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黄金数の加法定理 (修正版)

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第一加法定理 第一加法定理
第二加法定理 第二加法定理
前提知識 : 数学的帰納法, 黄金比, Lucas 数列, Fibonacci 数列, 三角関数の加法定理
Lucas 数列と Fibonacci 数列 : https://mathlog.info/articles/191

本記事は, 以前に投稿した「黄金の加法定理」 ( https://mathlog.info/articles/320 ) を大幅に修正したものである.
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黄金数の加法定理

黄金数の加法定理とは, 以下に並べる四式のことを指す. 何れも, インデックス$m+n$に対応する Lucas 数および Fibonacci 数を, $L_m,L_n,F_m,F_n$によって書きかえる役割を持つ等式である.

黄金の加法定理

あらゆる整数$m,n$に対して, 以下の等式が成りたつ.
$\quad(\mathrm{1L})\ $$2L_{m+n}=L_mL_n+5F_mF_n. $
$\quad(\mathrm{1F})\ $$2F_{m+n}=L_mF_n+F_mL_n. $
$\quad(\mathrm{2L})\ $$L_{m+n+1}=L_{m+1}F_{n+1}+L_mF_n. $
$\quad(\mathrm{2F})\ $$F_{m+n+1}=F_{m+1}F_{n+1}+F_mF_n. $

愚直な帰納法

変数$n$を任意の値として固定し, $m$に関する再帰性を用いる.

四つの等式の中から何れか一つを選び, ある二つの$m,m+1$についてその等式が真であることを仮定すると, それらの両辺をそのまま足すことによって$m+2$についての等式が得られ, この足し算を繰りかえせば以降の全ての$m$に対して等式が成立することが判る. また逆に, 成立を仮定した二式の両辺の差を取れば$m-1$についての等式が得られ, これを繰りかえすことで以前の全ての$m$について成立が云えることになる. 由って, ある連続する二つの$m$の値について等式を証明することができれば, その結果は全ての整数$m$に伝播する.

そこで$m=0$および$m=-1$の場合の各等式を考えるのであるが, それぞれは
$$ \begin{align} &m=0;\\ &\left( \begin{array}{l} 2L_{0+n}=L_0L_n+5F_0F_n\\ 2F_{0+n}=L_0F_n+F_0L_n\\ L_{0+n+1}=L_{0+1}F_{n+1}+L_0F_n\\ F_{0+n+1}=F_{0+1}F_{n+1}+F_0F_n \end{array} \right.\quad\mathrm{i.e.}\quad \left( \begin{array}{l} 2L_{n}=2L_n\\ 2F_{n}=2F_n\\ L_{n+1}=F_{n+1}+2F_n\\ F_{n+1}=F_{n+1} \end{array} \right. \\\ \\ &m=-1;\\ &\left( \begin{array}{l} 2L_{-1+n}=L_{-1}L_n+5F_{-1}F_n\\ 2F_{-1+n}=L_{-1}F_n+F_{-1}L_n\\ L_{-1+n+1}=L_{-1+1}F_{n+1}+L_{-1}F_n\\ F_{-1+n+1}=F_{-1+1}F_{n+1}+F_{-1}F_n \end{array} \right.\quad\mathrm{i.e.}\quad \left( \begin{array}{l} 2L_{n-1}=-L_n+5F_n\\ 2F_{n-1}=-F_n+L_n\\ L_{n}=2F_{n+1}-F_n\\ F_{n}=F_{n} \end{array} \right.\\\ \end{align} $$
のようになって, 更に以下の等式が真であることを確かめる必要が有る. $\quad\Box$

本記事では以上の等式のより繊細な意味を提示することを目標として, 指数法則との連関や整数論的な応用について成るべく簡潔に記す.

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指数法則からの導出, 三角関数との類似性

黄金比$\phi$の冪乗を二種類の方法によって表しなおすことを考える.

あらゆる整数$n$に対して, 以下の等式が成りたつ.
$\quad(1)\ $$\phi^n=(L_n+F_n\sqrt{5})/2)\quad$($\sqrt{5}$基準の式)$\!. $
$\quad(2)\ $$\sqrt{5}\phi^n=L_n\phi+L_{n-1}\quad$(黄金比基準の式)$\!. $
$\quad(3)\ $$\phi^n=F_n\phi+F_{n-1}\quad$(黄金比基準の式)$\!. $

帰納法

変数$n$に関する再帰性を用いる.

