々を引けばn1の場合が得られるので, 再帰的に命題は示された.

黄金比

二次方程式x2=x+1の二つの解のうち正なるものを黄金比, 負なるものを共役黄金比と呼んで, それぞれϕ,ϕ¯と表す.

これに従えば
ϕ=1+52,ϕ¯=152,ϕ+ϕ¯=1,ϕϕ¯=1が成りたつ.

.
.
.
.
.
.

母関数

数列(Ln)n0および(Fn)n0の収束範囲における母関数を, それぞれ
l(x)=n0nLnxn,f(x)=n0nFnxnという記号で表し, 右辺の級数の収束するxの領域をIl,Ifと置く.

収束値

l(x)およびf(x)ϕ¯<x<ϕ¯の範囲で収束し, その収束値は
l(x)=2x1xx2,f(x)=x1xx2である.

xIfならば
(1xx2)f(x)=(1xx2)n0nLnxn=n0nFnxnn0nFnxn+1n0nFnxn+2=0+x+n2nFnxn0xn2nFn1xnn2nFn2xn=x+n2n(FnFn1Fn2)xn=xからf(x)=x/(1xx2)が判り, 同様にしてxIlならばl(x)=(2x)/(1xx2)であることが得られる. これらを部分分数分解し, ϕϕ¯=1を適用すると
2x1xx2=ϕϕ+x+ϕ¯ϕ¯+x,x1xx2=1ϕϕ¯(ϕ¯ϕ¯+xϕϕ+x)となるため, 収束条件は何れも|x|<|ϕ|かつ|x|<|ϕ¯|である. 0<ϕ¯<ϕであったから, これは
Il=If=(ϕ¯,ϕ¯)と書くことができる.

この命題から
1989=0.2134831089=0.011235,1999899=0.02010304071118,1009899=0.00010102030508などが判る. 因みに,
189=0.01123595505617977528080.9887640449438202247191であり, 循環節の前半部1123595505617977528081を足した数は
112359550561797752809×99=11123595505617977528091を充たす.

一般項

任意の整数nに対して, (Ln=ϕn+ϕ¯nFn=ϕnϕ¯nϕϕ¯が成りたつ.

母関数の収束値の部分分数分解の式は, ϕϕ¯=1を用いて
l(x)=ϕϕ+x+ϕ¯ϕ¯+x=11ϕ¯x+11ϕx=n0n(ϕ¯n+ϕn)xn,(ϕϕ¯)f(x)=ϕ¯ϕ¯+xϕϕ+x=11ϕx11ϕ¯x=n0n(ϕnϕ¯n)xnと更に変形することができ, 両辺でxnの係数を比較すればn0の場合の得られる. n0のときは, 符号の反転公式から
Ln=(1)nLn=(ϕϕ¯)n(ϕn+ϕ¯n)=ϕn+ϕ¯n,Fn=(1)n1Fn=(ϕϕ¯)nϕnϕ¯nϕϕ¯=ϕnϕ¯nϕϕ¯
のように拡張されるため, 全ての整数nについて証明が完了した.

limnLn+1Ln=limnFn+1Fn=ϕが成りたつ.

1<ϕ¯<0に注意すれば, 一般項を代入して
limnLn+1Ln=limnϕn+1+ϕ¯n+1ϕn+ϕ¯n=ϕ,limnFn+1Fn=limnϕn+1ϕ¯n+1ϕnϕ¯n=ϕと計算できる.

limnLnFn=5が成りたつ.

1<ϕ¯<0に注意すれば, 一般項を代入して
limnLnFn=limn5ϕn+ϕ¯nϕnϕ¯n=5と計算できる.

加法定理

任意の整数m,nに対して, 以下が成りたつ.
(1L)2Lm+n=LmLn+5FmFn.
(1F)2Fm+n=LmFn+FmLn.
(2L)Lm+n+1=Lm+1Fn+1+LmFn.
(2F)Fm+n+1=Fm+1Fn+1+FmFn.

後ろの二式は, 漸化式を繰りかえし用いて得られる等式類
Ln+2=Ln+1+Ln,Ln+3=Ln+2+Ln+1=2Ln+1+Ln,Ln+4=Ln+3+Ln+2=2Ln+2+Ln+2=3Ln+1+2Ln,Fn+2=Fn+1+Fn,Fn+3=Fn+2+Fn+1=2Fn+1+Fn,Fn+4=Fn+3+Fn+2=2Fn+2+Fn+2=3Fn+1+2Fn,の一般化であり, このような再帰性を用いて帰納的に等号の成立を確かめるほうが簡明であるが, ここでは一般項および母関数を用いた証明を記す.

