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大学数学基礎解説
文献あり

被覆空間のはなし

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被覆写像と局所同相写像

X,Yを位相空間としf:XYを連続写像とする.

  1. 任意のyYに対して,その開近傍Vτ(y,Y)Xの開集合族(Uλ)λΛであって
    f(V)=λΛUλ  λΛ, f|UλV:UλV:homeo.
    を満たすものが存在するとき,f被覆写像という.
  2. 任意のxXに対して,その開近傍Uτ(x,X)であって
    V:=f(U)τ(Y)  f|UV:UV:homeo.
    を満たすものが存在するとき,f局所同相写像という.
  1. 同相写像は被覆写像である.
  2. 被覆写像は局所同相写像である.
  3. 局所同相写像は開写像である.
  1. 明らか.
  2. f:XYを被覆写像とする.xXとしy:=f(x)Yとおく.仮定より,Vτ(y,Y)Uτ(x,X)であって
    f|UV:UV
    が同相写像であるようなものが存在する.
  3. f:XYを局所同相写像とし,Uτ(X)とする.また,yf(U)とし,xUであってf(x)=yなるものを取る.仮定より,Uxτ(x,X)であって
    f(Ux)τ(Y), fx:=f|Uxf(Ux):Uxf(Ux)
    を満たすものが存在する.このとき
    UUxτ(Ux)
    より
    yf(UUx)=fx(UUx)τ(f(Ux))τ(Y)
    であり,
    f(UUx)f(U)
    が成り立つ.よってf(U)Yは開集合である.

Xを位相空間,Yを連結空間とし,f:XYを被覆写像とする.このとき,任意のy,yYに対して
#f({y})=#f({y})
が成り立つ.とくにfは全射である.

y0Yを取り,
Y0:={yY#f({y})=#f({y0})}
とおく.このときY0Yが開閉集合であることを示せばよい.

  1. yY0とする.仮定より,開近傍Vτ(y,Y)Xの開集合族(Uλ)λΛであって
    f(V)=λΛUλ, λΛ, f|UλV:UλV
    を満たすものが存在する.このとき,任意のzVに対して
    #f({z})=#Λ=#f({y})=#f({y0})
    が成り立つので,VY0を得る.よってY0Yは開集合である.
  2. 同様にしてYY0Yが開集合であることもわかる.

さて,y0Yに対して,開近傍Vτ(y0,Y)と開集合Uτ(X)であって
f|UV:UV
なるものが存在する.よって,任意のyYに対して
#f({y})=#f({y0})1
が成り立つ.

局所同相写像が被覆写像であるための十分条件

[3] Lemma 2 )

X,Yを非空Hausdorff空間とし,f:XYを全射固有局所同相写像とする.このとき,以下のいづれかが成り立つならば,fは被覆写像である:

  1. Yは局所コンパクトである;
  2. 任意のy,yYに対して
    #f({y})=#f({y})
    が成り立つ.

yYとする.いまfは全射局所同相写像なのでf({y})は非空離散集合である.一方,fの固有性よりf({y})はコンパクトである.したがってf({y})は有限集合であるから,有限個の点x1,,xnXであって
f({y})={x1,,xn}
なるものが存在する.XのHausdorff性より,各xiの開近傍Oiτ(xi,X)であって
ijOiOj=
を満たすものが取れる.必要なら小さく取り直すことで
fi:=f|Oif(Oi):Oif(Oi)
としてよい.また,明らかに
yi=1nf(Oi)τ(Y)
が成り立つ.

  1. yYのコンパクト近傍KYを取り,
    V:=Int(K)i=1nf(Oi)f(f(K)i=1nOi)
    とおく.
    1. 明らかに
      yInt(K)i=1nf(Oi)
      であり,
      f({y})(f(K)i=1nOi){x1,,xn}i=1nOi=
      より
      {y}f(f(K)i=1nOi)=
      となるので,yVが成り立つ.
    2. 仮定よりf(K)Xはコンパクト集合なので,その閉集合
      f(K)i=1nOif(K)
      もコンパクト,したがって
      f(f(K)i=1nOi)Y
      はHausdorff空間のコンパクト集合ゆえ閉集合であるから,Vτ(Y)が成り立つ.
    3. 任意のxf(V)f(K)に対して,
      f(x)f(f(K)i=1nOi)  xf(K)i=1nOi
      より
      xi=1nOi
      を得るので,
      f(V)i=1nOi
      が成り立つ.そこでUi:=f(V)Oiτ(X)とおくと,
      f(V)=i=1nUi
      であり,f(Ui)=Vf(Oi)=Vより,
      f|UiV=fi|UiV:UiV
      が成り立つ.
  2. V:=if(Oi)τ(y,Y)とおく.このときf(V)iOiが成り立つことを示せばよい.そこでxf(V)とすると,f(x)if(Oi)より,各iに対して,xiOiであって
    z:=f(x)=f(xi)
    なるものが存在する.仮定より
    #f({z})=#f({y})=n
    であるから,
    {x,x1,,xn}f({z}), #{x1,,xn}=n
    より,
    x{x1,,xn}i=1nOi
    が成り立つ.

X,YをHausdorff空間とし,f:XYを全射連続写像とする.Xがコンパクト空間であるとき,次は同値である:

  1. fは被覆写像である;
  2. fは局所同相写像である.

XをHausdorff空間,Yを弧状連結Hausdorff空間とする.このとき,任意の全射固有局所同相写像f:XYは被覆写像である.

命題1の条件(2)が成り立つことを示せばよい.そこでy0,y1Yとする.仮定より,連続写像ω:[0,1]Yであってω(i)=yiなるものが存在する.このときω([0,1])は(局所)コンパクトであるから,全射固有局所同相写像
fω:=fω([0,1]):f(ω([0,1]))ω([0,1])
は被覆写像である.よって,ω([0,1])の連結性と補題2より
#f({y0})=#fω({y0})=#fω({y1})=#f({y1})
が成り立つ.

被覆写像の例

Xを位相空間,Gを離散群とし,α:X×GXを連続作用とする.任意のxXに対して,Uτ(x,X)であって
GU:={gGUUg}={e}
を満たすものが存在するとき,α被覆空間作用という.

[9] 命題23 )

αが被覆空間作用ならば,αは自由であり,商写像q:XX/Gは被覆写像である.

Gを位相群とし,Γ<Gを離散部分群とする.このとき,Γによる連続作用
G×ΓG; (g,γ)gγ
は被覆空間作用である.

xGとする.単位元の開近傍Uτ(e,G)であってΓU={e}なるものが存在すれば,Ux:=Uxτ(x,G)について,
UxUxγ=(UUxγx1)x
より,ΓUx={e}が成り立つので,初めからx=eとしてよい.

