先行研究は全然調べてないのでオカシな言葉遣いをしているかもです
記事を通して,圏$\C$は以下の条件をみたすとする:
仮定A: $\C$は
(A1) 有限完備,有限余完備
(A2) 広範圏
(A3) 余正則圏
(A4) well-powered
であるとする.
$x\in\C$とする.
(イ) $x$の部分対象であって,強モノ射で表されるものを$x$の強部分対象といい,その全体の集合を$\Ebd(x)$で表す.
(ロ) $\Ebd(x)$の要素で,ドメインが連結であるもの全体を$\Conn(x)$で表す.
(ex, 定義2, 命題4)により$\Summ(x)\subset\Ebd(x)$である.
(イ) $\Top$における強モノ射とは位相的埋め込みのこととである(なので$\Ebd(x)$と書くことにした).よって位相空間$X$に対し半順序集合として$\Ebd(X)\cong 2^X$である.$\Conn(X)$は$X$の連結部分空間全体である.
(ロ) $\CRing$における強エピ射とは全射準同型のことである.可換環$R$に対し,核をとる写像により$\Ebd(R)$は$R$のイデアル全体の集合と1対1に対応する(逆写像は$I\mapsto[R\to R/I]$).
任意の$x\in\C$に対し,$\Ebd(x)$は有界束である.さらに$\C$が完備あるいは余完備であれば,$\Ebd(x)$は完備束である.
任意の$a,b\in\Ebd(x)$をとる.
$a,b$(を表す射)の引き戻しが$a$と$b$の交わり$a\wedge b$を与える.
余ペアリング$a+b\to x$の正則像が結び$a\vee b$を与える.実際,$c\in\Ebd(x)$が$a,b\leq c$をみたすとすると,仲介射の一意性から
\begin{align}
(a+b\to c\regmono x)=(a+b\to x)=(a+b\twoheadrightarrow a\vee b\regmono x)
\end{align}
であるが,正則像であることから$a\vee b\leq c$が従う.
最小限は$0$(ex, 命題4, 命題5参照),最大元は$x$である.
$(a_i)_{i\in I}$を$\Ebd(x)$の(小さい)族とする.$\C$が完備であれば広い引き戻しが$a_i$たちの交わりを与え,$\C$が余完備であれば余ペアリング$\sum a_i\to x$の正則像が結びを与える.
(イ) $\Top$において,$A,B\in\Ebd(X)$の命題1の意味での交わり,結びは通常のそれと一致する.つまり,完備束として$\Ebd(X)\cong 2^X$である.
(ロ) $\CRing^\op$において,例2の対応の元,イデアル$I,J\in\Ebd(R)$の交わりは$I+J$, 結びは$I\cap J$に対応する.つまり,$\CRing$において
\begin{xy}\xymatrix{
R/(I+J) &R/I \ar[l]\\
R/J \ar[u] &R \ar[l]\ar[u]
}\end{xy}
が押し出しであり,$R\to (R/I)\oplus(R/J)$の核が$I\cap J$である($\oplus$は直積環).$\Ebd(R)$の最小元$0=R/R$はイデアル$R$に対応し,最大元$R=R/0$はイデアル$0$に対応することに注意.
(イ) $\Ebd(x+y)\cong\Ebd(x)\times\Ebd(y)$
(ロ) $\Conn(x+y)\cong\Conn(x)+\Conn(y)$
(イ) $c\in\Ebd(x+y)$に対し,強モノは引き戻しで保たれるから,入射$x,y\regmono x+y$に沿った引き戻しは$c\wedge x\in\Ebd(x)$, $c\wedge y\in\Ebd(y)$である.また広範条件から$c=(c\wedge x)+(c\wedge y)$である.
\begin{xy}\tag{1}\label{sum of ebds}\xymatrix{
c\wedge x \ar@{^{(}->}[r]\ar@{}[r]|{+}\ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &c \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &c\wedge y \ar@{_{(}->}[l]\ar@{}[l]|{+}\ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-}\\
x \ar@{^{(}->}[r]\ar@{}[r]|{+} &x+y &y \ar@{_{(}->}[l]\ar@{}[l]|{+}
}\end{xy}
逆に$a\in\Ebd(x)$, $b\in\Ebd(y)$が与えられたとき,(reg, 系3(ハ))(の双対)により$a+b\in\Ebd(x+y)$が得られる.これらは互いに逆の写像を与える.
