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大学数学基礎解説
文献あり

固有作用とその周辺

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位相群Gが位相空間Xに作用している状況に於けるX,G,X/Gそれぞれの位相的性質(ハウスドルフ性及び(局所)コンパクト性)と作用の固有性との間の関係について主に考える.

復習:完全写像と固有写像

X,Yを位相空間,f:XYを(連続)写像とする.

  • fが閉写像であって,任意のyYに対してf1(y)Xがコンパクトであるときf完全写像(perfect map)という.
  • 任意のコンパクト集合KYに対してf1(K)Xがコンパクトであるときf固有写像(proper map)という.
( [9, 命題7] )

写像f:XYに対してつぎは同値である:

  1. fは完全写像である;
  2. fは固有写像かつ閉写像である.

とくに完全写像は固有写像である.

2点集合2={0,1}に離散位相を入れた空間をD2{,{0},2}により位相を入れた空間をSとおく(SSierpinski空間という).恒等写像22が誘導する連続写像f:D2Sについて,これは固有写像であるが閉写像ではない.したがってとくに完全写像ではない.

( [3, Theorem 4.95] )

コンパクト生成ハウスドルフ空間(たとえば局所コンパクトハウスドルフ空間や距離空間)への固有連続写像は完全写像である.

  • f:XYをコンパクト生成ハウスドルフ空間Yへの固有連続写像とする.
  • このときfが閉写像であることを示せばよい.
  • そこでCXを閉集合とする.
    • KYをコンパクト集合とする.
    • 仮定よりf1(K)Xはコンパクトであるから,Cf1(K)f1(K)はコンパクト集合の閉集合ゆえコンパクトである.
    • したがってfの連続性より
      f(C)K=f(Cf1(K))K
      はハウスドルフ空間のコンパクト集合ゆえ閉集合である.
  • よってf(C)Yは閉集合である.
( [8, 命題7], cf. 補題28 )

Kをコンパクト空間とする.このとき任意の位相空間Xに対してXへの射影pX:X×KXは閉写像,したがって完全写像である.

位相群の連続作用

Xを位相空間,Gを位相群とする.連続写像α:X×GX; (x,g)xgであって2条件

  • xX,g1,g2G, (xg1)g2=xg1g2;
  • xX, xe=x

を満たすものを(Gの/によるXへの連続右)作用という.

α:X×GXを作用とする.

  1. 任意のgGに対してαg:XX; xxgは同相写像である;
  2. XT1空間ならば,任意のxXに対してその安定化群Gx<Gは閉部分群である.
  1. gGとする.
    αgαg1=αg1g=αe=1X=αg1αg
    よりαg1=αg1が成り立つ.
  2. xXとし,連続写像αx:GXαx(g)=xgで定める.このときGx=αx1(x)Gは閉集合{x}Xの連続写像による逆像ゆえ閉集合である.

α:X×GXを作用とする.

  1. 部分集合AX,HGに対して
    AH=α(A×H)
    とおく.また,A{g}Agと略記する.
  2. 部分集合A,BXに対して
    GA,B={gG  ABg}
    とおく.また,G{x},{y}Gx,yと,GA,AGAと略記する.
  • G{x}xXの安定化群Gxに他ならない.
  • ABg=(BAg1)gより(GA,B)1=GB,Aが成り立つので,GA,Bが空かどうか,或いはGA,Bの位相的性質はA,Bの順序に依らない.

α:X×GXを作用とする.

  1. 任意の開集合UXと部分集合HGに対してUHXは開集合である.
  2. 任意のコンパクト集合KX, LGに対してKLXはコンパクトである.
  1. hHに対して,命題4よりUh=αh(U)Xは開集合であるから
    UH=hHUhX
    は開集合である.
  2. KLはコンパクト集合K×Lの連続像なのでコンパクトである.
( cf. 命題15 )

α:X×GXを作用とする.

  1. 任意のコンパクト集合KGに対してαX×Kは完全写像である.
  2. 任意の閉集合CXとコンパクト集合KGに対してCKXは閉集合である.
  1. αX×Kは同相写像
    X×KX×K; (x,g)(xg,g)
    (逆写像は(x,g)(xg1,g))と完全写像pX:X×KXの合成ゆえ完全写像である.
  2. C×KX×Kは閉集合なのでCK=(αX×K)(C×K)Xは閉集合である.

