はじめに
を位相空間,を稠密部分集合とし,をの被覆とする.
- すべてのが開集合であって,
が成り立つとき,を等高線様開被覆という(ことにする). - すべてのが閉集合であって,
が成り立つとき,を等高線様閉被覆という(ことにする).
を位相空間,を稠密部分集合とし,をの等高線様開被覆(resp. 閉被覆)とする.このとき,写像
は連続である.
前回
,
前々回
の記事では巧いこと等高線様開被覆(resp. 閉被覆)を構成することで以下の諸定理を証明した:
Tietzeの拡張定理
を正規空間,を閉部分集合とし,(resp. )を連続写像とする.このとき,連続写像(resp. )であってを満たすものが存在する.
Urysohnの補題
を正規空間,を交わらない閉集合とする.このとき,連続写像であって
を満たすものが存在する.
[6]では,Tietzeの拡張定理の系としてUrysohnの補題を示した.また,位相空間においてUrysohnの補題の主張が成り立つならば,は正規空間である.実際,
とおくと,これらはの交わらない開近傍を与える.したがって,位相空間が正規であるためには,Tietzeの拡張定理(resp. Urysohnの補題)の(主張の)成立が必要かつ十分である.
ところでUrysohnの補題は,補集合を取ることで,次のように言い換えられる:
を位相空間とする.このとき次は同値である:
- は正規空間である;
- の任意の開被覆に対して,連続写像であって
を満たすものが存在する.
の分割
連続函数の台
を位相空間とする.連続写像に対して,
とおき,その閉包
をの台(support)という.
- 台がコンパクトであるとき,をコンパクト台を持つ連続写像という.
- 部分集合に対して
が成り立つとき,をに台を持つ連続写像という.
を位相空間とし,を連続写像とする.このとき次が成り立つ:
- ;
- .
の両辺の閉包を取って
を得る.
であるから,両辺の開核を取ってから補集合を取ることで
を得る(cf. 補題5).
を位相空間,をその開集合とし,をに台を持つ連続写像とする.このとき,任意の連続写像に対して,写像を
で定めると,これはに台を持つ連続写像である.このをで表わすことにする.
補題1より
が成り立つ.いまはの開被覆であるから,あとはがともに連続であることを示せばよい.
- は連続写像なので,は連続である.
- いまであるから,
となる.したがって,は定値写像なので,とくに連続である.
の連続性の証明からも察せられるように,では十分でない.たとえば連続写像
について
であり,として
を考えると,
となり,これは不連続である.
等高線様被覆でも,ここでもそうだが,
という状況は以下でも繰り返し現れる.
局所有限な部分集合族
を位相空間とし,をその部分集合族とする.任意のに対して,その開近傍であって
が有限集合となるようなものが存在するとき,は局所有限であるという.
を位相空間とし,をその局所有限な部分集合族とする.このとき次が成り立つ:
- 任意のに対して,も局所有限である;
- も局所有限である;
が成り立つ.したがって局所有限な閉集合族の合併はまた閉集合である.
- 明らか.
- 一般に開集合と部分集合とに対して
が成り立つことからしたがう. -
- 各に対して
が成り立つので,を得る. - とする.仮定より,であって
が有限集合となるようなものが存在する.そこで
とおくと,これはの開近傍であって
が成り立つ.よってを得る.
を位相空間とし,をその局所有限な部分集合族とする.また,をの部分集合族,を写像とする.このとき次が成り立つ:
- 任意のに対してが成り立つならば,も局所有限である;
- 各に対して
とおくと,は局所有限である.
- 任意のに対して,であって
が有限集合となるものが存在する.このとき
より,左辺は有限集合である.よっては局所有限である. - 任意のに対して,であって
が有限集合となるものが存在する.このとき,
より,
となるので,左辺は有限集合である.よっては局所有限である.
の分割
を位相空間とし,を連続写像族とする.このときが局所有限ならば,連続写像
が定まる.さらに
が成り立つ.
- 任意のに対して,であって
が有限集合となるようなものを取ると,
は連続写像の有限和ゆえ連続である. - とすると,であってなるものが存在するので,
が成り立つ.仮定と補題3より,上式最右辺はの閉集合であるから,
を得る.
を位相空間とし,を連続写像族とする.
- が局所有限であって,任意のに対して
が成り立つとき,を上の局所有限なの分割という. - 任意のに対して
が成り立つとき,を上のの分割という.
を上のの分割とする.
- 任意のに対して
が成り立つ.実際,に対して
とおくと
よりは有限集合であるから,
は(高々)可算集合である. - 各に対して,より,であってなるものが存在する.よってはの開被覆である.
