3
大学数学基礎解説
文献あり

固有作用とその周辺

609
0
$$\newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{supp}[1]{\mathrm{supp}(#1)} $$

位相群$G$が位相空間$X$に作用している状況に於ける$X,G,X/G$それぞれの位相的性質(ハウスドルフ性及び(局所)コンパクト性)と作用の固有性との間の関係について主に考える.

復習:完全写像と固有写像

$X, Y$を位相空間,$f \colon X \to Y$を(連続)写像とする.

  • $f$が閉写像であって,任意の$y \in Y$に対して$f^{-1}(y) \subset X$がコンパクトであるとき$f$完全写像(perfect map)という.
  • 任意のコンパクト集合$K \subset Y$に対して$f^{-1}(K) \subset X$がコンパクトであるとき$f$固有写像(proper map)という.
( [9, 命題7] )

写像$f \colon X \to Y$に対してつぎは同値である:

  1. $f$は完全写像である;
  2. $f$は固有写像かつ閉写像である.

とくに完全写像は固有写像である.

2点集合$2 = \{0,1\}$に離散位相を入れた空間を$D_{2}$$\{\varnothing, \{0\}, 2\}$により位相を入れた空間を$\mathcal{S}$とおく($\mathcal{S}$Sierpinski空間という).恒等写像$2 \to 2$が誘導する連続写像$f \colon D_{2} \to \mathcal{S}$について,これは固有写像であるが閉写像ではない.したがってとくに完全写像ではない.

( [3, Theorem 4.95] )

コンパクト生成ハウスドルフ空間(たとえば局所コンパクトハウスドルフ空間や距離空間)への固有連続写像は完全写像である.

  • $f \colon X \to Y$をコンパクト生成ハウスドルフ空間$Y$への固有連続写像とする.
  • このとき$f$が閉写像であることを示せばよい.
  • そこで$C \subset X$を閉集合とする.
    • $K \subset Y$をコンパクト集合とする.
    • 仮定より$f^{-1}(K) \subset X$はコンパクトであるから,$C \cap f^{-1}(K) \subset f^{-1}(K)$はコンパクト集合の閉集合ゆえコンパクトである.
    • したがって$f$の連続性より
      $$ f(C) \cap K = f(C \cap f^{-1}(K)) \subset K$$
      はハウスドルフ空間のコンパクト集合ゆえ閉集合である.
  • よって$f(C) \subset Y$は閉集合である.
( [8, 命題7], cf. 補題28 )

$K$をコンパクト空間とする.このとき任意の位相空間$X$に対して$X$への射影$p_{X} \colon X \times K \to X$は閉写像,したがって完全写像である.

位相群の連続作用

$X$を位相空間,$G$を位相群とする.連続写像$\alpha \colon X \times G \to X;\ (x,g) \mapsto x \cdot g$であって2条件

  • $\forall x \in X,\forall g_{1},g_{2} \in G,\ (x \cdot g_{1} ) \cdot g_{2} = x \cdot g_{1}g_{2}$;
  • $\forall x \in X,\ x \cdot e = x$

を満たすものを($G$の/による$X$への連続右)作用という.

$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.

  1. 任意の$g \in G$に対して$\alpha_{g} \colon X \to X;\ x \mapsto x \cdot g$は同相写像である;
  2. $X$$T_{1}$空間ならば,任意の$x \in X$に対してその安定化群$G_{x} < G$は閉部分群である.
  1. $g \in G$とする.
    $$ \alpha_{g} \circ \alpha_{g^{-1}} = \alpha_{g^{-1}g} = \alpha_{e} = 1_{X} = \alpha_{g^{-1}} \circ \alpha_{g}$$
    より$\alpha_{g}^{-1} = \alpha_{g^{-1}}$が成り立つ.
  2. $x \in X$とし,連続写像$\alpha_{x} \colon G \to X$$\alpha_{x}(g) = x \cdot g$で定める.このとき$G_{x} = \alpha_{x}^{-1}(x) \subset G$は閉集合$\{x\} \subset X$の連続写像による逆像ゆえ閉集合である.

$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.

  1. 部分集合$A \subset X, H \subset G$に対して
    $$ A \cdot H = \alpha(A \times H)$$
    とおく.また,$A \cdot \{g\}$$A \cdot g$と略記する.
  2. 部分集合$A, B \subset X$に対して
    $$ G_{A,B} = \{g \in G\ \mid\ A \cap B \cdot g \neq \varnothing\}$$
    とおく.また,$G_{\{x\},\{y\}}$$G_{x,y}$と,$G_{A,A}$$G_{A}$と略記する.
  • $G_{\{x\}}$$x \in X$の安定化群$G_{x}$に他ならない.
  • $A \cap B \cdot g = (B \cap A \cdot g^{-1}) \cdot g$より$(G_{A,B})^{-1} = G_{B,A}$が成り立つので,$G_{A,B}$が空かどうか,或いは$G_{A,B}$の位相的性質は$A,B$の順序に依らない.

$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.

  1. 任意の開集合$U \subset X$と部分集合$H \subset G$に対して$U \cdot H \subset X$は開集合である.
  2. 任意のコンパクト集合$K \subset X,\ L \subset G$に対して$K \cdot L \subset X$はコンパクトである.
  1. $h \in H$に対して,命題4より$U \cdot h = \alpha_{h}(U) \subset X$は開集合であるから
    $$ U \cdot H = \bigcup_{h \in H} U \cdot h \subset X$$
    は開集合である.
  2. $K \cdot L$はコンパクト集合$K \times L$の連続像なのでコンパクトである.
( cf. 命題15 )

$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.

  1. 任意のコンパクト集合$K \subset G$に対して$\alpha \mid X \times K$は完全写像である.
  2. 任意の閉集合$C \subset X$とコンパクト集合$K \subset G$に対して$C \cdot K \subset X$は閉集合である.
  1. $\alpha \mid X \times K$は同相写像
    $$ X \times K \to X \times K;\ (x,g) \mapsto (x \cdot g,g)$$
    (逆写像は$(x,g) \mapsto (x \cdot g^{-1},g)$)と完全写像$p_{X} \colon X \times K \to X$の合成ゆえ完全写像である.
  2. $C \times K \subset X \times K$は閉集合なので$C \cdot K = (\alpha \mid X \times K)(C \times K) \subset X$は閉集合である.

$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.