α:X×GXを作用とする.

  1. 任意のA,BXに対して
    GA,B=pG(α1(A)(B×G))
    が成り立つ.
  2. 任意の閉集合CXとコンパクト集合KXに対してGC,KGは閉集合である.
  3. とくにXがハウスドルフ空間ならば,任意のコンパクト集合KXに対してGKGは閉集合である.
  1. gGA,BABgbB, (b,g)α1(A)gpG(α1(A)(B×G))
  2. CXを閉集合,KXをコンパクト集合とする.このときα1(C)(K×G)K×Gは閉集合,pG:K×GGは閉写像なので
    GC,K=pG(α1(C)(K×G))G
    は閉集合である.
  3. (ii)より明らか.

α:X×GXを作用とする.このとき
xαygG, xg=y
により,X上の同値関係が定まるのだった.商空間X/αX/Gと書く.また,商写像をπ:XX/Gとおく.

π:XX/Gは開写像である.

UXを開集合とする.補題5よりπ1(π(U))=UGXは開集合であるからπ(U)X/Gは開集合である.

ハウスドルフ作用

α:X×GXを作用とする.このとき次は同値である:

  1. X/Gはハウスドルフ空間である;
  2. Rα:={(x,y)X×X  xαy}X×Xは閉集合である;
  3. 任意のx,yX, π(x)π(y),に対して,xの開近傍UXyの開近傍VXであってGU,V=となるものが存在する.

証明は

  • ハウスドルフ空間の対角集合による特徴づけ
  • Rα=(π×π)1(ΔX/G)
  • π(A)π(B)=(A×B)Rα=GA,B=

に注意すればできる.

ココンパクト作用

Xを局所コンパクト空間,α:X×GXを作用とする.

  1. X/Gは局所コンパクトである.
  2. X/Gがハウスドルフならば,π:XX/Gコンパクト被覆写像(compact-covering map)である:任意のコンパクト集合LX/Gに対して,コンパクト集合KXであってπ(K)=Lとなるものが存在する.
  1. yX/Gとする.xπ1(y)としそのコンパクト近傍をKXとする.このとき,π(K)X/Gはコンパクトであり,命題8より
    y=π(x)π(int(K))int(π(K))
    が成り立つ.よってπ(K)yのコンパクト近傍である.
  2. コンパクト集合LX/Gの各点yLに対して,π1(y)の点をひとつ取りそのコンパクト近傍をK(y)Xとすると,(i)(の証明)よりπ(K(y))X/Gyのコンパクト近傍である.いま(π(int(K(y))))yLLX/Gの開被覆であるから,有限個の点y1,,ynLであってLiπ(int(K(yi)))となるものが存在する.仮定よりLX/Gが閉集合であることに注意すると
    K:=(iK(yi))π1(L)
    はコンパクト空間K(yi)の閉集合ゆえコンパクトでありπ(K)=π(K(yi))L=Lが成り立つ.

α:X×GXを作用とする.

  1. コンパクト集合KXであってKG=Xとなるものが存在するときαココンパクト作用(cocompact action)という;
  2. X/Gがコンパクトであるときα商コンパクト作用(``quocompact'' action)という(ことにする).
  1. ココンパクト作用は商コンパクト作用である.
  2. Xが局所コンパクトかつX/Gがハウスドルフであれば逆も成り立つ.
  3. Xが局所相対コンパクトであれば逆も成り立つ.
  1. X/G=π(X)=π(KG)=π(K)よりX/Gはコンパクトである.
  2. 命題10よりコンパクト集合KXであってπ(K)=X/Gとなるものが存在する.
  3. xXに対してその相対コンパクト近傍N(x)Xを取りU(x)=int(N(x)), V(x)=π(U(x))X/Gとおく.このとき(V(x))xXX/Gの開被覆であるから,有限個の点x1,,xnXであってX/G=V(xi)=π(U(xi))となるものが存在する.そこでK=U(xi)Xとおくと,これはコンパクトであってπ(K)=X/Gが成り立つ.

固有作用と完全作用

作用α:X×GXに対して連続写像
α~:X×GX×X; (x,g)(x,xg)
が定まる.