(ロ) $c\in\Conn(x+y)$のとき,\eqref{sum of ebds}において$\langle c\wedge x, c\wedge y\rangle=\langle c, 0\rangle$ or $\langle0, c\rangle$である.
$\Sigma\subset\Ebd(x)$を部分集合とする.任意の$a,b\in\Sigma$に対し,$a\wedge b=0$であるときいつでも$a\vee b=a+b$が成り立つとき,$\Sigma$においてCRTが成り立つという.
(ロ) $\CRing^\op$については,$\Ebd(R)$全体でCRTが成り立つ.イデアル$I,J\subset R$に対し,”$a\wedge b=0$”は$I+J=R$に対応し,”$a\vee b=a+b$”は$R/(I\cap J)=R/I\oplus R/J$に対応する.これは通常のCRTである.
(イ) $\Top$については,$\Ebd(X)$全体でCRTが成り立つとは限らない.例えば,$\mathbb{R}$において$A=(-\infty,0)$, $B=[0,\infty)$は交わらないが,$A\cup B\neq A+B$である(左辺$=\mathbb{R}$は連結,右辺は非連結なので).開集合系$\mathcal{O}(X)$においてはCRTが成り立つ.
$\Summ(x)\subset\Ebd(x)$においてCRTが成り立つ.
$a,b\in\Summ(x)$, $a\wedge b=0$とする.$a'$を$a$の割符(ex, 定義2)として引き戻し
\begin{xy}\xymatrix{
0 \ar@{^{(}->}[r]\ar@{}[r]|{+}\ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &b \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &b\wedge a' \ar@{_{(}->}[l]\ar@{}[l]|{+}\ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-}\\
a \ar@{^{(}->}[r]\ar@{}[r]|{+} &x &a' \ar@{_{(}->}[l]\ar@{}[l]|{+}
}\end{xy}
をとると,広範条件により$b=b\wedge a'$, すなわち$b\leq a'$である.よって命題2により$a+b\regmono x$であるから,その正則像である$a\vee b$は$a+b$に一致する.
$f\colon x\to y$を$\C$の射とする.
(イ) $a\in\Ebd(x)$に対し,$f_\ast[a]\in\Ebd(y)$を合成$a\regmono x\xrightarrow{f}y$の正則像として定める.
(ロ) $b\in\Ebd(y)$に対し,$f^\ast[b]\in\Ebd(x)$を$f$に沿った$b\regmono y$の引き戻しにより定める.
$f_\ast\colon\Ebd(x)\to\Ebd(y)$, $f^\ast\colon\Ebd(y)\to\Ebd(x)$は関手であり,随伴$f_\ast\dashv f^\ast$が成り立つ.
$a,b\in\Ebd(x)$, $a\leq b$とする.このとき可換四角形
\begin{xy}\xymatrix@R=16pt{
a \ar@{->>}[r]\ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &f_\ast[a] \ar@{_{(}->}[dd]\ar@{}[dd]|{-}\ar@<-2pt>@{.>}[ldd]\\
b \ar@{->>}[d] &\\
f_\ast[b] \ar@{^{(}->}[r]\ar@{}[r]|{+} &y
}\end{xy}
を得るから,充填が存在して$f_\ast[a]\leq f_\ast[b]$と分かる.$f^\ast$の関手性は引き戻しの普遍性により従う.
$f_\ast\dashv f^\ast$を示すため,任意の$a\in\Ebd(x)$, $b\in\Ebd(y)$に対して
\begin{align}\tag{2}\label{adjunction}
f_\ast[a]\leq b\iff a\leq f^\ast[b]
\end{align}
を示す.