を位相空間,を上のの分割とし,とする.このとき任意のに対して,であって
が有限集合となるようなものが存在する.
とする.このとき
より,有限集合であって
を満たすものが存在する.そこで
とおくと,これは連続写像であるから
はの開近傍である.あとは
を示せば十分である.そこでとすると,であってなるものが存在するが,このとき
となり不合理である.
を位相空間としを上のの分割とする.このとき
は正値連続写像である.
とする.
- より
が成り立つ. - とする.であって
が有限集合となるようなものを取ると,
は連続であるから,であって
を満たすものが存在する.
を位相空間としを上のの分割とする.このとき,上の局所有限なの分割であって
を満たすものが存在する.
Step. 1
各に対して,
より,連続写像を
で定めることができる.このとき
であり,のとき
よりとなる.したがって
が成り立つ.
Step. 2
が局所有限であることを示す.そこでとする.このときとおくと,であって
が有限集合となるようなもの,およびであって
を満たすものが存在する.そこでとおくと,任意のに対して,
より,
したがって
が成り立つので,
を得る.
Step. 3
任意のに対して,であって,したがって
となるようなものが存在する.よって
は正値連続写像である.そこで連続写像を
で定めると,
および
が成り立つ.さらに,補題3よりは局所有限であり,
が成り立つ.
開被覆に従属するの分割
を位相空間とし,を上の局所有限なの分割(resp. の分割),をの開被覆とする.任意のに対して
が成り立つとき,をに従属する局所有限なの分割(resp. に従属するの分割)という.
位相空間上のの分割は,開被覆に従属するの分割である.
を位相空間とし,をの開被覆とする.このとき,がの細分であって,に従属するの分割が存在するならば,に従属する局所有限なの分割が存在する.
をに従属するの分割とする.命題2より,は局所有限なの分割であるとしてよい.仮定より,写像であって
を満たすものが存在する.各に対して,補題3よりは局所有限なので,連続写像を
で定めることができる.ただし,のときは,とする.
- 補題5より
が成り立つ. - 補題4より部分集合族
は局所有限なので,ふたたび補題4より,は局所有限である. - 任意のに対して
が成り立つ.
を位相空間とし,をその開被覆とする.このとき次は同値である:
- 上の局所有限なの分割であって,がの細分であるようなものが存在する;
- 上のの分割であって,がの細分であるようなものが存在する;
- 上の局所有限なの分割であってに従属するものが存在する;
- 上のの分割であってに従属するものが存在する.
- (i)(ii):明らか.
- (ii)(iii):命題3.
- (iii)(iv):明らか.
- (iv)(i):命題2.
位相空間の開被覆に従属する局所有限なの分割について
より
が成り立つ.したがって,が非コンパクトのとき,がコンパクト台を持つ局所有限なの分割ならば,は無限集合でなければならない,或いは同じことだが,コンパクト台を持つ局所有限なの分割であって有限開被覆に従属するものは存在しない.
を位相空間,をの開被覆とし,をに従属する局所有限なの分割とする.また,を連続写像族とする.このとき,写像
は連続である.
補題2より各は連続であり,
よりは局所有限である(補題4).よって,補題5より,件の写像は連続である.
の分割と正規性
Finite Shrinking Lemma
を正規空間とし,をの有限開被覆とする.このとき,の有限開被覆であって
を満たすものが存在する.
としてよい.は,閉集合の開近傍なので,の正規性より,であって
を満たすものが存在する.よりはの有限開被覆である.以下,同様にしてをに取り替えていけばよい.
を位相空間とする.このとき次は同値である:
- は正規空間である;
- の任意の有限開被覆に対して,上の局所有限なの分割であってに従属するものが存在する.
(i)(ii)
をの開被覆とする.補題8より,の有限開被覆であって
を満たすものが存在する.各に対して,Urysohnの補題より,連続写像であって
を満たすものが存在する.そこで
とおくと,がの被覆であることより,これは正値連続写像であるから,連続写像
が定まり,
が成り立つ.さらに
より
が成り立つ.
(ii)(i)
Urysohnの補題の言い換え(定理5)より明らか.
補題8,定理7における“有限開被覆”は“局所有限開被覆”に弱めることができる.前者については,たとえば[5]補題4.8を参照せられたい.後者については同様に証明できる(cf. 定理8の証明).
の分割とパラコンパクト性
を位相空間とする.の任意の開被覆に対して,局所有限な開被覆であってを細分するものが存在するとき,をパラコンパクト空間という.