  1. 任意の$A,B \subset X$に対して
    $$ G_{A,B} = p_{G}(\alpha^{-1}(A) \cap (B \times G))$$
    が成り立つ.
  2. 任意の閉集合$C \subset X$とコンパクト集合$K \subset X$に対して$G_{C,K} \subset G$は閉集合である.
  3. とくに$X$がハウスドルフ空間ならば,任意のコンパクト集合$K \subset X$に対して$G_{K} \subset G$は閉集合である.
  1. \begin{align} g \in G_{A,B} &\Leftrightarrow A \cap B \cdot g \neq \varnothing\\ &\Leftrightarrow \exists b \in B,\ (b,g) \in \alpha^{-1}(A)\\ &\Leftrightarrow g \in p_{G}(\alpha^{-1}(A) \cap (B \times G)) \end{align}
  2. $C \subset X$を閉集合,$K \subset X$をコンパクト集合とする.このとき$\alpha^{-1}(C) \cap (K \times G) \subset K \times G$は閉集合,$p_{G} \colon K \times G \to G$は閉写像なので
    $$ G_{C,K} = p_{G}(\alpha^{-1}(C) \cap (K \times G)) \subset G$$
    は閉集合である.
  3. (ii)より明らか.

$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.このとき
$$ x \sim_{\alpha} y \Leftrightarrow \exists g \in G,\ x \cdot g = y$$
により,$X$上の同値関係が定まるのだった.商空間$X/{\sim_{\alpha}}$$X/G$と書く.また,商写像を$\pi \colon X \to X/G$とおく.

$\pi \colon X \to X/G$は開写像である.

$U \subset X$を開集合とする.補題5より$\pi^{-1}(\pi(U)) = U \cdot G \subset X$は開集合であるから$\pi(U) \subset X/G$は開集合である.

ハウスドルフ作用

$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.このとき次は同値である:

  1. $X/G$はハウスドルフ空間である;
  2. $R_{\alpha} := \{(x,y) \in X \times X\ \mid\ x \sim_{\alpha} y\} \subset X \times X$は閉集合である;
  3. 任意の$x,y \in X,\ \pi(x) \neq \pi(y),$に対して,$x$の開近傍$U \subset X$$y$の開近傍$V \subset X$であって$G_{U,V} = \varnothing$となるものが存在する.

証明は

  • ハウスドルフ空間の対角集合による特徴づけ
  • $R_{\alpha} = (\pi \times \pi)^{-1}(\Delta_{X/G})$
  • $\pi(A) \cap \pi(B) = \varnothing \Leftrightarrow (A \times B) \cap R_{\alpha} = \varnothing \Leftrightarrow G_{A,B} = \varnothing$

に注意すればできる.

ココンパクト作用

$X$を局所コンパクト空間,$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.

  1. $X/G$は局所コンパクトである.
  2. $X/G$がハウスドルフならば,$\pi \colon X \to X/G$コンパクト被覆写像(compact-covering map)である:任意のコンパクト集合$L \subset X/G$に対して,コンパクト集合$K \subset X$であって$\pi(K) = L$となるものが存在する.
  1. $y \in X/G$とする.$x \in \pi^{-1}(y)$としそのコンパクト近傍を$K \subset X$とする.このとき,$\pi(K) \subset X/G$はコンパクトであり,命題8より
    $$ y = \pi(x) \in \pi(\mathrm{int}(K)) \subset \mathrm{int}(\pi(K))$$
    が成り立つ.よって$\pi(K)$$y$のコンパクト近傍である.
  2. コンパクト集合$L \subset X/G$の各点$y \in L$に対して,$\pi^{-1}(y)$の点をひとつ取りそのコンパクト近傍を$K(y) \subset X$とすると,(i)(の証明)より$\pi(K(y)) \subset X/G$$y$のコンパクト近傍である.いま$(\pi(\mathrm{int}(K(y))))_{y \in L}$$L \subset X/G$の開被覆であるから,有限個の点$y_{1},\ldots,y_{n} \in L$であって$L \subset \bigcup_{i} \pi(\mathrm{int}(K(y_{i})))$となるものが存在する.仮定より$L \subset X/G$が閉集合であることに注意すると
    $$ K := \left(\bigcup_{i}K(y_{i})\right) \cap \pi^{-1}(L)$$
    はコンパクト空間$\bigcup K(y_{i})$の閉集合ゆえコンパクトであり$\pi(K) = \pi(\bigcup K(y_{i})) \cap L = L$が成り立つ.

$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.

  1. コンパクト集合$K \subset X$であって$K \cdot G = X$となるものが存在するとき$\alpha$ココンパクト作用(cocompact action)という;
  2. $X/G$がコンパクトであるとき$\alpha$商コンパクト作用(``quocompact'' action)という(ことにする).
  1. ココンパクト作用は商コンパクト作用である.
  2. $X$が局所コンパクトかつ$X/G$がハウスドルフであれば逆も成り立つ.
  3. $X$が局所相対コンパクトであれば逆も成り立つ.
  1. $X/G = \pi(X) = \pi(K \cdot G) = \pi(K)$より$X/G$はコンパクトである.
  2. 命題10よりコンパクト集合$K \subset X$であって$\pi(K) = X/G$となるものが存在する.
  3. $x \in X$に対してその相対コンパクト近傍$N(x) \subset X$を取り$U(x) = \mathrm{int}(N(x)),\ V(x) = \pi(U(x)) \subset X/G$とおく.このとき$(V(x))_{x \in X}$$X/G$の開被覆であるから,有限個の点$x_{1},\ldots,x_{n} \in X$であって$X/G = \bigcup V(x_{i}) = \pi(\bigcup U(x_{i}))$となるものが存在する.そこで$K = \bigcup \overline{U(x_{i})} \subset X$とおくと,これはコンパクトであって$\pi(K) = X/G$が成り立つ.

固有作用と完全作用

作用$\alpha \colon X \times G \to X$に対して連続写像
$$ \tilde{\alpha} \colon X \times G \to X \times X;\ (x,g) \mapsto (x, x \cdot g)$$
が定まる.

  1. $\tilde{\alpha}$が完全写像であるとき,$\alpha$完全作用という(ことにする);
  2. $\tilde{\alpha}$が固有写像であるとき,$\alpha$固有作用という.

完全作用は固有作用であり,局所コンパクトハウスドルフ空間や距離空間への固有作用は完全作用である(命題1,命題2).

固有作用とコンパクト性

$\alpha \colon X \times G \to X$を固有作用とする.

