この記事では
リーマン予想の記事
において紹介した
『リーマン予想が真
という関係において、この右側の主張を具体的に
と評価できることを示します。ついでにこの不等式は
や
という不等式に置き換えられることも(暗に)示されます。
この記事では前の記事で使っていない記法やここでしか使われない表記がいくつかあるのでそれらについてまず触れておきます。
・
特筆がなければ基本的に
・
とし、
と定めます(これはここだけの表記となります(多分))。
前の記事
では
が成り立つことを示しましたが、より精密には
が成り立つことが知られています(この記事では証明しません)。
またこれは今回参考にした文献(1975,1976)が参照している文献(1941)の結果であって、2014年の論文では
とあるように
まず不等式
における振動項
および
を示します。あとは
を使って
が成り立つことを示し、
リーマンゼータ関数を起点とした素数論では
とおいたとき
が成り立つ。
というものになっています。どうしてこっちの方が都合がいいのかというとそれは振動項
素数公式の記事
で示した式
を積分することで
が成り立つ。
また同記事で示した部分分数展開公式
を
がわかるのでこれを
に注意して逆メリン変換することで
を得る。
ちなみに
と表せます。
と定める。このとき
および
が成り立つことに注意する。
となって矛盾。
となって矛盾。よって主張を得る。
任意の
とおくと
が成り立つ。
右側の不等号については
つまり
が成り立つ。またそれぞれの単調性から
であることに注意すると
を得る。
左側の不等号も同様にある
が成り立ち、単調性から
なので結局
まず
を見比べることで
が成り立つことがわかる。
またこの右辺は絶対収束していたので級数と積分が交換でき、
を得る。
が成り立つ。
のようにしてわかる。(積分の値については漸化式
が成り立つ。
左辺の積分を計算すると
となり、
に注意すると
なのであとは
リーマン予想が真であるとき、任意の
が成り立つ。
上で示した種々の結果から
と評価できるので、あとはリーマン予想
が成り立つ。ただし
とした。
アーベルの総和公式
と同様にして
が成り立つので
に注意すると
を得る。
としたとき、
が成り立つ。
が知られていることを使う。これは具体的な非自明な零点の(近似)値を求めることでわかるので特に証明はしない。
まず
が成り立つ。ただし
とした。
>>> from numpy import log,pi
>>> d=158.84998
>>> c=d/(2*pi)
>>> N=57
>>> F=c*log(c)-c+7/8
>>> R=0.137*log(d)+0.443*log(log(d))+1.588
>>> 0.8113925-(log(c))**2/(4*pi)+(F+R-N+0.137+0.443/log(d))/d
0.003040395970144244
また
に注意して
が成り立つので、さっきの不等式と合わせて
を得る。ただし
とした。
>>> from numpy import log,pi
>>> 4*pi*0.0030404
0.03820679321589763
>>> 4*pi*(0.137+0.443/log(d))
2.8200430232286395
リーマン予想が真であるとき
が成り立つ。
まず任意に
として定理7,9を適用する。
このとき
ただし
と評価でき、また
ただし
と評価できることに注意する。
>>> from numpy import log,pi,sqrt
>>> xi=82800
>>> a2=log(xi)/(pi*sqrt(xi))
>>> a2
0.012526849246324731
>>> 2*(1/0.0126+1-1/2)
159.73015873015873
>>> d1=a2*(1+a2)/(2+a2)
>>> d1
0.006302410923419406
>>> a3=2*log(log(xi))-2*(1+d1)
>>> a3
2.841276293240455
いま定理7,9から
ただし
と評価できる。
ここで
となるので、結局
と評価できることになる。
>>> from numpy import log
>>> xi=82800
>>> 2*2.841-(2.841**2+4.152828)/log(xi)
4.602530634962593
そして
および
が成り立つことが知られているので
ただし
と評価でき、
>>> from numpy import sqrt,power,log,pi
>>> xi=23*10**8
>>> a2=log(xi)/(pi*sqrt(xi))
>>> d1=a2*(1+a2)/(2+a2)
>>> a3=2*log(log(xi))-2*(1+d1)
>>> a4=2*a3-(a3**2+4.152828)/log(xi)
>>> a5=a4-a2*log(xi)/2-4-8*pi*log(2*pi)/(sqrt(xi)*log(xi))
>>> a6=a5-8.16*pi/log(xi)-24*pi/(power(xi,1/6)*log(xi))
>>> a6
2.00704868502812
リーマン予想が真であるとき
が成り立つ。
定理9と同様に評価し、
>>> from numpy import sqrt,power,log,pi,e
>>> xi=e**16
>>> a2=log(xi)/(pi*sqrt(xi))
>>> d1=a2*(1+a2)/(2+a2)
>>> a3=2*log(log(xi))-2*(1+d1)
>>> a4=2*a3-(a3**2+4.152828)/log(xi)
>>> a5=a4-a2*log(xi)/2-4-8*pi*log(2*pi)/(sqrt(xi)*log(xi))
>>> a6=a5-8.16*pi/log(xi)-24*pi/(power(xi,1/6)*log(xi))
>>> a6
0.09834137524507225
いま
が成り立つことが知られているので
と評価できる。
また
が知られていたことを思い出すと
と評価できる。
>>> from numpy import log,pi
>>> 2.05282/(log(1400)**2)
0.03911710512821552
>>> (1+3/power(1075,1/6))/log(1075)**2
0.039763115286937885
>>> 1/(8*pi)
0.039788735772973836
x≤1500での様子
x≤650での様子
x≤100での様子
(これを見る限り
リーマン予想が真であるとき
が成り立つ。
この記事
で示したように
が成り立つので、
とおくと
と評価できる。いま
まず
と評価できる。(現時点で
>>> from numpy import sqrt,log,pi
>>> sqrt(x)*log(x)/(8*pi)
4987.621160107788
が成り立つことが知られている(結局数値計算?)ことから
を得る。あとは数値計算で示せばよい。
x≤4500での様子
ちなみに
x≤4500での様子
これを見る限り
とりあえず目的の不等式を示すことはできましたが、途中で証明なしに
であることと
および
が成り立つことを使いました。これらについてはいつか記事を書くかもしれませんし書かないかもしれません。詳しく知りたい人は
こちら
とか
そちら
を参照してください。
ちなみにこれら以外に未証明で使った不等式は単純な数値計算で省略できますが、この証明が書かれた年代(1976)を考えるとまだ計算機器が充実していない(と思われる)以上そういうわけにはいかなかったのだと思います。個人のパソコンでもこの程度の計算はできる(多分)ことに感謝するのと同時に、パソコンの無い時代にこれだけの結果に辿り着いた先人たちの逞しさに感服する限りですね。