写像による等化位相
を集合,を位相空間とし,を写像とする.このとき
とおくと,これはの位相を定める.を(による)等化位相(identification topology)という.
- 等化位相の定義より
は連続である. - 任意のに対してとなるので,は離散位相である.
等化位相の閉集合系
を集合,を位相空間とし,を写像とする.このとき
が成り立つ.
等化位相の普遍性
を集合,を位相空間とし,を写像とする.このとき,任意の位相空間と写像に対して,次は同値である:
- ;
- .
(i)(ii)
明らか.
(ii)(i)
とする.このとき
よりが成り立つ.
等化位相はが連続となるようなの位相のうち最も細かい(強い),すなわち最も開集合が多いものである.
に関してが連続であるとする.このとき,等化位相の普遍性よりは連続である.
等化写像と等化空間
を連続写像とする.,すなわち任意のに対して
が成り立つとき,を等化写像(identification map)という.とくにが全射であるときを(による)等化空間(identification space)という.(何を``identify"しているのかについては5節冒頭の注意を参照されたい.)
を連続写像とする.このとき次は同値である:
- は等化写像である;
- 任意の位相空間と写像に対して,
が成り立つ.
(i)(ii)
明らか.
(ii)(i)
の連続性より,であるから,あとはを示せばよい.そこで位相空間と写像を考えると,
は連続なので,
は連続である.
等化写像となるための十分条件(cf. 定理2.7の系)
を全射連続写像とする.このとき,が開写像(resp. 閉写像)ならばは全射等化写像である.
が開写像のとき,任意のに対してとの全射性より
が成り立つ.が閉写像のときも同様である.
等化写像となるための十分条件
を連続写像とする.このとき,連続写像であってとなるものが存在するならば,は全射等化写像である.
- が全射であることは明らか.
- とする.このとき,との連続性から
が成り立つ.
等化空間の普遍性
を全射等化写像とする.また,を連続写像とする.このとき,任意のに対してが定値写像である,すなわち任意のに対して
が成り立つならば,連続写像であってを満たすものがただ一つ存在する.
- の全射性より,の一意性がしたがう.
- とする.仮定よりは単集合であるから,写像が
により定まる. - 明らかにが成り立つ.したがって定理2の系より
は連続である.
を写像とし,とする.が成り立つとき,を飽和集合(-saturated subset)という.
定理5の連続写像について,次は同値である:
- は開写像(resp. 閉写像)である;
- 任意の飽和開集合(resp. 飽和閉集合)に対して,(resp. )が成り立つ.
(i)(ii)
を飽和開集合とする.このときよりとなる.よって
が成り立つ.
(ii)(i)
とする.とおくと,の全射性よりとなるので,は飽和開集合である.よって
が成り立つ.
等化位相の推移性
を連続写像,を集合,を写像とする.このとき,上のふたつの等化位相とについて,次が成り立つ:
- ;
- が等化写像ならば,も成り立つ.
- 任意のに対して,等化位相の定義との連続性より,
が成り立つ. - が等化写像ならば
が成り立つ.
を連続写像とする.
- が(全射)等化写像ならば,は(全射)等化写像である;
- が(全射)等化写像ならば,も(全射)等化写像である.
全射性については明らか.
- より,を得る.
- が成り立つ.
等化位相と相対位相
を開写像(resp. 閉写像)とする.このとき,任意のに対して
は開写像(resp. 閉写像)である.
を等化写像とし,とする.上のふたつの位相,すなわち
を考える.
- が成り立つ;
- 以下のいづれかが成り立つとき,が成り立つ:
- ;
- ;
- ;
- .
- は連続なのでは連続である.よってを得る.
-
- とする.このときより
となるので,を得る.よってが成り立つ. - 補題8より
は全射連続開写像であるから,命題3より等化写像である. - (1)と同様.
- (2)と同様.
写像族による等化位相
を集合,を位相空間族とし,を写像族とする.このとき,を(による)等化位相といいで表わす.
- 等化位相の定義より,各に対して
は連続である. - 開集合系および閉集合系について
が成り立つ.
