2
大学数学基礎
文献あり

終域に余誘導される位相

2074
0

写像による等化位相

Xを集合,(Y,τ(Y))を位相空間とし,f:YXを写像とする.このとき
τ(f)={UXf1(U)τ(Y)}
とおくと,これはXの位相を定める.τ(f)を(fによる)等化位相(identification topology)という.

  • 等化位相の定義より
    f:(Y,τ(Y))(X,τ(f))
    は連続である.
  • 任意のxXf(Y)に対してf1({x})=τ(Y)となるので,τ(f)|(Xf(Y))は離散位相である.
等化位相の閉集合系

Xを集合,(Y,τ(Y))を位相空間とし,f:YXを写像とする.このとき
τ(f)c=τc(f):={CXf1(C)τc(Y)}
が成り立つ.

任意のCXに対して
f1(XC)=Yf1(C)
が成り立つことからしたがう.

等化位相の普遍性

Xを集合,(Y,τ(Y))を位相空間とし,f:YXを写像とする.このとき,任意の位相空間(Z,τ(Z))と写像g:XZに対して,次は同値である:

  1. g:(X,τ(f))(Z,τ(Z)):continuous;
  2. gf:(Y,τ(Y))(Z,τ(Z)):continuous.
    YgffZXg

(i)(ii)

明らか.

(ii)(i)

Wτ(Z)とする.このとき
f1(g1(W))=(gf)1(W)τ(Y)
よりg1(W)τ(f)が成り立つ.

等化位相τ(f)f:YXが連続となるようなXの位相のうち最も細かい(強い),すなわち最も開集合が多いものである.

τ(X)に関してf:(Y,τ(Y))(X,τ(X))が連続であるとする.このとき,等化位相の普遍性よりidX:(X,τ(f))(X,τ(X))は連続である.
(Y,τ(Y))ff(X,τ(X))(X,τ(f))idX

等化写像と等化空間

f:(Y,τ(Y))(X,τ(X))を連続写像とする.τ(f)=τ(X),すなわち任意のUXに対して
f1(U)τ(Y)Uτ(X)
が成り立つとき,f等化写像(identification map)という.とくにfが全射であるとき(X,τ(X))を(fによる)等化空間(identification space)という.(何を``identify"しているのかについては5節冒頭の注意を参照されたい.)

f:(Y,τ(Y))(X,τ(X))を連続写像とする.このとき次は同値である:

  1. fは等化写像である;
  2. 任意の位相空間(Z,τ(Z))と写像g:XZに対して,
    gf:(Y,τ(Y))(Z,τ(Z)):continuousg:(X,τ(X))(Z,τ(Z)):continuous
    が成り立つ.

(i)(ii)

明らか.

(ii)(i)

f:(Y,τ(Y))(X,τ(X))の連続性より,τ(f)τ(X)であるから,あとはτ(X)τ(f)を示せばよい.そこで位相空間(X,τ(f))と写像idX:XXを考えると,
f=idXf:(Y,τ(Y))f(X,τ(X))idX(X,τ(f))
は連続なので,
idX:(X,τ(X))(X,τ(f))
は連続である.

等化写像となるための十分条件(cf. 定理2.7の系)

f:(Y,τ(Y))(X,τ(X))を全射連続写像とする.このとき,fが開写像(resp. 閉写像)ならばfは全射等化写像である.

fが開写像のとき,任意のUτ(f)に対してf1(U)τ(Y)fの全射性より
U=f(f1(U))τ(X)
が成り立つ.fが閉写像のときも同様である.

等化写像となるための十分条件

f:(Y,τ(Y))(X,τ(X))を連続写像とする.このとき,連続写像s:(X,τ(X))(Y,τ(Y))であってfs=idXとなるものが存在するならば,fは全射等化写像である.