[$\implies$] $f_\ast$の定義と$f_\ast[a]\leq b$から可換四角形
\begin{xy}\xymatrix{
a \ar@{->>}[r]\ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &f_\ast[a] \ar@{^{(}->}[r]\ar@{}[r]|{+}\ar@{^{(}->}[rd]\ar@{}[rd]|{\times} &b \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-}\\
x \ar[rr]_f &&y
}\end{xy}
を得る.よって引き戻し$f^\ast[b]$の普遍性から$a\leq f^\ast[b]$を得る.
[$\impliedby$] $a\leq f^\ast[b]$のとき,
\begin{align}
(a\twoheadrightarrow f_\ast[a]\regmono y)
&=(a\regmono x\xrightarrow{f}y)\\
&=(a\regmono f^\ast[b]\regmono x \xrightarrow{f}y)\\
&=(a\regmono f^\ast[b]\to b\regmono y)
\end{align}
であるから,可換四角形
\begin{xy}\xymatrix@R=16pt{
a \ar@{->>}[r]\ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &f_\ast[a]\ar@{_{(}->}[dd]\ar@{}[dd]|{-}\\
f^\ast[b] \ar[d] &\\
b \ar@{^{(}->}[r]\ar@{}[r]|{+} &y
}\end{xy}
を得る.よって充填が存在して,$f_\ast[a]\leq b$を得る.
以上で\eqref{adjunction}が示された.
(イ) $\Top$において,$f_\ast, f^\ast$は通常の順像,逆像と一致する.
(ロ) $\CRing^\op$の射$f^\op\colon S\to R$, イデアル$I\subset S$, $J\subset R$について,$f^{\op,\ast}[J]$は$\langle f(J)\rangle_S$(生成する$S$のイデアル)に対応し,$f^\op_\ast[I]$はイデアルの(集合論的な)逆像$f^{-1}(I)$に対応する.
$x\in\C$とし,$\Ebd(x)$が完備束であるとする.このとき空でない任意の部分集合$\Sigma\subset\Conn(x)$に対し,$\Sigma$のどの2元も交わる(交わりが$0$でない)ならば,$\bigvee\Sigma$は連結である.とくに,$\Conn(x)$は(空でなければ)極大元を持つ.
任意の$\bigvee\Sigma$の直和因子$u$をとる.任意の$p\in\Sigma$に対し,$p=(p\wedge u)+(p\wedge u')$であるから,$p$の連結性により$p\leq u$または$p\leq u'$が成り立つ.もし$p\leq u$, $q\leq u'$なる組$p,q\in\Sigma$が存在すれば,余積が非交和であることから$p\wedge q\leq u\wedge u'=0$を得,$\Sigma$のとり方に矛盾する.よってすべての$p\in\Sigma$に対し(例えば)$p\leq u$であり,$\bigvee\Sigma\leq u$を得る.従って$\bigvee\Sigma$は非自明な直和因子を持たず,連結である.
$\Conn(x)$の極大元を$x$の連結成分という.
強モノ射$i\colon a\regmono x$, $j\colon b\regmono y$に対し,$i\times j\colon a\times b\to x\times y$は強モノである.これにより$a\in\Ebd(x)$, $b\in\Ebd(y)$に対し$a\times b\in\Ebd(x\times y)$が定まる.
強モノが合成と引き戻しで保たれることから,(reg, 系3(ハ))と同じ議論がうまくいく.
任意の$a,b\in\Ebd(x)$に対し,$\Ebd(x\times x)$において$(a\times x)\wedge(x\times b)=a\times b$が成り立つ.
\begin{xy}\xymatrix{
a\times b \ar@{^{(}->}[r]\ar@{}[r]|{+}\ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &x\times b \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-}\\
a\times x \ar@{^{(}->}[r]\ar@{}[r]|{+} &x\times x
}\end{xy}
が引き戻しを与えることが容易に示される.
$\Delta=\Delta_x\colon x\to x\times x$を対角射とする.
任意の$a,b\in\Ebd(x)$に対し,$a\wedge b=\Delta_x^\ast[a\times b]$である.