  1. 任意の$x \in X$に対して$\alpha_{x} \colon G \to X;\ g \mapsto x \cdot g$は固有写像である.
  2. 任意の$x \in X$に対してその安定化群$G_{x} < G$はコンパクトである.
  1. 仮定より$\tilde{\alpha} \colon X \times G \to X \times X$は固有写像なので,
    $$ \alpha_{x} \colon G \approx \{x\} \times G \xrightarrow{\tilde{\alpha}^{\{x\}\times X}} \{x\} \times X \approx X$$
    は固有写像である.
  2. $G_{x} = \alpha_{x}^{-1}(x)$はコンパクト集合$\{x\} \subset X$の逆像ゆえコンパクトである.

$X$をハウスドルフ空間,$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.このとき次は同値である:

  1. $\alpha$は固有作用である;
  2. 任意のコンパクト集合$K,L \subset X$に対して$G_{K,L} \subset G$はコンパクトである;
  3. 任意のコンパクト集合$K \subset X$に対して$G_{K} \subset G$はコンパクトである.

(i)$\Rightarrow$(ii)

コンパクト集合$L \times K \subset X \times X$の固有写像$\tilde{\alpha}$による逆像
$$ \tilde{\alpha}^{-1}(L \times K) = \alpha^{-1}(K) \cap (L \times G)$$
はコンパクトである.したがってその連続像$G_{K,L} = p_{G}(\alpha^{-1}(K) \cap (L \times G)) \subset G$はコンパクトである.

(ii)$\Rightarrow$(iii)

明らか.

(iii)$\Rightarrow$(i)

$L \subset X \times X$をコンパクト集合とする.仮定より$L \subset X \times X$は閉集合である.第$i$成分への射影を$p_{i} \colon X \times X \to X$とし,$K = p_{1}(L) \cup p_{2}(L) \subset X$とおく.このとき,$K$はコンパクトであり$L \subset K \times K$が成り立つ.また
$$ \tilde{\alpha}^{-1}(K \times K) = \alpha^{-1}(K) \cap (K \times G) \subset K \times G_{K}$$
が成り立つ.よって$\tilde{\alpha}^{-1}(L) \subset K \times G_{K}$はコンパクト空間$K \times G_{K}$の閉集合ゆえコンパクトである.

完全作用とハウスドルフ性

$\alpha \colon X \times G \to X$を完全作用とする.

  1. $X/G$はハウスドルフである;
  2. $G$$T_{1}$ならば$X$はハウスドルフである.
  1. 仮定より$\tilde{\alpha}$は閉写像なので$R_{\alpha} = \tilde{\alpha}(X \times G) \subset X \times X$は閉集合である.よって命題9より$X/G$はハウスドルフである.
  2. 仮定より$\{e\} \subset G$は閉集合なので$X \to X \times G;\ x \mapsto (x,e)$は閉写像である.したがって完全写像$\tilde{\alpha}$との合成$X \to X \times X;\ x \mapsto (x,x)$も閉写像であるから,その像である$\Delta_{X} \subset X \times X$は閉集合である.
命題14の

局所コンパクトハウスドルフ空間$X$への固有作用について,その軌道空間$X/G$は局所コンパクトハウスドルフである.

(cf. 命題6)

$\alpha \colon X \times G \to X$を完全作用とする.

  1. 任意のコンパクト集合$K \subset X$に対して$\alpha \mid K \times G$は完全写像である;
  2. 任意のコンパクト集合$K \subset X$と閉集合$C \subset G$に対して$K \cdot C \subset X$は閉集合である.とくに$x \in X$の軌道$x \cdot G \subset X$は閉集合である.
  1. $\alpha \mid K \times G$は完全写像$\tilde{\alpha}^{K \times X} \colon K \times G \to K \times X$と完全写像$p_{X} \colon K \times X \to X$との合成であるから完全写像である.
  2. $K \times C \subset K \times G$は閉集合なので$K \cdot C = (\alpha \mid K \times G)(K \times C) \subset X$は閉集合である.

コンパクト群の作用

$G$をコンパクト群$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.

$\alpha$は完全写像である.

命題6においてコンパクト集合$K \subset G$として$G$自身を取ればよい.

$X$がハウスドルフ空間であるとき以下が成り立つ:

  1. $\alpha$は固有作用である;
  2. $G$もハウスドルフなら$\alpha$は完全作用である;
  3. $\pi \colon X \to X/G$は完全写像である.
  1. $K \subset X$をコンパクト集合とする.補題7より$G_{K} \subset G$はコンパクト空間$G$の閉集合ゆえコンパクトである.よって命題13より$\alpha$は固有作用である.
  2. 仮定より$\Delta_{X \times G} \subset (X \times G) \times (X \times G)$は閉集合なので$(p_{X} \times \alpha) \mid \Delta_{X \times G}$は完全写像である.よって
    $$ \tilde{\alpha} \colon X \times G \approx \Delta_{X \times G} \xrightarrow{(p_{X} \times \alpha) \mid \Delta_{X \times G}} X \times X$$
    は完全写像である.
  3. $x \in X$に対して連続写像$\alpha_{x} \colon G \to X;\ g \mapsto x \cdot g$は全単射連続写像$G_{x}\backslash G \to \pi^{-1}(\pi(x));\ g \bmod G_{x} \mapsto x \cdot g$を誘導する.仮定より$G_{x}\backslash G$はコンパクトであり$\pi^{-1}(\pi(x)) \subset X$はハウスドルフであるからこれは同相写像である.あとは$\pi$が閉写像であることを示せばよい.$C \subset X$を閉集合とする.補題16より$\alpha$はとくに閉写像なので
    $$ \pi^{-1}(\pi(C)) = \alpha(C \times G) \subset X$$
    は閉集合,したがって$\pi(C) \subset X/G$は閉集合である.
命題17の

$X$をハウスドルフ空間とする.

  1. $G$がハウスドルフならば$X/G$もハウスドルフである;
  2. $X/G$がコンパクトならば$X$もコンパクトである;
  3. $X/G$が局所コンパクトならば$X$も局所コンパクトである.
  1. 仮定より$\alpha$は完全作用なので命題14より結論を得る.
  2. $\pi$はとくに固有写像なので$X = \pi^{-1}(X/G)$はコンパクトである.
  3. $x \in X$とする.$\pi(x) \in X/G$のコンパクト近傍$K \subset X/G$を取る.$\pi$はとくに固有写像なので$\pi^{-1}(K) \subset X$はコンパクトであり,
    $$ x \in \pi^{-1}(\mathrm{int}(K)) \subset \mathrm{int}(\pi^{-1}(K)) \subset \pi^{-1}(K)$$
    が成り立つ,すなわち$\pi^{-1}(K)$$x \in X$のコンパクト近傍である.