  1. α~が完全写像であるとき,α完全作用という(ことにする);
  2. α~が固有写像であるとき,α固有作用という.

完全作用は固有作用であり,局所コンパクトハウスドルフ空間や距離空間への固有作用は完全作用である(命題1,命題2).

固有作用とコンパクト性

α:X×GXを固有作用とする.

  1. 任意のxXに対してαx:GX; gxgは固有写像である.
  2. 任意のxXに対してその安定化群Gx<Gはコンパクトである.
  1. 仮定よりα~:X×GX×Xは固有写像なので,
    αx:G{x}×Gα~{x}×X{x}×XX
    は固有写像である.
  2. Gx=αx1(x)はコンパクト集合{x}Xの逆像ゆえコンパクトである.

Xをハウスドルフ空間,α:X×GXを作用とする.このとき次は同値である:

  1. αは固有作用である;
  2. 任意のコンパクト集合K,LXに対してGK,LGはコンパクトである;
  3. 任意のコンパクト集合KXに対してGKGはコンパクトである.

(i)(ii)

コンパクト集合L×KX×Xの固有写像α~による逆像
α~1(L×K)=α1(K)(L×G)
はコンパクトである.したがってその連続像GK,L=pG(α1(K)(L×G))Gはコンパクトである.

(ii)(iii)

明らか.

(iii)(i)

LX×Xをコンパクト集合とする.仮定よりLX×Xは閉集合である.第i成分への射影をpi:X×XXとし,K=p1(L)p2(L)Xとおく.このとき,KはコンパクトでありLK×Kが成り立つ.また
α~1(K×K)=α1(K)(K×G)K×GK
が成り立つ.よってα~1(L)K×GKはコンパクト空間K×GKの閉集合ゆえコンパクトである.

完全作用とハウスドルフ性

α:X×GXを完全作用とする.

  1. X/Gはハウスドルフである;
  2. GT1ならばXはハウスドルフである.
  1. 仮定よりα~は閉写像なのでRα=α~(X×G)X×Xは閉集合である.よって命題9よりX/Gはハウスドルフである.
  2. 仮定より{e}Gは閉集合なのでXX×G; x(x,e)は閉写像である.したがって完全写像α~との合成XX×X; x(x,x)も閉写像であるから,その像であるΔXX×Xは閉集合である.
命題14の

局所コンパクトハウスドルフ空間Xへの固有作用について,その軌道空間X/Gは局所コンパクトハウスドルフである.

(cf. 命題6)

α:X×GXを完全作用とする.

  1. 任意のコンパクト集合KXに対してαK×Gは完全写像である;
  2. 任意のコンパクト集合KXと閉集合CGに対してKCXは閉集合である.とくにxXの軌道xGXは閉集合である.
  1. αK×Gは完全写像α~K×X:K×GK×Xと完全写像pX:K×XXとの合成であるから完全写像である.
  2. K×CK×Gは閉集合なのでKC=(αK×G)(K×C)Xは閉集合である.

コンパクト群の作用

Gをコンパクト群α:X×GXを作用とする.

αは完全写像である.

命題6においてコンパクト集合KGとしてG自身を取ればよい.

Xがハウスドルフ空間であるとき以下が成り立つ:

  1. αは固有作用である;
  2. Gもハウスドルフならαは完全作用である;
  3. π:XX/Gは完全写像である.
  1. KXをコンパクト集合とする.補題7よりGKGはコンパクト空間Gの閉集合ゆえコンパクトである.よって命題13よりαは固有作用である.
  2. 仮定よりΔX×G(X×G)×(X×G)は閉集合なので(pX×α)ΔX×Gは完全写像である.よって
    α~:X×GΔX×G(pX×α)ΔX×GX×X
    は完全写像である.
  3. xXに対して連続写像αx:GX; gxgは全単射連続写像GxGπ1(π(x)); gmodGxxgを誘導する.仮定よりGxGはコンパクトでありπ1(π(x))Xはハウスドルフであるからこれは同相写像である.あとはπが閉写像であることを示せばよい.CXを閉集合とする.補題16よりαはとくに閉写像なので
    π1(π(C))=α(C×G)X
    は閉集合,したがってπ(C)X/Gは閉集合である.
命題17の

Xをハウスドルフ空間とする.