仮定より,Vτ(e,G)であって
VΓ={e}
なるものが存在する.このVに対して,対称開近傍Uτ(e,G)であってUUVを満たすものが存在する.このとき,γΓUとすると,uUであってuγUなるものが存在するので,
γ=u1(uγ)U1U=UUV
より,γ=eが成り立つ.

nN>0とする.このとき,Znは加法群Rnの離散(正規)部分群なので,商写像
expn:RnRn/Zn(R/Z)n(S1)n=:Tn; x(e2πx11,,e2πxn1)
は被覆写像である.


補足
  • 商写像q:RR/Zは開写像なので,積写像q:Rn(R/Z)nが同相
    Rn/Zn(R/Z)n
    を誘導する(cf. [8]命題2の系).
  • 連続写像
    exp1:RS1:={zCz=1}; xe2πx1
    は位相群(R,+)から位相群(S1,×)への全射準同型ゆえ連続な群同型写像
    exp1:R/ZS1
    を誘導する.ところで,R/Zはコンパクト空間[0,1]の連続像ゆえコンパクトなので,全単射連続写像exp1は同相写像である.
  • 同様にして,連続写像
    RS1; xe2πx1n
    は,同相
    R/nZS1
    を誘導する.
  • exp1|]0,1.5[は局所同相写像だが,被覆写像ではない.

nZ{0}とし,連続写像pn:S1S1
pn(z):=zn
で定める.このとき,同相写像p~n:RR
p~n(x):=nx
で定めると,exp1p~n=pnexp1が成り立つ:
Rp~nexp1Rexp1S1pnS1

よってpnはコンパクトHausdorff空間S1からHausdorff空間S1への全射局所同相写像であるから,系1より,被覆写像である.また,以下の図式も可換になる:
Rquoti.quoti.R/nZS1pnR/Zexp1S1

XをHausdorff空間,Gを有限群とし,α:X×GXを連続作用とする.このとき,αが自由な作用ならば,商写像q:XX/Gは被覆写像である.

G:={g0=e,g1,,gn}とおく.αが被覆空間作用であることを示せばよい.

xXとする.仮定よりxG軌道
xG={x,xg1,,xgn}
はHausdorff空間のn+1点集合なので,開近傍Uiτ(x,X),i[n],であって
ijUigiUjgj=
を満たすものが存在する.そこで
U:=i[n]Uiτ(x,X)
とおくと,
i[n]>0UUgiU0Uigi=
より,GU={e}が成り立つ.

有限巡回群G:=Z/nZによるS1への連続作用を
(z,m+nZ)ze2πm1n
で定めると,これは自由な作用であるから,商写像q:S1S1/Gは被覆写像である.さらに
q(z)=q(z)pn(z)=pn(z)
が成り立つので,全単射連続写像p¯n:S1/GS1が誘導される:
S1pnqS1S1/Gp¯n
いまS1/Gはコンパクト空間でありS1はHausdorff空間であるから,結局p¯n:S1/GS1が成り立つ.

実射影空間への商写像
SnSn/S0RPn
は被覆写像である.

局所同相写像が同相写像であるための十分条件

Unique Lifting Property

X,Yを位相空間とし,f:XYを被覆写像とする.また,Iを連結空間とし,ω1,ω2:IXを連続写像とする.このとき,
t0I, ω1(t0)=ω2(t0)fω1=fω2ω1=ω2
が成り立つ.

非空部分集合
I0:={tIω1(t)=ω2(t)}I
が開閉集合であることを示せばよい.

開集合であること

tI0とし,y:=f(ω1(t))Yとおく.被覆写像の定義より,開近傍Vτ(y,Y),Uτ(ω1(t),X)であって
ft:=f|UV:UV
なるものが存在する.そこで
W:=ω1(U)ω2(U)τ(t,I)
とおくと,任意のsWに対して,
ft(ω1(s))=f(ω1(s))=f(ω2(s))=ft(ω2(s))
より,ω1(s)=ω2(s)が成り立つ.よってWI0が成り立つ.

閉集合であること

tII0とし,y:=f(ω1(t))Yとおく.仮定よりf(ω2(t))=yであるから,被覆写像の定義より,開近傍Vτ(y,Y),Uiτ(ωi(t),X)であって
U1U2=, fi:=f|UiV:UiV
なるものが存在する.そこで
W:=ω1(U1)ω2(U2)τ(t,I)
とおくと,任意のsWに対して,
ω1(s)U1, ω2(s)U2
より,ω1(s)ω2(s)が成り立つ.よってWII0が成り立つ.

Homotopy Lifting Property

X,Yを位相空間とし,f:XYを被覆写像とする.また,Zを位相空間とし,連続写像h~0:ZX,H:[0,1]×ZY
H(0,z)=f(h~0(z))
を満たしているとする.このとき,連続写像H~:[0,1]×ZXであって,以下の図式を可換にするものがただ一つ存在する:
Zι0,Zh~0Xf[0,1]×ZH~HY
ただし,ι0,Z(z):=(0,z)である.

(一意性)

H~1,H~2が条件を満たすとすると,各zZに対して,
H~1(0,z)=h~0(z)=H~2(0,z),
および
fH~1(,z)=H(,z)=fH~2(,z)
が成り立つので,[0,1]の連結性と補題6より,
H~1(,z)=H~2(,z):[0,1]X
が成り立つ.よってH~1=H~2が成り立つ.

(存在)

Step 1.

zZとする.各t[0,1]に対して,H(t,z)Yの開近傍V(t,z)τ(Y)を,被覆写像の定義にあるように取る.このとき,[0,1]×{z}の開被覆(H(V(t,z)))t[0,1]のLebesgue数を取ることで,有限列(ti)i[n+1]であって
0=t0<t1<<tn+1=1, [ti,ti+1]×{z}H(V(t,z)=:Vi)
を満たすものが存在することがわかる.各i[n]に対して,zの開近傍Niτ(Z)であって
[ti,ti+1]×NiH(Vi)
を満たすものが存在するので,
N(z):=i[n]Niτ(z,Z)
とおくと,
i[n], [ti,ti+1]×N(z)H(Vi)
が成り立つ.

Step 2.

zZに対して,連続写像H~z:[0,1]×N(z)Xであって
H~z(0,z)=h~0(z), fH~z=H|[0,1]×N(z)
を満たすものが存在することを示す:
N(z)ι0,N(z)h~0|N(z)Xf[0,1]×N(z)H~zHY

いま([ti,ti+1]×N(z))i[n][0,1]×N(z)の(局所)有限閉被覆なので,各i[n]に対して,連続写像φi:[ti,ti+1]×N(z)Xであって
φ0(0,z)=h~0(z);fφi=H|[ti,ti+1]×N(z);φi|{ti+1}×N(z)=φi+1|{ti+1}×N(z);
を満たすものが存在することを示せばよい.