実射影空間$\mathbb{R}P^{n} \approx S^{n}/S^{0}$及び複素射影空間$\mathbb{C}P^{n} \approx S^{2n+1}/S^{1}$はコンパクトハウスドルフ空間である.

局所コンパクトハウスドルフ群の作用

本節の内容は主に Biller [5] に拠る.

$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.このとき次は同値である:

  1. $\alpha$は完全作用である;
    • $X/G$はハウスドルフである;
    • 任意の$x \in X$に対して,$G_{x} \subset G$はコンパクトであり,
    • $G_{x}$の任意の開近傍$W \subset G$に対して,$x$の開近傍$U \subset X$であって$G_{U} \subset W$となるものが存在する;
  2. 任意の$x,y \in X$に対して
    • $G_{x,y} \subset G$はコンパクトであり,
    • $G_{x,y}$の任意の開近傍$W \subset G$に対して,$x,y$の開近傍$U,V \subset X$であって$G_{U,V} \subset W$となるものが存在する.

(iii) := (vi)

$\tilde{\alpha}^{-1}(y,x) = \{y\} \times G_{x,y}$が成り立つことに注意する.

(i)$\Rightarrow$(ii)

  • 命題14より$X/G$はハウスドルフである.

$x \in X$とする.

  • $\alpha$はとくに固有作用なので,命題12より$G_{x}$はコンパクトである.
  • $W \subset G$$G_{x}$の開近傍とする.いま$\tilde{\alpha}$は閉写像なので,$\tilde{\alpha}^{-1}(x,x)$の開近傍$X \times W \subset X \times G$に対して,$x$の開近傍$U \subset X$であって$\tilde{\alpha}^{-1}(U \times U) \subset X \times W$となるものが存在する([8, 命題5]).よって
    $$ G_{U} = p_{G}(\tilde{\alpha}^{-1}(U \times U)) \subset W$$
    が成り立つ.

(ii)$\Rightarrow$(iii)

$x,y \in X$とする.

$\pi(x) \neq \pi(y)$のとき.
  • $G_{x,y} = \varnothing$はコンパクトである.
  • いま$X/G$はハウスドルフなので,命題9より$x,y$の開近傍$U,V \subset X$であって$G_{U,V} = \varnothing$となるものが存在する.
$\pi(x) = \pi(y)$のとき.
  • $g \in G$であって$x = y \cdot g$となるものが存在する.このとき$G_{x,y} = g \cdot G_{x}$となることがわかるので$G_{x,y}$はコンパクトである.
  • $W \subset G$$G_{x,y}$の開近傍とする.このとき$g^{-1} \cdot W \subset G$$G_{x}$の開近傍であるから$x$の開近傍$U \subset X$であって$G_{U} \subset g^{-1} \cdot W$となるものが存在する.そこで$V = U \cdot g^{-1} \subset X$とおくと,これは$y$の開近傍であって
    $$ \forall h \in G,\ U \cap V \cdot h = U \cap U \cdot g^{-1}h$$
    より$G_{U,V} = g \cdot G_{U} \subset W$が成り立つ.

(iii)$\Rightarrow$(i)

$x,y \in X$とする.

  • $\tilde{\alpha}^{-1}(y,x) \approx G_{x,y}$はコンパクトである.
  • $\widetilde{U} \subset X \times G$$\tilde{\alpha}^{-1}(y,x)$の開近傍とする.いま$G_{x,y}$はコンパクトなので$y$の開近傍$V_{1} \subset X$$G_{x,y}$の開近傍$W \subset G$であって$V_{1} \times W \subset \widetilde{U}$となるものが存在する([7, 補題1]).この$W$に対して,仮定より$x,y$の開近傍$U,V_{2} \subset X$であって$G_{U,V_{2}} \subset W$となるものが存在する.そこで$V = V_{1} \cap V_{2} \subset X$とおくと,これは$y$の開近傍であって
    $$ \tilde{\alpha}^{-1}(V \times U) \subset V \times G_{U,V} \subset V_{1} \times G_{U,V_{2}} \subset V_{1} \times W \subset \widetilde{U}$$
    が成り立つ.よって$\tilde{\alpha}$は閉写像である([8, 命題5]).

$X$をハウスドルフ空間,$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.このとき,任意の$x,x' \in X$とその開近傍$U,U' \subset X$に対して
$$ G_{x,x'} = \bigcap \left\{\overline{G_{V,V'}}\ \mid\ x \in V \stackrel{\mathrm{open}}{\subset} U,\ x' \in V' \stackrel{\mathrm{open}}{\subset} U'\right\} $$
が成り立つ.

  • $x \in V, x' \in V'$ならば$G_{x,x'} \subset G_{V,V'}$となるので$G_{x,x'} \subset \mathrm{RHS}$が成り立つ.
  • $g \notin G_{x,x'}$,すなわち$x \neq x' \cdot g$とする.いま$X$はハウスドルフなので,$x$の開近傍$V \subset X$$x'$の開近傍$V_{1} \subset X$であって
    $$ V \subset U,\ V_{1} \subset U',\ V \cap V_{1} \cdot g = \varnothing$$
    となるものが存在する.このとき$\alpha$の連続性より,$x' \cdot g \in X$の開近傍$V_{1} \cdot g$に対して,$x'$の開近傍$V_{2} \subset X$$g$の開近傍$W \subset G$であって
    $$ V_{2} \cdot W = \alpha(V_{2} \times W) \subset V_{1} \cdot g$$
    となるものが存在する.そこで$V' = V_{1} \cap V_{2} \subset X$とおくと,これは$x'$の開近傍であって
    $$ V \cap (V' \cdot W) \subset V \cap V_{1} \cdot g = \varnothing$$
    より$G_{V,V'} \cap W = \varnothing$が成り立つので$g \notin \overline{G_{V,V'}}$を得る.よって$g \notin \mathrm{RHS}$が成り立つ.