  1. GがハウスドルフならばX/Gもハウスドルフである;
  2. X/GがコンパクトならばXもコンパクトである;
  3. X/Gが局所コンパクトならばXも局所コンパクトである.
  1. 仮定よりαは完全作用なので命題14より結論を得る.
  2. πはとくに固有写像なのでX=π1(X/G)はコンパクトである.
  3. xXとする.π(x)X/Gのコンパクト近傍KX/Gを取る.πはとくに固有写像なのでπ1(K)Xはコンパクトであり,
    xπ1(int(K))int(π1(K))π1(K)
    が成り立つ,すなわちπ1(K)xXのコンパクト近傍である.

実射影空間RPnSn/S0及び複素射影空間CPnS2n+1/S1はコンパクトハウスドルフ空間である.

局所コンパクトハウスドルフ群の作用

本節の内容は主に Biller [5] に拠る.

α:X×GXを作用とする.このとき次は同値である:

  1. αは完全作用である;
    • X/Gはハウスドルフである;
    • 任意のxXに対して,GxGはコンパクトであり,
    • Gxの任意の開近傍WGに対して,xの開近傍UXであってGUWとなるものが存在する;
  2. 任意のx,yXに対して
    • Gx,yGはコンパクトであり,
    • Gx,yの任意の開近傍WGに対して,x,yの開近傍U,VXであってGU,VWとなるものが存在する.

(iii) := (vi)

α~1(y,x)={y}×Gx,yが成り立つことに注意する.

(i)(ii)

  • 命題14よりX/Gはハウスドルフである.

xXとする.

  • αはとくに固有作用なので,命題12よりGxはコンパクトである.
  • WGGxの開近傍とする.いまα~は閉写像なので,α~1(x,x)の開近傍X×WX×Gに対して,xの開近傍UXであってα~1(U×U)X×Wとなるものが存在する([8, 命題5]).よって
    GU=pG(α~1(U×U))W
    が成り立つ.

(ii)(iii)

x,yXとする.

π(x)π(y)のとき.
  • Gx,y=はコンパクトである.
  • いまX/Gはハウスドルフなので,命題9よりx,yの開近傍U,VXであってGU,V=となるものが存在する.
π(x)=π(y)のとき.
  • gGであってx=ygとなるものが存在する.このときGx,y=gGxとなることがわかるのでGx,yはコンパクトである.
  • WGGx,yの開近傍とする.このときg1WGGxの開近傍であるからxの開近傍UXであってGUg1Wとなるものが存在する.そこでV=Ug1Xとおくと,これはyの開近傍であって
    hG, UVh=UUg1h
    よりGU,V=gGUWが成り立つ.

(iii)(i)

x,yXとする.

  • α~1(y,x)Gx,yはコンパクトである.
  • U~X×Gα~1(y,x)の開近傍とする.いまGx,yはコンパクトなのでyの開近傍V1XGx,yの開近傍WGであってV1×WU~となるものが存在する([7, 補題1]).このWに対して,仮定よりx,yの開近傍U,V2XであってGU,V2Wとなるものが存在する.そこでV=V1V2Xとおくと,これはyの開近傍であって
    α~1(V×U)V×GU,VV1×GU,V2V1×WU~
    が成り立つ.よってα~は閉写像である([8, 命題5]).

Xをハウスドルフ空間,α:X×GXを作用とする.このとき,任意のx,xXとその開近傍U,UXに対して
Gx,x={GV,V  xVopenU, xVopenU}
が成り立つ.

  • xV,xVならばGx,xGV,VとなるのでGx,xRHSが成り立つ.
  • gGx,x,すなわちxxgとする.いまXはハウスドルフなので,xの開近傍VXxの開近傍V1Xであって
    VU, V1U, VV1g=
    となるものが存在する.このときαの連続性より,xgXの開近傍V1gに対して,xの開近傍V2Xgの開近傍WGであって
    V2W=α(V2×W)V1g
    となるものが存在する.そこでV=V1V2Xとおくと,これはxの開近傍であって
    V(VW)VV1g=
    よりGV,VW=が成り立つのでgGV,Vを得る.よってgRHSが成り立つ.