$\Delta^\ast$は右随伴であったから,補題7により
\begin{align}
\Delta^\ast[a\times b]
&=\Delta^\ast[(a\times x)\wedge(x\times b)]\\
&=\Delta^\ast[a\times x]\wedge\Delta^\ast[x\times b]
\end{align}
である.よって$\Delta^\ast[a\times x]=a$, $\Delta^\ast[x\times b]=b$を示せばよい.前者のため引き戻し
\begin{xy}\xymatrix{
\Delta^\ast[a\times x] \ar[r]\ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &a\times x \ar[r]^{\mathsf{pr}_1}\ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &a \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-}\\
x \ar[r]_\Delta \ar `d[r] `[rr]_\id &x\times x \ar[r]_{\mathsf{pr}_1} &x
}\end{xy}
を考えると,引き戻しが同型を保つことから$\Delta^\ast[a\times x]=a$を得る.後者についても同様である.
$a,b\in\Ebd(x)$に対し,$a\bullet b:=\Delta^\ast_x[(a\times x)\vee(x\times b)]\in\Ebd(x)$と定める.
(イ) $\Top$において,
\begin{align}
A\bullet B
&=\Delta^\ast[(A\times X)\cup(X\times B)]\\
&=\Delta^\ast[A\times X]\cup\Delta^\ast[X\times B]\\
&=A\cup B
\end{align}
である.
(ロ) $\CRing^\op$において,$\bullet$はイデアルの積に対応する.
仮定B: 各対象$x\in\C$に対し,部分集合$\O(x)\subset\Ebd(x)$が定まっていて,以下の条件をみたすとする.ただし$\O(x)$の要素を開部分対象と呼び,$a\in\O(x)$が表す射を$a\omono b$で表している:
(B1) $\Summ(x)\subset \O(x)$である.
(B2) $v\in\O(x)$, $u\in\O(v)$であれば,合成$(u\omono v\omono x)\in\O(x)$である.
(B3) 任意の$\C$の射$f\colon x\to y$と$u\in\O(x)$に対し$f^\ast[u]\in\O(x)$である.
(B4) 任意の開部分対象を分類する,終対象を開部分対象として含む対象$s$が存在する; 任意の$x\in\C$, $u\in\O(x)$に対し,$\chi_u\colon x\to s$がただ一つ存在して,
\begin{xy}\xymatrix{
u \ar[r]\ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{\circ} &1 \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{\circ}\\
x \ar[r]_{\chi_u} &s
}\end{xy}
を引き戻しにする.
(B5) $\O(x)$においてCRTが成り立つ.
$x\in\C$が($\O$-)既約であるとは,任意の$u,v\in\O(x)$に対し,$u,v\neq0$であればいつでも$u\wedge v\neq0$であることをいう.
$\Summ$-既約性は連結性に一致する.実際,$x$が連結であれば$u\neq0$は$u=x$を意味するから,$u\wedge v=x\neq0$である.$x$が非連結であれば非自明な$u\in\Summ(x)$が存在し,$u\wedge u'=0$であるから$\Summ$-既約でない.
$\O$-既約対象は連結である.
$x$が非連結であるとき,非自明な$u\in\Summ(x)$($\subset \O(x)$)が存在し,$u\wedge u'=0$であるから既約でない.
$f\colon x\twoheadrightarrow y$がエピで$x$が既約であれば,$y$は既約である.とくに,(エピとは限らない)任意の射$f\colon x\to y$と$x$の既約強部分対象$a\in\Ebd(x)$に対し,その$f$による順像$f_\ast[a]$は既約である.
(ex, 補題12)と同じ議論により$f^\ast\colon\O(y)\to\O(x)$が単射であることが示せる.任意の$u,v\in\O(y)$をとる.もし$u\wedge v=0$であれば,
\begin{align}
0=f^\ast[u\wedge v]=f^\ast[u]\wedge f^\ast[v]
\end{align}
であるから,$x$の既約性により$f^\ast[u]=0$または$f^\ast[v]=0$である.よって$f^\ast$の単射性により$u=0$または$v=0$を得,$y$は既約であることが示された.
(イ) $\C$の点的対象$k$とは,$k\neq0$であり,$\Ebd(k)=\setex{0,k}$であることをいう.
(ロ) $\C$の素対象$p$とは,ある点的対象からのエピ射が存在することをいう.
点的対象は素である.
$\id_k$がエピなので.