$G$を局所コンパクトハウスドルフ群,$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.このとき次は同値である:

  1. $\alpha$は完全作用である;
    • $X$はハウスドルフである;
    • $X/G$はハウスドルフである;
    • 任意の$x \in X$に対して,$x$の開近傍$U \subset X$であって$\overline{G_{U}} \subset G$がコンパクトとなるものが存在する;
    • $X$はハウスドルフである;
    • 任意の$x,x' \in X$に対して,それぞれの開近傍$U,U' \subset X$であって$\overline{G_{U,U'}} \subset G$がコンパクトとなるものが存在する.

(iii) := (vi).

(i)$\Rightarrow$(ii)

  • 命題14より$X,X/G$はハウスドルフである.
  • $x \in X$とする.命題18より$G_{x} \subset G$はコンパクトである.いま$G$は局所コンパクトハウスドルフ空間なので$G_{x}$の相対コンパクト開近傍$W \subset G$が存在する.このとき命題18より,$x$の開近傍$U \subset X$であって$G_{U} \subset W$となるものが存在する.よって$\overline{G_{U}}$はコンパクト空間$\overline{W}$の閉集合ゆえコンパクトである.

(ii)$\Rightarrow$(iii)

  • $X$がハウスドルフであることはよい.
  • $x,x' \in X$とする.いま$X/G$はハウスドルフなので,命題9より$\pi(x) = \pi(x')$としてよい.したがって$g \in G$であって$x = x' \cdot g$となるものが存在する.仮定より$x$の開近傍$U \subset X$であって$G_{U} \subset G$が相対コンパクトとなるものが存在する.そこで$U' = U \cdot g^{-1} \subset X$とおくと,これは$x'$の開近傍であって$G_{U,U'} = g \cdot G_{U}$が成り立つ.よって$\overline{G_{U,U'}} = g \cdot \overline{G_{U}} \subset G$はコンパクトである.

(iii)$\Rightarrow$(i)

$x,x' \in X$とする.仮定より$x,x'$の開近傍$U_{0},U_{0}' \subset X$であって$G_{U_{0},U_{0}'} \subset G$が相対コンパクトとなるものが存在する.

  • いま$X$はハウスドルフなので,補題19より,$G_{x,x'}$はコンパクト空間$\overline{G_{U_{0},U_{0}'}}$の閉集合ゆえコンパクトである.
  • $W \subset G$$G_{x,x'}$の開近傍とする.このとき補題19より
    $$ \overline{G_{U_{0},U_{0}'}} \smallsetminus W \subset \overline{G_{U_{0},U_{0}'}} \smallsetminus \bigcap \overline{G_{V,V'}} = \bigcup \overline{G_{U_{0},U_{0}'}} \smallsetminus \overline{G_{V,V'}} $$
    となるので,$\left(\overline{G_{U_{0},U_{0}'}} \smallsetminus \overline{G_{V,V'}}\right)_{V,V'}$はコンパクト集合$\overline{G_{U_{0},U_{0}'}} \smallsetminus W$の開被覆である.よって$x,x'$の有限個の開近傍$V_{1},\ldots,V_{n},\ V_{1}',\ldots,V_{m}' \subset X$であって
    $$ \bigcap \overline{G_{V_{i},V_{j}'}} \subset W$$
    となるものが存在する.そこで$U = \bigcap V_{i} \subset X,\ U' = \bigcap V_{j}' \subset X$とおくと,これらは$x,x'$の開近傍であって
    $$ G_{U,U'} \subset \bigcap \overline{G_{V_{i},V_{j}'}} \subset W$$
    が成り立つ.

よって命題18より$\alpha$は完全作用である.

$G$を局所コンパクトハウスドルフ群,$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.このとき次は同値である:

  1. $\alpha$は完全作用である;
    • $X$はハウスドルフである;
    • $X/G$はハウスドルフである;
    • 任意のコンパクト集合$K \subset X$に対して,$K$の開近傍$U \subset X$であって$\overline{G_{U}} \subset G$がコンパクトとなるものが存在する;
    • $X$はハウスドルフである;
    • 任意のコンパクト集合$K,K' \subset X$に対して,それぞれの開近傍$U,U' \subset X$であって$\overline{G_{U,U'}} \subset G$がコンパクトとなるものが存在する.

(iii) := (vi)

(iii)$\Rightarrow$(ii)$\Rightarrow$(i)

明らか.

(i)$\Rightarrow$(iii)

  • 命題14より$X$はハウスドルフである.
  • $x \in K,\ x' \in K'$に対して,定理20より$x,x'$の開近傍$U(x,x'),\ U'(x,x') \subset X$であって$\overline{G_{U(x,x'),\, U'(x,x')}} \subset G$がコンパクトとなるものが存在する.
    • $x \in K$に対して,$(U'(x,x'))_{x' \in K'}$$K'$の開被覆なので,有限個の点$x'_{1},\ldots,x'_{m} \in K'$であって$K' \subset \bigcup U'(x,x'_{j})$となるものが存在する.そこで
      $$ U(x) = \bigcap U(x,x'_{j}),\ U'(x) = \bigcup U'(x,x'_{j})$$
      とおくと,これらはそれぞれ$x,K'$の開近傍であって
      $$ \forall g \in G,\ U(x) \cap U'(x) \cdot g \subset \bigcup U(x,x'_{j}) \cap U'(x,x'_{j}) \cdot g$$
      より$G_{U(x),U'(x)} \subset \bigcup G_{U(x,x'_{j}),\,U'(x,x'_{j})}$が成り立つ.したがって$\overline{G_{U(x),\,U'(x)}}$はコンパクト空間$\bigcup \overline{G_{U(x,x'_{j}),\,U'(x,x'_{j})}}$の閉集合ゆえコンパクトである.
    • いま$(U(x))_{x \in K}$$K$の開被覆であるから,有限個の点$x_{1},\ldots,x_{n} \in K$であって$K \subset \bigcup U(x_{i})$となるものが存在する.そこで
      $$ U = \bigcup U(x_{i}),\ U' = \bigcap U'(x_{i})$$
      とおくと,これらはそれぞれ$K,K'$の開近傍であって$G_{U,U'} \subset \bigcup G_{U(x_{i}),\,U'(x_{i})}$が成り立つ.したがって$\overline{G_{U,U'}}$はコンパクトである.

条件(iii)において,$K \cap K' = \varnothing$ならばそれぞれの開近傍として$U \cap U' = \varnothing$となるものが取れる(cf. [7, 命題2]).