  1. V0に対して,Xの開集合族(Uλ)λであって
    f(V0)=λΛ0Uλ, fλ:=f|UλV0:UλV0
    を満たすものを取る.そこでWλ:=(h~0|N(z))(Uλ)
    とおくと,
    zN(z)f(h~0(z))=H(0,z)V0h~0(z)f(V0)
    より,(Wλ)λN(z)の互いに交わらない開被覆であるから,連続写像族
    [t0,t1]×WλH|[t0,t1]×WλV0fλ1UλX
    は貼り合わさって連続写像φ0:[t0,t1]×N(z)Xを定める.明らかに
    φ0(0,z)=fλ1(H(0,z))=h~0(z),
    および
    fφ0=H|[t0,t1]×N(z)
    が成り立つ.
  2. φiまで定まったとする.Vi+1に対して,Xの開集合族(Uλ)λであって
    f(Vi+1)=λΛi+1Uλ, fλ:=f|UλVi+1:UλVi+1
    を満たすものを取る.そこで
    Wλ:={zN(z)φi(ti+1,z)Uλ}
    とおくと,
    zN(z)f(φi(ti+1,z))=H(ti+1,z)Vi+1φi(ti+1,z)f(Vi+1)
    より,(Wλ)λN(z)の互いに交わらない開被覆であるから,連続写像族
    [ti+1,ti+2]×WλH|[ti+1,ti+2]×WλVi+1fλ1UλX
    は貼り合わさって連続写像φi+1:[ti+1,ti+2]×N(z)Xを定める.明らかに
    fφi+1=H|[ti+1,ti+2]×N(z)
    が成り立つ.また,zWλのとき,
    fλ(φi(ti+1,z))=f(φi(ti+1,z))=H(ti+1,z)=f(φi+1(ti+1,z))=fλ(φi+1(ti+1,z))
    より
    φi(ti+1,z)=φi+1(ti+1,z)
    が成り立つ.

Step 3.

z,zZとする.このとき,任意のzN(z)N(z)に対して,
H~z(0,z)=h~0(z)=H~z(0,z),
および
f(H~z|[0,1]×{z})=H|[0,1]×{z}=f(H~z|[0,1]×{z})
より,
H~z|[0,1]×{z}=H~z|[0,1]×{z}
が成り立つ(補題6).よって
H~z|[0,1]×(N(z)N(z))=H~z|[0,1]×(N(z)N(z))
が成り立つ.いま,([0,1]×N(z))zZ[0,1]×Zの開被覆であるから,連続写像族(H~z)zは貼り合わさって連続写像H~:[0,1]×ZXを定める.明らかに
H~(0,z)=h~0(z), fH~=H
が成り立つ:
Zι0,Zh~0Xf[0,1]×ZH~HY

X,Yを位相空間,f:(X,x0)(Y,y0)を被覆写像とし,ω:([0,1],0)(Y,y0)を連続写像とする.このとき,連続写像ω~:([0,1],0)(X,x0)であってfω~=ωを満たすものがただ一つ存在する:
(X,x0)f([0,1],0)ω~ω(Y,y0)

以下の図式を考えればよい:
{0}ι0,{0}constx0Xf[0,1]×{0}[0,1]ω~ωY

X,Yを位相空間,f:(X,x0)(Y,y0)を被覆写像とし,h1:(D2,z0)(Y,y0) を連続写像とする.ただし
D2:={zCz1}
である.このとき,連続写像h~1:(D2,z0)(X,x0)であってfh~1=h1を満たすものがただ一つ存在する:
(X,x0)f(D2,z0)h~1h1(Y,y0)

  1. D2は連結なので,補題6より,一意性がしたがう.
  2. 連続写像H:[0,1]×D2Y
    H(t,z):=h1((1t)z0+tz)
    で定めると,
    H(0,z)=y0=f(constx0(z)), H(1,z)=h1(z), H(t,z0)=y0
    が成り立つ.したがって,定理1より,連続写像H~:[0,1]×D2Xであって,以下の図式を可換にするものがただ一つ存在する:
    D2ι0,D2constx0Xf[0,1]×D2H~HY
    連続写像h~1:D2X
    h~1(z):=H~(1,z)
    で定めると
    f(h~1(z))=f(H~(1,z))=H(1,z)=h1(z)
    が成り立つ.あとはh~1(z0)=x0が成り立つことを示せばよい.ここで,連続写像ω,ω0:[0,1]X
    ω(t):=H~(t,z0), ω0(t):=x0
    で定めると,
    ω(0)=x0=ω0(0),
    および
    f(ω(t))=f(H~(t,z0))=H(t,z0)=y0=f(ω0(t))
    が成り立つので,補題6より,ω=ω0を得る.したがって
    h~1(z0)=H~(1,z0)=ω(1)=ω0(1)=x0
    が成り立つ.

Yを弧状連結空間とする.任意の連続写像φ0:S1Yに対して,連続写像φ:D2Yであってφ|S1=φ0を満たすものが存在するとき,Y単連結空間という.

Y1,Y2が単連結ならば,Y1×Y2も単連結である.実際,任意の連続写像φ0:S1Y1×Y2に対して,
S1φ0Y1×Y2proj.Yi
の拡張φi:D2Yiを取り,連続写像φ:D2Y1×Y2
φ(z):=(φ1(z),φ2(z))
で定めれば,φ|S1=φ0が成り立つ.

Rは単連結である.実際,任意の連続写像φ0:S1Rに対して,連続写像H:[0,1]×S1RおよびH:[0,1]×S1D2
H(t,z):=(1t)φ0(z), H(t,z):=(1t)z
で定めると,S1の錐CS1を介して,連続写像φ:D2CS1Rが誘導され,φ|S1=φ0が成り立つ:
[0,1]×S1Hquoti.Hφ:D2CS1R

したがって,任意のnN>0に対して,Rnは単連結である.

[3] Theorem 2 )

Xを弧状連結Hausdorff空間,Yを単連結Hausdorff空間とし,f:XYを局所同相写像とする.このとき次は同値である:

  1. fは固有写像である;
  2. fは同相写像である.

(i)(ii)

いまfは連続開写像であるから,あとはfが全単射であることを示せばよい.

 fが全射であること

y0f(X)を取り,y1Yとする.Yの弧状連結性より,連続写像ω:[0,1]Yであってω(i)=yiなるものが存在する.

  1. いまfは開写像なので,
    y0ω([0,1])f(X)ω([0,1])
    は非空開集合である.
  2. 仮定よりf(ω([0,1]))はコンパクトなので,
    ω([0,1])f(X)=f(f(ω([0,1]))X)ω([0,1])
    はHausdorff空間のコンパクト集合ゆえ閉集合である.