をパラコンパクト空間とする.このときの正規性を示せばよい.そこでを交わらない閉集合とする.
のとき
のHausdorff性より,各に対して,その開近傍であって
を満たすものが存在する.そこでとおくと,はの開被覆であるから,これを細分する局所有限な開被覆が存在する.
- 任意のに対して,であってとなるものが存在するので,
とおくと,
が成り立つ. - 任意のに対して,
より,であってを満たすものが存在する.よって
となるので,補題3より,
すなわち
が成り立つ.
一般の場合
前段より,各に対して,その開近傍は,より,
を満たす.ここでとおくと,はの開被覆であるから,これを細分する局所有限な開被覆が存在する.
- 任意のに対して,であってとなるものが存在するので,
とおくと,
が成り立つ. - 任意のに対して,
より,であってを満たすものが存在する.よって
となるので,補題3より
すなわち
が成り立つ.
Shrinking Lemma
をパラコンパクト空間とし,をその開被覆とする.このとき,の局所有限な開被覆であって
を満たすものが存在する.
各に対して,であってなるものを取ると,の正則性より,であって
を満たすものが存在する.したがってはを細分するの開被覆である.いまはパラコンパクトなので,を細分する局所有限な開被覆が存在する.このとき写像であって
を満たすものが存在する.そこで各に対して
とおく.
- 任意のに対して,であってなるものを取ると,
が成り立つ.よってはの開被覆である. - 補題4よりは局所有限である.
- 補題3より,
が成り立つ.
を空間とする.このとき次は同値である:
- はパラコンパクト空間である;
- の任意の開被覆に対して,上の局所有限なの分割であってに従属するものが存在する.
(i)(ii)
補題9より,の局所有限な開被覆であって
を満たすものが存在する.命題5よりは正規空間なので,各に対して,Urysohnの補題より,連続写像であって
を満たすものが存在する.後者より
したがって
が成り立つ.
- 補題3よりは局所有限なので,補題4よりは局所有限である.
- よって,がの被覆であることと合わせて,正値連続写像
が定まる. - そこで連続写像を
で定めると,よりは局所有限であり,
および
が成り立つ.
(ii)(i)
定理7よりは正規空間なので,とくにHausdorff空間である.よって,あとはパラコンパクト性を示せばよい.そこでをの開被覆とすると,仮定より局所有限なの分割であって
を満たすものが存在する.このとき,補題4より,は局所有限なの開被覆であり,の細分になっている.
なめらかなの分割
定理7,定理8の証明を振り返ると,(有限)開被覆が与えられたとき,それに従属する局所有限なの分割を得るために,次のような段階を踏んでいた:
- 与えられた被覆を局所有限な被覆へ縮める("shrinking property");
- Urysohnの補題で連続写像族を得る;
- 局所有限和を取って正値連続写像を得る;
- それで割る(“正規化”).
したがって,(1)が可能な位相空間上の,(3),(4)で行う操作,すなわち局所有限和と商で閉じているような連続写像の集合が与えられたとき,(2)における写像をから取ることができれば,の元からなるの分割が得られることになる.
以下,可微分多様体とその上のなめらかな函数全体のなす集合について,上記4段階が可能であることを見ていく.ただし,“可微分多様体”には第2可算性とHausdorff性を課すものとする.
被覆の収縮
可微分多様体上で被覆の収縮が可能であるためには,第2可算LCH空間がパラコンパクトであることがわかれば十分である.
第2可算LCH空間は相対コンパクト開集合からなる可算開基を持つ.
を第2可算LCH空間とし,をその可算開基とする.ここで
とおく.あとはがの開基であることを示せばよい.
とする.の局所コンパクト性より,の相対コンパクト開近傍であってを満たすものが存在する.このに対して,であってなるものが存在するが,
よりコンパクト空間の閉集合はコンパクトであるから,を得る.
を第2可算LCH空間とする.このときの相対コンパクト集合からなる可算開被覆であって
を満たすものが存在する.
を相対コンパクト開集合からなる可算開基とする.
- とおく.
- まで定まったとする.このときのコンパクト性より,
が定まる.そこで
とおくと,
はコンパクト集合の有限合併ゆえコンパクトであり,
が成り立つ.
以上より,相対コンパクト開集合列が得られた.さらに
より,
が成り立つので,はの開被覆である.
を第2可算LCH空間とする.このときの任意の開被覆に対して,相対コンパクト開集合からなる局所有限な可算被覆であって,がの細分であるようなものが存在する.したがってとくにはパラコンパクト空間である.