$k\in\Ebd(x)$について,$k$が$\Ebd(x)\setminus\setex{0}$の極小元であるとき,またそのときに限り$k$は点的である.
明らか.
$\Ebd(x)\setminus\setex0$の極小元を単に$\Ebd(x)$の極小元と略称する.
点的対象,素対象は既約である.
点的対象$k$について,
\begin{align}
\setex{0,k}\subset\Summ(k)\subset\O(k)\subset\Ebd(k)=\setex{0,k}
\end{align}
なので$\O(k)=\setex{0,k}$である.このことから$k$が既約と分かる.よって命題10と素対象の定義により素対象も既約である.
$k\in\C$を点的対象,$f\colon x\to k$を射とするとき,$x=0$または$f$はエピである.
$f$の正則像分解$x\twoheadrightarrow\im f\regmono k$を考える.$k$は点的であるから,$\im f=0$または$\im f=k$である.前者であれば,$0$は厳密ゆえ$x=0$であり,後者であれば$f$はエピである.
$\Spec(x):=\setin{p\in\Ebd(x)}{p\text{は素}}\supset\setin{k\in\Ebd(x)}{k\text{は極小}}=:\Spm(x)$
(イ) $\Top$において,点的対象および素対象とはシングルトンのことである.
(ロ) $\CRing^\op$において,点的対象は体,素対象は整域のことである.$\Spec(R)$は$R$の素イデアル全体の集合,$\Spm(R)$は極大イデアル全体の集合に対応する.
$f\colon x\twoheadrightarrow y$がエピで,$x$が素であれば$y$も素である.とくに,任意の(エピとは限らない)射$f\colon x\to y$は$f_\ast\colon\Spec(x)\to\Spec(y)$を導く.
点的対象$k$からのエピ射$k\twoheadrightarrow x$をとるとき,合成$k\twoheadrightarrow x\xtwoheadrightarrow{f}y$はエピである.
$\Spec(x+y)\cong\Spec(x)+\Spec(y)$である.
命題2(ロ)による.
仮定C: すべての$x\in\C$に対し,$\Ebd(x)$は極小元を持つとする.
$x\in\C$が局所対象であるとは,$x$がただ一つの極小元を持つことをいう.
$p\in\Spec(x)$とする.$x$の$p$における局所化とは,次をみたす$x$の部分対象$\varphi\colon x_p\hookrightarrow x$のことをいう:
(イ) $x_p$は局所対象である(唯一の極小元を$\k(p)$とする).
(ロ) $\varphi_\ast[\k(p)]=p$である.
$\varphi \colon x \to y$を$\C$の射とし,その基底変換関手を$\varphi^\ast \colon \C/y \to \C/x$とする(slice, 定義4参照).
(イ) $\varphi^\ast$がエピを保つとき,$\varphi$は平坦であるという.
(ロ) $\varphi^\ast$が忠実関手であるとき,$\varphi$は忠実であるという.
平坦性の条件は具体的には次のようになる.任意の$g \colon b \to y$および$\beta \colon a \to b$に対し,引き戻し
\begin{xy}\xymatrix{
x \times_y a \ar[r] \ar[d]_{\varphi^\ast[\beta]} &a \ar[d]^\beta\\
x \times_y b \ar[r] \ar[d]_{\varphi^\ast[g]} &b \ar[d]^g\\
x \ar[r]_\varphi &y
}\end{xy}
において,$\beta$がエピならばいつでも$\varphi^\ast[\beta]$もエピである.忠実性は,(slice, 命題3,(ハ))により,$\varphi^\ast[\beta]$のエピ性が$\beta$のエピ性を含意することと同値である.
$\varphi_i \colon x_i \to y$, $i = 1,2$, が平坦であるとき,余ペアリング$(\varphi_1 \, \varphi_2) \colon x_1 + x_2 \to y$も平坦である.