$G$を局所コンパクトハウスドルフ群,$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.このとき次は同値である:

  1. $\alpha$は完全作用である;
    • $X$はハウスドルフである;
    • $X/G$はハウスドルフである;
    • 任意の$x \in X$に対してその安定化群$G_{x} \subset G$はコンパクトである;
    • 任意の$x \in X$に対して,$x$$G_{x}$不変な開近傍$U \subset X$であって$G_{U} = G_{x}$となるものが存在する.
  • (i)$\Rightarrow$(ii)が証明できていない.
  • $G$が離散群のときは証明できている(命題24).

(i)$\Rightarrow$(ii)

命題14より$X,X/G$はハウスドルフであり,命題18より$G_{x}$はコンパクトである.あとは最後の条件が成り立つことを示せばよい.そこで$x \in X$とする.定理20より$x$の開近傍$W \subset X$であって$G_{W} \subset G$が相対コンパクトとなるものが存在する.各$g \in \overline{G_{W}} \smallsetminus G_{x}$に対して,$x \neq x \cdot g$より,$x$の開近傍$W(g) \subset X$であって$W(g) \cap W(g) \cdot g = \varnothing$となるものが存在する.$V = W \cap \bigcap W(g)$とおく.このとき

  • $x \in V$
  • $\forall g \in \overline{G_{W}} \smallsetminus G_{x},\ V \cap V \cdot g \subset W(g) \cap W(g) \cdot g = \varnothing$

が成り立つ.
以下,$V \subset X$が開集合であると仮定する.
$U = \bigcap \{V \cdot g\ \mid\ g \in G_{x}\}$とおく.いま$G_{x}$はコンパクトゆえ$p_{X} \colon X \times G_{x} \to X$は閉写像なので,開集合$\alpha^{-1}(V) \cap (X \times G_{x}) \subset X \times G_{x}$に対して
\begin{align} (p_{X})_{\#}(\alpha^{-1}(V) \cap (X \times G_{x})) &= \{y \in X\ \mid\ p_{X}^{-1}(y) \subset \alpha^{-1}(V) \cap (X \times G_{x})\}\\ &= \{y \in X\ \mid\ \forall g \in G_{x},\ (y,g) \in \alpha^{-1}(V) \cap (X \times G_{x}) \}\\ &= \bigcap \{V \cdot g^{-1}\ \mid\ g \in G_{x}\}\\ &= U \end{align}
$X$の開集合である([8, 命題4]).また,任意の$g \in G_{x}$に対して$x = x \cdot g \in V \cdot g$が成り立つので$x \in U$となる.この$U$が条件を満たすことを示す.

  • $e \in G_{x}$より$U \subset V \cdot e = V$となるので,任意の$g \in \overline{G_{W}} \smallsetminus G_{x}$に対して$U \cap U \cdot g \subset V \cap V \cdot g = \varnothing$が成り立つ.
  • $U \subset V \subset W$より,任意の$g \in G \smallsetminus \overline{G_{W}}$に対して$U \cap U \cdot g \subset W \cap W \cdot g = \varnothing$が成り立つ.

したがって
$$ G \smallsetminus G_{x} = (G \smallsetminus \overline{G_{W}}) \cup (\overline{G_{W}} \smallsetminus G_{x}) \subset G \smallsetminus G_{U} $$
が成り立つので,$G_{U} = G_{x}$を得る.また,任意の$h \in G_{x}$に対して,$G_{x} \to G_{x};\ g \mapsto gh$は全単射なので,$U \cdot h = \bigcap V \cdot gh = U$が成り立つ.

(ii)$\Rightarrow$(i)

  • 仮定より$X,X/G$はハウスドルフである.
  • $x \in X$とする.仮定より$x$の開近傍$U \subset X$であって$G_{U} = G_{x}$となるものが存在する.いま$G$はハウスドルフなので,そのコンパクト集合$G_{U} \subset G$は閉集合である.したがって$\overline{G_{U}} = G_{U} \subset G$はコンパクトである.よって定理20より$\alpha$は完全作用である.

附:Lie群の作用

$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.任意の$x \in X$に対して$G_{x} = \{e\}$が成り立つとき$\alpha$自由な作用という.

次が知られている:

( [2, 16.10.3, 16.14.1] )

$X$を多様体,$G$をLie群,$\alpha \colon X \times G \to X$$C^{\infty}$作用とする.このとき次は同値である:

  1. $X/G$の多様体構造であって$\pi \colon X \to X/G$が沈め込みとなるようなものが(ただ一つ)存在する;
    • $X/G$はハウスドルフである;
    • $R_{\alpha} \subset X \times X$は部分多様体である.

この同値な条件のもとで,さらに$\alpha$が自由であるとき,$\pi \colon X \to X/G$は主$G$束の構造を持つ.

$X$を多様体,$G$をLie群,$\alpha \colon X \times G \to X$を自由かつ固有な$C^{\infty}$作用とする.このとき定理21の(ii)が成り立つ.

  • $\alpha$は完全作用なので$X/G$はハウスドルフである(命題14).
  • 仮定より$\tilde{\alpha}$は単射連続閉写像であるから$X \times G \approx \tilde{\alpha}(X \times G) = R_{\alpha} \subset X \times X$が成り立つ.あとは$\tilde{\alpha}$がはめ込みであることを示せばよい.
  • $(x,g) \in X \times G$とする.同一視
    \begin{align} T_{(x,g)}(X \times G) &= T_{x}(X) \times T_{g}(G),\\ T_{(x,x \cdot g)}(X \times X) &= T_{x}(X) \times T_{x \cdot g}(X) \end{align}
    の下で,任意の$(v_{x},v_{g}) \in T_{(x,g)}(X \times G)$に対して
    $$ T_{(x,g)}(\tilde{\alpha})(v_{x},v_{g}) = (v_{x}, T_{x}(\alpha_{g})(v_{x}) + T_{g}(\alpha_{x})(v_{g}))$$
    が成り立つ.一般に$\alpha_{x}$は階数一定であり,$\alpha$が自由であることから$\alpha_{x}$は単射である.したがって$\alpha_{x}$ははめ込みであるので,$T_{(x,g)}(\tilde{\alpha})$が単射であることがわかる.よって$\tilde{\alpha}$ははめ込みである.

離散群の“固有不連続作用”について

被覆空間作用

$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.このとき次は同値である:

  1. 任意の$x \in X$に対して,$x$の開近傍$U \subset X$であって$G_{U} = \{e\}$となるものが存在する;
    • $\alpha$は自由な作用である;
    • $\pi \colon X \to X/G$は(広義の)被覆写像である.