を補題11で得られた相対コンパクト開被覆とし,とおく:
任意のに対して,であってなるものが存在する.このときの開近傍
に対して,の局所コンパクト性より,相対コンパクト開近傍であって
を満たすものが存在する.いまはコンパクトであるから,その開被覆は有限部分被覆を持つので,それをとおく.ただしとする.
- いま
であるから,はの開被覆である. - は明らかにの細分である.
- 任意のに対して,であってなるものが存在する.このとき
より,左辺は有限集合である.
証明中のとして,(あらかじめ与えられた)開基の元が取れる.
Urysohnの補題
を位相空間とし,は局所有限和と商で閉じているとする:
- ;
- .
任意のととに対して,であって
- ;
- ;
- ;
を満たすものが存在するとき,は完全正則であるという(ことにする).
を位相空間とし,は完全正則であるとする.このとき,任意のコンパクト集合とその開近傍とに対して,であって
- ;
- ;
- ;
を満たすものが存在する.
仮定より,各に対して,であって
- ;
- ;
- ;
を満たすものが存在する.このときの連続性より,であって
を満たすものが存在する.いまはコンパクトなので,その開被覆に対して,であって
を満たすものが存在する.そこで
とおく.
- 明らかにが成り立つ.
- 任意のに対して,であってとなるものが存在するので,
が成り立つ. - 補題1より
が成り立つ.
をパラコンパクトLCH空間とし,は完全正則であるとする.このとき,交わらない任意の閉集合に対して,であって
を満たすものが存在する.
とする.の局所コンパクト性より,
- のとき,相対コンパクト開近傍であってなるものが存在する;
- のとき,相対コンパクト開近傍であってなるものが存在する.
こうしての開被覆が得られるので,の局所有限な開被覆であってを細分するものが存在する.ここで
とおくと,が成り立つ.
いまはパラコンパクト空間なので,補題9より,局所有限な開被覆であって
を満たすものが存在する.は相対コンパクト開被覆の細分であったから,各はコンパクトである.したがって補題12より,であって
- ;
- ;
- ;
を満たすものが存在する.が局所有限であることからは局所有限であり(補題4),がの被覆であることからは正値なので,を
で定めることができる.
- は明らか.
- とする.ここでであってなるものが存在したとする.そこでであってなるものを取ると,の定め方と
よりでないとならないが,このときより
となってに反する.よって
が成り立つ. - とする.このとき任意のに対して,
より,であるから,
が成り立つ.
隆起函数
以上見てきたところにより,可微分多様体上の,の元からなるの分割が存在するためには,可微分写像全体のなす集合が完全正則であれば十分である.
とし,とする.このとき,級函数であって
および
を満たすものが存在する.
Step. 1
写像を
で定める.以下,が級函数であることを示す.
Step. 1-1
とする.任意のに対して,
したがって
が成り立つので,
となる.よって,任意の多項式に対して
が成り立つ.
Step. 1-2
各に対して,多項式であって
を満たすものが存在することを示す.
- とおけばよい.
- まで定まったとし
とおく.このとき,に対して,
が成り立つ.
以上より,任意のに対して
が成り立つ.
Step. 1-3
- は上連続である.
- が級であるとする.このとき,は上連続,上連続微分可能である.また,
より,はにおいて微分可能であり
が成り立つ.よっては級である.
Step. 2
とする.
- のとき,
が成り立つ. - のとき,
が成り立つ.
したがって,級函数を
で定めることができる.
- のとき,より,が成り立つ.
- のとき,より,が成り立つ.
- のとき,より,
が成り立つ.
実数に対して,級函数を
で定めると,
- のとき,より,が成り立つ;
- のとき,より,が成り立つ.さらに,
であるから,は上単調増加である; - のとき,より,が成り立つ.
(が局所有限和と商で閉じていることは認めることにする.)
とする.の周りの座標近傍であって
なるものを取り,写像を
で定める.
- 明らかにが成り立つ.
- が成り立つ.
- であるから,
が成り立つ.
あとはが級であることを示せばよい.いまはの開被覆であるから,が級であることを示せばよい.
- は級である.
- いまであるから,
となる.したがって,は定値写像なので,とくに級である.
はにコンパクト台を持つ可微分写像であって,のコンパクト近傍上で一定値を取る(cf. 系4).コンパクト台を持つ可微分写像を一般に隆起函数という.
を可微分多様体とし,を非空コンパクト集合,をその開近傍とする.このとき,コンパクト台を持つ可微分写像であって,
を満たすものが存在する(cf. [7]定理30).
