この記事では
前回の記事
に続いてラマヌジャン・佐藤級数に関する公式の数々をまとめていきます。
前回の記事ではChan, Cooper (2012)にて提示されていたLevel 1~6およびLevel 8,9の公式をまとめました。なのでこの記事では残るLevel 7およびLevel 10以上の公式についてまとめていきます。
なお種々の文献から要点を抜き取ってまとめたものとなるので表記揺れや誤植などが目立つと思いますが、あしからず。
Chan, Cooperの手法では
という漸化式を考え
という公式を構成した。ここで
を満たすことに注意したい。
しかし[CTYZ]にて考えられた数列
の満たす漸化式は
であった。
そこでCooperは
によって定まる数列を考えることとした。これを
と表せる。なお
Cooperは
における
が得られたという。
および
とおくと
が成り立つ。
これは
例の如く
および
とおくと
が成り立つ。
これは
および
とおくと
が成り立つ。
これらはそれぞれ
ちなみに
を満たし、
を満たす。
以下
とおく。(収束条件には重々注意されたい。)
数列
によって定めると
が成り立つ。
これは
ちなみにこれが有理的になる例は
しか知られていない。
とおき数列
によって定めると
が成り立つ。
この前者は
とおき数列
によって定めると
が成り立つ。
これは
とおき数列
によって定めると
が成り立つ。
これは
ちなみにこれが有理的になる例は
しか知られていない。
とおき数列
によって定めると
が成り立つ。
とおき数列
によって定めると
が成り立つ。
これが有理的になる例は
しか知られていない。
とおき数列
によって定めると
が成り立つ。
これが有理的になる例は
しか知られていない。
とおき数列
によって定めると
が成り立つ。
ここには明示的な関係式がよくわからなかったものについて、その係数となる数列と具体例だけをまとめておく。
なお各種数列
数列
によって定めると
なる円周率公式が構成できる。例えば
が成り立つ。
数列
によって定めると
が成り立つ。
によって定まる関数
について、
なる円周率公式が構成できる。
どうやら今年の初頭に公開されたプレプリント
S. Cooper, Apéry-like sequences defined by four-term recurrence relations, arXiv, 2023
のTable 3 (p.18)にて現在解明されている
なる
流石に気力が尽きてしまったのでこの記事ではその全てを追うことはしませんが、興味があればそちらを参照されてはいかがでしょうか。
その5ではこの公式集をまとめているうちに何か見出せるかもしれないと思っていましたが、確かに多少の発見はあったとは言えど、むしろ何もわからないということがわかるばかりでした。前回までの記事で紹介してきたChan, Cooperの手法はかなり特別な例であっただけで、より一般のラマヌジャン・佐藤級数についてはあんな簡便な法則はなく、その構成には中々煩雑な議論が必要なようです。
このシリーズの初回でも「観賞用の側面が強い」と評していたように私は一般のラマヌジャン・佐藤級数に対する関心はあまり高くなく、この記事で見てきたように観賞用としての側面も弱くなってしまうとなるとかなりモチベーションが下がってしまいました。なのでChan, Cooperの論文を通じてかなり面白い議論も嗜めたことですし、その蛇足にならぬようこのシリーズは今回の記事で終わりにしたいと思います。
このシリーズが誰かの参考になっていれば幸いです。では。