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大学数学基礎解説
文献あり

リーマン予想と同値な不等式:ラマヌジャンの定理

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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{d}[0]{\delta} \newcommand{dis}[0]{\displaystyle} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{farc}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{G}[0]{\Gamma} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{Gal}[0]{\operatorname{Gal}} \newcommand{id}[0]{\operatorname{id}} \newcommand{Im}[0]{\operatorname{Im}} \newcommand{Ker}[0]{\operatorname{Ker}} \newcommand{l}[0]{\left} \newcommand{Li}[0]{\operatorname{Li}} \newcommand{li}[0]{\operatorname{li}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{ord}[0]{\operatorname{ord}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{r}[0]{\right} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Re}[0]{\operatorname{Re}} \newcommand{s}[0]{\sigma} \newcommand{ul}[1]{\underline{#1}} \newcommand{vt}[0]{\vartheta} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} \newcommand{ZZ}[1]{\mathbb{Z}/#1\mathbb{Z}} \newcommand{ZZt}[1]{(\mathbb{Z}/#1\mathbb{Z})^\times} $$

はじめに

 この記事ではリーマン予想と同値な不等式
$$\s(n)< e^\g n\log\log n\quad(n>5040)$$
について、その前身であるラマヌジャンの定理を証明していきます(と言っても この記事 でのラマヌジャンの定理の証明の過程を$s=1$に焦点を絞ってアレンジしただけですが)。

ラマヌジャンの定理

 リーマン予想が真であるとき、十分大きい任意の$n$に対して
$$\s(n)< e^\g n\log\log n$$
が成り立つ。

 ここで$\s(n),\g$はそれぞれ約数関数、オイラー定数としました。
$$\s(n)=\sum_{d|n}d=\sum_{d|n}\frac nd,\quad \g=\lim_{n\to\infty}\l(\sum^n_{k=1}\frac1k-\log n\r)$$
またこの記事で「巨大過剰数」と言ったときには通常の巨大過剰数、つまり$\s_1$についての一般化巨大過剰数($\s_{-1}$についての一般化高度合成数)のことを指すものとします(詳しくは この記事 参照)。

証明のあらすじ

 まず自然数$n$について考えるの代わりに巨大過剰数$N$について考えればよいことを示す。そして4つの式
\begin{eqnarray} \farc{\s(N)}{N} &\leq&\prod_{p\leq x}\frac1{1-p^{-1}}\prod_{\sqrt{2x}< p\leq x}(1-p^{-2}) \\\log\log\log N&=&\log\log\vt(x)+\frac{\sqrt2}{\sqrt x\log x}+O\l(\farc1{\sqrt{x}\log^2x}\r) \\\log\prod_{\sqrt{2x}< p\leq x}(1-p^{-2}) &=&-\frac{\sqrt2}{\sqrt x\log x}+O\l(\frac1{\sqrt{x}\log^2x}\r) \\\log\prod_{p\leq x}(1-p^{-1}) &\geq&-\g-\log\log\vt(x)-\frac{4+\g-\log4\pi}{\sqrt x\log x}+O\l(\frac1{\sqrt x\log^2x}\r) \end{eqnarray}
を組み合わせることで$x$が十分大きいとき、すなわち$N$が十分大きいとき
$$\log\frac{\s(N)}{N\log\log N}<\g$$
が成り立つことがわかり、主張を得る。といった具合です。

問題の帰結

 $N'< n\leq N$をそれぞれ$n$以上(resp.未満)で最小(resp.最大)の巨大過剰数とすると
$$\frac{\s(n)}{n\log\log n} \leq\max\l\{\frac{\s(N')}{N'\log\log N'},\frac{\s(N)}{N\log\log N}\r\}$$
が成り立つ。

 巨大過剰数の定義から$N'$に対応する$\e>\e_n$に対して
$$\frac{\s(N')}{(N')^{1+\e}}>\frac{\s(N)}{N^{1+\e}}$$
$N$に対応する$\e\leq\e_n$に対して
$$\frac{\s(N')}{(N')^{1+\e}}\leq\frac{\s(N)}{N^{1+\e}}$$
が成り立つので$\e=\e_n$においてこの等号が成り立つことになる。よって
$$\frac{\s(n)}{n^{1+\e_n}}\leq\frac{\s(N')}{(N')^{1+\e_n}}=\frac{\s(N)}{N^{1+\e_n}}$$
を得る。
 また
\begin{align} f(x)&=\frac{x^{\e_n}}{\log\log x}\\ g(x)&=\log f(e^x)=\e_nx-\log\log x \end{align}
とおくと
$$g''(x)=\l(\e_n-\frac{1}{x\log x}\r)'=\frac{\log x+1}{(x\log x)^2}>0$$
すなわち$g(x)$は下に凸なので
$$\log n=t\log N'+(1-t)\log N\quad(\exists t\in[0,1))$$
とおくと
$$g(\log n)\leq tg(\log N')+(1-t)g(\log N)\leq \max\{g(\log N'),g(\log N)\}$$
を得る。よって
$$\frac{n^{\e_n}}{\log\log n} \leq\max\l\{\frac{(N')^{\e_n}}{\log\log N'},\frac{N^{\e_n}}{\log\log N}\r\}$$
となるので先の不等式にこれを掛け合わせることで主張を得る。