等化位相の普遍性
を集合,を位相空間族とし,を写像族とする.このとき,任意の位相空間と写像に対して,次は同値である:
- ;
- .
(i)(ii)
明らか.
(ii)(i)
仮定より,各に対して
は連続である.よって,任意のに対して
が成り立つ.
等化位相は任意のに対してが連続となるようなの位相のうち最も細かいものである.
の位相に関して,
が成り立つとする.このとき,等化位相の普遍性よりは連続である.
等化位相の推移性
を集合,をの分割,を集合族,を位相空間族とし,
を写像族とする.各に対してにによる等化位相を与える.このとき,上のふたつの位相,すなわちによる等化位相とによる等化位相とは一致する.
- 任意のに対して
は連続写像の合成ゆえ連続である.よって定理10の系より
が成り立つ. - とする.このとき,任意のに対して
は連続であるから,等化位相の普遍性より,は連続である.よって定理10の系より
が成り立つ.
余積空間
普遍性とその帰結
を位相空間族とする.このとき,自然な入射からなる写像族による等化位相を余積位相,直和位相などといい,位相空間をの余積空間,直和空間,位相和などという.
任意のに対して,自然な入射は開写像かつ閉写像である.したがっては位相的埋め込みである(定理2.7の系).
任意の部分集合に対して
が成り立つことからしたがう.
余積位相の普遍性
任意の位相空間と写像に対して,次は同値である:
- ;
- .
余積空間の普遍性
任意の位相空間と連続写像族に対して,連続写像
であって,
が成り立つものがただ一つ存在する.
さらに,
- 各が開写像ならば,は開写像である;
- 各が閉写像であってが局所有限ならば,は閉写像である.
- 一意性は補題1.2よりしたがう.
- 写像を
で定める.このとき,任意のに対して
が成り立つ.よって
は連続である.
- 各が開写像であるとき,任意のに対して
が成り立つ. - 仮定より,閉集合に対してはの局所有限な閉集合族なので
が成り立つ(
参考
).
と等化位相の推移性(命題13)より
が成り立つ(の分割としてを考えればよい).
を連続写像族とする.このとき,連続写像であって,任意のに対してが成り立つようなものがただ一つ存在する.
さらに,連続写像族に対して,とおくと,
が成り立つ.
- とおけばよい.
- 任意のに対して
が成り立つので,補題1.2より結論を得る.
開写像の和・閉写像の和・等化写像の和
を連続写像族とする.このとき次が成り立つ:
- 各が開写像ならば,は開写像である;
- 各が閉写像ならば,は閉写像である;
- 各が等化写像ならば,は等化写像である.
- 命題12より各は開写像であるから,定理14との定義よりしたがう.
- 命題12より各は閉写像であり,は局所有限であるから,定理14より結論を得る.
- 等化位相の推移性(命題13(もしくは定理14のあとの注意),定理7)より
が成り立つ.
余積空間の結合性
を位相空間族,をの分割とする.各に対しての余積空間をとおく.このとき,余積空間ととは同相である.
- とおく.
- とする.このときであってとなるものがただ一つ存在する.そこで自然な入射の合成をとおくと
は連続である.よって,余積空間の普遍性より,連続写像であって,以下の図式を可換にするものがただ一つ存在する:
- とする.任意のに対しては連続なので,余積空間の普遍性より,連続写像であって以下の図式を可換にするものがただ一つ存在する:
よって,余積空間の普遍性より,連続写像であって以下の図式を可換にするものがただ一つ存在する:
- いま,任意のに対して
が成り立つので,補題1.2よりを得る.
- また,とすると,任意のに対して
となるので,補題1.2よりが成り立つ.よってを得る.
(余積空間の可換性)
を位相空間族とする.このとき,任意の全単射に対して,ととは同相である.
を位相空間族とし,を全単射とする.このとき,各に対してととが同相ならば,余積空間ととは同相である.
- 各に対して,ととの同相を与える写像をとする.
- このとき,定理14の系よりは全単射連続開写像ゆえ同相写像である.
- の分割を考えて,定理16より同相を得る.
余積位相と相対位相
余積位相の相対位相と相対位相の余積位相
を位相空間族とし,各に対して部分集合が与えられているとする.余積集合上のふたつの位相,すなわち
は一致する.