  • fが全射であることは明らか.
  • Uτ(f)とする.このとき,f1(U)τ(Y)sの連続性から
    U=(fs)1(U)=s1(f1(U))τ(X)
    が成り立つ.
等化空間の普遍性

f:YXを全射等化写像とする.また,g:YZを連続写像とする.このとき,任意のyYに対してg|f1(f(y))が定値写像である,すなわち任意のy,yYに対して
f(y)=f(y)g(y)=g(y)
が成り立つならば,連続写像g:XZであってgf=gを満たすものがただ一つ存在する.
YgfZXg

  • fの全射性より,gの一意性がしたがう.
  • xXとする.仮定より{g(y)yf1(x)}は単集合であるから,写像g:XZ
    {g(x)}={g(y)yf1(x)}
    により定まる.
  • 明らかにgf=gが成り立つ.したがって定理2の系より
    g:(X,τ(X))(Z,τ(Z))
    は連続である.

f:YXを写像とし,BYとする.f1(f(B))=Bが成り立つとき,Bf飽和集合(f-saturated subset)という.

定理5の連続写像g:XZについて,次は同値である:

  1. gは開写像(resp. 閉写像)である;
  2. 任意のf飽和開集合VY(resp. f飽和閉集合CY)に対して,g(V)τ(Z)(resp. g(C)τc(Z))が成り立つ.

(i)(ii)

VYf飽和開集合とする.このときf1(f(V))=Vτ(Y)よりf(V)τ(X)となる.よって
g(V)=g(f(V))τ(Z)
が成り立つ.

(ii)(i)

Uτ(X)とする.V=f1(U)τ(Y)とおくと,fの全射性よりf1(f(V))=f1(U)=Vとなるので,VYf飽和開集合である.よって
g(U)=g(f(V))=g(V)τ(Z)
が成り立つ.

等化位相の推移性

f:(Y,τ(Y))(X,τ(X))を連続写像,Zを集合,g:XZを写像とする.このとき,Z上のふたつの等化位相τ(gf)τ(g)について,次が成り立つ:

  1. τ(gf)τ(g);
  2. f:YXが等化写像ならば,τ(gf)τ(g)も成り立つ.
    YfgfXgZ
  1. 任意のWZに対して,等化位相の定義とfの連続性より,
    Wτ(g)g1(W)τ(X)(gf)1(W)=f1(g1(W))τ(Y)Wτ(gf)
    が成り立つ.
  2. fが等化写像ならば
    f1(g1(W))τ(Y)g1(W)τ(X)
    が成り立つ.

f:YX,g:XZを連続写像とする.

  1. gfが(全射)等化写像ならば,gは(全射)等化写像である;
  2. f,gが(全射)等化写像ならば,gfも(全射)等化写像である.

全射性については明らか.

  1. τ(Z)=τ(gf)τ(g)τ(Z)より,τ(g)=τ(Z)を得る.
  2. τ(gf)=τ(g)=τ(Z)が成り立つ.

等化位相と相対位相

f:(Y,τ(Y))(X,τ(X))を開写像(resp. 閉写像)とする.このとき,任意のAXに対して
fA:(f1(A),τ(Y)|f1(A))(A,τ(X)|A)
は開写像(resp. 閉写像)である.

任意のBYに対して
fA(Bf1(A))=f(Bf1(A))=f(B)A
が成り立つことからしたがう.

f:YXを等化写像とし,AXとする.A上のふたつの位相,すなわち

  • 相対位相τ(X)|A
  • 部分空間(f1(A),τ(Y)|A)からの写像fA:f1(A)Aによる等化位相τ(fA)

を考える.

  1. τ(fA)τ(X)|Aが成り立つ;
  2. 以下のいづれかが成り立つとき,τ(fA)τ(X)|Aが成り立つ:
    1. Aτ(X);
    2. f:open surjection;
    3. Aτc(X);
    4. f:closed surjection.
  1. fは連続なのでfA:(f1(A),τ(Y)|f1(A))(A,τ(X)|A)は連続である.よってτ(fA)τ(X)|Aを得る.
    1. Uτ(fA)とする.このときf1(A)τ(Y)より
      f1(U)=(fA)1(U)τ(Y)|f1(A)τ(Y)
      となるので,Uτ(X)を得る.よってU=UAτ(X)|Aが成り立つ.
    2. 補題8より
      fA:(f1(A),τ(Y)|f1(A))(A,τ(X)|A)
      は全射連続開写像であるから,命題3より等化写像である.
    3. (1)と同様.
    4. (2)と同様.