(i)$\Rightarrow$(ii)

$x \in X$とする.仮定より$x$の開近傍$U \subset X$であって$G_{U} = \{e\}$となるものが存在する.

  • $\{e\} \subset G_{x} \subset G_{U} = \{e\}$より$G_ {x} = \{e\}$となるので$\alpha$は自由である.
  • $V = \pi(U) \subset X/G$とおくとこれは$\pi(x)$の開近傍であり,$\pi^{-1}(V) = \bigsqcup U \cdot g$となる.各$g \in G$に対して$\pi^{V} \mid U \cdot g \colon U \cdot g \to V$は全射連続開写像である.あとは$\pi^{V} \mid U$が単射であることを示せばよい.ところで$y,z \in U, \pi(y) = \pi(z)$とすると,$g \in G$であって$y = z \cdot g \in U \cap U \cdot g$となるものが存在するが,$g \in G_{U} = \{e\}$より$y=z$を得る.

(ii)$\Rightarrow$(i)

$x \in X$とする.仮定より$\pi(x)$の開近傍$V \subset X/G$$X$の開集合族$(U_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$であって

  • $\pi^{-1}(V) = \bigsqcup U_{\lambda}$
  • $\forall \lambda \in \Lambda,\ \pi_{\lambda} := \pi^{V} \mid U_{\lambda} \colon U_{\lambda} \approx V$

となるものが存在する.いま$x \in \pi^{-1}(V)$であるから$\lambda \in \Lambda$であって$x \in U_{\lambda}$となるものが存在する.以下,$U := U_{\lambda}$が条件を満たすことを示す.そこで$g \in G_{U}$とすると,$y \in U$であって$y \cdot g \in U$となるものが存在する.このとき
$$ \pi_{\lambda}(y \cdot g) = \pi(y \cdot g) = \pi(y) = \pi_{\lambda}(y)$$
となるので$\pi_{\lambda}$の単射性より$y \cdot g = y$が成り立つ.よって作用が自由であることから$g = e$を得る.

命題23の同値な条件を満たすような群は離散群に限る.実際,
$$ \{e\} = G_{x} = \alpha_{x}^{-1}(x) = \alpha_{x}^{-1}((x \cdot G) \cap U) = \alpha_{x}^{-1}(\alpha_{x}(G) \cap U) = \alpha_{x}^{-1}(U) \subset G$$
は開集合である.

離散群の作用

離散空間の部分集合について,それが(相対)コンパクトであることと有限集合であることとが同値であることに注意する.

以下,$G$を離散群とし$\alpha \colon X \times G \to X$を作用とする.

命題13より次を得る:

命題13の

$X$がハウスドルフ空間であるとき以下は同値である:

  1. $\alpha$は固有作用である;
  2. 任意のコンパクト集合$K,L \subset X$に対して$G_{K,L} \subset G$は有限集合である;
  3. 任意のコンパクト集合$K \subset X$に対して$G_{K} \subset G$は有限集合である.

命題18より次を得る:

命題18の

以下は同値である:

  1. $\alpha$は完全作用である;
    • $X/G$はハウスドルフである;
    • 任意の$x \in X$に対して,$G_{x} \subset G$は有限集合であり,
    • $G_{x}$の任意の近傍$W \subset G$に対して,$x$の開近傍$U \subset X$であって$G_{U} \subset W$となるものが存在する;
  2. 任意の$x,y \in X$に対して
    • $G_{x,y} \subset G$は有限集合であり,
    • $G_{x,y}$の任意の近傍$W \subset G$に対して,$x,y$の開近傍$U,V \subset X$であって$G_{U,V} \subset W$となるものが存在する.

定理20より次を得る:

定理20の

以下は同値である:

  1. $\alpha$は完全作用である;
    • $X$はハウスドルフである;
    • $X/G$はハウスドルフである;
    • 任意の$x \in X$(resp. コンパクト集合$K \subset X$)に対して,$x$(resp. $K$)の開近傍$U \subset X$であって$G_{U} \subset G$が有限集合となるものが存在する;
    • $X$はハウスドルフである;
    • 任意の$x,x' \in X$(resp. コンパクト集合$K,K' \subset X$)に対して,それぞれの開近傍$U,U' \subset X$であって$G_{U,U'} \subset G$が有限集合となるものが存在する.

予想に対応する命題は次のようになる:

(cf. Kobayashi-Nomizu)

以下は同値である:

  1. $\alpha$は完全作用である;
    • $X$はハウスドルフである;
    • $X/G$はハウスドルフである;
    • 任意の$x \in X$に対してその安定化群$G_{x} \subset G$は有限集合である;
    • 任意の$x \in X$に対して,$x$$G_{x}$不変な開近傍$U \subset X$であって$G_{U} = G_{x}$となるものが存在する.

予想の(i)$\Rightarrow$(ii)の“証明”において$\overline{G_{W}}$は有限集合なので$V \subset X$は開集合になる.

命題18,命題24の

以下は同値である:

  1. $\alpha$は自由な完全作用である;
    • $X/G$はハウスドルフである;
    • 単位元$e$の任意の近傍$W \subset G$に対して$x$の開近傍$U \subset X$であって$G_{U} \subset W$となるものが存在する;
    • $X$はハウスドルフである;
    • $X/G$はハウスドルフである;
    • 任意の$x \in X$に対して$x$の開近傍$U \subset X$であって$G_{U} = \{e\}$となるものが存在する.
(cf. 命題22)

$X$が局所コンパクトハウスドルフ空間,$\alpha$が自由な固有作用ならば$\pi \colon X \to X/G$は局所コンパクトハウスドルフ空間への被覆写像である.

上で挙げた諸性質のいづれかを以て(離散群による)“固有不連続作用”(一名真性不連続作用,properly discontinuous action)の定義とすることが多いようであるが,大体の場合$X$はコンパクト生成ハウスドルフ空間であろうから結局(自由かつ)固有と同値と思って差支えなさそう.“固有不連続作用”という用語については,(多様体論の教科書で有名な)John M. Lee の次の言葉に尽きる:

I sincerely hope the term properly discontinuous will eventually die out.
https://math.stackexchange.com/questions/1082834/properly-discontinuous-action-equivalent-definitions より)

補遺:完全写像とBourbaki固有写像

Bourbaki [1] にもproper mapという概念が出てくるが,これは上で定義した固有写像(proper map)とは違うものなので注意が必要である.