(1)一般項からϕn=(Ln+Fn5)/2が導出されることを確かめておく. 指数の等式ϕm+n=ϕmϕnにこれを代入して展開すると
ϕm+n=ϕmϕnLm+n+Fm+n52=Lm+Fm52Ln+Fn522Lm+n+2Fm+n5=(LmLn+5FmFn)+(LmFn+FmLn)5と同値変形され, 5の無理数性から, 有理数部分と無理数部分を比較して加法定理を得る.
(2)閉区間(ϕ¯,ϕ¯)上で母関数fの収束値から等式(2F)を確かめる. 先ず左辺について,
m,n0m,nFm+n+1xm+n=1xm,n0m,nFm+n+1xm+n+1=1x1Fx=d(fF0x0)dx=dfdx=1(1xx2)x(12x)(1xsx2)2=1+x2(1xx2)2と分数式として表しなおすことができる. また右辺については
m,n0m,n(Fm+1Fm+1+FmFn)xm+n=(fF0x0x)2+f2=1(1xx2)2+x2(1xx2)2=1+x2(1xx2)2
となり, 上記二つは相等しいので等式は正しい. 等式(2L)についても同様であるので, その詳細は省略する. 最後に, 両辺に(1)m+n+1,(1)m+nをそれぞれ乗じれば非負なる整数に対する加法定理が導かれる.

参考 : https://mathlog.info/articles/320

Cassini の等式

任意の整数nに対して, Fn+1Fn1Fn2=(1)nが成りたつ.

符号の反転公式と加法定理から,
(1)n=(1)nF(n+1)n+1F2=(1)nFn+2Fn+1+Fn+1FnF2=Fn+2Fn1Fn+1Fnと変形でき, ここにFn+2=Fn+1+Fnを代入すれば
(1)n=Fn+1Fn1+FnFn1Fn+1Fn=Fn+1Fn1+Fn(Fn1Fn+1)=Fn+1Fn1Fn2と命題の式に達する.

参考 : https://mathlog.info/articles/223

この手法を一般化して, 等式
Fn+kFnkFn2=(1)nk+1Fk2あるいは
(1)n=Fn+k2Fn+2kFnFk2があらゆる整数k,nについて成立することを証明することができ, Catalan の等式と呼ばれるこれらの式が, (1)nの形を含む無限級数の収束値の計算において大いに役立つということを後の記事にて見る.

Catalan の等式

任意の整数k,nに対して, Fn+kFnkFn2=(1)nk+1Fk2が成りたつ.

Catalan の等式と同様にして証明することができる (省略).

.
.
.
.
.
.

おまけ

任意の正の整数nに対して, Fn+1=m=0m=n(nmm)が成りたつ.

xIfの区間において
f(x)=x1x(1+x)=xn0nxn(1+x)n=xn0nxnm=0m=n(nm)xm=xn0nm=0m=n(nm)xm+n=xNmNm=0m=n(Nmm)xN=xN0Nm=0m=n(Nmm)xN=n0n(m=0m=n(nmm))xn+1が成立し, xn+1の項の係数から命題の式が得られる.

この命題は, 下のようなPascalの三角形において右上がりの斜め和がFibonacci数列の項になることを主張しており, 実際に計算して確かめることができる.
01234567801111212131331414641515101051616152015617172135352171818285670562881

ϕ¯<x<ϕ¯ならばexp(n1nLnnxn)=n0nFn+1xnが成りたつ.

Lucas 数の母関数の収束値からL0x0を引くと
l(x)L0x0=2x1xx22=x2x+11xx2=x(1xx2)1xx2
のようになり, 両辺をxで割って積分すれば
dxn1nLnxn1=ln(1xx2)+Cすなわち
n1nLnnxn=lnxx(1xx2)+Cが得られる. x=0の場合の成立からC=0が判り, f(x)=x/(1xx2)であったことを用いれば
n1nLnnxn=lnf(x)xという等式に変形され, 両辺をexpによって飛ばせば命題の式になる.

.
.
.
.
.
.

投稿日:202114
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

ゆう
ゆう
146
12878
好きな整数は 0, 1, 1, φ, 2, 5, 6, 12, 89 など. || フィボナッチ数列 bot (@Aureus_N) 管理人. || hatena blog || indeterminate equations involving Fibonacci numbers || Disquisitiones Arithmeticae...

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中