写像族による等化位相

Xを集合,((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とし,f=(fλ:XλX)λΛを写像族とする.このとき,λΛτ(fλ)を(fによる)等化位相といいτ(f)で表わす.

  • 等化位相の定義より,各λΛに対して
    fλ:(Xλ,τλ)fλ(X,τ(fλ))idX(X,τ(f))
    は連続である.
  • 開集合系および閉集合系について
    Uτ(f)λΛ, fλ1(U)τλ,Cτc(f)λΛ, fλ1(C)τλc
    が成り立つ.
等化位相の普遍性

Xを集合,((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とし,f=(fλ:XλX)λΛを写像族とする.このとき,任意の位相空間(Z,τ(Z))と写像g:XZに対して,次は同値である:

  1. g:(X,τ(f))(Z,τ(Z)):continuous;
  2. λΛ,gfλ:(Xλ,τλ)(Z,τ(Z)):continuous.
    XλgfλfλZXg

(i)(ii)

明らか.

(ii)(i)

仮定より,各λΛに対して
g:(X,τ(fλ))(Z,τ(Z))
は連続である.よって,任意のUτ(Z)に対して
g1(U)λΛτ(fλ)=τ(f)
が成り立つ.

等化位相τ(f)は任意のλΛに対してfλ:XλXが連続となるようなXの位相のうち最も細かいものである.

Xの位相τ(X)に関して,
λΛ,fλ:(Xλ,τλ)(X,τ(X)):continuous
が成り立つとする.このとき,等化位相の普遍性よりidX:(X,τ(f))(X,τ(X))は連続である.
(Xλ,τλ)fλfλ(X,τ(X))(X,τ(f))idX

等化位相の推移性

X,Λを集合,(Λμ)μMΛの分割,(Xμ)μMを集合族,((Xμ,λ,τμ,λ))(μ,λ)Λを位相空間族とし,

  • f=(fμ:XμX)μM
  • fμ,=(fμ,λ:Xμ,λXμ)λΛμ, μM

を写像族とする.各μMに対してXμfμ,による等化位相τμを与える.このとき,X上のふたつの位相,すなわちfによる等化位相τ(f)(fμfμ,λ)(μ,λ)Λによる等化位相τ(X)とは一致する.
Xμ,λfμ,λXμfμX

  • 任意の(μ,λ)Λに対して
    fμfμ,λ:(Xμ,λ,τμ,λ)fμ,λ(Xμ,τμ)fμ(X,τ(f))
    は連続写像の合成ゆえ連続である.よって定理10の系より
    τ(X)τ(f)
    が成り立つ.
  • μMとする.このとき,任意のλΛμに対して
    fμfμ,λ:(Xμ,λ,τμ,λ)(X,τ(X))
    は連続であるから,等化位相τμの普遍性より,fμ:(Xμ,τμ)(X,τ(X))は連続である.よって定理10の系より
    τ(f)τ(X)
    が成り立つ.

余積空間

普遍性とその帰結

((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とする.このとき,自然な入射からなる写像族i=iX=(iλ:XλX)λΛによる等化位相を余積位相,直和位相などといい,位相空間(X,τ(i))((Xλ,τλ))λΛ余積空間,直和空間,位相和などという.

任意のλΛに対して,自然な入射iλ:(Xλ,τλ)(X,τ(i))は開写像かつ閉写像である.したがってiλは位相的埋め込みである(定理2.7の系).

任意の部分集合AλXλに対して
μΛ, iμ1(iλ(Aλ))={Aλ,μ=λ,μλ
が成り立つことからしたがう.