Gを局所コンパクトハウスドルフ群,α:X×GXを作用とする.このとき次は同値である:

  1. αは完全作用である;
    • Xはハウスドルフである;
    • X/Gはハウスドルフである;
    • 任意のxXに対して,xの開近傍UXであってGUGがコンパクトとなるものが存在する;
    • Xはハウスドルフである;
    • 任意のx,xXに対して,それぞれの開近傍U,UXであってGU,UGがコンパクトとなるものが存在する.

(iii) := (vi).

(i)(ii)

  • 命題14よりX,X/Gはハウスドルフである.
  • xXとする.命題18よりGxGはコンパクトである.いまGは局所コンパクトハウスドルフ空間なのでGxの相対コンパクト開近傍WGが存在する.このとき命題18より,xの開近傍UXであってGUWとなるものが存在する.よってGUはコンパクト空間Wの閉集合ゆえコンパクトである.

(ii)(iii)

  • Xがハウスドルフであることはよい.
  • x,xXとする.いまX/Gはハウスドルフなので,命題9よりπ(x)=π(x)としてよい.したがってgGであってx=xgとなるものが存在する.仮定よりxの開近傍UXであってGUGが相対コンパクトとなるものが存在する.そこでU=Ug1Xとおくと,これはxの開近傍であってGU,U=gGUが成り立つ.よってGU,U=gGUGはコンパクトである.

(iii)(i)

x,xXとする.仮定よりx,xの開近傍U0,U0XであってGU0,U0Gが相対コンパクトとなるものが存在する.

  • いまXはハウスドルフなので,補題19より,Gx,xはコンパクト空間GU0,U0の閉集合ゆえコンパクトである.
  • WGGx,xの開近傍とする.このとき補題19より
    GU0,U0WGU0,U0GV,V=GU0,U0GV,V
    となるので,(GU0,U0GV,V)V,Vはコンパクト集合GU0,U0Wの開被覆である.よってx,xの有限個の開近傍V1,,Vn, V1,,VmXであって
    GVi,VjW
    となるものが存在する.そこでU=ViX, U=VjXとおくと,これらはx,xの開近傍であって
    GU,UGVi,VjW
    が成り立つ.

よって命題18よりαは完全作用である.

Gを局所コンパクトハウスドルフ群,α:X×GXを作用とする.このとき次は同値である:

  1. αは完全作用である;
    • Xはハウスドルフである;
    • X/Gはハウスドルフである;
    • 任意のコンパクト集合KXに対して,Kの開近傍UXであってGUGがコンパクトとなるものが存在する;
    • Xはハウスドルフである;
    • 任意のコンパクト集合K,KXに対して,それぞれの開近傍U,UXであってGU,UGがコンパクトとなるものが存在する.

(iii) := (vi)

(iii)(ii)(i)

明らか.

(i)(iii)

  • 命題14よりXはハウスドルフである.
  • xK, xKに対して,定理20よりx,xの開近傍U(x,x), U(x,x)XであってGU(x,x),U(x,x)Gがコンパクトとなるものが存在する.
    • xKに対して,(U(x,x))xKKの開被覆なので,有限個の点x1,,xmKであってKU(x,xj)となるものが存在する.そこで
      U(x)=U(x,xj), U(x)=U(x,xj)
      とおくと,これらはそれぞれx,Kの開近傍であって
      gG, U(x)U(x)gU(x,xj)U(x,xj)g
      よりGU(x),U(x)GU(x,xj),U(x,xj)が成り立つ.したがってGU(x),U(x)はコンパクト空間GU(x,xj),U(x,xj)の閉集合ゆえコンパクトである.
    • いま(U(x))xKKの開被覆であるから,有限個の点x1,,xnKであってKU(xi)となるものが存在する.そこで
      U=U(xi), U=U(xi)
      とおくと,これらはそれぞれK,Kの開近傍であってGU,UGU(xi),U(xi)が成り立つ.したがってGU,Uはコンパクトである.

条件(iii)において,KK=ならばそれぞれの開近傍としてUU=となるものが取れる(cf. [7, 命題2]).

Gを局所コンパクトハウスドルフ群,α:X×GXを作用とする.このとき次は同値である:

  1. αは完全作用である;
    • Xはハウスドルフである;
    • X/Gはハウスドルフである;
    • 任意のxXに対してその安定化群GxGはコンパクトである;
    • 任意のxXに対して,xGx不変な開近傍UXであってGU=Gxとなるものが存在する.
  • (i)(ii)が証明できていない.
  • Gが離散群のときは証明できている(命題24).