とする.任意のに対して
が成り立つので,補題1.2より
が成り立つ.
したがって,包含写像
は連続であるから,
が成り立つ.
とする.各に対して,より,であってとなるものが存在する.そこでとおくと,命題12よりであり,が成り立つ.このとき
より,を得る.
(位相的埋め込みの和)
を位相的埋め込みの族とする.このときは位相的埋め込みである.
定理14の系より
が成り立つ.は同相写像であり,包含写像は位相的埋め込みであるから,は位相的埋め込みである(命題21).
を位相空間族とし,とする.このとき次が成り立つ:
- ;
- .
-
- 各に対してが成り立つので,はを含む閉集合である.よってが成り立つ.
- とする.このとき,任意のに対して,よりが取れることから,
が成り立つ.よってを得る.
-
- 各に対して,はに含まれる開集合であるから,が成り立つ.よって
が成り立つ. - はに含まれる開集合であるからが成り立つ.
余積空間と分離公理
を位相空間族とする.このとき,任意のに対して,次は同値である:
- は分離公理を満たす;
- 各は分離公理を満たす.
(i)(ii)
- 空間への単射連続写像が存在するので,命題2.20より,は空間である.
- 空間への単射連続写像が存在するので,命題2.23より,は空間である.
- 命題12よりは正則空間の部分空間と同相なので,命題2.26より,は正則空間である.
- 命題12よりは正規空間の閉部分空間と同相なので,命題2.29より,は正規空間である.
(ii)(i)
- とする.仮定よりであるから,命題12よりが成り立つ.
- とする.のときはとおく;のとき,より,であってとなるものが存在する.そこでとおく.命題12より,いづれの場合も
が成り立つ. - とする.このとき
より,であってとなるものが存在する.そこでとおくと,命題12より,
が成り立つ. - とする.このとき各に対して,
より,それぞれの開近傍であってとなるものが存在する.そこでとおくと,命題12より,
が成り立つ.
附:位相的埋め込みについての補足
位相的埋め込みは全射等化写像と類似の性質を持つ.
を連続写像とする.このときが成り立つのだった(定理2.3の系).
(cf. 定義2)
を単射連続写像とする.このとき次は同値である:
- は位相的埋め込みである,すなわち全単射連続写像
は同相写像である; - が成り立つ.
(i)(ii)
とする.このとき,
より,であってとなるものが存在する.したがっての単射性より
を得る.
(ii)(i)
全単射連続写像
が開写像であることを示せばよい.そこでとすると,仮定よりであってとなるものが存在する.したがって
が成り立つ.
(cf. 定理7の系)
を連続写像とする.このとき次が成り立つ:
- が位相的埋め込みならば,は位相的埋め込みである;
- が位相的埋め込みならば,も位相的埋め込みである.
- の単射性よりの単射性がしたがう.また,命題2.2より
が成り立つので,を得る. - の単射性よりの単射性がしたがう.また,命題2.2より
が成り立つ.
を連続写像とする.像上のふたつの位相
を考える.相対位相の普遍性よりは連続であるから,定理2の系よりが成り立つ.
を単射連続写像とする.このとき全単射連続写像
は開写像かつ閉写像である.したがっては同相写像である.
とする.このときの単射性より
となるので,を得る.したがっては開写像である.同様にしてが閉写像であることもわかる.
所謂“はめ込まれた部分多様体”の位相とは等化位相に他ならない.
を単射連続写像とする.このとき次は同値である:
- は位相的埋め込みである;
- が成り立つ.
位相的埋め込みとなるための十分条件
を単射連続写像とする.このとき以下のいづれかが成り立つならば,は位相的埋め込みである:
- は開写像である;
- は閉写像である;
- はコンパクト空間でありはハウスドルフ空間である;
- はコンパクト生成ハウスドルフ空間でありは固有写像である.
- 定理2.7の系.
- 同上.
- とすると,仮定よりはコンパクトであるからその連続像はコンパクト,したがって閉集合である.よって(2)より結論を得る.
- 仮定よりは完全写像,とくに閉写像である(
参考
).