余積位相の普遍性

任意の位相空間(Z,τ(Z))と写像g:λΛXλZに対して,次は同値である:

  1. g:(X,τ(i))(Z,τ(Z)):continuous;
  2. λΛ,giλ:(Xλ,τλ)(Z,τ(Z)):continuous.
    XλgiλiλZXg
余積空間の普遍性

任意の位相空間(X,τ(X))と連続写像族f=(fλ:XλX)λΛに対して,連続写像
(f):(X,τ(i))(X,τ(X))
であって,
λΛ, (f)iλ=fλ
が成り立つものがただ一つ存在する.
XλfλiλXX(f)
さらに,

  1. fλが開写像ならば,(f)は開写像である;
  2. fλが閉写像であって(fλ(Xλ))λΛが局所有限ならば,(f)は閉写像である.
  • 一意性は補題1.2よりしたがう.
  • 写像(f):X=λΛ{λ}×XλX
    (f)(λ,xλ)=fλ(xλ)
    で定める.このとき,任意のλΛに対して
    (f)iλ=fλ:(Xλ,τλ)(X,τ(X)):continuous
    が成り立つ.よって
    (f):(X,τ(i))(X,τ(X))
    は連続である.
  1. fλが開写像であるとき,任意のUτ(i)に対して
    (f)(U)=(f)(λΛiλ(iλ1(U)))=λΛfλ(iλ1(U))τ(X)
    が成り立つ.
  2. 仮定より,閉集合Cτ(i)に対して(fλ(iλ1(C)))λΛXの局所有限な閉集合族なので
    (f)(C)=λΛfλ(iλ1(C))τc(X)
    が成り立つ( 参考 ).

λΛ, (f)iλ=fλ
と等化位相の推移性(命題13)より
τ((f))=τ(f)
が成り立つ(Λの分割として(Λ)を考えればよい).
XλiλfλX(f)X

f=(fλ:XλYλ)λΛを連続写像族とする.このとき,連続写像f=λΛfλ:XYであって,任意のλΛに対してfiXλ=iYλfλが成り立つようなものがただ一つ存在する.
XλfλiXλYλiYλXfY
さらに,連続写像族g=(gλ:YλZλ)λΛに対して,h=(gλfλ:XλZλ)λΛとおくと,
gf=h:XZ
が成り立つ.

  • f=((iYλfλ)λΛ)とおけばよい.
  • 任意のλΛに対して
    (gf)iXλ=giYλfλ=iZλgλfλ=iZλhλ=hiXλ
    が成り立つので,補題1.2より結論を得る.
    XλfλhλiXλYλgλiYλZλiZλXfhYgZ
開写像の和・閉写像の和・等化写像の和

f=(fλ:XλYλ)λΛを連続写像族とする.このとき次が成り立つ:

  1. fλが開写像ならば,fは開写像である;
  2. fλが閉写像ならば,fは閉写像である;
  3. fλが等化写像ならば,fは等化写像である.
  1. 命題12より各iYλfλは開写像であるから,定理14とfの定義よりしたがう.
  2. 命題12より各iYλfλは閉写像であり,(iYλfλ(Xλ))λΛは局所有限であるから,定理14より結論を得る.
  3. 等化位相の推移性(命題13(もしくは定理14のあとの注意),定理7)より
    τ(f)=τ((iYλfλ)λΛ)=λΛτ(iYλfλ)=λΛτ(iYλ)=τ(iY)
    が成り立つ.

等化写像の積については次ページで扱う.

余積空間の結合性

((Xλ,τλ))λΛを位相空間族,(Λμ)μMΛの分割とする.各μMに対して((Xλ,τλ))λΛμの余積空間を(Yμ,τμ)とおく.このとき,余積空間(X,τ(iX))(Y,τ(iY))とは同相である.

  • X=λΛXλ,Y=μMYμとおく.
  • λΛとする.このときμ(λ)MであってλΛμ(λ)となるものがただ一つ存在する.そこで自然な入射の合成をfλ=iYμ(λ)iλμ(λ)とおくと
    fλ:(Xλ,τλ)iλμ(λ)(Yμ(λ),τμ(λ))iYμ(λ)(Y,τ(Y))
    は連続である.よって,余積空間(X,τ(X))の普遍性より,連続写像f:(X,τ(X))(Y,τ(Y))であって,以下の図式を可換にするものがただ一つ存在する:
    XλfλiλYXf
  • μMとする.任意のλΛμに対してiλ:(Xλ,τλ)(X,τ(X))は連続なので,余積空間(Yμ,τμ)の普遍性より,連続写像iΛμ:(Yμ,τμ)(X,τ(X))であって以下の図式を可換にするものがただ一つ存在する:
    XλiλiλμXYμiΛμ
    よって,余積空間(Y,τ(Y))の普遍性より,連続写像g:(Y,τ(Y))(X,τ(X))であって以下の図式を可換にするものがただ一つ存在する:
    YμiΛμiYμXYg
  • いま,任意の(μ(λ),λ)Λに対して
    (gf)iλ=gfλ=giYμ(λ)iλμ(λ)=iΛμ(λ)iλμ(λ)=iλ=idXiλ
    が成り立つので,補題1.2よりgf=idXを得る.
    XλiλiλXXgfidX
  • また,μMとすると,任意のλΛμに対して
    (fgiYμ)iλμ=fiΛμiλμ=fiλ=fλ=iYμiλμ
    となるので,補題1.2より(fg)iYμ=iYμ=idYiYμが成り立つ.よってfg=idYを得る.
    XλiYμiλμiλμYYμiYμiYμYYμiYμfgiYμYfgidY
(余積空間の可換性)