(i)(ii)

命題14よりX,X/Gはハウスドルフであり,命題18よりGxはコンパクトである.あとは最後の条件が成り立つことを示せばよい.そこでxXとする.定理20よりxの開近傍WXであってGWGが相対コンパクトとなるものが存在する.各gGWGxに対して,xxgより,xの開近傍W(g)XであってW(g)W(g)g=となるものが存在する.V=WW(g)とおく.このとき

  • xV
  • gGWGx, VVgW(g)W(g)g=

が成り立つ.
以下,VXが開集合であると仮定する.
U={Vg  gGx}とおく.いまGxはコンパクトゆえpX:X×GxXは閉写像なので,開集合α1(V)(X×Gx)X×Gxに対して
(pX)#(α1(V)(X×Gx))={yX  pX1(y)α1(V)(X×Gx)}={yX  gGx, (y,g)α1(V)(X×Gx)}={Vg1  gGx}=U
Xの開集合である([8, 命題4]).また,任意のgGxに対してx=xgVgが成り立つのでxUとなる.このUが条件を満たすことを示す.

  • eGxよりUVe=Vとなるので,任意のgGWGxに対してUUgVVg=が成り立つ.
  • UVWより,任意のgGGWに対してUUgWWg=が成り立つ.

したがって
GGx=(GGW)(GWGx)GGU
が成り立つので,GU=Gxを得る.また,任意のhGxに対して,GxGx; gghは全単射なので,Uh=Vgh=Uが成り立つ.

(ii)(i)

  • 仮定よりX,X/Gはハウスドルフである.
  • xXとする.仮定よりxの開近傍UXであってGU=Gxとなるものが存在する.いまGはハウスドルフなので,そのコンパクト集合GUGは閉集合である.したがってGU=GUGはコンパクトである.よって定理20よりαは完全作用である.

附:Lie群の作用

α:X×GXを作用とする.任意のxXに対してGx={e}が成り立つときα自由な作用という.

次が知られている:

( [2, 16.10.3, 16.14.1] )

Xを多様体,GをLie群,α:X×GXC作用とする.このとき次は同値である:

  1. X/Gの多様体構造であってπ:XX/Gが沈め込みとなるようなものが(ただ一つ)存在する;
    • X/Gはハウスドルフである;
    • RαX×Xは部分多様体である.

この同値な条件のもとで,さらにαが自由であるとき,π:XX/Gは主G束の構造を持つ.

Xを多様体,GをLie群,α:X×GXを自由かつ固有なC作用とする.このとき定理21の(ii)が成り立つ.

  • αは完全作用なのでX/Gはハウスドルフである(命題14).
  • 仮定よりα~は単射連続閉写像であるからX×Gα~(X×G)=RαX×Xが成り立つ.あとはα~がはめ込みであることを示せばよい.
  • (x,g)X×Gとする.同一視
    T(x,g)(X×G)=Tx(X)×Tg(G),T(x,xg)(X×X)=Tx(X)×Txg(X)
    の下で,任意の(vx,vg)T(x,g)(X×G)に対して
    T(x,g)(α~)(vx,vg)=(vx,Tx(αg)(vx)+Tg(αx)(vg))
    が成り立つ.一般にαxは階数一定であり,αが自由であることからαxは単射である.したがってαxははめ込みであるので,T(x,g)(α~)が単射であることがわかる.よってα~ははめ込みである.

離散群の“固有不連続作用”について

被覆空間作用

α:X×GXを作用とする.このとき次は同値である:

  1. 任意のxXに対して,xの開近傍UXであってGU={e}となるものが存在する;
    • αは自由な作用である;
    • π:XX/Gは(広義の)被覆写像である.

(i)(ii)

xXとする.仮定よりxの開近傍UXであってGU={e}となるものが存在する.

  • {e}GxGU={e}よりGx={e}となるのでαは自由である.
  • V=π(U)X/Gとおくとこれはπ(x)の開近傍であり,π1(V)=Ugとなる.各gGに対してπVUg:UgVは全射連続開写像である.あとはπVUが単射であることを示せばよい.ところでy,zU,π(y)=π(z)とすると,gGであってy=zgUUgとなるものが存在するが,gGU={e}よりy=zを得る.