したがって,ω([0,1])の連結性より,
y1ω([0,1])=ω([0,1])f(X)f(X)
が成り立つ.

 fが単射であること

x0,x1X,f(x0)=f(x1)とする.Xの弧状連結性より,連続写像ω:[0,1]Xであってω(i)=xiなるものが存在する.いまf(ω(0))=f(ω(1))であるから,連続写像φ0:S1Xであって以下の図式を可換にするものがただ一つ存在する:
([0,1],{0,1})q:=exp1|[0,1]fω(Y,f(x0))(S1,z0)φ0
このφ0に対して,Yの単連結性より,連続写像φ:D2Yであってφ|S1=φ0を満たすものが存在する.命題1より,全射固有局所同相写像f:XYは被覆写像であるから,連続写像φ~:(D2,z0)(X,x0)であってfφ~=φを満たすものがただ一つ存在する(系4):
(X,x0)f(D2,z0)φ~φ(Y,f(x0))
そこで,合成写像
ωφ~:[0,1]qS1D2φ~X
を考えると,
ωφ~(0)=φ~(z0)=x0=ω(0),
および
fωφ~=fφ~|S1q=φ|S1q=φ0q=fω
よりωφ~=ωとなるので(補題6),
x0=φ~(z0)=ωφ~(1)=ω(1)=x1
が成り立つ.

(ii)(i)

明らか.

被覆変換群とGalois対応

被覆変換群

被覆写像q:XYに対して,Xの自己同相群Homeo(X)の部分群
Aut(q):={fHomeo(X)qf=q}
を,q被覆変換群という.

q:XYを被覆写像とする.このとき,任意のgHomeo(X)に対して,gq:=qg1:XYは被覆写像であり,
fAut(gq)(qg1)f=qg1q(g1fg)=qg1fgAut(q)
より,
Aut(gq)=gAut(q)g1
が成り立つ.

q:XYを被覆写像とする.このとき,任意の同相写像g:YYに対して,gq:XYは被覆写像であり,
fAut(gq)(gq)f=gqqf=qfAut(q)
より,
Aut(gq)=Aut(q)
が成り立つ.

q:XYを被覆写像とする.任意のx0,x1Xに対して,
q(x0)=q(x1)fAut(q), f(x0)=x1
が成り立つとき,(q,X)Galois被覆(空間)という.

は常に成り立つことに注意する.したがって,q:XYがGalois被覆であるためには,誘導される写像q¯:Aut(q)XYが同相写像であることが必要かつ十分である:
Xqquoti.YAut(q)Xq¯

Xを位相空間,Gを離散群とし,α:X×GXを被覆空間作用とする.このとき次が成り立つ:

  1. 商写像qG:XX/GはGalois被覆である;
  2. Xが連結ならば,Aut(qG)Gが成り立つ.

gGに対して,同相写像ρ(g):XX
ρ(g)(x):=xg1
で定めると,qGρ(g)=qGが成り立つので,ρ(g)Aut(qG)を得る.よって写像ρ:GAut(qG)が定まるが,さらに
ρ(gg)(x)=x(gg)1=xg1g1=(xg1)g1=ρ(g)(ρ(g)(x))
が成り立つので,ρは群準同型である.

  1. x0,x1X,qG(x0)=qG(x1)とする.このとき,gGであってx0=x1gを満たすものが存在するので,ρ(g)Aut(qG)に対して
    ρ(g)(x0)=x1
    が成り立つ.よってqG:XX/GはGalois被覆である.
  2. 群準同型ρ:GAut(qG)が全単射であることを示せばよい.
    1. いまαは自由な作用なので,ρは単射である.
    2. fAut(qG)とする.x0Xを取りx1:=f(x0)とおくと,被覆変換群の定義よりqG(x1)=qG(f(x0))=qG(x0)となるので,gGであって
      ρ(g)(x0)=x1
      を満たすものが存在する.いま,Xは連結であって,
      f(x0)=ρ(g)(x0), qGf=qG=qGρ(g)
      が成り立つので,補題6より,f=ρ(g)を得る.よってρは全射である.
  1. Aut(RnexpnTn)Zn.
  2. Aut(S1pnS1)Z/nZ.
  3. Aut(Snquoti.RPn)Z/2Z.

部分群から被覆空間へ

位相空間Xの各点が連結開集合(resp. 弧状連結開集合)からなる局所開基を持つとき,X局所連結空間(resp. 局所弧状連結空間)という.

q:XYを被覆写像とする.Xが連結かつ局所連結ならば,離散群Aut(q)による作用
ev:X×Aut(q)X; (x,f)f1(x)
は被覆空間作用である.

  1. (x,f)X×Aut(q)とする.このとき,任意の開近傍Vτ(f1(x),X)に対して,U:=f(V)τ(x,X)とおくと,(x,f)の開近傍U×{f}τ(X×Aut(q))について
    (ev)(U×{f})V
    が成り立つ.また,
    x(f1f2)=(f1f2)1(x)=f21(f11(x))=(xf1)f2
    も成り立つ.よってevは連続作用である.
  2. xXとし,y:=q(x)Yとおき,連結開近傍Vτ(y,Y)Xの開集合族(Uλ)λΛであって
    q(V)=λΛUλ, q|UλV:UλV
    を満たすもの,およびλΛであってxUλ=:Uなるものを取る.このとき,gAut(q)Uとすると,Ugの連結性と
    UUg, Ugq(V)
    より,
    Ug=UUgU
    となる.よって
    (q|UV)(xg)=q(xg)=q(x)=(q|UV)(x)
    より,xg=xを得るので,Xの連結性と補題6より,g=idXが成り立つ.

以下,連結かつ局所連結な位相空間のみ考える.

q:XYを被覆写像とする.このとき,Aut(q)の作用は自由なので,基点y0Y,x0q({y0})=:F(y0)を取るごとに,単射
evx0:Aut(q)F(y0); ff(x0)
が定まる.したがって,
q:Galoisy0Y, x0F(y0), evx0:bijection
が成り立つ.一般に
#Aut(q)#F(y0)
であるから,或る(したがってすべての(cf. 補題2))ファイバーが有限集合ならば,
q:Galoisy0Y, #Aut(q)=#F(y0)
が成り立つ.

q:XYを被覆写像とする.このとき,任意の部分群Γ<Aut(q)に対して,商写像
qΓ:XX/Γ
はGalois被覆であり,
Aut(qΓ)=Γ
が成り立つ(cf. 命題3).

q:XYを被覆写像とし,Γ<Aut(q)とすると,
qΓ(x)=qΓ(x)q(x)=q(x)
より,連続写像q¯:X/ΓYが誘導される:
XqΓqYX/Γq¯

このq¯について次が成り立つ:

  1. q¯:X/ΓYは被覆写像である;
  2. q¯:X/ΓYがGalois被覆ならば,ΓAut(q)である.
  1. yYとし,連結開近傍Vτ(y,Y)Xの開集合族(Uλ)λΛであって
    q(V)=λΛUλ, q|UλV:UλV
    を満たすものを取る.このときWλ:=qΓ(Uλ)τ(X/Γ)であり,
    q¯(V)=qΓ(q(V))=λΛWλ
    が成り立つ.各λΛに対して,qΓ|UλWλは全射連続開写像であり,合成写像
    (q¯|WλV)(qΓ|UλWλ)=q|UλV:UλWλV
    が単射なので,全単射連続開写像qΓ|WλVは同相写像である.また,各Uλの連結性より
    WλWλγΓ, UλUλγγΓ, UλγUλ=(Uλγ1)γUλγWλ=Wλ
    が成り立つので,Λ上の同値関係
    λλ:Wλ=Wλ
    の完全代表系Λ0を取れば,
    q¯(V)=λΛ0Wλ, q¯|WλV:WλV
    が成り立つ.
  2. q¯がGalois被覆であるとする.x0Xを取り,gAut(q)とする.このとき,
    q¯(qΓ(x0))=q(x0)=q(g1(x0))=q¯(gqΓ(x0))
    より,f¯Aut(q¯)であって
    f¯(qΓ(x0))=gqΓ(x0)
    を満たすものが存在する.いま
    q¯f¯qΓ=q¯qΓ=q=qg1=q¯qΓg1=q¯gqΓ
    が成り立つので,X/Γの連結性と補題6より,
    f¯qΓ=gqΓ
    が成り立つ.よって,
    Γ=Aut(qΓ)=Aut(f¯qΓ)=Aut(gqΓ)=gAut(qΓ)g1=gΓg1
    が成り立つ.

q:XYをGalois被覆とし,ΓAut(q)とする.このとき次が成り立つ:

  1. Aut(q)/ΓAut(q¯);
  2. q¯:X/ΓYはGalois被覆である.

Aut(q)/ΓAut(q¯)であること

fAut(q)とする.

  1. qΓ(x)=qΓ(x)とすると,fΓAut(qΓ)=ΓであってfΓ(x)=xなるものが存在する.
  2. 仮定より
    ffΓf1fΓf1=Γ=Aut(qΓ)
    であるから,fΓAut(qΓ)であってffΓf1=fΓなるものが存在する.
  3. よって
    qΓ(f(x))=qΓ(fΓ(f(x)))=qΓ(f(fΓ(x)))=qΓ(f(x))
    が成り立つ.

以上より
qΓ(x)=qΓ(x)qΓ(f(x))=qΓ(f(x))
が成り立つので,連続写像f¯:X/ΓX/Γであってf¯qΓ=qΓfを満たすものがただ一つ存在する:
XqΓfXqΓX/Γf¯X/Γ

f1,idXに対して同様の考察をすることで,
f1f¯=idX/Γ=f¯f1
が成り立つことがわかる.さらに
(q¯f¯)qΓ=q¯qΓf=qf=q=q¯qΓ
よりq¯f¯=q¯が成り立つので,写像ψΓ:Aut(q)Aut(q¯)
ψΓ(f):=f¯
で定めることができる.

  1. 誘導される写像の一意性より,ψΓが群準同型であることがわかる.
  2. ψΓの定義より,
    fker(ψΓ)f¯=idX/Γf¯qΓ=qΓqΓf=qΓfAut(qΓ)=Γ
    が成り立つので,ker(ψΓ)=Γである.
  3. f¯Aut(q¯)とし,x0Xを取る.このとき,qΓの全射性より,xXであって
    qΓ(x)=f¯(qΓ(x0))
    を満たすものが存在する.いまq:XYはGalois被覆なので,
    q(x0)=q¯(qΓ(x0))=q¯(f¯(qΓ(x0)))=q¯(qΓ(x))=q(x)
    より,fAut(q)であってf(x0)=xなるものが存在する.したがって
    f¯(qΓ(x0))=qΓ(x)=qΓ(f(x0)),
    および
    q¯(f¯qΓ)=q¯qΓ=q=qf=q¯(qΓf)
    が成り立つので,Xの連結性と補題6より,
    f¯qΓ=qΓf
    が成り立つ.よってψΓは全射である.

q¯:X/ΓYがGalois被覆であること

q¯(qΓ(x))=q¯(qΓ(x))とする.このときq(x)=q(x)であるから,fAut(q)であってf(x)=xなるものが存在する.そこで,f¯:=ψΓ(f)Aut(q¯)とおくと,
f¯(qΓ(x))=qΓ(f(x))=qΓ(x)
が成り立つ.

q:XYを被覆写像とし,Γ<Aut(q)とする.Aut(q)におけるΓの正規化群をν(Γ)とおく:
ν(Γ):={fAut(q)fΓf1=Γ}.

このとき,上の証明と同様にして,群準同型ψΓ:ν(Γ)Aut(q¯)が定義でき,ker(ψΓ)=Γが成り立つ.さらに,q:XYがGalois被覆であるとき,任意のf¯Aut(q¯)に対して,fAut(q)であってqΓf=f¯qΓなるものが存在するが,
Γ=Aut(qΓ)=Aut(f¯qΓ)=Aut(qΓf)=Aut((f1)qΓ)=f1Aut(qΓ)f=f1Γf
より,f1ν(Γ),したがってfν(Γ)が成り立つ.よってψΓは全射であるから,準同型定理より
ν(Γ)/ΓAut(q¯)
が成り立つ.

基点つき中間被覆

qX,Y:XY,qZ,Y:ZYを被覆写像とし,qX,Z:XZを連続写像とする.このとき
qX,Y=qZ,YqX,ZqX,Z:covering
が成り立つ.さらに
qX,Y:GaloisqX,Z:Galois
が成り立つ.
XqX,YqX,ZZqZ,YYY

前半

zZとし,y:=qZ,Y(z)Yとおく.このとき,連結開近傍Wτ(y,Y)Xの開集合族(Uλ)λ,およびZの開集合族(Vλ)λであって
qX,Y(W)=λΛUλ, qX,Y|UλW:UλWqZ,Y(W)=λΛVλ, qZ,Y|VλW:VλW
を満たすものが存在する.λΛであってzVλ=:Vなるものを取り
Λ(z):={λΛUλqX,Z(V)}
とおく.任意のλΛ(z)に対して,Uλの連結性とqX,Z(Uλ)qZ,Y(W)より
qX,Z(Uλ)V
が成り立つので,
qX,Z|UλV=(qZ,Y|VW)1qX,Y|UλW:UλWV
は同相写像である.よって
qX,Z(V)=λΛ(z)Uλ, qX,Z|UλV:UλV
が成り立つ.

