中間被覆と自己同型群の部分群
以下、 を局所連結位相空間、 を 上のガロア被覆、 とする。
中間被覆
を の中間被覆、 を となる連続写像とする。
中間被覆について
の命題 4 (2) より は軌道空間から への同相写像
を誘導する。
※可換図式中の はそれぞれ から各軌道空間への標準全射である。
が の中間被覆というとき、 となるような連続写像 を考え、このとき は 上の被覆となるのであった(
中間被覆について
の命題 4 (1))。 が をどのように被覆するかは によって決まる。この のことを は知らないが、一度 が決まってしまえば が をどのように被覆するかを制御するのは である。これは次のようにしてわかる:
まず任意の に対して である。よって も 上の被覆となる。逆に を となるような連続写像とすると となるような が存在する。つまり
は、 が をどのように被覆するかそのすべてを表している。つまり
は、 が の中間被覆となるような 上の被覆全体である。また、 上同型の定義(
被覆について
)より
である。
を動かしたときどのくらい 上の被覆が現れるかについては、右剰余類全体の集合
で決まる。これは に対して、ある が存在して となることと、 に対して となることが同値だからである(ただし は の点)。
これまで の中間被覆 を考えるときには を初めに固定して考えていた。しかし の定義に戻ると
であるから の取り方によって は変わるかもしれない。そこで のように書くことにする。
先ほど見たように は、 は の中間被覆となるような 上の被覆全体である。このとき、任意の に対して
は群同型写像である(写像の合成の記号は省略している)。よって
が成り立つ(右辺は の共役部分群)。
このことから は一般に の取り方によって異なることと、 の取り方によらないのは が の正規部分群の場合に限ることがわかる。一方
中間被覆について
の命題 4 (2) は の取り方によらず成り立つから、任意の に対して
が成り立つ。
結論としては、中間被覆から自己同型群の部分群への対応を考えるときにはどの共役部分群に対応させれば良いかがわからないため、 が によってどのように被覆されているかも考慮する必要がある。 という書き方では情報が不足しているため、 と書くのが適切だと考えられる。なお の中間体として自明な中間体 と があるが、それぞれどのように に被覆されるかという考慮を追加すると である。
の部分群
を の部分群とすると、
被覆の自己同型群の部分群について
より は 上の被覆となる。ただし は が誘導する連続写像である。また、 が によってどのように被覆されるかを考慮し、 と書き直す。
※可換図式中の はそれぞれ から各軌道空間への標準全射である。
被覆の自己同型について
の命題 4 と命題 5 により
である(命題 5 の証明中の群同型写像はこの状況では恒等写像となる)。
部分群に対応する中間被覆としての軌道空間を考えるときには、標準全射 を が を 被覆する方法として標準的なものと考える。この考慮によって、標準全射によって被覆されている軌道空間の自己同型群 を と書くことにする。
部分群と中間被覆の対応
を の部分群全体とし、 を の連結な中間被覆全体とする。
とする。これが互いに逆写像となっていることを示したい。
まず であるが
となるのでうまくいく。次に であるが、
となり、うまくいかない。なぜうまくいかないかというと、軌道空間 と は(同相という意味で)位相空間としては同じであるのに区別しているからである。
これを改善するために を 上同型 で類別し(参考文献 [2])、
という対応で互いに逆写像となっていることを確かめる( で の同値類を表す)。まずは が矛盾なく定義されることを確かめる。
ならば を示す。 を 上の同型写像とする。任意の に対して、 となるような が存在する。 はガロア被覆であるから となるような が存在する。任意の に対して となるような が存在する。 もガロア被覆であるから となるような が存在する。よって
となる。さらに であるから
となる。 より
となる(
被覆の自己同型
の命題 3)。よって
より、 となる。
さて、当初の目的であった逆写像を確かめる(以降標準全射 の添え字は省略する)。
より となる。
より となる。