二つの等式の何れか一つを選び, ある二つの$n,n+1$についてその等式が真であることを仮定すると, それらの両辺をそのまま足すことによって$n+2$についての等式が得られ, この足し算を繰りかえせば以降の全ての$n$に対して等式が成立することが判る. また逆に, 成立を仮定した二式の両辺の差を取れば$n-1$についての等式が得られ, これを繰りかえすことで以前の全ての$n$について成立が云えることになる. 由って, ある連続する二つの$n$の値について等式を証明することができれば, その結果は全ての整数$n$に伝播する.

由って$n=0$および$n=1$の場合に等式が成立していることを確かめて
$$ \begin{align} &n=0;\\ &\left( \begin{array}{l} \phi^0=(L_0+F_0\sqrt{5})/2\\ \sqrt{5}\phi^0=L_0\phi+L_{0-1}\\ \phi^0=F_0\phi+F_{0-1} \end{array} \right.\\\ \\ &n=1;\\ &\left( \begin{array}{l} \phi^1=(L_1+F_1\sqrt{5})/2\\ \sqrt{5}\phi^1=L_1\phi+L_{1-1}\\ \phi^1=F_1\phi+F_{1-1} \end{array} \right.\\\ \end{align} $$
とすれば証明が完了する. $\quad\Box$

これらの等式を代入して指数法則$\phi^{m+n}=\phi^m\phi^n$を展開することで, 容易に加法定理の四式を得ることができる.

第一加法定理の導出

あらゆる整数$m,n$について成立する指数法則$\phi^{m+n}=\phi^m\phi^n$に上記命題の等式$(1)$を代入すると
$$ \begin{align} \frac{L_{m+n}+F_{m+n}\sqrt{5}}{2}=\frac{L_m+F_m\sqrt{5}}{2}\times\frac{L_n+F_n\sqrt{5}}{2} \end{align} $$
即ち
$$ \begin{align} 2L_{m+n}+2F_{m+n}\sqrt{5}=L_mL_n+5F_mF_n+L_mF_n\sqrt{5}+F_mL_n\sqrt{5} \end{align} $$
となり, 両辺の有理数部分と無理数部分とをそれぞれ等号で繋げば第一加法定理の二式が得られる. $\quad\Box$

第二加法定理の導出

あらゆる整数$m,n$について成立する指数法則$\phi^{m+n}=\phi^m\phi^n$の両辺に$\sqrt{5}$を乗じて上記命題の等式$(2)$を代入すると
$$ \begin{align} L_{m+n}\phi+L_{m+n-1}&=(L_m\phi+L_{m-1})(F_n\phi+F_{n-1})\\ &=L_mF_n\phi^2+L_mF_{n-1}\phi+L_{m-1}F_n\phi+L_{m-1}F_{n-1}\\ &=L_mF_n\phi+L_mF_{n-1}\phi+L_{m-1}F_n\phi\\ &\textcolor{white}{=}\qquad+L_mF_n+L_{m-1}F_{n-1} \end{align} $$
となり, 両辺の有理数部分をそれぞれ等号で繋げば第二加法定理の$\mathrm{L}$の式が得られる. $\quad\Box$

第二加法定理の導出

あらゆる整数$m,n$について成立する指数法則$\phi^{m+n}=\phi^m\phi^n$に上記命題の等式$(3)$を代入すると
$$ \begin{align} F_{m+n}\phi+F_{m+n-1}&=(F_m\phi+F_{m-1})(F_n\phi+F_{n-1})\\ &=F_mF_n\phi^2+F_mF_{n-1}\phi+F_{m-1}F_n\phi+F_{m-1}F_{n-1}\\ &=F_mF_n\phi+F_mF_{n-1}\phi+F_{m-1}F_n\phi\\ &\textcolor{white}{=}\qquad+F_mF_n+F_{m-1}F_{n-1} \end{align} $$
となり, 両辺の有理数部分をそれぞれ等号で繋げば第二加法定理の$\mathrm{F}$の式が得られる. $\quad\Box$

