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ディリクレのベータ関数の特殊値をいろいろ求める

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ディリクレのベータ関数の特殊値をいろいろ求める

ディリクレのベータ関数の特殊値についていろいろ求めます。

ディリクレのベータ関数

ディリクレのベータ関数の定義はこちら

ディリクレのベータ関数

β(s)=n=0(1)n(2n+1)s(Re(s)>0)
Re(s)0の場合は解析接続により定義される。

フルヴィッツゼータ関数

フルヴィッツゼータ関数の定義

フルヴィッツゼータ関数

ζ(s,z)=n=01(n+z)s(Re(s)>1,Re(z)>0)
解析接続により定義域が拡張される。

関数等式

関数等式

β(1s)=(π2)ssinπs2Γ(s)β(s)

証明はこちらの 記事 にあります。

フルヴィッツゼータ関数との関係式

β(s)=14s(ζ(s,14)ζ(s,34))

証明
級数は絶対収束するので各項を並び替えて証明する。
β(s)=n=0(1)n(2n+1)s=11s13s+15s17s+19s111s=(11s+15s+19s+)(13s+17s+111s+)=n=01(4n+1)sn=01(4n+3)s=14sn=01(n+14)s14sn=01(n+34)s=14s(ζ(s,14)ζ(s,34))

それでは特殊値を求めていきます。

β(1)の値

β(1)の値

β(1)=π4

積分を用いた解法
01xn12dx=22n+1に注意して、
β(1)=n=0(1)n2n+1=12n=0(1)n01xn12dx=1201n=0(1)nxn12dx=12011xn=0(x)ndx=12011x11+xdx=0111+t2dt(x2t)=0π41dθ(ttanθ)=π4
フーリエ級数を用いた証明
以下のようなf(x)をフーリエ級数展開します。
f(x)={1(πx<0)1(0x<π)
奇関数なので求めるのはsinnxの係数だけでいいです。
f(x)=n=1bnsinnx
bn=1πππf(x)sinnxdx=2π0πsinnxdx=2π1cosnπn=4π12n1
偶数項は0なので、
f(x)=4πn=112n1sin((2n1)x)=4πn=012n+1sin((2n+1)x)
x=π2を代入して、
1=4πn=012n+1sin((2n+1)π2)=4πn=0(1)n2n+1=4πβ(1)β(1)=π4
超幾何級数を用いた証明
2F1[a,bc;z]=Γ(c)Γ(a)Γ(cb)01xb1(1x)cb1(1zx)adx
を用いて命題を示す。
β(1)=n=0(1)n2n+1=n=0(12)n(32)n(1)n=2F1[12,132;1]=Γ(32)Γ(1)Γ(12)01(1x)12(1+x)12dx=1201dx1x2=120π21dθ(xsinθ)=π4

β(3)の値

β(2)ζ(3)のように具体的な値は見つかってません。

β(3)の値

β(3)=π332

フーリエ級数を用いた証明
x3をフーリエ級数展開します。(周期は2π)
奇関数なので求めるのはsinnxの係数だけでいいです。
x3=n=1bnsinnx
bn=1πππx3sinnxdx=2π0πx3sinnxdx=2(6π2n2)(1)nn3(部分積分により得られる)
x3=n=1bnsinnx=2n=1(6π2n2)(1)nsinnxn3=12n=1(1)nn3sinnx2π2n=1(1)nnsinnx=32n=11n3sin2nx 12n=01(2n+1)3sin((2n+1)x)π2n=11nsin2nx+2π2n=012n+1sin((2n+1)x)
x=π2を代入して、
π38=12n=0(1)n(2n+1)32π2n=0(1)n2n+1π38=12β(3)π32β(3)=π332
アベルプラナ和公式を用いた証明
以下の等式はアベルプラナ和公式という名前で知られています。
n=f(n)(1)n=πk=1mResz=αkf(z)cscπz
α1,α2,,αmf(z)の特異点