後半

qX,Z(x)=qX,Z(x)とする.このとき
qX,Y(x)=qZ,Y(qX,Z(x))=qZ,Y(qX,Z(x))=qX,Y(x)
より,fAut(qX,Y)であってf(x)=xなるものが存在する.あとはfAut(qX,Z)を示せばよい.いま,
qX,Z(f(x))=qX,Z(x)=qX,Z(x)
であり,
qZ,Y(qX,Zf)=qX,Yf=qX,Y=qZ,YqX,Z
であるから,Xの連結性と補題6より,
qX,Zf=qX,Z,
すなわちfAut(qX,Z)が成り立つ.

q:(X,x0)(Y,y0)を被覆写像とする.被覆写像の組(q:(X,x0)(Z,z0),q:(Z,z0)(Y,y0))であってq=qqを満たすものを,q基点つき中間被覆という.

q=qqなる被覆写像q,qqについて,Aut(q)<Aut(q)が成り立つ.実際,fAut(q)とすると,
qf=q(qf)=qq=q
より,fAut(q)が成り立つ.

q:(X,x0)(Y,y0)を被覆写像とする.ふたつの基点つき中間被覆(qi:(X,x0)(Zi,zi),qi:(Zi,zi)(Y,y0)),i{1,2},に対して,同相写像f:(Z1,z1)(Z2,z2)であってq2f=q1を満たすものが存在するとき,(q1,q1)(q2,q2)とは基点つき同型であるという.
(X,x0)qq1(X,x0)q2q(Z1,z1)fq1(Z2,z2)q2(Y,y0)(Y,y0)

上の状況で,
f(q1(x0))=f(z1)=z2=q2(x0),
および
q2(fq1)=q1q1=q=q2q2
が成り立つので,Xの連結性と補題6より,fq1=q2が成り立つ.よって
Aut(q1)=Aut(q2)
が成り立つ.

q:(X,x0)(Y,y0)がGalois被覆であるとき,任意の基点つき中間被覆(q,q)Aut(q)の部分群Γ:=Aut(q)による商空間からなる基点つき中間被覆と基点つき同型である:
(X,x0)qqΓ(X,x0)qq(X/Γ,qΓ(x0))qq¯(Z,z0)q(Y,y0)(Y,y0)

補題8よりq:XZはGalois被覆なので,誘導される写像q:X/ΓZは同相写像であることに注意する.)

Galois対応

以上をまとめて次を得る:

Galois対応

qG:(X,x0)(Y,y0)をGalois被覆とする.このとき,G:=Aut(qG)の部分群全体のなす集合から,qGの基点つき中間被覆の基点つき同型類全体のなす集合への写像を
Γ[(X,x0)qΓ(X/Γ,qΓ(x0))qG/Γ:=qG(Y,y0)]
で定めると,これは
[(X,x0)q(Z,z0)q(Y,y0)]Aut(q)
を逆写像とする全単射である.さらに
ΓGqG/Γ:Galois  Aut(qG/Γ)G/Γ
が成り立つ.

Γ<Γ<Gのとき,命題4(または補題8)より,誘導される写像qΓ/Γ:=qΓ:X/ΓX/Γも被覆写像である:
XqΓqGXqΓqGX/ΓqG/ΓqΓX/ΓqG/ΓX/GX/G

例11よりqΓ:XX/ΓはGalois被覆なので,
ΓΓqΓ/Γ:Galois  Aut(qΓ/Γ)Γ/Γ
が成り立つ.

部分群と中間被覆のGalois対応

GXqGqΓΓincl.X/ΓqΓ/ΓΓincl.X/ΓqG/Γ{idX}incl.X/G

以下の対応がある(cf. 補題4命題3例1例2):
ZRexp1nZS1nmZS1pn{0}S1

普遍被覆空間

普遍被覆

位相空間Xが連結かつ局所弧状連結ならば,Xは弧状連結である.

x0Xを取り
X0:={x1Xω:[0,1]X:conti., ω(i)=xi}
とおく.非空部分集合X0Xが開かつ閉であることを示せばよい.

開集合であること

x1X0とし,連続写像ω:[0,1]Xであってω(i)=xiなるものを取る.仮定より,弧状連結開近傍Uτ(x1,X)が存在する.このとき,任意のx2Uに対して,連続写像ω:[0,1]Xであってω(i)=xi+1なるものが存在するので,連続写像ω:[0,1]X
ω(t):={ω(2t),0t12ω(2t1),12t1
で定めると,ω(i)=x2iが成り立つ.よってUX0となるので,X0Xは開集合である.

閉集合であること

x2XX0とし,x2の弧状連結開近傍Uτ(x2,X)を取る.このとき,UXX0が成り立つ.実際,UX0であったとすると,上の考察によりx2X0が得られ不合理である.

以下,連結かつ局所弧状連結な位相空間のみ考える.

p:X~Xを被覆写像とする.任意の基点x0X,x~0p({x0}),および任意の被覆写像q:(Z,z0)(X,x0)に対して,連続写像f:(X~,x~0)(Z,z0)であってqf=pを満たすものが存在するとき,(p,X~)X上の普遍被覆(空間)という.
(X~,x~0)fp(Z,z0)q(X,x0)(X,x0)

  1. 補題8よりfは被覆写像である.
  2. X~の連結性と補題6より,qf=pなるf:(X~,x~0)(Z,z0)は一意的である.したがってX上の普遍被覆は互いに同相である.

Xを(連結かつ局所弧状連結な)位相空間とする.このとき次が成り立つ:

  1. X~が単連結ならば,任意の被覆写像p:X~Xは普遍被覆である;
  2. 普遍被覆はGalois被覆である.

(1)

基点x0X,x~0p({x0})を取り,q:(Z,z0)(X,x0)を被覆写像とする.

x~=x~1X~とし,連続写像ω~:[0,1]X~であってω~(i)=x~iなるものを取る.このとき,系3より,連続写像pω~:([0,1],0)(X,x0)に対して,連続写像ωZ:([0,1],0)(Z,z0)であってqωZ=pω~なるものがただ一つ存在する:
(Z,z0)q([0,1],0)ωZpω~(X,x0)

ωZ(1)Zω~の取り方によらないことが,次のようにしてわかる:

  1. 別の連続写像ω~:([0,1],0,1)(X~,x~0,x~1)に対して,連続写像ω~:[0,1]X~
    ω~(t):={ω~(2t),0t12ω~(22t),12t1
    で定めると,ω~(0)=x~0=ω~(1)より,連続写像φ0:(S1,1)(X~,x~0)が誘導される:
    ([0,1],0,12,1)exp1|[0,1]ω~(X~,x~0,x~1,x~0)(S1,1,1,1)φ0
  2. X~の単連結性より,連続写像φ:(D2,1)(X~,x~0)であってφ|S1=φ0なるものが存在する.
  3. 連続写像pφ:(D2,1)(X,x0)と被覆写像qに対して,系4より,連続写像φ~:(D2,1)(Z,z0)であってqφ~=pφを満たすものがただ一つ存在する.
  4. [0,1]の連結性と補題6より,以下の図式は可換である:
    Zq[0,1]pω~ωZ[0,12]exp1|[0,12]S1D2φ~pφX
    よって
    ωZ(1)=φ~(1)
    が成り立つ.同様に,ω~から定まる連続写像ωZに対して
    ωZ(1)=φ~(1)
    が成り立つ.