このような指数法則との対応関係は三角関数や双曲線関数にも類似するものである.
$$ \begin{align} &(L_n,F_n),\ (L_n,L_{n-1}),\ (F_n,F_{n-1})\\ &\begin{array}{c|c|c|c}\hline (1,\sqrt{5}) & (1,\phi) & (1,\phi) & \mathrm{Basis} \\\hline \phi^n=\dfrac{L_n+F_n\sqrt{5}}{2} & \sqrt{5}\phi^n=L_n\phi+L_{n-1} & \phi^n=F_n\phi+F_{n-1} & \begin{array}{c}\mathrm{Expansio}\\\mathrm{Potestatis}\end{array} \\ \bar\phi^n=\dfrac{L_n-F_n\sqrt{5}}{2} & -\sqrt{5}\bar\phi^n=L_n\bar\phi+L_{n-1} & \bar\phi^n=F_n\bar\phi+F_{n-1} & \mathrm{Coniugatio} \\ \left(\begin{array}{l}L_n=\phi^n+\bar\phi^n\\F_n=\dfrac{\phi^n-\bar\phi^n}{\sqrt{5}}\end{array}\right. & L_n=\phi^n+\bar\phi^n & F_n=\dfrac{\phi^n-\bar\phi^n}{\phi-\bar\phi} & \mathrm{Componentia} \\ \left(\begin{array}{l}2L_{m+n}=L_mL_n+5F_mF_n\\2F_{m+n}=L_mF_n+F_mL_n\end{array}\right. & L_{m+n+1}=L_{m+1}F_{n+1}+L_mF_n & F_{m+n+1}=F_{m+1}F_{n+1}+F_mF_n & \begin{array}{c}\mathrm{Additio}\\\mathrm{Theorema}\end{array} \\ \left(\begin{array}{l}2L_{2n}=L_nL_n+5F_nF_n\\F_{2n}=L_nF_n\end{array}\right. & L_{2n+1}=L_{n+1}F_{n+1}+L_nF_n & F_{2n+1}=F_{n+1}F_{n+1}+F_nF_n & \begin{array}{c}\mathrm{Dupulus Index}\\\mathrm{Formula}\end{array} \\ L_nL_n-5F_nF_n=4(-1)^n & L_{n+1}L_{n-1}-L_nL_n=-5(-1)^n & F_{n+1}F_{n-1}-F_nF_n=(-1)^n & \begin{array}{c}\mathrm{Norma}\\\mathrm{Potestatis}\end{array}\\\hline \end{array}\\\ \\ &(\cos{x},\sin{x})\\ &\begin{array}{c|c}\hline (1,\sqrt{-1}) & \mathrm{Basis} \\\hline e^{\sqrt{-1}x}=\cos{x}+\sin{x}\sqrt{-1} & \begin{array}{c}\mathrm{Expansio}\\\mathrm{Potestatis}\end{array} \\ e^{-\sqrt{-1}x}=\cos{x}-\sin{x}\sqrt{-1} & \mathrm{Coniugatio} \\ \left(\begin{array}{l}\cos{x}=\dfrac{e^{\sqrt{-1}x}+e^{-\sqrt{-1}x}}{2}\\\sin{x}=\dfrac{e^{\sqrt{-1}x}-e^{-\sqrt{-1}x}}{2\sqrt{-1}}\end{array}\right. & \mathrm{Componentia} \\ \left(\begin{array}{l}\cos{(x+y)}=\cos{x}\cos{y}-\sin{x}\sin{y}\\\sin{(x+y)}=\cos{x}\sin{y}+\sin{x}\cos{y}\end{array}\right. & \begin{array}{c}\mathrm{Additio}\\\mathrm{Theorema}\end{array} \\ \left(\begin{array}{l}\cos{2x}=\cos^2{x}-\sin^2{x}\\\sin{2x}=2\cos{x}\sin{x}\end{array}\right. & \begin{array}{c}\mathrm{Duplus Angulus}\\\mathrm{Fourmula}\end{array} \\ \cos^2{x}+\sin^2{x}=1 & \begin{array}{c}\mathrm{Norma}\\\mathrm{Potestatis}\end{array}\\\hline \end{array}\\\ \\ &(\cosh{x},\sinh{x})\\ &\begin{array}{c|c}\hline - & \mathrm{Basis} \\\hline e^{x}=\cos{x}+\sin{x} & \begin{array}{c}\mathrm{Expansio}\\\mathrm{Potestatis}\end{array} \\ e^{-x}=\cos{x}-\sin{x} & \mathrm{(Coniugatio)} \\ \left(\begin{array}{l}\cosh{x}=\dfrac{e^{x}+e^{-x}}{2}\\\sinh{x}=\dfrac{e^{x}-e^{-x}}{2}\end{array}\right. & \mathrm{Componentia} \\ \left(\begin{array}{l}\cosh{(x+y)}=\cosh{x}\cosh{y}+\sinh{x}\sinh{y}\\\sinh{(x+y)}=\cosh{x}\sinh{y}+\sinh{x}\cosh{y}\end{array}\right. & \begin{array}{c}\mathrm{Additio}\\\mathrm{Theorema}\end{array} \\ \left(\begin{array}{l}\cosh{2x}=\cosh^2{x}+\sinh^2{x}\\\sinh{2x}=2\cosh{x}\sinh{x}\end{array}\right. & \begin{array}{c}\mathrm{DuplusAngulus}\\\mathrm{Formula}\end{array} \\ \cosh^2{x}-\sinh^2{x}=1 & \left(\begin{array}{c}\mathrm{Norma}\\\mathrm{Potestatis}\end{array}\right)\\\hline \end{array} \end{align} $$