任意の射$z \to y$とエピ射$w \twoheadrightarrow z$をとり,引き戻し
\begin{xy}\xymatrix{
x_i \times_y w \ar[r] \ar@{->>}[d] &(x_1 + x_2) \times_y w \ar[r] \ar[d] &w \ar@{->>}[d]\\
x_i \times_y z \ar[r] \ar[d] &(x_1 + x_2) \times_y z \ar[r] \ar[d] &z \ar[d]\\
x_i \ar[r]_{\mathrm{inj.}} \ar `d[r] `[rr]_{\varphi_i} [rr] &x_1 + x_2 \ar[r]_{(\varphi_1 \, \varphi_2)} &y
}\end{xy}
を考える.$\varphi_i$の平坦性から1列目の射$x_i \times_y w \twoheadrightarrow x_i \times_y z$はエピである.よってその$i = 1, 2$についての和
\begin{align}
(x_1 \times_y w) + (x_2 \times_y w) \twoheadrightarrow (x_1 \times_y z) + (x_2 \times_y z)
\end{align}
もエピである.従って(ex, 命題9)により,2列目の射
\begin{align}
(x_1 + x_2) \times_y w \twoheadrightarrow (x_1 + x_2) \times_y z
\end{align}
はエピである.
忠実性,平坦性は引き戻しで保たれる.
忠実性については(slice, 命題3, (ロ))による.平坦性については引き戻しの貼り合わせ原理による.
$\varphi \colon x \hookrightarrow y$を平坦モノ射とする.このとき任意の$a \in \Ebd(x)$に対し,正則像分解により得られる可換四角形
\begin{xy}\tag{3}\label{imsq}\xymatrix{
a \ar@{^{(}->>}[r]^{\varphi|_a} \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &\varphi_\ast[a] \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-}\\
x \ar@{^{(}->}[r]_\varphi &y
}\end{xy}
は引き戻しを与える.つまり,$\varphi^\ast[\varphi_\ast[a]]=a$である.とくに,$\varphi_\ast \colon \Ebd(x) \to \Ebd(y)$およびその制限$\varphi_\ast \colon \Spec(x) \to \Spec(y)$は単射である.
$b := \varphi_\ast[a]$とおく.\eqref{imsq}が可換であるから,引き戻し$\varphi^\ast[b]$の普遍性により$\varphi|_a \colon a \epimono b$は$\varphi^b \colon \varphi^\ast[b] \hookrightarrow b$を経由する:
\begin{xy}\xymatrix{
a \ar@{->>}@/^/[rrd]^{\varphi|_a} \ar@{_{(}->}@/_/[rdd]\ar@{}@/_/[rdd]|{/} \ar@{_{(}->}[rd]\ar@{}[rd]|{\times} &&\\
&\varphi^\ast[b] \ar@{^{(}->}[r]_{\varphi^b} \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &b \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-}\\
&x \ar@{^{(}->}[r]_\varphi &y
}\end{xy}
引き戻しはモノを保つので$\varphi^b$はモノであるから,
\begin{xy}\xymatrix{
a \ar@{=}[r] \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &a \ar@{_{(}->>}[d]^{\varphi|_a}\\
\varphi^\ast[b] \ar@{^{(}->}[r]_{\varphi^b} &b
}\end{xy}
は引き戻しである.また補題17により$\varphi^b$は平坦でもあるから,$a \regmono \varphi^\ast[b]$はエピでもあり,同型である.
$k$を点的対象,$m\neq0$とし, $\varphi \colon m\epimono k$が平坦モノ(かつエピ)であるとする.このとき$m$は点的である.
$a\in\Ebd(m)$, $a\neq0$とする.命題14により合成$a\regmono m\epimono k$はエピであり,
\begin{xy}\xymatrix{
a \ar@{=}[r]\ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &a \ar@{->>}[d]\\
m \ar@{^{(}->>}[r]_\varphi &k
}\end{xy}
は引き戻しであるから,$a\regmono m$はエピであり,同型である.従って$m$は自明な強部分対象しか持たず,点的である.
$l\in\Spec(x)$とし, $\varphi\colon x_l\hookrightarrow x$を平坦局所化とする.このとき
\begin{align}\tag{4}\label{loc isom}
\varphi_\ast\colon\Spec(x_l)\xrightarrow{\sim}\setin{p\in\Spec(x)}{l\leq p}
\end{align}
は同型を与える.