(ii)(i)

xXとする.仮定よりπ(x)の開近傍VX/GXの開集合族(Uλ)λΛであって

  • π1(V)=Uλ
  • λΛ, πλ:=πVUλ:UλV

となるものが存在する.いまxπ1(V)であるからλΛであってxUλとなるものが存在する.以下,U:=Uλが条件を満たすことを示す.そこでgGUとすると,yUであってygUとなるものが存在する.このとき
πλ(yg)=π(yg)=π(y)=πλ(y)
となるのでπλの単射性よりyg=yが成り立つ.よって作用が自由であることからg=eを得る.

命題23の同値な条件を満たすような群は離散群に限る.実際,
{e}=Gx=αx1(x)=αx1((xG)U)=αx1(αx(G)U)=αx1(U)G
は開集合である.

離散群の作用

離散空間の部分集合について,それが(相対)コンパクトであることと有限集合であることとが同値であることに注意する.

以下,Gを離散群としα:X×GXを作用とする.

命題13より次を得る:

命題13の

Xがハウスドルフ空間であるとき以下は同値である:

  1. αは固有作用である;
  2. 任意のコンパクト集合K,LXに対してGK,LGは有限集合である;
  3. 任意のコンパクト集合KXに対してGKGは有限集合である.

命題18より次を得る:

命題18の

以下は同値である:

  1. αは完全作用である;
    • X/Gはハウスドルフである;
    • 任意のxXに対して,GxGは有限集合であり,
    • Gxの任意の近傍WGに対して,xの開近傍UXであってGUWとなるものが存在する;
  2. 任意のx,yXに対して
    • Gx,yGは有限集合であり,
    • Gx,yの任意の近傍WGに対して,x,yの開近傍U,VXであってGU,VWとなるものが存在する.

定理20より次を得る:

定理20の

以下は同値である:

  1. αは完全作用である;
    • Xはハウスドルフである;
    • X/Gはハウスドルフである;
    • 任意のxX(resp. コンパクト集合KX)に対して,x(resp. K)の開近傍UXであってGUGが有限集合となるものが存在する;
    • Xはハウスドルフである;
    • 任意のx,xX(resp. コンパクト集合K,KX)に対して,それぞれの開近傍U,UXであってGU,UGが有限集合となるものが存在する.

予想に対応する命題は次のようになる:

(cf. Kobayashi-Nomizu)

以下は同値である:

  1. αは完全作用である;
    • Xはハウスドルフである;
    • X/Gはハウスドルフである;
    • 任意のxXに対してその安定化群GxGは有限集合である;
    • 任意のxXに対して,xGx不変な開近傍UXであってGU=Gxとなるものが存在する.

予想の(i)(ii)の“証明”においてGWは有限集合なのでVXは開集合になる.

命題18,命題24の

以下は同値である:

  1. αは自由な完全作用である;
    • X/Gはハウスドルフである;
    • 単位元eの任意の近傍WGに対してxの開近傍UXであってGUWとなるものが存在する;
    • Xはハウスドルフである;
    • X/Gはハウスドルフである;
    • 任意のxXに対してxの開近傍UXであってGU={e}となるものが存在する.
(cf. 命題22)

Xが局所コンパクトハウスドルフ空間,αが自由な固有作用ならばπ:XX/Gは局所コンパクトハウスドルフ空間への被覆写像である.

上で挙げた諸性質のいづれかを以て(離散群による)“固有不連続作用”(一名真性不連続作用,properly discontinuous action)の定義とすることが多いようであるが,大体の場合Xはコンパクト生成ハウスドルフ空間であろうから結局(自由かつ)固有と同値と思って差支えなさそう.“固有不連続作用”という用語については,(多様体論の教科書で有名な)John M. Lee の次の言葉に尽きる:

I sincerely hope the term properly discontinuous will eventually die out.
https://math.stackexchange.com/questions/1082834/properly-discontinuous-action-equivalent-definitions より)

補遺:完全写像とBourbaki固有写像

Bourbaki [1] にもproper mapという概念が出てくるが,これは上で定義した固有写像(proper map)とは違うものなので注意が必要である.

