$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
また、$S\subseteq A$ とする。このとき、$S$ の $f$ による像を、
$$
f(S)
:=
\{f(s)\mid s\in S\}
$$
で定義する。
$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。また、$S\subseteq A$ とする。
このとき、部分集合の像の定義より、
$$
f(S)
=
\{b\in B\mid \exists s\in S\ (b=f(s))\}
$$
と書ける。
すなわち、$f(S)$ は、$S$ の元を $f$ によって写した値全体の集合である。
$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
$a\in A$ に対して、$f(a)$ は $a$ の $f$ による像であり、$B$ の元である。
すなわち、
$$
f(a)\in B
$$
である。
一方、$S\subseteq A$ に対して、$f(S)$ は $S$ の $f$ による像であり、$B$ の部分集合である。
すなわち、
$$
f(S)\subseteq B
$$
である。
したがって、元の像 $f(a)$ と部分集合の像 $f(S)$ を混同してはならない。
$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。また、$Y\subseteq B$ とする。
このとき、$Y$ の $f$ による逆像とは、
$$
f^{-1}(Y)
:=
\{a\in A\mid f(a)\in Y\}
$$
で定まる $A$ の部分集合のことをいう。
$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。また、$Y\subseteq B$ とする。
逆像の定義より、任意の $a\in f^{-1}(Y)$ に対して、
$$
a\in A
$$
である。
したがって、
$$
f^{-1}(Y)\subseteq A
$$
が成り立つ。
すなわち、$Y$ の逆像は、始域 (定義域) $A$ の元のうち、$f$ による値が $Y$ に属するもの全体の集合である。
記法
$$
f^{-1}(Y)
$$
は、$Y$ の $f$ による逆像を表す記法である。
逆写像は現時点で未定義であるが、これは、$f$ の逆写像が存在することを意味しない。
したがって、逆写像とは異なり、$f$ が全単射でない場合でも、任意の $Y\subseteq B$ に対して、
$$
f^{-1}(Y)
$$
は定義できる。
特に、ここでの $f^{-1}$ は、一般には $B$ の元を $A$ の元へ送る写像ではなく、$B$ の部分集合を $A$ の部分集合へ送る操作である。
$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
任意の $Y\in\mathcal P(B)$ に対して、
$$
f^{-1}(Y)
=
\{a\in A\mid f(a)\in Y\}
$$
は $A$ の部分集合としてただ $1$ つ定まる。
したがって、逆像を取る操作は、$\mathcal P(B)$ の各元に対して、$\mathcal P(A)$ の元をただ $1$ つ対応させる。
ゆえに、逆像を取る操作は、
$$
f^{-1}:\mathcal P(B)\to\mathcal P(A)
$$
という写像として見ることができる。
このとき、
$$
Y\mapsto f^{-1}(Y)
$$
である。
$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
また、$b\in B$ とする。単集合 $\{b\}\subseteq B$ の逆像は、
$$
f^{-1}(\{b\})
=
\{a\in A\mid f(a)\in\{b\}\}
$$
である。
単集合の性質(
証明はコチラ
)より、任意の $a\in A$ に対して、
$$
f(a)\in\{b\}
\Longleftrightarrow
f(a)=b
$$
である。したがって、
$$
f^{-1}(\{b\})
=
\{a\in A\mid f(a)=b\}
$$
と書ける。
これは、$b$ に写る始域 (定義域) の元全体の集合である。
$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
このとき、任意の $Y\subseteq B$ と任意の $a\in A$ に対して、
$$
a\in f^{-1}(Y)
\Longleftrightarrow
f(a)\in Y
$$
が成り立つ。
任意に $Y\subseteq B$ と $a\in A$ をとる。
逆像の定義より、
$$
f^{-1}(Y)
=
\{x\in A\mid f(x)\in Y\}
$$
である。
したがって、内包表記の言い換え(
証明はコチラ(最後の命題)
)より、
$$
a\in f^{-1}(Y)
\Longleftrightarrow
a\in A\land f(a)\in Y
$$
である。
ここで、$a\in A$ であるから、
$$
a\in f^{-1}(Y)
\Longleftrightarrow
f(a)\in Y
$$
が成り立つ。
$$ \Box$$
この命題は、逆像の定義を元ごとに言い換えただけである。