 この補題より、ある$n_0$が存在して
$$\s(n)< e^\g n\log\log n\quad(\forall n>n_0)$$
が成り立つことを示すためにはある$N_0$が存在して
$$\s(N)< e^\g N\log\log N\quad(\forall N>N_0)$$
(ただし$N$は巨大過剰数)が成り立つことを示せばよいことがわかります。

$x_r$の評価

 任意の$0<\e\leq\log(1+2^{-1})/\log2$に対して実数列$\{x_r\}$を方程式
$$x_r^\e=\frac{1-x_r^{-(r+1)}}{1-x^{-r}}$$
によって定める。また$x_1^\e=1+x_1^{-1}$より
$$\e=\farc{\log(1+x_1^{-1})}{\log x_1}$$
なので$\e$および$x_2,x_3,\ldots$$x=x_1\geq2$の関数とみなす。このとき以下の評価が成り立つ。

 $x_2<\sqrt{2x}$が成り立つ。

$$x_2^\e=\frac{x_2^3-1}{x_2(x_2^2-1)}=1+\farc1{x_2^2+x_2}$$
より
$$\e=\frac{\log(1+1/(x_2^2+x_2))}{\log x_2}$$
であって、この右辺が$x_2$について単調減少であることに注意すると
$$\e=\frac{\log(1+1/x)}{\log x}>\frac{\log(1+1/(2x+\sqrt{2x}))}{\log\sqrt{2x}}$$
が成り立つことを示せばよい。実際、より強い不等式
$$\frac{\log(1+1/x)}{\log x}>\frac{\log(1+1/(2x+\sqrt{2x}))}{\log\sqrt x}$$
すなわち
$$1+\farc1x>\l(1+\frac1{2x+\sqrt{2x}}\r)^2$$
が次のように示される。
\begin{eqnarray} \l(1+\frac1{2x+\sqrt{2x}}\r)^2 &=&1+\frac1x\l(\frac{2x}{2x+\sqrt{2x}}+\frac x{(2x+\sqrt{2x})^2}\r) \\&=&1+\frac1x\l((1-\frac1{\sqrt{2x}+1})+\frac1{2(\sqrt{2x}+1)^2}\r) \\&<&1+\frac1x\l((1-\frac1{\sqrt{2x}+1})+\frac1{\sqrt{2x}+1}\r) \\&=&1+\frac1x \end{eqnarray}

 以下、リーマン予想が真であるものとします。

 $N=\exp(\sum_{r=1}^\infty\vt(x_r))$とおくと
$$\log\log\log N=\log\log\vt(x)+\frac{\sqrt2}{\sqrt x\log x}+O\l(\farc1{\sqrt{x}\log^2x}\r)$$
が成り立つ。

  この記事 の補題5系から
\begin{eqnarray} \log N&=&\vt(x)+x_2+O(x^\frac13) \\\log\log N&=&\log\vt(x)+\frac{x_2}{\vt(x)}+O(x^{-\frac23}) \\\log\log\log N&=&\log\log\vt(x)+\frac{x_2}{\vt(x)\log\vt(x)}+O(x^{-\frac23}) \end{eqnarray}
と評価でき、また同記事の補題5から
$$x_2=\sqrt{2x}(1+O\l(\frac1{\log x}\r))$$
と評価できることとリーマン予想と同値な漸近公式
$$\vt(x)=x+O(\sqrt x\log^2x)$$
からわかる。

ラマヌジャンの定理の証明

 任意の高度合成数$N$と対応する$\e>0$に対して
$$\farc{\s(N)}{N} \leq\prod_{p\leq x}\frac1{1-p^{-1}}\prod_{\sqrt{2x}< p\leq x}(1-p^{-2})$$
が成り立つ。

