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二項関係 ⑪

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Prop&Proof.

恒等関係の基本性質

$A$ を集合とし、$A$ 上の恒等関係 $\Delta_A$
$$ \Delta_A:=\{(x,y)\in A\times A\mid x=y\} $$
で定める。
このとき、$\Delta_A$ は次の $4$ つの性質を満たす。
$$ \begin{align} (1)&\quad \forall a\in A\ ((a,a)\in\Delta_A),\\ (2)&\quad \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl((a,b)\in\Delta_A\Rightarrow (b,a)\in\Delta_A\bigr),\\ (3)&\quad \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl(((a,b)\in\Delta_A\land (b,a)\in\Delta_A)\Rightarrow a=b\bigr),\\ (4)&\quad \forall a\in A\ \forall b\in A\ \forall c\in A\ \bigl(((a,b)\in\Delta_A\land (b,c)\in\Delta_A)\Rightarrow (a,c)\in\Delta_A\bigr). \end{align} $$
すなわち、$\Delta_A$ は反射的、対称的、反対称的、推移的である。

  1. 反射的であることを示す。
    任意に $a\in A$ をとる。
    このとき、$a=a$ であるから、恒等関係の定義より、
    $$ (a,a)\in\Delta_A $$
    である。
    したがって、$\Delta_A$ は反射的である。
    $ $
  2. 対称的であることを示す。
    任意に $a,b\in A$ をとり、
    $$ (a,b)\in\Delta_A $$
    と仮定する。
    恒等関係の定義より、
    $$ a=b $$
    である。したがって、
    $$ b=a $$
    である。
    よって、恒等関係の定義より、
    $$ (b,a)\in\Delta_A $$
    である。
    したがって、$\Delta_A$ は対称的である。
    $ $
  3. 反対称的であることを示す。
    任意に $a,b\in A$ をとり、
    $$ (a,b)\in\Delta_A\land (b,a)\in\Delta_A $$
    と仮定する。
    特に、
    $$ (a,b)\in\Delta_A $$
    である。
    恒等関係の定義より、
    $$ a=b $$
    である。
    したがって、$\Delta_A$ は反対称的である。
    $ $
  4. 推移的であることを示す。
    任意に $a,b,c\in A$ をとり、
    $$ (a,b)\in\Delta_A\land (b,c)\in\Delta_A $$
    と仮定する。
    恒等関係の定義より、
    $$ a=b\land b=c $$
    である。
    等号の推移性より、
    $$ a=c $$
    である。
    したがって、恒等関係の定義より、
    $$ (a,c)\in\Delta_A $$
    である。
    よって、$\Delta_A$ は推移的である。

-以上より、$\Delta_A$ は反射的、対称的、反対称的、推移的である。
$$ \Box$$

空関係の基本性質

$A$ を集合とする。
空関係 $\varnothing\subseteq A\times A$ は、次の $3$ つの性質を満たす。
$$ \begin{align} (1)&\quad \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl((a,b)\in\varnothing\Rightarrow (b,a)\in\varnothing\bigr),\\ (2)&\quad \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl(((a,b)\in\varnothing\land (b,a)\in\varnothing)\Rightarrow a=b\bigr),\\ (3)&\quad \forall a\in A\ \forall b\in A\ \forall c\in A\ \bigl(((a,b)\in\varnothing\land (b,c)\in\varnothing)\Rightarrow (a,c)\in\varnothing\bigr). \end{align} $$
すなわち、空関係 $\varnothing$ は対称的、反対称的、推移的である。