$q\in\Spec(x_l)$に対し,仮定Cにより$\k(l)\leq q$であるから,$l=\varphi_\ast[\k(l)]\leq\varphi_\ast[q]$である.よって$\varphi_\ast$は$\Spec(x_l)$を$\setin{p\in\Spec(x)}{l\leq p}$に写す.
$\varphi^\ast$が逆写像を与えることを示す.$l\leq p\in\Spec(x)$とし,点的対象$k$とエピ射$k\twoheadrightarrow p$をとる.命題18により$\k(l)=\varphi^\ast[l]\leq\varphi^\ast[p]$であるから$\varphi^\ast[p]\neq0$である.引き戻し
\begin{xy}\tag{5}\label{5}\xymatrix{
k\times_x x_l \ar@{->>}[r]\ar@{_{(}->}[d] &\varphi^\ast[p] \ar@{^{(}->}[r]\ar@{}[r]|{+}\ar@{_{(}->}[d]_{\varphi^p} &x_l \ar@{_{(}->}[d]^\varphi\\
k \ar@{->>}[r] &p \ar@{^{(}->}[r]\ar@{}[r]|{+} &x
}\end{xy}
を考える.$\varphi$が平坦ゆえ$k\times_x x_l\twoheadrightarrow\varphi^\ast[p]$はエピである.$\varphi^\ast[p]\neq0$であったから,$0$からのエピ射が同型しかないことから$k\times_xx_l\neq0$である.補題17により$k \times_x x_l \hookrightarrow k$は平坦モノであるから,補題19により$k\times_xx_l$は点的であり,$\varphi^\ast[p]\in\Spec(x_l)$を得る.
\eqref{5}において,命題14により$k\times_xx_l\epimono k$はエピであるから,合成$(k\times_xx_l\epimono k\twoheadrightarrow p)$も,従って$\varphi^p$もエピである.これは$\varphi_\ast[\varphi^\ast[p]]=p$を示している.とくに$\varphi_\ast$は全射である.命題18により$\varphi_\ast$は単射であるから,\eqref{loc isom}が同型であることが示された.
$\varphi \colon x \twoheadrightarrow y$を忠実とする.このとき任意の$b \in \Ebd(y)$に対し,
\begin{align}
b = \varphi_\ast[\varphi^\ast[b]]
\end{align}
である.とくに,$\varphi_\ast \colon \Ebd(x) \to \Ebd(y)$は全射である.
(slice, 命題3, (ロ))により,引き戻し
\begin{xy}\xymatrix{
\varphi^\ast[b] \ar@{->>}[r] \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} & b \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-}\\
x \ar@{->>}[r]_\varphi &y
}\end{xy}
が正則像分解を与える.
$\varphi \colon x \epimono y$を忠実平坦モノ射とする.このとき$\varphi$は同型$\varphi_\ast \colon \Ebd(x) \xrightarrow{\sim} \Ebd(y)$および$\varphi_\ast \colon \Spec(x) \xrightarrow{\sim} \Spec(y)$を導く.
命題18, 21により前者の同型がわかる.後者のため,$\varphi^\ast$の制限が写像$\varphi^\ast \colon \Spec(y) \to \Spec(x)$を導くことを示す.そのため,任意の$q \in \Spec(y)$と点的対象からのエピ射$k \twoheadrightarrow q$をとる.このとき引き戻し
\begin{xy}\xymatrix{
x \times_y k \ar@{^{(}->>}[r] \ar@{->>}[d] &k \ar@{->>}[d]\\
\varphi^\ast[q] \ar@{^{(}->>}[r] \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-} &q \ar@{_{(}->}[d]\ar@{}[d]|{-}\\
x \ar@{^{(}->>}[r]_\varphi &y
}\end{xy}
において,$\varphi$の忠実性から$x \times_y k \epimono k$はエピであるから$x \times_y k \neq 0$である.またこの射は補題17により平坦モノであるから,補題19により$x \times_y k$は点的である.$\varphi$の平坦性により$x \times_y k \twoheadrightarrow \varphi^\ast[q]$はエピであるから,$\varphi^\ast[q] \in \Spec(x)$が示された.