((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とする.このとき,任意の全単射φ:ΛΛに対して,(X,τ(iX))(Xφ(),τ(iXφ()))とは同相である.

Λの分割として({φ(λ)})λΛを考えればよい.

((Xλ,τλ))λΛ,((Yμ,τμ))μMを位相空間族とし,φ:ΛMを全単射とする.このとき,各λΛに対してXλYφ(λ)とが同相ならば,余積空間(X,τ(iX))(Y,τ(iY))とは同相である.

  • λΛに対して,(Xλ,τλ)(Yφ(λ),τφ(λ))との同相を与える写像をfλ:XλYφ(λ)とする.
  • このとき,定理14の系よりλΛfλΛ:λΛXλλΛYφ(λ)は全単射連続開写像ゆえ同相写像である.
  • Λの分割({φ1(μ)})μMを考えて,定理16より同相λΛYφ(λ)μMYμを得る.

余積位相と相対位相

余積位相の相対位相と相対位相の余積位相

((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とし,各λΛに対して部分集合AλXλが与えられているとする.余積集合A上のふたつの位相,すなわち

  • 余積空間(X,τ(iX))の相対位相
  • 位相空間族((Aλ,τλ|Aλ))λΛの余積位相

は一致する.

τ(iA)τ(iX)|A

λΛとする.任意のaλAλに対して
idAXiAλ(aλ)=(λ,aλ)=iXλidAλXλ(aλ)=idAXiAλ(aλ)
が成り立つので,補題1.2より
idAX=idAX:AX
が成り立つ.
AλidAλXλiAλXλiXλAidAX=idAXX
したがって,包含写像
idAX=idAX:(A,τ(iA))(X,τ(iX))
は連続であるから,
τ(iA)τ(iX)|A
が成り立つ.

τ(iA)τ(iX)|A

UAτ(iA)とする.各λΛに対して,iAλ1(UA)τλ|Aλより,UλτλであってiAλ1(UA)=UλAλとなるものが存在する.そこでU=λΛiXλ(Uλ)Xとおくと,命題12よりUτ(iX)であり,iXλ1(U)=Uλが成り立つ.このとき
UA=λΛiAλ(iAλ1(UA))=λΛiXλ(UλAλ)=λΛiXλ(iXλ1(U)Aλ)=λΛUiXλ(Aλ)=UλΛiAλ(Aλ)=UA
より,UAτ(iX)|Aを得る.

(位相的埋め込みの和)

f=(fλ:XλYλ)λΛを位相的埋め込みの族とする.このときf:XYは位相的埋め込みである.

定理14の系より
f=idf(X)Yff(X)
が成り立つ.ff(X)は同相写像であり,包含写像idf(X)Y=idf(X)Yは位相的埋め込みであるから,fは位相的埋め込みである(命題21).
Xλfλfλ(Xλ)fλtop. emb.iXλfλ(Xλ)idfλ(Xλ)Yλtop. emb.ifλ(Xλ)YλiYλXff(X)ff(X)idf(X)Ytop. emb.Y

((Xλ,τλ))λΛを位相空間族とし,AλXλ,λΛ,とする.このとき次が成り立つ:

  1. λΛAλ=λΛAλ;
  2. int(λΛAλ)=λΛint(Aλ).
    1. λΛに対してiXλ1(A)=Aλτλcが成り立つので,AXAを含む閉集合である.よってAAが成り立つ.
    2. x=(λ,xλ)Aとする.このとき,任意のUτ(x,X)に対して,xλiXλ1(U)AλよりaλiXλ1(U)Aλが取れることから,
      iXλ(aλ)iXλ(iXλ1(U)Aλ)=UiXλ(Aλ)UA
      が成り立つ.よってxAを得る.
    1. λΛに対して,iXλ1(int(A))XλAλに含まれる開集合であるから,iXλ1(int(A))int(Aλ)が成り立つ.よって
      int(A)=λΛiXλ(iXλ1(int(A)))λΛiXλ(int(Aλ))=int(A)
      が成り立つ.
    2. int(A)XAに含まれる開集合であるからint(A)int(A)が成り立つ.

余積空間と分離公理

(Xλ)λΛを位相空間族とする.このとき,任意のi[4]に対して,次は同値である:

  1. XTi分離公理を満たす;
  2. XλTi分離公理を満たす.

(i)(ii)

  1. T1空間への単射連続写像iλ:XλXが存在するので,命題2.20より,XλT1空間である.
  2. T2空間への単射連続写像iλ:XλXが存在するので,命題2.23より,XλT2空間である.
  3. 命題12よりXλは正則空間の部分空間iλ(Xλ)Xと同相なので,命題2.26より,Xλは正則空間である.
  4. 命題12よりXλは正規空間の閉部分空間iλ(Xλ)Xと同相なので,命題2.29より,Xλは正規空間である.

(ii)(i)

  1. x=(λ,xλ)Xとする.仮定より{xλ}τc(Xλ)であるから,命題12より{x}=iλ({xλ})τc(X)が成り立つ.
  2. x=(λ,xλ)(μ,yμ)=yとする.λμのときはU=iλ(Xλ),V=iμ(Xμ)とおく;λ=μのとき,xλyλより,Uλτ(xλ,Xλ),Vλτ(yλ,Xλ)であってUλVλ=となるものが存在する.そこでU=iλ(Uλ),V=iλ(Vλ)とおく.命題12より,いづれの場合も
    Uτ(x,X), Vτ(y,X), UV=
    が成り立つ.
  3. x=(λ,xλ)X,Fτc(X),xFとする.このとき
    xλXλ, iλ1(F)τc(Xλ), xλiλ1(F)
    より,Uλτ(xλ,Xλ),Vλτ(iλ1(F),Xλ)であってUλVλ=となるものが存在する.そこでU=iλ(Uλ),V=iλ(Vλ)μλiμ(Xμ)とおくと,命題12より,
    Uτ(x,X), Vτ(F,X), UV=
    が成り立つ.
  4. C,Fτc(X),CF=とする.このとき各λΛに対して,
    iλ1(C),iλ1(F)τc(Xλ), iλ1(C)iλ1(F)=
    より,それぞれの開近傍Uλ,Vλτ(Xλ)であってUλVλ=となるものが存在する.そこでU=λΛiλ(Uλ),V=λΛiλ(Vλ)とおくと,命題12より,
    Uτ(C,X), Vτ(F,X), UV=
    が成り立つ.

附:位相的埋め込みについての補足

位相的埋め込みは全射等化写像と類似の性質を持つ.

f:(X,τ(X))(Y,τ(Y))を連続写像とする.このときτ(X)f1(τ(Y))が成り立つのだった(定理2.3の系).

(cf. 定義2)

f:(X,τ(X))(Y,τ(Y))を単射連続写像とする.このとき次は同値である:

  1. fは位相的埋め込みである,すなわち全単射連続写像
    ff(X):(X,τ(X))(f(X),τ(Y)|f(X))
    は同相写像である;
  2. τ(X)=f1(τ(Y))が成り立つ.

(i)(ii)

Uτ(X)とする.このとき,
f(U)=ff(X)(U)τ(Y)|f(X)
より,Vτ(Y)であってf(U)=Vf(X)となるものが存在する.したがってfの単射性より
U=f1(f(U))=f1(Vf(X))=f1(V)X=f1(V)f1(τ(Y))
を得る.