以上より,写像f:(X~,x~0)(Z,z0)
f(x~):=ωZ(1)
で定めることができる.定義より
q(f(x~))=q(ωZ(1))=p(ω~(1))=p(x~)
が成り立つので,あとはfの連続性を示せばよい.そこでx~X~としVτ(f(x~),Z)とする.いまp,qは局所同相写像なので,x~X~の弧状連結開近傍Uτ(X~)p(x~)の開近傍Wτ(X),およびf(x~)の開近傍Vτ(V)であって
p|UW:UW, q|VW:VW
を満たすものが存在する.このとき,任意のx~Uに対して,連続写像ω~:([0,1],0,1)(X~,x~,x~)
ω~(2t)=ω~(t), (ω~)([12,1])U
なるように取ると,写像
ωZ:[0,1]Z; t{ωZ(2t),0t12idVZ(q|VW)1(p|UW)(ω~(t)),12t1
は連続であってqωZ=pω~を満たすので,
f(x~)=ωZ(1)VV
が成り立つ.

(2)

p:X~Xを普遍被覆とする.このとき,任意のx~,x~X~に対して,普遍被覆の定義と補題6より,
p(x~)=p(x~){f:(X~,x~)(X~,x~), pf=pg:(X~,x~)(X~,x~), pg=p  gf=idX~=fg
が成り立つ.

Rnは単連結であったから,
expn:RnTn; x(e2πx11,,e2πxn1)
は普遍被覆である(cf. 例6例1).

p:(X~,x~0)(X,x0)を単連結普遍被覆とする.このとき次が成り立つ:

  1. 任意の被覆写像q1:Z1Z0,q0:Z0Xに対して,合成写像q0q1:Z1Xは被覆写像である(cf. 命題4補題8);
  2. 任意の被覆写像p1:X~1X~は同相写像である.
  1. 基点z0q0({x0})を取る.仮定より,被覆写像p0:(X~,x~0)(Z0,z0)であってq0p0=pを満たすものがただ一つ存在する:
    (X~,x~0)p0p(Z0,z0)q0(X,x0)(X,x0)
    命題6(1)よりp0:X~Z0は普遍被覆であるから,基点z1q1({z0})に対して,被覆写像p1:(X~,x~0)(Z1,z1)であってq1p1=p0を満たすものがただ一つ存在する:
    (X~,x~0)p1p0(Z1,z1)q1(Z0,z0)(Z0,z0)
    命題6よりp1:X~Z1はGalois被覆であるから,Γ:=Aut(p1)とおくと,以下の可換図式が得られる:
    X~ppΓX~pp1X~/Γp1p¯Z1q0q1XX
    命題4よりp¯は被覆写像であるから,
    q0q1=p¯(p1)1:Z1X
    は被覆写像である.
  2. 基点x~1p1({x~0})を取る.前段よりpp1:(X~1,x~1)(X,x0)は被覆写像であるから,連続写像f:(X~,x~0)(X~1,x~1)であって(pp1)f=pを満たすものがただ一つ存在する:
    (X~,x~0)fp(X~1,x~1)pp1XX
    このとき,
    p1(f(x~0))=x~0,
    および
    p(p1f)=p
    が成り立つので,X~の連結性と補題6より,p1f=idX~が成り立つ.さらに,
    f(p1(x~1))=x~1,
    および
    p1(fp1)=idX~p1=p1
    が成り立つので,X~1の連結性と補題6より,fp1=idX~1が成り立つ.よって
    p1:X~1X~
    は同相写像である.

連結かつ局所弧状連結な位相空間Xが単連結な普遍被覆を持つためには,X半局所単連結であること,すなわち任意のxXに対して,開近傍Vτ(x,X)であって
φ0:(S1,1)(V,x), φ:D2X, φ|S1=idVXφ0
を満たすものが存在することが必要かつ十分である.

必要性

p:X~Xを単連結普遍被覆とし,xXとする.開近傍Vτ(x,X)X~の開集合Uであって
px:=p|UV:UV
なるものを取る.このとき,任意の連続写像φ0:(S1,1)(V,x)に対して,連続写像
φ~0:=idUX~px1φ0:S1VUX~
を考えると,X~の単連結性より,連続写像φ~:D2X~であってφ~|S1=φ~0を満たすものが存在する.そこで
φ:=pφ~:D2X~X
とおくと,φ|S1=idVXφ0が成り立つ.

十分性

実際にp:X~Xを構成すればよいが,長くなるので割愛する.たとえば,[2]Theorem 2.5.13,[5]定理5.3.19,[7]定理4.9,などを参照せられたい.

分類定理

以下,Xの普遍被覆p:X~Xが存在すると仮定し,基点x0X,x~0p({x0})を固定する.

ふたつの被覆写像qi:ZiX,i{1,2},について,同相写像f:Z1Z2であってq2f=q1を満たすものが存在するとき,q1q2とは同型であるという.
Z1q1fZ2q2XX

任意の被覆写像q:(Z,z0)(X,x0)に対して,被覆写像q(Z,z0):(X~,x~0)(Z,z0)であってqq(Z,z0)=pを満たすものがただ一つ存在する:
(X~,x~0)q(Z,z0)p(Z,z0)q(X,x0)(X,x0)

とくに(q(Z,z0),q)p:(X~,x~0)(X,x0)の基点つき中間被覆である.

被覆空間の分類定理

qi:ZiX,i{1,2},を被覆写像とし,基点ziqi({x0})を取る.このとき次は同値である:

  1. q1q2とは同型である;
  2. Aut(q(Z1,z1))Aut(q(Z2,z2))とはAut(p)において共軛である.

(i)(ii)

仮定より,同相写像f:Z1Z2であってq2f=q1なるものが存在する.このとき,p:(X~,x~0)(X,x0)の基点つき中間被覆(q(Z1,z1),q1)(q(Z2,f(z1)),q2)とは基点つき同型であるから,
Aut(q(Z1,z1))=Aut(q(Z2,f(z1)))
が成り立つ:
(X~,x~0)q(Z1,z1)(X~,x~0)q(Z2,f(z1))(Z1,z1)fq1(Z2,f(z1))q2(X,x0)(X,x0)

一方,x~2q(Z2,f(z1))(z2)を取ると,普遍被覆の定義より,同相写像g~:(X~,x~2)(X~,x~0)であってpg~=pを満たすものが存在することがわかる:
(X~,x~0)q(Z2,z2)q(Z2,f(z1))p(X~,x~2)q(Z2,f(z1))g~p(Z2,f(z1))q2(Z2,z2)q2(X,x0)(X,x0)

このとき,g~Aut(p)であり,
q(Z2,z2)=q(Z2,f(z1))g~1=g~q(Z2,f(z1))
であるから,
Aut(q(Z2,z2))=Aut(g~q(Z2,f(z1)))=g~Aut(q(Z2,f(z1)))g~1=g~Aut(q(Z1,z1))g~1
が成り立つ.