f(z)=1(2z+1)3として計算していきます。

β(3)=n=1(1)n(2n+1)3=12n=(1)n(2n+1)3=π2Resz=12cscπz(2z+1)3=π4limz12d2dz2cscπz(2z+1)3(z+12)3=π32limz12d2dz2cscπz=π332limz12cscπz(cot2πz+csc2πz)=π332
ポリガンマ関数の相反公式を用いた証明
ディガンマ関数の級数表示を用いてβ(3)をディガンマ関数で表示し、相反公式を用いる。
ψ(m)(z)=(1)m+1m!n=01(n+z)m+1=(1)m+1m!ζ(m+1,z)ζ(m+1,z)=(1)m+1m!ψ(m)(z)
m=2を代入して、
ζ(3,z)=12ψ(2)(z)
β(3)=164(ζ(3,14)ζ(3,34))=1128(ψ(2)(34)ψ(2)(14))
ここで、ガンマ関数の相反公式の対数をとり、2階微分する。
Γ(s)Γ(1s)=πsinπs
logΓ(s)+logΓ(1s)=logπsinπs
ψ(s)ψ(1s)=πcotπs
ψ(1)(s)+ψ(1)(1s)=π2csc2πs
ψ(2)(s)ψ(2)(1s)=2π3cotπscsc2πs
s=34を代入して、
ψ(2)(34)ψ(2)(14)=2π3cot3π4csc23π4=4π3
β(3)=1128(ψ(2)(34)ψ(2)(14))=4π3128=π332
超幾何級数を用いた証明
NKSさんの PDF 67pを参照。

β(2n+1)の値

β(2n+1)の値

β(2n+1)=(1)nE2nπ2n+122n+2(2n)!

n0以上の整数です。

証明は 神鳥奈紗 さんの 記事 を参照。

別の方法は多分cotπsの反復微分して34を代入したり漸化式立てたりしないといけなさそうなので面倒そうです。

β(4)の値

β(4)β(2)とポリガンマ関数の微分を用いて表示できます。

β(4)の値

β(4)=1768(ψ(3)(14)8π4)

ポリガンマ関数の相反公式を用いた証明ζ(m+1,z)=(1)m+1m!ψ(m)(z)
m=3を代入して、
ζ(4,z)=16ψ(3)(z)

β(4)=1256(ζ(4,14)ζ(4,34))=11536(ψ(3)(14)ψ(3)(34))

ここで、ガンマ関数の相反公式の対数をとり、3階微分して整理することで、以下の等式を得る。
ψ(3)(1s)+ψ(3)(s)=2π4csc2πs(2cot2πs+csc2πs)

s=34を代入すると、

ψ(3)(14)+ψ(3)(34)=16π4

を得る。これを用いて命題を示す。

β(4)=11536(ψ(3)(14)ψ(3)(34))=11536(2ψ(3)(14)(ψ(3)(14)+ψ(3)(34)))=11536(2ψ(3)(14)16π4)=1768(ψ(3)(14)8π4)

β(2n)の値

β(2n)=124n11(2n1)!ψ(2n1)(14)(22n1)|B2n|π2n2(2n)!

ポリガンマ関数を用いた証明
ポリガンマ関数について、以下の等式が成り立つ。
ψ(m)(14)=2m(2m+11)ψ(m)(1)2(1)m4mm!β(m+1)δm,03log2
証明は sinh76821661 さんの 記事 を参照。
m=2n1を代入して、
ψ(2n1)(14)=22n1(22n1)ψ(2n1)(1)+242n1(2n1)!β(2n)δ2n1,03log2
nNのとき、δ2n1,0=0なので、
ψ(2n1)(14)=22n1(22n1)ψ(2n1)(1)+242n1(2n1)!β(2n)
ここで、ポリガンマ関数の級数表示を用いて、
ψ(2n1)(1)=(2n1)!m=11m2n=(2n1)!ζ(2n)=(2n1)!22n|B2n|π2n2(2n!)
ψ(2n1)(14)=22n1(22n1)ψ(2n1)(1)+242n1(2n1)!β(2n)=22n1(22n1)(2n1)!22n|B2n|π2n2(2n!)+242n1(2n1)!β(2n)β(2n)=124n11(2n1)!ψ(2n1)(14)(22n1)|B2n|π2n2(2n)!