  1. 空関係 $\varnothing$ が対称的であることを示す。
    任意に $a,b\in A$ をとる。
    空集合は要素を持たないので、
    $$ (a,b)\notin\varnothing $$
    である。したがって、条件文
    $$ (a,b)\in\varnothing\Rightarrow (b,a)\in\varnothing $$
    の前件は偽である。ゆえに、この条件文は空虚に真である(補足を参照)。
    $a,b\in A$ は任意であったから、
    $$ \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl((a,b)\in\varnothing\Rightarrow (b,a)\in\varnothing\bigr) $$
    が成り立つ。
    したがって、$\varnothing$ は対称的である。
    $ $
  2. 空関係 $\varnothing$ が反対称的であることを示す。
    任意に $a,b\in A$ をとる。
    空集合は要素を持たないので、
    $$ (a,b)\notin\varnothing $$
    である。したがって、
    $$ (a,b)\in\varnothing\land (b,a)\in\varnothing $$
    は偽である。
    ゆえに、条件文
    $$ \bigl((a,b)\in\varnothing\land (b,a)\in\varnothing\bigr)\Rightarrow a=b $$
    は空虚に真である(補足を参照)。
    $a,b\in A$ は任意であったから、
    $$ \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl(((a,b)\in\varnothing\land (b,a)\in\varnothing)\Rightarrow a=b\bigr) $$
    が成り立つ。
    したがって、$\varnothing$ は反対称的である。
    $ $
  3. 空関係 $\varnothing$ が推移的であることを示す。
    任意に $a,b,c\in A$ をとる。
    空集合は要素を持たないので、
    $$ (a,b)\notin\varnothing $$
    である。したがって、
    $$ (a,b)\in\varnothing\land (b,c)\in\varnothing $$
    は偽である。
    ゆえに、条件文
    $$ \bigl((a,b)\in\varnothing\land (b,c)\in\varnothing\bigr)\Rightarrow (a,c)\in\varnothing $$
    は空虚に真である(補足を参照)。
    $a,b,c\in A$ は任意であったから、
    $$ \forall a\in A\ \forall b\in A\ \forall c\in A\ \bigl(((a,b)\in\varnothing\land (b,c)\in\varnothing)\Rightarrow (a,c)\in\varnothing\bigr) $$
    が成り立つ。
    したがって、$\varnothing$ は推移的である。

-以上より、空関係 $\varnothing$ は対称的、反対称的、推移的である。
$$ \Box$$

空虚に真

空関係について対称性、反対称性、推移性が成り立つ理由は、それぞれの条件文の前件が成り立たないからである。
このように、前件が偽であるために条件文が真になることを、空虚に真であるという( 詳しくはコチラ )。

空関係が反射的であるための必要十分条件

$A$ を集合とし、$R=\varnothing\subseteq A\times A$$A$ 上の空関係とする。
このとき、$R$$A$ 上の関係として反射的であることと
$$ A=\varnothing $$
は同値である。すなわち、
$$ \bigl(\forall a\in A\ ((a,a)\in R)\bigr) \Longleftrightarrow A=\varnothing $$
が成り立つ。

  1. $R$ が反射的であるならば $A=\varnothing$ であることを示す。
    $R$ が反射的であると仮定する。
    このとき、反射性の定義より、
    $$ \forall a\in A\ ((a,a)\in R) $$
    が成り立つ。
    $A=\varnothing$ を示す。背理法のため、
    $$ A\neq\varnothing $$
    と仮定する。このとき、ある $a\in A$ が存在する。
    反射性より、
    $$ (a,a)\in R $$
    が成り立つ。
    一方、$R=\varnothing$ であるから、
    $$ (a,a)\notin R $$
    である。これは矛盾である。
    したがって、
    $$ A=\varnothing $$
    である。
    $ $
  2. $A=\varnothing$ ならば $R$ は反射的であることを示す。
    $A=\varnothing$ と仮定する。
    このとき、$A$ の元は存在しない。したがって、全称命題
    $$ \forall a\in A\ ((a,a)\in R) $$
    は空虚に真である(補足を参照)。
    よって、$R$$A$ 上の関係として反射的である。

-以上より、
$$ \bigl(\forall a\in A\ ((a,a)\in R)\bigr) \Longleftrightarrow A=\varnothing $$
が成り立つ。
すなわち、空関係 $R=\varnothing\subseteq A\times A$$A$ 上の関係として反射的であることと $A=\varnothing$ は同値である。
$$ \Box$$

空虚に真

いま、$A=\varnothing$ であるから、これは
$$ \forall a\in\varnothing\ ((a,a)\in\varnothing) $$
を示すことに等しい。
ここで、制限付き全称命題を含意の形( 詳しくはコチラ )に書き換えると、
$$ \forall a\ (a\in\varnothing\Rightarrow (a,a)\in\varnothing) $$
である。
任意に $a$ をとる。空集合の定義より、
$$ a\notin\varnothing $$
である。
したがって、条件文
$$ a\in\varnothing\Rightarrow (a,a)\in\varnothing $$
の前件は偽である。ゆえに、この条件文は空虚に真である。
$a$ は任意であったから、
$$ \forall a\ (a\in\varnothing\Rightarrow (a,a)\in\varnothing) $$
が成り立つ。したがって、
$$ \forall a\in\varnothing\ ((a,a)\in\varnothing) $$
が成り立つ。すなわち、
$$ \forall a\in A\ ((a,a)\in\varnothing) $$
が成り立つ。