X,Yを位相空間,f:XYを(連続)写像とする. 任意の位相空間Zに対して写像
f×1Z:X×ZY×Z
が閉写像となるとき,fBourbaki固有写像という.

以下,完全写像とBourbaki固有写像が同等な概念であることを示す.

完全写像はBourbaki固有写像である.

f:XYを完全写像とする.

Zを位相空間とする.(y,z)Y×Zとし(f×1Z)1(y,z)=f1(y)×{z}の開近傍UX×Zを取る.いまf1(y)はコンパクトなのでf1(y)の開近傍UXzの開近傍WZであってU×WUとなるものが存在する([7, 補題1]).fは閉写像なので,このUに対してyの開近傍VYであってf1(V)Uとなるものが存在する([8, 命題5]).したがって
(f×1Z)1(V×W)=f1(V)×WU×WU
が成り立つ.よってf×1Zは閉写像である([8, 命題5]).

Bourbaki固有写像は閉写像である.

f:XYをBourbaki固有写像とする.

仮定よりf×1{}は閉写像なので
f:XX×{}f×1{}Y×{}Y
は閉写像である.

f:XYをBourbaki固有写像とする.このとき,任意のBYに対してfB:f1(B)BもBourbaki固有写像である.

Zを位相空間とする.仮定よりf×1Zは閉写像であるから
fB×1Z=(f×1Z)B×Z
も閉写像である.

( cf. 命題3 )

Kを位相空間とする.単空間{}への写像K{}がBourbaki固有写像ならば,すなわち任意の位相空間Zに対してZへの射影pZ:K×ZZが閉写像ならば,Kはコンパクトである.

( [4, 命題6.4.1の証明] )

(Uλ)λΛKの開被覆とする.
Z=SΛとおく.任意の部分集合MΛに対してpM:ZSMpM(z)=zMで定める.
z0Zz0(λ)=0 (λ)で定める.各λΛに対してVλ=pλ1(0)Zとおくと,これはz0の開近傍であるから
W:=λ(Uλ×Vλ)K×Z
pZ1(z0)=K×{z0}の開近傍である.仮定よりpZは閉写像なのでz0の開近傍VZであってpZ1(V)Wとなるものが存在する([8, 命題5]).
Zの位相が{Vλ  λΛ}を準開基とするものであることに注意すると,有限集合Λ0Λであってz0λΛ0VλVとなるものが存在することがわかる.ここでz1Z

  • pΛ0(z1)(λ)=0,
  • pΛΛ0(z1)(λ)=1

で定める.このとき

  • λΛ0, Vλ{z1}={z1},
  • λΛΛ0, Vλ{z1}=

が成り立つ.前者よりz1λΛ0VλVとなるのでpZ1(z1)pZ1(V)Wとなる.したがって
K×{z1}=pZ1(z1)=pZ1(z1)W=λΛUλ×(Vλ{z1})=λΛ0(Uλ×{z1})=(λΛ0Uλ)×{z1}
が成り立つ.よってK=λΛ0Uλを得る.

Bourbaki固有写像は完全写像である.

f:XYをBourbaki固有写像とする.

  • 補題26よりfは閉写像である.
  • yYとする.補題27よりf{y}:f1(y){y}はBourbaki固有写像であるから,補題28よりf1(y)はコンパクトである.

更新履歴

  • 2023/09/12:命題18に条件(ii)を追加しました.それに伴い関係する箇所に加筆しました.
  • 2023/09/13:[7]の思想に基づき定理20 系を追加しました(あれもこれもは悪い癖だと思いつつ).
  • 2023/10/19:命題23のあとの注意を追記しました.
  • 2023/11/05:命題2の証明を追加しました.

参考文献

[1]
N. Bourbaki, General Topology Chapters 1-4
[2]
J. Dieudonne, Treatise on Analysis III
[3]
John M. Lee, Introduction to Topological Manifolds
[4]
斎藤毅, 集合と位相
[5]
H. Biller, Characterizations of proper actions, Math. Proc. Camb. Phil. Soc.
[6]
S. Deo and K. Varadarajan, Discrete groups and discontinuous actions, Rocky Mt. J. Math.
投稿日:2023912
更新日:2023114
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うすい
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