この記事では
前回の記事
に引き続きラマヌジャンの総和法について勉強していきます。
今回の記事では
前回の記事
で紹介した定理たちを用いたラマヌジャン和の興味深い応用例について見ていき、このシリーズの最終回としたいと思います。
オイラーは"divergent calculation"として次のような式変形をしていたようです。
しかしこれはラマヌジャン和を用いることで次のように正当化できます。
前々回の記事
の例1として求めたように
が成り立つので
を得る。
「整数の
であったことに注意すると
を得る。
通常の部分分数展開
では
のように収束因子
を得る。
部分分数展開と言えばディガンマ関数
に関する次の式も面白いですね。
とわかる。
たまには収束級数も求めてみましょう。ちなみにこれはラマヌジャンがインドの数学誌に初めて出題した問題の一つでした。
Collected Papersより
倍数公式などから
が成り立つことに注意すると
がわかる。
また
が成り立つことに注意すると
を得る。
が成り立つことおよび
に注意すると
を得る。
ディリクレ級数
は一般に解析接続を考えることが難しいと思われますが、
(無限和とは限らない)と展開できるときは
によって解析接続することができ、特にラマヌジャン和が正則関数を定めることから
一般ディリクレ級数
に対しても同様にラマヌジャン和を考えることで次のような公式も導くことができます。
フルヴィッツのゼータ関数
について
が成り立つ。
ラマヌジャン和により
と解析接続できるので、
前回の記事
の補題4から
が成り立つことに注意するとわかる。
数列
と定まる関数が
によって定める。
を
特に
が成り立つので
前回の記事
の補題4から
と求まることに注意すると
を得る。
最後にこのシリーズの
第
という関数等式のラマヌジャン和を用いた証明を見ていくこととしましょう。
ラマヌジャン和の明示式
において
が成り立つので
に注意すると
を得る。
Ramanujan's Master Theorem
の
と求まることに注意すると
つまり
が成り立つ。
またこの右辺の積分はRamanujan's Master Theoremを二回使う(?)ことによって
と求まる。したがって
に注意すると
を得る。
アイゼンシュタイン級数とは
のように定義される関数のことを言います。これらの関数は一般に
という関係式を満たしますが、
はこの級数が条件収束となるためこのような操作が正当化されず、実際には
という関係式を満たすこととなります。
このことについては一般にこの
適当な条件下で
が成り立つ。
ラマヌジャン和においては
が成り立つことに注意してこれを
このとき
および同様に
が成り立つのでこの差を取ることで
を得る。
と表せることに注意すると
に対し
が成り立つことを示せばよい。
そしてこれは上の補題から
とわかる。
以上がラマヌジャン総和法に関する理論の概説でした。
最初
という定義が出てきたときは一体この謎の定数から何がわかるのかと思いましたが
という方程式によって特徴付けられる関数
が正則関数の積分変換という解析的に扱いやすい対象となっているため、例えばゼータ関数の解析接続
を定めるなど重要な結果をもたらしてくれるのでした。
結局アベル・プラナの和公式やメリン変換のような積分変換が偉いだけじゃね?と思うところもままありますが、総和法として
総和法は雰囲気だけで使っていると非常に危ういものではありますが、正しい使い方を知っていれば怖いものはありません。比較的幅広く使える総和法として中々面白い武器を手に入れたという感触があります。
皆さんもラマヌジャン総和法を用いて色々遊んでみてはいかがでしょうか。
では。