  この記事 の定理8より
\begin{eqnarray} &&\farc{\s(N)}{N}=\s_{-1}(N) =\prod_{r=1}^\infty\prod_{p\leq x_r}\frac{1-p^{-(r+1)}}{1-p^{-r}} \\&=&\prod_{r=1}^\infty\prod_{x_{r+1}< p\leq x_r}\prod^r_{k=1}\frac{1-p^{-(k+1)}}{1-p^{-k}} =\prod_{r=1}^\infty\prod_{x_{r+1}< p\leq x_r}\frac{1-p^{-(r+1)}}{1-p^{-1}} \\&=&\prod_{p\leq x_1}\frac1{1-p^{-1}}\prod_{x_2< p\leq x_1}(1-p^{-2}) \prod_{r=2}^\infty\prod_{x_{r+1}< p\leq x_r}(1-p^{-(r+1)}) \\&\leq&\prod_{p\leq x}\frac1{1-p^{-1}}\prod_{\sqrt{2x}< p\leq x}(1-p^{-2}) \end{eqnarray}
とわかる。

$$\log\prod_{\sqrt{2x}< p\leq x}(1-p^{-2}) =-\frac{\sqrt2}{\sqrt x\log x}+O\l(\frac1{\sqrt{x}\log^2x}\r)$$
が成り立つ。

  この記事 の定理7
$$\log\prod_{p\leq x}(1-p^{-s}) =-\log|\z(s)|-\Li(x^{1-s})+O\l(\frac{x^{1-s}}{\log^2x}\r)$$
から
\begin{eqnarray} \log\prod_{p\leq x}(1-p^{-2}) &=&-\log|\z(s)|-\Li(x^{-1})+O\l(\frac{x^{-1}}{\log^2x}\r) \\&=&-\log|\z(s)|+\frac{x^{-1}}{\log x}+O\l(\frac{x^{-1}}{\log^2x}\r) \\\log\prod_{\sqrt{2x}< p\leq x}(1-p^{-2}) &=&\frac1{x\log x}-\frac1{\sqrt{2x}\log\sqrt{2x}}+O\l(\frac1{\sqrt{x}\log^2x}\r) \\&=&-\frac{\sqrt2}{\sqrt x\log x}+O\l(\frac1{\sqrt{x}\log^2x}\r) \end{eqnarray}
とわかる($\Li(x^{-1})$の評価については この記事 参照)。

$$\log\prod_{p\leq x}(1-p^{-1}) \geq-\g-\log\log\vt(x)-\frac{4+\g-\log4\pi}{\sqrt x\log x}+O\l(\frac1{\sqrt x\log^2x}\r)$$
が成り立つ。

 リーマン予想が真であれば$\ol\rho=1-\rho$であることから
$$\sqrt xS_1(x)=\sum_\rho\frac{x^{\rho-\frac12}}{\rho(\rho-1)} =-\sum_\rho\frac{x^{\Im(\rho)}}{|\rho|^2} \leq\sum_\rho\frac1{|\rho|^2}=2+\g-\log4\pi$$
(最後の等号については この記事 参照)に注意すると、 この記事 の定理4系
$$\log\prod_{p\leq x}(1-p^{-1}) =-\g-\log\log\vt(x)-\frac2{\sqrt x\log x} -\frac{S_1(x)}{\log x}+O\l(\frac1{\sqrt x\log^2x}\r)$$
からわかる。

ラマヌジャンの定理の証明

 補題4,5,6,7から
$$\log\frac{\s(N)}{N\log\log N} \leq\g+\farc{4+\g-\log4\pi-2\sqrt2}{\sqrt x\log x}+O\l(\farc1{\sqrt x\log^2x}\r)$$
を得る。そして
$$4+\g-\log4\pi-2\sqrt2=-0.782\ldots<0$$
であることに注意すると$x$が十分大きいとき、すなわち巨大過剰数$N$が十分大きいとき
$$\log\frac{\s(N)}{N\log\log N}<\g$$
つまり
$$\s(N)< e^\g N\log\log N$$
が成り立つことがわかる。あとは補題2からわかる。

おわりに

 今回の記事では、リーマン予想が真ならばある$n_0$が存在して
$$\s(n)< e^\g n\log\log n\quad(\forall n> n_0)$$
が成り立つことを示しましたが、ラマヌジャンの議論を精密化することで$n_0$は具体的に$n_0=5040$と取れることがわかります。また逆にこの不等式が成り立てばリーマン予想が真となることも知られています。

Robinの定理

 リーマン予想が真であることと
$$\s(n)< e^\g n\log\log n\quad(\forall n>5040)$$
が成り立つことは同値である。

 このことについては近々記事として書くつもりです。
 とりあえず今回はこんなところで。では。

参考文献

[1]
G. Robin, Grandes valeurs de la fonction somme des diviseurs et hypothèse de Riemann, Journal de Mathématiques Pures et Appliquées, 1984, pp. 187-213
投稿日:20211129
更新日:125

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投稿者

子葉
子葉
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183043
主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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