この記事は 日曜数学 Advent Calendar 2022 の22日目の記事となります。
12/22といえばかの稀代の数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャンの誕生日です(今年で生誕135周年!)。
ラマヌジャンの肖像
ちなみに1222は私のMathlogのユーザーID(
https://mathlog.info/users/1222/articles
)でもあります。運命的ですね。
というわけでこの記事では今日が誕生日であるラマヌジャンが遺した数式の一つである
について解説していこうと思います。
約2年前に書いた記事「
ラマヌジャンの円周率公式を理解したい
」ではラマヌジャンが発見した円周率公式シリーズ
のカラクリについて考察しました。まだ読んでいない方は読んでもらえると嬉しいです。
その記事で考察したことのあらましとしてはこうでした。
考えている級数
は超幾何関数
と表せる。Clausenの公式と二次変換公式からこれはさらに
と変形できる。
ここで
という関係式があるので
とできれば
2年前の記事ではこの「何らかの関係」とは何なのかがわからなくて行き詰っていたのでした。
ということで今回の記事はこの「何らかの関係」について一つの解答を与えていこうと思います。
超幾何関数の積分表示
からもわかるように楕円積分は超幾何関数によって
と表せます。
これに
超幾何関数の"魔法"
(2,34,42番)
を使うと
によって
と
つまり適当な
という関係を考える問題は
を考える問題に帰着でき、
があったので
に注意すると
とできれば万事解決というわけです。
前節によって話は大分簡単になりました。
ではその最後のピース、これまでさんざん悩ませ続けてきた「何らかの関係」とは一体何なのか!
それは...
自然数
によって定めると、
は代数的数となる!!!!!!!!!!
はい。
随分と一般性の高い事実が成り立つんですね。
この事実はモジュラー方程式という概念が関わってくる深い事情があってのものなので、その導出や
気を取り直してこの事実、
なる
は代数的数になる、ということを認めて円周率公式を考えてみましょう。
やりたいことは適当な
を成り立たせることでした。そのためにこの右辺を変形していくと
つまり
が得られます。
これが無数の円周率公式を生み出す魔法の式となっています。
ラマヌジャンの円周率公式はこの"魔法の式"を
における
を代入することで
となることが確かめられます。
ということでラマヌジャンの円周率公式のからくりを完全解明することができました!
やった~~~~~!!!!!!!
といってもこの魔法の式
ことボールウェインの公式の導出自体は3か月ほど前には知っており、
先日の日曜数学会
でもそのことについて発表しました。
今は残る課題である
何はともあれ
2年前の挫折
を越えて今日という日にラマヌジャンの円周率公式の証明を伝えることができてよかったと思います。この記事を読んでラマヌジャンの円周率公式についてもっと知りたいと思った人は今後の記事にも注目してもらえると嬉しいです。
(2023/10/09 追記)長らくお待たせしましたがようやく
ラマヌジャンの円周率公式の証明
の解説記事が書き上がりました。ぜひご一読ください。
とりあえず今回はこんなところで。
では。