全体関係の基本性質

$A$ を集合とする。
全体関係 $A\times A$ は、次の $3$ つの性質を満たす。
$$ \begin{align} (1)&\quad \forall a\in A\ ((a,a)\in A\times A),\\ (2)&\quad \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl((a,b)\in A\times A\Rightarrow (b,a)\in A\times A\bigr),\\ (3)&\quad \forall a\in A\ \forall b\in A\ \forall c\in A\ \bigl(((a,b)\in A\times A\land (b,c)\in A\times A)\Rightarrow (a,c)\in A\times A\bigr). \end{align} $$
すなわち、全体関係 $A\times A$ は反射的、対称的、推移的である。

  1. 全体関係 $A\times A$ が反射的であることを示す。
    任意に $a\in A$ をとる。
    このとき、$a\in A$ かつ $a\in A$ である( 証明はコチラ )。
    したがって、直積の定義より、
    $$ (a,a)\in A\times A $$
    である。
    $a\in A$ は任意であったから、
    $$ \forall a\in A\ ((a,a)\in A\times A) $$
    が成り立つ。
    したがって、$A\times A$ は反射的である。
    $ $
  2. 全体関係 $A\times A$ が対称的であることを示す。
    任意に $a,b\in A$ をとる。
    このとき、$b\in A$ かつ $a\in A$ である。したがって、直積の定義より、
    $$ (b,a)\in A\times A $$
    である。
    ゆえに、条件文
    $$ (a,b)\in A\times A\Rightarrow (b,a)\in A\times A $$
    は真である。
    $a,b\in A$ は任意であったから、
    $$ \forall a\in A\ \forall b\in A\ \bigl((a,b)\in A\times A\Rightarrow (b,a)\in A\times A\bigr) $$
    が成り立つ。
    したがって、$A\times A$ は対称的である。
    $ $
  3. 全体関係 $A\times A$ が推移的であることを示す。
    任意に $a,b,c\in A$ をとる。このとき、$a\in A$ かつ $c\in A$ である。
    したがって、直積の定義より、
    $$ (a,c)\in A\times A $$
    である。
    ゆえに、条件文
    $$ \bigl((a,b)\in A\times A\land (b,c)\in A\times A\bigr)\Rightarrow (a,c)\in A\times A $$
    は真である。
    $a,b,c\in A$ は任意であったから、
    $$ \forall a\in A\ \forall b\in A\ \forall c\in A\ \bigl(((a,b)\in A\times A\land (b,c)\in A\times A)\Rightarrow (a,c)\in A\times A\bigr) $$
    が成り立つ。
    したがって、$A\times A$ は推移的である。

-以上より、全体関係 $A\times A$ は反射的、対称的、推移的である。
$$ \Box$$

全体関係は一般には反対称的ではない

全体関係 $A\times A$ は、常に反射的、対称的、推移的である。
しかし、一般には反対称的ではない。
$ $
実際、$A$ が『相異なる』 $2$ つの元 $a,b$ をもつとする。このとき、全体関係の定義より、
$$ (a,b)\in A\times A\land (b,a)\in A\times A $$
が成り立つが、
$$ a\neq b $$
である。したがって、$A$ が相異なる $2$ つの元をもつ場合、$A\times A$ は反対称的ではない。

投稿日:7日前
更新日:7日前
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Kagura
Kagura
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■ 分野を問わず数学の証明が好きです。あとで自分が読み返したときに、きちんと理解できるノートを作ることを心がけています。不定期に過去のノートを確認し、修正&更新 (追加&削除) しています。定義、命題、証明などに誤りや不正確な点がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです(2025年12月28日)。          ----------------------------------------------- ■ ノート『数学概論』の読み方     STEP1:まずは定義を一通り理解し覚える。 STEP2:具体例を考えてみる。    STEP3:各命題の主張を一通り理解する。 STEP4:証明を繰り返し読んで流れを掴む。 (まずはココまでで良い)         STEP5:何も見ずに定義に従って証明を創る。 STEP6:STEP5の他の証明方法を創ってみる。    STEP7:自由に命題と証明を創ってみる  

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