(ii)(i)

Γi:=Aut(q(Zi,zi))とおく.仮定より,g~Aut(p)であって
Γ2=g~Γ1g~1
を満たすものが存在する.いま,補題8より,q(Zi,zi)はGalois被覆であるから,同相写像g~:X~X~が,同相写像
g:X~/Γ1X~/Γ2
を誘導することを示せば十分である:
X~q(Z1,z1)g~X~q(Z2,z2)Z1q1X~/Γ1gX~/Γ2Z2q2XX

そこで,x~,x~X~とし,f~1Γ1であってf~1(x~)=x~なるものが存在したとすると,f~2Γ2であってf~2=g~f~1g~1なるものに対して,
f~2(g~(x~))=g~(f~1(x~))=g~(x~)
が成り立つ.よって,連続写像g:X~/Γ1X~/Γ2が誘導される:
X~pΓ1g~X~pΓ2X~/Γ1gX~/Γ2

g~1,idX~に対して同様の考察をすることで,gが同相写像であることがわかる.

附:連結性について

位相空間Xに対して,
{,X}τ(X)τc(X)
より,
X2#(τ(X)τc(X))
が成り立つ.

Xを位相空間とする.

  1. #(τ(X)τc(X))=2が成り立つとき,X連結空間という.
  2. Xが空でなく,任意のx0,x1Xに対して,連続写像ω:[0,1]Xであってω(i)=xiなるものが存在するとき,X弧状連結空間という.
  3. 部分集合AXが相対位相に関して連結空間(resp. 弧状連結空間)であるとき,A連結集合(resp. 弧状連結集合)という.

非空位相空間Xが弧状連結であるためには,任意の連続写像φ0:S0Xに対して,連続写像φ:D1Xであってφ|S0=φ0を満たすものが存在することが必要かつ十分である(cf. 定義3).一般に,nNとしたとき,任意のk[n]と任意の連続写像φ0:SkXに対して,連続写像φ:Dk+1Xであってφ|Sk=φ0を満たすものが存在するとき,X ()n連結空間という.

  1. 弧状連結空間の連続像は弧状連結である.
  2. X,Yが弧状連結ならば,X×Yも弧状連結である.
  1. Xを弧状連結とし,f:XYを全射連続写像とする.
    1. XよりY=f(X)である.
    2. 任意のy0,y1Yに対して,xif({yi})を取ると,連続写像ωX:[0,1]XであってωX(i)=xiなるものが存在するので,連続写像ωY:=fω:[0,1]Yに対してωY(i)=yiが成り立つ.
  2. 任意の(x0,y0),(x1,y1)X×Yに対して,連続写像ωX:[0,1]X,ωY:[0,1]Yであって
    ωX(i)=xi, ωY(i)=yi
    を満たすものが存在するので,連続写像ωX×Y:[0,1]X×Y
    ωX×Y(t):=(ωX(t),ωY(t))
    で定めると,ωX×Y(i)=(xi,yi)が成り立つ.

Xを位相空間とする.このとき次は同値である:

  1. Xは連結である;
  2. Xであり,離散空間2:=({0,1},P({0,1}))への任意の連続写像は全射ではない.

(i)(ii)

  1. 明らかにXであり,
    τ(X)τc(X)={,X}
    が成り立つ.
  2. f:X2を連続写像とする.x0Xを取り
    X0:=f({f(x0)})X
    とおくと,これはXの非空開閉集合であるからXに一致する.よってfは全射でない.

(ii)(i)

もしXが連結でないとすると,開閉集合Aτ(X)τc(X){,X}が取れる.このとき,A,XAXは非空開集合であるから,全射連続写像f:X2
f(x):={0,xA1,xXA
で定めることができるが,これは不合理である.

位相空間Xの部分集合A,BXABCl(A)を満たしているとき,
A:connectedB:connected
が成り立つ.実際,

  1. AよりBである.
  2. f:B2を連続写像とすると,
    f(B)=f(ClB(A))Cl2(f(A))=f(A)=(f|A)(A)2
    が成り立つので,fは全射でない.

単位閉区間[0,1]は連結である.

f:[0,1]2を連続写像とし,
I0:={t[0,1]t[0,t], f(t)=f(0)}
とおく.このとき,0I0より,
s:=supI0[0,1]
が定まる.

  1. f({f(0)})τ(0,[0,1])より,δ0>0であって
    [0,δ0]f({f(0)})
    を満たすものが存在する.よってδ0I0であるから,
    0<δ0s
    が成り立つ.
  2. f({f(s)})τ(s,[0,1])より,δ>0であって
    [sδ,s]f({f(s)})
    を満たすものが存在する.このとき,tI0であってsδ<tなるものが存在するので,
    t[0,s]=[0,t][t,s], f(t)=f(t)=f(0)
    が成り立つ.よってsI0,したがってI0=[0,s]が成り立つ.
  3. もしs<1であるとすると,δ>0であって
    [s,s+δ]f({f(s)})
    なるものが存在するが,このとき
    t[0,s+δ]=[0,s][s,s+δ], f(t)=f(s)=f(0)
    よりs+δI0となって,sI0の上界であることに反する.よってs=1が成り立つ.

以上より[0,1]=I0が成り立つので,fは全射でない.

連結空間の連続像は連結である.

Xを連結空間とし,f:XYを全射連続写像とする.

  1. XよりY=f(X)である.
  2. g:Y2を連続写像とすると,連続写像
    gf:XY2
    は全射でないので,gも全射でない.

Xを位相空間とする.このとき,任意の連結部分集合族(Cλ)λΛに対して,
λΛCλλΛCλ:connected
が成り立つ.

明らかにλCλである.また,
f:λΛCλ2
を連続写像とし,x0λCλを取ると,
λΛ, Cλ=(f|Cλ)({f(x0)})=f({f(x0)})Cλ
より,
λΛCλ=f({f(x0)})
が成り立つので,fは全射でない.

閉円板D2は連結である.実際,各zD2に対して,
Cz:={tzD2t[0,1]}
は連結であり,
0zD2Cz
が成り立つので,命題10より
D2=zD2Cz
は連結である.

X,Yが連結ならば,X×Yも連結である.実際,(x0,y0)X×Yを取ると,任意のxXに対して,
X×{y0}, {x}×Y:connected, (x,y0)(X×{y0})({x}×Y)
より
Cx:=(X×{y0})({x}×Y)
は連結であり,
(x0,y0)xXCx
が成り立つので,命題10より
X×Y=xXCx
は連結である.

弧状連結空間は連結である.

Xを弧状連結空間とし,x0Xを取る.任意のx=x1Xに対して,連続写像ωx:[0,1]Xであってω(i)=xiなるものが存在する.そこで
Cx:=ωx([0,1])
とおくと,これは連結であり
x0xXCx
が成り立つ.よって命題10より
X=xXCx
は連結である.

  1. Rnは弧状連結である.実際,任意のx0,x1Rnに対して,連続写像ω:[0,1]Rn
    ω(t):=(1t)x0+tx1
    で定めると,ω(i)=xiが成り立つ.
  2. Sn{}Rnは連結なので,Sn=Cl(Sn{})も連結である.

参考文献

投稿日:20241120
更新日:20241125
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