補題12より,可微分写像であって
- ;
- ;
- ;
を満たすものが存在する.上の注意と補題12の証明より,はコンパクトであるとしてよい.ここで
とおくと,可微分写像について,
- 明らかにが成り立つ;
- 任意のに対して,より,が成り立つ;
- より,が成り立つ.
は積でも閉じていたので,次が成り立つ:
を可微分多様体,をその開集合とし,をに台を持つ可微分写像とする.このとき,任意の可微分写像に対して,連続写像
はに台を持つ可微分写像である(cf. 補題2).
明らかに
が成り立つ.いまはの開被覆であるから,あとはがともに級であることを示せばよい.
- は級なので,は級である.
- いまであるから,
となる.したがって,は定値写像なので,とくに級である.
に対して,命題8の証明にあるようにを取ると,にコンパクト台を持つ可微分写像について,
が成り立つ.したがって,はにコンパクト台を持つ可微分写像であって,の“拡張”になっている(cf. 系2).
を可微分多様体,をその開被覆とし,をの元からなる局所有限なの分割であって,に従属するものとする.また,を可微分写像族とする.このとき,命題4より,連続写像
が定まるが,これは可微分写像である.
補題14より各は可微分写像であり,
よりは局所有限である(補題4).よって,が局所有限和で閉じていることから,件の写像は可微分である.
なめらかなの分割
を可微分多様体とし,をの開被覆とする.このとき次が成り立つ:
- コンパクト台を持つの元からなる局所有限なの分割であって,がの細分であるようなものが存在する;
- の元からなる局所有限なの分割であって,に従属するものが存在する.
- 命題6,補題9より,局所有限な相対コンパクト開被覆であって,
を満たすものが存在する.よって,命題7より,であって
を満たすものが存在する.後者より
したがって
が成り立つので,はコンパクトである.
- 補題3よりは局所有限なので,補題4よりは局所有限である.
- よって,がの被覆であることと合わせて,正値可微分写像
が定まる. - そこで可微分写像を
で定めると,
より,はを細分する局所有限なコンパクト集合族であり,
および
が成り立つ.
- を(1)で得られたものとする.写像であって
なるものを取り,
とおく.あとは,命題3と同様にすればよい.(或いは本節冒頭で見た一般原理からしたがう.)
なめらかな拡張
を可微分多様体,をその閉集合とし,を連続写像とする.さらに,任意のに対して,とであって
を満たすものが存在するとする.このとき,任意の開近傍に対して,に台を持つ可微分写像であって
を満たすものが存在する.
Step. 1
各に対して,仮定にあるようにを取る.必要ならを考えることでとしてよい.また,とおく.このときはの開被覆であるから,定理9より,の元からなる局所有限なの分割であって,に従属するようなものが存在する.よって,命題9より,可微分写像を
で定めることができる.さらに,補題5より
が成り立つ.
Step. 2
とする.このときよりであり,各に対して,の定義とより,
- のとき,
- のとき,
であるから,
が成り立つ.
可微分写像による近似
を可微分多様体,をその閉集合とし,を連続写像とする.このとき,連続写像が系2の仮定を満たすならば,可微分写像であって,
および
を満たすものが存在する.
- 系2より,可微分写像であって,を満たすものが存在する.そこで
とおくと,これはの開近傍である.ただし,のときは,とおく. - 各に対して,
とおくと,これはのにおける開近傍である.
の開被覆に対して,定理9より,の元からなる局所有限なの分割であって,に従属するものが存在する.そこで,可微分写像を
で定める.
- 任意のに対して,
が成り立つ. - 任意のに対して,
が成り立つ.
閉集合に対する隆起函数の存在
を可微分多様体とし,を閉集合,をその開近傍とする.このとき可微分写像であって
を満たすものが存在する.をに台を持つに対する隆起函数という.
の開被覆に従属するの分割を取り,とおく.このとき
が成り立つ.また,のとき,より,
が成り立つ.
埋め込み定理
有限次元コンパクト可微分多様体は,ある有限次元Euclid空間に埋め込める.
を次元コンパクト可微分多様体とする.各に対して,その周りの座標近傍であって
を満たすものを取る.また,
とおく.このときはの開被覆であるから,であって
を満たすものが存在する.ここで,各に対して,に台を持つに対する隆起函数を取り,可微分写像を
で定める.ただしとおいた.このときが単射嵌め込みであることを示せばよい.
- とする.なるを取ると,
よりであるから,
となり,を得る.よっては単射である. - とする.なるを取ると,上でであるから,
となる.いまは(全)単射なので,は単射である.よっては嵌め込みである.