(ii)(i)

全単射連続写像
ff(X):(X,τ(X))(f(X),τ(Y)|f(X))
が開写像であることを示せばよい.そこでUτ(X)とすると,仮定よりVτ(Y)であってU=f1(V)となるものが存在する.したがって
ff(X)(U)=f(f1(V)X)=Vf(X)τ(Y)|f(X)
が成り立つ.

(cf. 定理7の系)

f:XY,g:YZを連続写像とする.このとき次が成り立つ:

  1. gfが位相的埋め込みならば,fは位相的埋め込みである;
  2. f,gが位相的埋め込みならば,gfも位相的埋め込みである.
  1. gfの単射性よりfの単射性がしたがう.また,命題2.2より
    τ(X)=(gf)1(τ(Z))=f1(g1(τ(Z)))f1(τ(Y))τ(X)
    が成り立つので,τ(X)=f1(τ(Y))を得る.
  2. f,gの単射性よりgfの単射性がしたがう.また,命題2.2より
    τ(X)=f1(τ(Y))=f1(g1(τ(Z)))=(gf)1(τ(Z))
    が成り立つ.

f:(X,τ(X))(Y,τ(Y))を連続写像とする.像f(X)上のふたつの位相

  • 写像ff(X):(X,τ(X))f(X)による等化位相τ(ff(X))
  • 相対位相τ(Y)|f(X)

を考える.相対位相の普遍性よりff(X):(X,τ(X))(f(X),τ(Y)|f(X))は連続であるから,定理2の系よりτ(ff(X))τ(Y)|f(X)が成り立つ.

f:(X,τ(X))(Y,τ(Y))を単射連続写像とする.このとき全単射連続写像
g:=ff(X):(X,τ(X))(f(X),τ(ff(X)))
は開写像かつ閉写像である.したがってgは同相写像である.

Uτ(X)とする.このときfの単射性より
g1(g(U))=f1(f(U))=Uτ(X)
となるので,g(U)τ(ff(X))を得る.したがってgは開写像である.同様にしてgが閉写像であることもわかる.

所謂“はめ込まれた部分多様体”の位相とは等化位相τ(ff(X))に他ならない.

f:(X,τ(X))(Y,τ(Y))を単射連続写像とする.このとき次は同値である:

  1. fは位相的埋め込みである;
  2. τ(ff(X))=τ(Y)|f(X)が成り立つ.

以下の可換図式を眺めればわかる:
(f(X),τ(ff(X)))conti. bij.(X,τ(X))conti. bij.(f(X),τ(Y)|f(X))

位相的埋め込みとなるための十分条件

f:(X,τ(X))(Y,τ(Y))を単射連続写像とする.このとき以下のいづれかが成り立つならば,fは位相的埋め込みである:

  1. fは開写像である;
  2. fは閉写像である;
  3. Xはコンパクト空間でありYはハウスドルフ空間である;
  4. Yはコンパクト生成ハウスドルフ空間でありfは固有写像である.
  1. 定理2.7の系.
  2. 同上.
  3. Cτc(X)とすると,仮定よりCXはコンパクトであるからその連続像f(C)Yはコンパクト,したがって閉集合である.よって(2)より結論を得る.
  4. 仮定よりf:XYは完全写像,とくに閉写像である( 参考 ).

参考文献

[1]
N. Bourbaki, General Topology Chapters 1--4
[2]
J. Dugundji, Topology
[3]
小松醇郎,中岡稔,菅原正博, 『位相幾何学 I』, 岩波書店
投稿日:20231029
更新日:2024118

この本を高評価した人

高評価したユーザはいません

この本に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

うすい
56
11948
位相空間論に興味があります.

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 写像による等化位相
  2. 等化写像と等化空間
  3. 等化位相と相対位相
  4. 写像族による等化位相
  5. 余積空間
  6. 普遍性とその帰結
  7. 余積位相と相対位相
  8. 余積空間と分離公理
  9. 附:位相的埋め込みについての補足
  10. 参考文献
前のページへ
3 / 7
次のページへ
前ページへ
New Spaces from Oldの表紙
次ページへ