β(0)の値

β(0)の値

β(0)=12

フルヴィッツゼータ関数を用いた証明
フルヴィッツゼータ関数の等式、
ζ(0,z)=12z
を用いる。
証明はまめけびさんの 記事 を参照。
β(0)=ζ(0,14)ζ(0,34)=121412+34=12
正規化を用いた証明

β(s)の級数表示の定義域を無視してβ(0)を求めます。
β(0)=n=0(1)n=η(0)=ζ(0)=12
この級数の正規化はいろんな方法があるので調べてみたらいいかもしれません。
関数等式を用いた証明

関数等式にs=1を代入して命題を示す。
β(1s)=(π2)ssinπs2Γ(s)β(s)
s=1を代入して、
β(0)=2πβ(1)=2ππ4=12

β(2n)の値

β(2n)の値

β(2n)=12E2n

n0以上の整数です。

関数等式を用いた証明
s=2n+1を代入して命題を証明する。
β(1s)=(π2)ssinπs2Γ(s)β(s)
n=2n+1を代入して、
β(2n)=(π2)2n1sin(2n+1)π2Γ(2n+1)β(2n+1)=1π2n+122n+1(1)n(2n)!(1)nE2nπ2n+122n+2(2n)!=12E2n

ハンケルの積分路を用いた証明 もっち さんの 記事 を参照。

β(2n1)の値

β(2n1)の値

β(2n1)=0

n0以上の整数です。

関数等式を用いた証明
関数等式にs=2n+2を代入して命題を示す。
β(1s)=(π2)ssinπs2Γ(s)β(s)
s=2n+2を代入して、
β(2n1)=(π2)2n2sin((n+1)π)Γ(2n+2)β(2n+2)=0
ハンケルの積分路を用いた証明 もっち さんの 記事 を参照。

β(n)の値

β(n)の値

β(n)=12En

オイラー数の性質を用いた証明
β(2n)=12E2n
オイラー数の奇数番目は0なので
β(n)=12En
とできる。
ハンケルの積分路を用いた証明 もっち さんの 記事 を参照。

ハンケルの積分路を用いた証明のみでも良かったが、関数等式での証明も紹介したかったので2通りの証明を紹介した。

β(1)の値

β(1)の値

β(1)=2πβ(2)

関数等式を用いた証明
関数等式を微分し、s=2を代入して命題を示す。
β(s)=(π2)ssinπs2Γ(s)β(s)β(1s)=((π2)slogπ2sinπs2(π2)1scosπs2)Γ(s)β(s)+(π2)ssinπs2(Γ(s)ψ(s)β(s)+Γ(s)β(s))
s=2を代入して、
β(1)=((π2)2logπ2sinπ(π2)1cosπ)Γ(2)β(2)+(π2)2sinπ(Γ(2)ψ(2)β(2)+Γ(2)β(2))=2πβ(2)β(1)=2πβ(2)

β(0)の値

β(0)の値

β(0)=logΓ(14)222π

フルヴィッツゼータ関数を用いた証明
フルヴィッツゼータ関数のs=0での微分係数
ddsζ(s,z)|s=0=logΓ(z)log2π
を用いて命題を証明していく。
この等式の証明はまめけびさんの 記事 を参照。
β(s)=14s(ζ(s,14)ζ(s,34))β(s)=2log214s(ζ(s,14)ζ(s,34))+14sdds(ζ(s,14)ζ(s,34))=2log2β(s)+14sdds(ζ(s,14)ζ(s,34))β(0)=2log2β(0)+dds(ζ(s,14)ζ(s,34))|s=0=2log2+logΓ(14)log2πlogΓ(34)+log2π=logΓ(14)2Γ(34)=logΓ(14)22Γ(14)Γ(34)=logΓ(14)22πsinπ4=logΓ(14)222π

β(1)の値

β(1)の値

β(1)=π4(γ+2log2+3logπ4logΓ(14))

関数等式を用いた証明
関数等式を微分しs=1を代入し命題を証明する。

β(s)=(π2)ssinπs2Γ(s)β(s)β(1s)=((π2)slogπ2sinπs2(π2)1scosπs2)Γ(s)β(s)+(π2)ssinπs2(Γ(s)ψ(s)β(s)+Γ(s)β(s))
s=1を代入して、
β(0)=2πlogπ2β(1)+2π(γβ(1)+β(1))=12logπ212γ+π2β(1)β(1)=π2(12logπ2+12γβ(0))=π2(12γ+12log212log22logΓ(14)+32log2+logπ)=π2(12γ+32logπ+log22logΓ(14))=π4(γ+2log2+3logπ4logΓ(14))

おしまい。

投稿日:202443
更新日:202497
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