本記事では,その位数の有限群がすべて巡回群となるような正整数の特徴づけについて紹介します(cf. suzuki第2章§2問題8).
$G$を素数位数の群とすると,任意の$g \in G \smallsetminus \{e\}$に対して,Lagrangeの定理より$G = \langle g \rangle$が成り立つ.
$p,q$を相異なる素数とし,$G$を位数$pq$の群とする.このとき
$$
p \not\equiv 1 \pmod q,\quad q \not\equiv 1 \pmod p$$
が成り立つならば,$G$は巡回群である.
Lagrangeの定理より$G$の元の位数は$1,p,q,pq$のいづれかであることに注意する.
$G$のSylow$p$部分群の個数$\sigma_{p}$について,Sylowの定理より
$$
\sigma_{p} \equiv 1 \pmod p,\quad \sigma_{p} | q$$
が成り立つので,仮定と合わせて$\sigma_{p} = 1$を得る.同様にして$\sigma_{q} = 1$も得る.したがって$G$の元で位数が$1,p,q$のものの個数は全部で
$$
1 + (p-1) + (q-1) = p+q-1$$
であるから,
$$
pq - (p+q-1) = (p-1)(q-1) > 0$$
より,$G$は位数$pq$の元を少なくともひとつ持つ.
正整数$n \in \mathbb{Z}_{>0}$が平方因子を含まず,その任意の素因数$p,q$に対して
$$
q \not\equiv 1 \pmod p$$
が成り立つとき,$n$を巡回数という.
正整数$n \in \mathbb{Z}_{>0}$について,次は同値である:
$n$の素因数分解を
$$
n = p_{1} \cdots p_{k}$$
とする.このとき
$$
\phi(n) = (p_{1}-1) \cdots (p_{k}-1)$$
であるから,仮定より$\gcd(n,\phi(n)) = 1$が成り立つ.
$n$の素因数分解を
$$
n = p_{1}^{e_{1}} \cdots p_{k}^{e_{k}}$$
とする.このとき
$$
\phi(n) = p_{1}^{e_{1}-1}(p_{1}-1) \cdots p_{k}^{e_{k}-1}(p_{k}-1)$$
であるから,$\gcd(n,\phi(n)) = 1$より$e_{1} = \cdots = e_{k} = 1$でなければならない.したがって
$$
\phi(n) = (p_{1}-1) \cdots (p_{k}-1)$$
となるので,$\gcd(n,\phi(n)) = 1$より,任意の$i,j \in \{1,\ldots,k\}$に対して
$$
p_{i} \not\equiv 1 \pmod {p_{j}}$$
が成り立つ.
正整数$n \in \mathbb{Z}_{>0}$に対して,次は同値である:
位数$n$の非巡回群が存在したとすると,正整数
$$
n_{0} \coloneqq \min\{n' \in \mathbb{Z}_{>1} \mid \gcd(n',\phi(n')) = 1,\ \exists\,G':\text{non-cyclic group of order $n'$}\}$$
が定まる.そこで位数$n_{0}$の非巡回群$G_{0}$を取る.$n_{0}$の真の約数は巡回数であるから,$n_{0}$の最小性より,$G_{0}$の真部分群および非自明な正規部分群による剰余群は巡回群であることに注意する.
さて,$x \in G_{0} \smallsetminus \{e\}$を取り,極大部分群$H \coloneqq C_{G_{0}}(x) < G_{0}$を考える.[2-1],[3]より
$$
\{e\} \neq H \subset N_{G_{0}}(H) \neq G_{0}$$
であるから,$H = N_{G_{0}}(H)$となる.したがって
$$
\# \{gHg^{-1} \mid g \in G_{0}\} = \frac{\#G_{0}}{\#N_{G_{0}}(H)} = \frac{\#G_{0}}{\#H}$$
となるので,[2-4],[2-1]と合わせて
$$
m \coloneqq \#\left(\bigcup_{g\in G_{0}} gHg^{-1}\right) = 1 + \frac{\#G_{0}}{\#H}(\#H - 1) = 1 + \#G_{0}\left(1-\frac{1}{\#H}\right) \geq 1 + \frac{\#G_{0}}{2}$$
が成り立つ.また,proper-subset命題1より$x' \in G_{0} \smallsetminus \bigcup_{g} gHg^{-1}$が取れ,極大部分群$H' \coloneqq C_{G_{0}}(x') < G_{0}$についても同様に
$$
m' \coloneqq \#\left(\bigcup_{g' \in G_{0}} g'H'g'^{-1}\right) \geq 1 + \frac{\#G_{0}}{2}$$
が成り立つ.ところがこのとき,$x'$の取り方と[2-4]より
$$
\forall g,g' \in G_{0},\ (gHg^{-1}) \cap (g'H'g'^{-1}) = \{e\}$$
となるので
$$
\#G_{0} \geq \#\left(\bigcup_{g\in G_{0}} gHg^{-1} \cup \bigcup_{g' \in G_{0}} g'H'g'^{-1}\right) = m + m' - 1 \geq \#G_{0} + 1$$
を得るが,これは不合理である.
その位数の有限群がすべて可換群(resp. 冪零群)となるような正整数についても同様の特徴づけがあることが知られている(cf. mse).