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組みあわせ論的な導出

第二種の加法定理
$$ \begin{align} &L_{m+n+1}=L_{m+1}F_{n+1}+L_mF_n\\ &F_{m+n+1}=F_{m+1}F_{n+1}+F_mF_n \end{align} $$$\mathrm{F}$の式は Fibonacci 数のみによって記述される等式であり, $m,n$がともに正なるとき, 組みあわせ論的に解釈することが可能である. より詳しくは, $m+n$段の階段を一段上がりと二段上がりを用いて上る方法を考えるとき, 上り方の数をある二通りの手法によって総べれば得ることができる. 具体的な論証については, 次の記事にて解説している.
Fibonacci 数の組みあわせ論的な性質とその応用 : https://mathlog.info/articles/210

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積和公式

ここでは, 次の等式を既知のものとして用いる.

インデックスの符号反転公式

あらゆる整数$n$に対して, 以下の等式が成りたつ.
$\quad(1)\ $$L_{-n}=(-1)^nL_n. $
$\quad(2)\ $$F_{-n}=(-1)^{n+1}F_n. $

帰納法によって確かめることができる (略).

積和公式

あらゆる整数$m,n$に対して, 以下の等式が成りたつ.
$\quad(1)\ $$L_mL_n=L_{m+n}+(-1)^nL_{m-n}. $
$\quad(2)\ $$L_mF_n=F_{m+n}-(-1)^nF_{m-n}. $

$\ (1)\ $第一加法定理の$\mathrm{L}$の式は
$$ \begin{equation} 2L_{m+n}=L_mL_n+5F_mF_n \end{equation} $$
というものであった. この等式において$n$$-n$に擦りかえ, 符号反転公式を適用すると
$$ \begin{equation} 2L_{m-n}=(-1)^nL_mL_n+5(-1)^{n-1}F_mF_n \end{equation} $$
のようになるので, $5F_mF_n$の項を打ちけすよう両辺に$(-1)^n$を掛けて, 元の加法定理と足しあわせると
$$ \begin{equation} 2L_{m+n}+2(-1)^nL_{m-n}=2L_mL_n+0 \end{equation} $$
が得られる.

$\ (2)\ $第一加法定理の$\mathrm{F}$の式は
$$ \begin{equation} 2F_{m+n}=L_mF_n+F_mL_n \end{equation} $$
というものであった. この等式において$n$$-n$に擦りかえ, 符号反転公式を適用すると
$$ \begin{equation} 2F_{m-n}=(-1)^{n-1}L_mF_n+(-1)^nF_mL_n \end{equation} $$
のようになるので, $F_mL_n$の項を打ちけすよう両辺に$(-1)^{n-1}$を掛けて, 元の加法定理と足しあわせると
$$ \begin{equation} 2F_{m+n}+2(-1)^{n-1}F_{m-n}=2L_mF_n+0 \end{equation} $$
が得られる. $\quad\Box$