今後、逆像を扱う証明では、まず
$$
a\in f^{-1}(Y)
$$
を
$$
f(a)\in Y
$$
に言い換えることが基本となる(ので敢えて取り上げた)。
$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
このとき、任意の $X\subseteq A$ と任意の $Y\subseteq B$ に対して、
$$
f(X)\subseteq Y
\Longleftrightarrow
X\subseteq f^{-1}(Y)
$$
が成り立つ。
任意に $X\subseteq A$ と $Y\subseteq B$ をとる。
-以上より、
$$
f(X)\subseteq Y
\Longleftrightarrow
X\subseteq f^{-1}(Y)
$$
である。
$$ \Box$$
$f(X)\subseteq Y$ は、$X$ のすべての元が $Y$ の中へ写るという意味である。
これは、$X$ のすべての元が $Y$ の逆像に属するという条件
$$
X\subseteq f^{-1}(Y)
$$
と同じである。
この同値は、像の包含を逆像の包含に言い換えるためによく使われる。
特に、
$$
f(X)\subseteq Y
$$
を直接示しにくい場合、
$$
X\subseteq f^{-1}(Y)
$$
を示す方が自然なことがある。
$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
このとき、空集合の逆像は空集合である。すなわち、
$$
f^{-1}(\varnothing)=\varnothing
$$
が成り立つ。
集合の相等を示すために、両包含を示す。
-以上より、
$$
f^{-1}(\varnothing)=\varnothing
$$
である。
$$ \Box$$
$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
このとき、終域 $B$ 全体の逆像は定義域全体である。すなわち、
$$
f^{-1}(B)=A
$$
が成り立つ。
集合の相等を示すために、両包含を示す。
-以上より、
$$
f^{-1}(B)=A
$$
である。
$$ \Box$$
$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
このとき、任意の $Y\subseteq B$ に対して、
$$
f^{-1}(Y)=\varnothing
\Longleftrightarrow
Y\cap\operatorname{Im}(f)=\varnothing
$$
が成り立つ。
任意に $Y\subseteq B$ をとる。
-以上より、
$$
f^{-1}(Y)=\varnothing
\Longleftrightarrow
Y\cap\operatorname{Im}(f)=\varnothing
$$
である。
$$ \Box$$
逆像 $f^{-1}(Y)$ が空であるとは、$Y$ に写る入力が存在しないという意味である。
一方、
$$
Y\cap\operatorname{Im}(f)=\varnothing
$$
とは、$Y$ が $f$ の実際の値として現れる元を含まないという意味である。
したがって、この $2$ つは同じ状況を、定義域側と終域側からそれぞれ表したものである。
$A,B$ を集合とし、$f:A\to B$ を写像とする。
このとき、任意の $Y\subseteq B$ に対して、
$$
f^{-1}(Y)=A
\Longleftrightarrow
\operatorname{Im}(f)\subseteq Y
$$
が成り立つ。
任意に $Y\subseteq B$ をとる。
-以上より、
$$
f^{-1}(Y)=A
\Longleftrightarrow
\operatorname{Im}(f)\subseteq Y
$$
である。
$$ \Box$$
前に示した命題
$$
f(X)\subseteq Y
\Longleftrightarrow
X\subseteq f^{-1}(Y)
$$
は、部分集合の像と逆像を結びつける基本原理である。
今回の命題は、この基本原理に $X=A$ を代入した特別な場合として理解できる。
実際、$X=A$ とおくと、
$$
f(A)\subseteq Y
\Longleftrightarrow
A\subseteq f^{-1}(Y)
$$
が得られる。
ここで、
$$
\operatorname{Im}(f)=f(A)
$$
である(
証明はコチラ
)から、左辺は
$$
\operatorname{Im}(f)\subseteq Y
$$
と同値である。
また、逆像の定義より常に
$$
f^{-1}(Y)\subseteq A
$$
である。したがって、
$$
A\subseteq f^{-1}(Y)
$$
が成り立つことは、
$$
f^{-1}(Y)=A
$$
が成り立つことと同値である。
以上より、
$$
f^{-1}(Y)=A
\Longleftrightarrow
\operatorname{Im}(f)\subseteq Y
$$
は、前の命題
$$
f(X)\subseteq Y
\Longleftrightarrow
X\subseteq f^{-1}(Y)
$$
において $X=A$ とした場合から直ちに従う。
すなわち、今回の命題は、像と逆像をつなぐ基本原理の定義域全体版である。