$X, Y$を位相空間,$f \colon X \to Y$を(連続)写像とする. 任意の位相空間$Z$に対して写像
$$ f \times 1_{Z} \colon X \times Z \to Y \times Z$$
が閉写像となるとき,$f$Bourbaki固有写像という.

以下,完全写像とBourbaki固有写像が同等な概念であることを示す.

完全写像はBourbaki固有写像である.

$f \colon X \to Y$を完全写像とする.

$Z$を位相空間とする.$(y,z) \in Y \times Z$とし$(f \times 1_{Z})^{-1}(y,z) = f^{-1}(y) \times \{z\}$の開近傍$U \subset X \times Z$を取る.いま$f^{-1}(y)$はコンパクトなので$f^{-1}(y)$の開近傍$U' \subset X$$z$の開近傍$W \subset Z$であって$U' \times W \subset U$となるものが存在する([7, 補題1]).$f$は閉写像なので,この$U'$に対して$y$の開近傍$V \subset Y$であって$f^{-1}(V) \subset U'$となるものが存在する([8, 命題5]).したがって
$$ (f \times 1_{Z})^{-1}(V \times W) = f^{-1}(V) \times W \subset U' \times W \subset U$$
が成り立つ.よって$f \times 1_{Z}$は閉写像である([8, 命題5]).

Bourbaki固有写像は閉写像である.

$f \colon X \to Y$をBourbaki固有写像とする.

仮定より$f \times 1_{\{\ast\}}$は閉写像なので
$$ f \colon X \approx X \times \{\ast\} \xrightarrow{f \times 1_{\{\ast\}}} Y \times \{\ast\} \approx Y$$
は閉写像である.

$f \colon X \to Y$をBourbaki固有写像とする.このとき,任意の$B \subset Y$に対して$f^{B} \colon f^{-1}(B) \to B$もBourbaki固有写像である.

$Z$を位相空間とする.仮定より$f \times 1_{Z}$は閉写像であるから
$$ f^{B} \times 1_{Z} = (f \times 1_{Z})^{B \times Z}$$
も閉写像である.

( cf. 命題3 )

$K$を位相空間とする.単空間$\{\ast\}$への写像$K \to \{\ast\}$がBourbaki固有写像ならば,すなわち任意の位相空間$Z$に対して$Z$への射影$p_{Z} \colon K \times Z \to Z$が閉写像ならば,$K$はコンパクトである.

( [4, 命題6.4.1の証明] )

$(U_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$$K$の開被覆とする.
$Z= \mathcal{S}^{\Lambda}$とおく.任意の部分集合$M \subset \Lambda$に対して$p_{M} \colon Z \to \mathcal{S}^{M}$$p_{M}(z) = z \mid M$で定める.
$z_{0} \in Z$$z_{0}(\lambda) = 0\ (\forall \lambda)$で定める.各$\lambda \in \Lambda$に対して$V_{\lambda} = p_{\lambda}^{-1}(0) \subset Z$とおくと,これは$z_{0}$の開近傍であるから
$$ W:= \bigcup_{\lambda} (U_{\lambda} \times V_{\lambda}) \subset K \times Z$$
$p_{Z}^{-1}(z_{0}) = K \times \{z_{0}\}$の開近傍である.仮定より$p_{Z}$は閉写像なので$z_{0}$の開近傍$V \subset Z$であって$p_{Z}^{-1}(V) \subset W$となるものが存在する([8, 命題5]).
$Z$の位相が$\{V_{\lambda}\ \mid\ \lambda \in \Lambda\}$を準開基とするものであることに注意すると,有限集合$\Lambda_{0} \subset \Lambda$であって$z_{0} \in \bigcap_{\lambda \in \Lambda_{0}} V_{\lambda} \subset V$となるものが存在することがわかる.ここで$z_{1} \in Z$

  • $p_{\Lambda_{0}}(z_{1})(\lambda) = 0$,
  • $p_{\Lambda \smallsetminus \Lambda_{0}}(z_{1})(\lambda) = 1$

で定める.このとき

  • $\forall \lambda \in \Lambda_{0},\ V_{\lambda} \cap \{z_{1}\} = \{z_{1}\}$,
  • $\forall \lambda \in \Lambda \smallsetminus \Lambda_{0},\ V_{\lambda} \cap \{z_{1}\} = \varnothing$

が成り立つ.前者より$z_{1} \in \bigcap_{\lambda \in \Lambda_{0}} V_{\lambda} \subset V$となるので$p_{Z}^{-1}(z_{1}) \subset p_{Z}^{-1}(V) \subset W$となる.したがって
\begin{align} K \times \{z_{1}\} &= p_{Z}^{-1}(z_{1})\\ &= p_{Z}^{-1}(z_{1}) \cap W\\ &= \bigcup_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda} \times (V_{\lambda} \cap \{z_{1}\})\\ &= \bigcup_{\lambda \in \Lambda_{0}} (U_{\lambda} \times \{z_{1}\})\\ &= \left(\bigcup_{\lambda \in \Lambda_{0}} U_{\lambda} \right) \times \{z_{1}\} \end{align}
が成り立つ.よって$K = \bigcup_{\lambda \in \Lambda_{0}} U_{\lambda}$を得る.

Bourbaki固有写像は完全写像である.

$f \colon X \to Y$をBourbaki固有写像とする.

  • 補題26より$f$は閉写像である.
  • $y \in Y$とする.補題27より$f^{\{y\}} \colon f^{-1}(y) \to \{y\}$はBourbaki固有写像であるから,補題28より$f^{-1}(y)$はコンパクトである.

更新履歴

  • 2023/09/12:命題18に条件(ii)を追加しました.それに伴い関係する箇所に加筆しました.
  • 2023/09/13:[7]の思想に基づき定理20 系を追加しました(あれもこれもは悪い癖だと思いつつ).
  • 2023/10/19:命題23のあとの注意を追記しました.
  • 2023/11/05:命題2の証明を追加しました.

参考文献

[1]
N. Bourbaki, General Topology Chapters 1-4
[2]
J. Dieudonne, Treatise on Analysis III
[3]
John M. Lee, Introduction to Topological Manifolds
[4]
斎藤毅, 集合と位相
[5]
H. Biller, Characterizations of proper actions, Math. Proc. Camb. Phil. Soc.
[6]
S. Deo and K. Varadarajan, Discrete groups and discontinuous actions, Rocky Mt. J. Math.
投稿日:2023912
更新日:2023114

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

うすい
39
8727
位相空間論に興味があります.

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中