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整数論への応用

整数論的な立場では, 例えば, 第二加法定理の$\mathrm{F}$の式にて$m$$1$だけずらした等式
$$ \begin{align} F_{m+n}=F_{m}F_{n+1}+F_{m-1}F_{n} \end{align} $$および$$ \begin{align} F_{m-n}&=F_{m}F_{-n+1}+F_{m-1}F_{-n}\\ &=F_{m}F_{-n+1}+(-1)^{n+1}F_{m-1}F_{n} \end{align} $$はこの数列の顕著なる性質を理るものである. それは, 若し$(F_m,F_n)$の正なる公約数$d$を取れば, この等式により$F_{m+n},F_{m-n}$は何れもある$F_m,F_n$の整数係数の線型結合に等しくなるため, 肖ってこれらにも$d$による整除性が移るということである. 整除の記号を用いて記述すれば, 全ての正の整数$d$について
$$ \begin{equation} d\mid F_m\ \mathrm{et}\ F_n\Longrightarrow d\mid F_{m+n}\ \mathrm{et}\ F_{m-n} \end{equation} $$
が成立するということであり, Fibonacci 数列の中で$d$の倍数であるような項のインデックスの成す集合*****
$$ \begin{align} I(d)=\{i\in\mathbb{Z}\mid F_i\in d\mathbb{Z}\} \end{align} $$

$$ \begin{align} m\ \mathrm{et}\ n\in I(d)\Longrightarrow m+n\ \mathrm{et}\ m-n\in I(d) \end{align} $$
なる特性を持つことが判る.

下の条件に従うようなあらゆる$\mathbb{Z}$の部分集合$I$に対して, $I=d\mathbb{Z}$なる正の整数$d$が存在するか, $I$$\{0\}$に等しいか, あるいは空である.
条件 あらゆる$I$の元$m$$n$に対して, $m+n\in I$かつ$m-n\in I$が成りたつ.

(略).

このような集合$I$のうち空でないものは$\mathbb{Z}$のイデアル (独 ideal) と呼ばれる.

あらゆる正の整数$d$に対して, $d\mid F_n$なる正の整数$n$が存在する.

$d$において数列$(F_n)_{n>0}$に当たる剰余の列を考えて, その中に$0$が存在することを証明する. この剰余列の隣接する二項を一組としたものの全体を
$$ \begin{equation} N_d=\{(F_n\ \mathrm{mod}.d,F_{n+1}\ \mathrm{mod}.d)\mid n\in\mathbb{Z}_{>0}\} \end{equation} $$
と書けば, これは$p^2$個以下の元を持つ有限集合であるので, ある二つの (異なる) 正の整数$a,b$であって
$$ \begin{equation} (F_a\ \mathrm{mod}.d,F_{a+1}\ \mathrm{mod}.d)=(F_b\ \mathrm{mod}.d,F_{b+1}\ \mathrm{mod}.d) \end{equation} $$となるようなものが存在するはずである. この相等式は
$$ \begin{equation} F_a\equiv F_b\quad\mathrm{et}\quad F_{a+1}\equiv F_{b+1}\ \ (\mathrm{mod}.d) \end{equation} $$
とも表すことができ, 合同式において漸化式$F_i=F_{i+2}-F_{i+1}$の適用を繰りかえすことによって
$$ \begin{equation} F_{a+x}\equiv F_{b+x}\ \ (\mathrm{mod}.d)\quad(x\in\mathbb{Z},\ a+x\geqslant0\ \mathrm{et}\ b+x\geqslant0) \end{equation} $$
なる等式群を得られる. $a$$b$よりも大きいときには$x=-b$にて右辺が終に$F_0$となり, $F_{a-b}\equiv0$から$d\mid F_{a-b}$なる正の整数$a-b$の存在が判る. 逆に$a$$b$よりも小さいときには$x=-a$にて左辺が終に$F_0$となり, $0\equiv F_{b-a}$から$d\mid F_{b-a}$なる正の整数$b-a$の存在が判る. $\quad\Box$

あらゆる正の整数$d$に対して, Fibonacci 数列には$d$の倍数は無数に現れ, 然もそれらは均等に並ぶ.

先に示した二つの命題がこれに同値な内容を保証するため, この命題も正しい. $\quad\Box$

この他にも, 加法定理は例えば無限和の計算などにおいて重宝する. 詳細は以下の三つの記事に纏めてあるので, 宜しければ是非.

Fibonacci 数を含む基礎的な無限級数
(1) の記事 : https://mathlog.info/articles/1468
(2) の記事 : https://mathlog.info/articles/1469
(3) の記事 : https://mathlog.info/articles/1479

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投稿日:2021425
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ゆう
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好きな整数は 0, 1, 1, φ, 2, 5, 6, 12, 89 など. || フィボナッチ数列 bot (@Aureus_N) 管理人. || hatena blog || indeterminate equations involving Fibonacci numbers || Disquisitiones Arithmeticae...

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